「尖閣へ中国漁船1000隻」報道は何だったのか 「msn.産経ニュース(2012.9.22)」記事をコピペした。




● 「尖閣へ中国漁船1000隻」報道は何だったのか

 沖縄県の尖閣諸島をめぐり日中の緊張が高まる中、中国メディアが報じた「中国漁船1000隻が尖閣周辺海域へ向かっている」との報道。「17日にも到着」「18日か19日になる」などと報道が続いたが、21日時点で大漁船団は来ていない。一連の報道をどう読み解けばよいのか。


■ 発端…「10000隻」情報もあった

「中国の漁船約1000隻が17日にも、釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺海域へ到着する見込みだ」

 中国の国営ラジオ局「中国中央人民放送」の電子版がこう報じたのは今月17日だった。

 6月1日から続いていた東シナ海の禁漁期間が16日正午(日本時間同日午後1時)をもって終了。その2日ほど前から、中国メディアは通過中の台風16号による波浪警報が解除され次第、漁が認められると伝えた。また、例年、尖閣周辺海域で漁をする漁船は、大陸沿岸部の福建省、浙江省を中心に約1000隻が登録されているとも報じた。

 この登録数が、そのまま「1000隻」の根拠となった。数日前から公安当局は浙江省や福建省の漁港で、漁船の操業準備の支援を進めていたという。

 17日夜には、中国の国営テレビ局「中国中央テレビ(CCTV)」が「中国漁船の到着は18日か19日になる見通し」と報じた。この時点で「10000隻」との情報さえあった。



■ 矛盾…漁民「これまでは行かなかった」

 中国外務省の洪磊(こうらい)報道官(43)は17日の定例記者会見で、尖閣諸島周辺海域を「中国伝統の漁場」だと述べ、例年通りの操業であることを強調した。

 だが、浙江省の漁民の一人は中国メディアの取材に対し「面倒を避けるため、これまでは基本的に釣魚島の辺りへ行かなかった」と話した。当局の説明と食い違いがある。

 中国浙江省から尖閣諸島までは約460キロ。日本の海上保安庁幹部は「燃料代を考えた場合、小型の漁船が尖閣まで来て漁をしても、利益を得られるか疑問だ」と首をかしげた。

 農林水産省によると、周辺海域で中国漁船が狙うのはアジやサバ、ウマヅラハギといった小型の魚。郡司彰農水相は「漁船が大挙して押し寄せるような漁場ということはない」との見方を示した。


■ 攻防…「ここは中国のEEZ内にある」 

 中国の海洋監視船と漁業監視船が、日本の領海の外側にある接続水域や領海そのものへ出入りを繰り返し始めた。第11管区海上保安本部(那覇)によると、18日に海保が領海へ入らないよう警告すると、漁業監視船は尖閣諸島について「中国固有の領土だ」と中国語で応答。「われわれは正当な業務を行っている。あなたたちはこの海域を離れてください」と逆に警告してきたという。

 海保は同じ18日、40ミリ機関砲を装備した高速高機能大型巡視船「あそ」を現場海域へ派遣するなど警備を強化。だが、20日には尖閣諸島の久場島に近い日本のEEZ(排他的経済水域)内で、漁業監視船2隻の乗組員が相次いで中国漁船に乗り込んだのを海上保安庁が確認した。

 「漁業に関する管轄権を行使しているのであれば、認めることはできない」

 海保の巡視船が無線などで警告すると、漁業監視船からはこう応答があった。

 「正当な業務を行っている。ここは中国のEEZ内にある」


■ 常套…南シナ海でも漁船を大量動員

 中国当局はベトナムやフィリピンなどと領有権を争う南シナ海でも、漁船を大量動員する手法を多用しており、いわば“常套手段”との指摘もある。

 南シナ海で中国は、南沙、西沙、中沙の3諸島を海南省の「三沙市」へ格上げするなど実効支配を強めている。今年4月にはフィリピン・マニラ沖の環礁で中国漁船が操業したのをきっかけに、中国とフィリピンの艦船が2カ月余りにらみ合う事態となった。

 拓殖大学の下條正男教授(日本史)は「南シナ海では、漁船団を派遣して既成事実を作ったことが実効支配につながった。東シナ海の尖閣諸島も決して対岸の火ではない」と危惧する。


■ 膠着…「釣魚島海域」、意図的に広く?


 共同通信によると、中国の通信社「中国新聞社」電子版は19日、「釣魚島から約230キロの海域で700隻余り、約110キロの海域で23隻の漁船が操業している」と初めて具体的に報じた。「多くは釣魚島の北側、一部は西側の海域で操業している」とし、700隻余りの大半は浙江省台州から、一部は同省温州からの漁船という。

 だが、「釣魚島から約230キロの海域」は浙江省と尖閣のほぼ中間に当たる。

 今回の動きを17日に最初に報じた国営ラジオ局、中国中央人民放送は、漁船団の到着見込み地点を「釣魚島海域」との表現で報道していた。中国新聞社の報道が正しいとすれば、国営ラジオ局は「釣魚島海域」の範囲を意図的に広く捉えた可能性もある。




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最終更新:2012年09月30日 18:53
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