遺。(後編) ◆T4jDXqBeas
ブルーはメロに駆け寄りながらも、恐らくは助からないと感じていた。
あれほどの戦闘経験者が追撃を掛けずに立ち去るのは──ブルーを見逃した事は不可解だが、
既に致命傷を与えているからに他ならない。
事実、近寄って見たメロの姿は致命傷を受けているようにしか見えなかった。
氷の刃は折れたのか貫通こそしていないものの、
丁度心臓の上の場所を正確に、真っ赤な血で染め上げていたのだから。
だからエヴァが飛び去った後でメロが不敵な笑みを浮かべても、理解できなかった。
「予想通り、焦っていやがる」
「え……?」
困惑の声を上げて、数瞬してから気付く。
エヴァがニケを助ける為にご褒美を求めているならば。
もう一人分の殺害予定を体育館に放置しているならば。
エヴァには“何か切り札が有るかもしれないブルーにまで戦いを挑む理由が無い”。
もちろんその可能性は低いが、何らかの支給品で足止めを喰らう可能性は否定できない。
それなら遠距離からメロに致命傷を与えただけで、近寄らずに退く事は、
一刻一秒を争う状況では妥当な判断だったと言えるだろう。
しかしメロのそれを見落とした事は明らかな失敗だった。
「ぐ……賭けに生き残った。それだけだ」
メロは胸元から、真っ赤に染まった布を取り去った。
あれほどの戦闘経験者が追撃を掛けずに立ち去るのは──ブルーを見逃した事は不可解だが、
既に致命傷を与えているからに他ならない。
事実、近寄って見たメロの姿は致命傷を受けているようにしか見えなかった。
氷の刃は折れたのか貫通こそしていないものの、
丁度心臓の上の場所を正確に、真っ赤な血で染め上げていたのだから。
だからエヴァが飛び去った後でメロが不敵な笑みを浮かべても、理解できなかった。
「予想通り、焦っていやがる」
「え……?」
困惑の声を上げて、数瞬してから気付く。
エヴァがニケを助ける為にご褒美を求めているならば。
もう一人分の殺害予定を体育館に放置しているならば。
エヴァには“何か切り札が有るかもしれないブルーにまで戦いを挑む理由が無い”。
もちろんその可能性は低いが、何らかの支給品で足止めを喰らう可能性は否定できない。
それなら遠距離からメロに致命傷を与えただけで、近寄らずに退く事は、
一刻一秒を争う状況では妥当な判断だったと言えるだろう。
しかしメロのそれを見落とした事は明らかな失敗だった。
「ぐ……賭けに生き残った。それだけだ」
メロは胸元から、真っ赤に染まった布を取り去った。
梨花の死体を舞台装置として機能させるために、梨花と、メロの体には布が被せられていた。
その布を適度な大きさに千切り、ニケの血に浸した物がそれだった。
メロの胸元を染めた真紅の血は、ニケが使っていた血溜まりの一片だ。
それによりメロは偽りの致命傷を演出した。
その布を適度な大きさに千切り、ニケの血に浸した物がそれだった。
メロの胸元を染めた真紅の血は、ニケが使っていた血溜まりの一片だ。
それによりメロは偽りの致命傷を演出した。
それだけではエヴァの魔法を受けて生き残る理由になりえない。
「氷の攻撃なら、掠める位なら耐え切れるだろうと思ってな」
メロが着ているローブは賢者のローブ。
高熱と冷気と暴風から着用者を守る魔法のローブだ。
加えてメロに氷の刃は直撃していなかった。
左肩と左脇腹と右膝を掠めてはいたが、ローブに守られていた事もあって深い傷ではない。
メロは生き残った。
「氷の攻撃なら、掠める位なら耐え切れるだろうと思ってな」
メロが着ているローブは賢者のローブ。
高熱と冷気と暴風から着用者を守る魔法のローブだ。
加えてメロに氷の刃は直撃していなかった。
左肩と左脇腹と右膝を掠めてはいたが、ローブに守られていた事もあって深い傷ではない。
メロは生き残った。
同時に、それでも不味い状況だと認識する。
命に別状は無くとも重なる傷は全身を消耗させている。
ようやく取れた睡眠も完全ではなく、疲労自体もかなりの物だ。
今も降り続く冷たく鋭い雨が傷に滲み込んで疲労を深くしている。
なにより手足に受けてきた傷が、不味い。
(左腕は殆ど動かず、指は三本だけ。左腕が動かないだけでも相当な痛手だ。
右手も縄抜けの際に抜いた親指が痛むな。握力はかなり下がっている。
物を掴んで運ぶ位は問題無いが、相手が一般人でも殴殺は厳しいだろう。
今受けた右足の傷も、深くは無いがさっさと応急処置をして逃げないとまずい。
右手でランドセルを掴んで来れたのは僥倖だが……クソ)
冷静に自分の状況を省みて、歯噛みする。
命に別状は無くとも重なる傷は全身を消耗させている。
ようやく取れた睡眠も完全ではなく、疲労自体もかなりの物だ。
今も降り続く冷たく鋭い雨が傷に滲み込んで疲労を深くしている。
なにより手足に受けてきた傷が、不味い。
(左腕は殆ど動かず、指は三本だけ。左腕が動かないだけでも相当な痛手だ。
右手も縄抜けの際に抜いた親指が痛むな。握力はかなり下がっている。
物を掴んで運ぶ位は問題無いが、相手が一般人でも殴殺は厳しいだろう。
今受けた右足の傷も、深くは無いがさっさと応急処置をして逃げないとまずい。
右手でランドセルを掴んで来れたのは僥倖だが……クソ)
冷静に自分の状況を省みて、歯噛みする。
舞台に転がっていたメロのランドセルは、目ぼしい物を殆ど抜き取られていた。
恐らく舞台まで持ってきた所で中身を検分したのだろう。
残っているのはバカルディや食料などを含む基本支給品だけだ。
弾だけで無意味だったとはいえ弾丸は当然抜き取られたし、救急箱や薬品の類も無い。
チャチャゼロを失ったのも痛手だ。
恐らくは倉庫の方に転がったままなのだろう。
恐らく舞台まで持ってきた所で中身を検分したのだろう。
残っているのはバカルディや食料などを含む基本支給品だけだ。
弾だけで無意味だったとはいえ弾丸は当然抜き取られたし、救急箱や薬品の類も無い。
チャチャゼロを失ったのも痛手だ。
恐らくは倉庫の方に転がったままなのだろう。
加えて、急いでここを離れる必要が有る。
エヴァをやり過ごす事が出来たとはいえ、彼女はご褒美を呼ぶはずなのだ。
数分もしない内にメロが生きている事が露呈してしまう。
エヴァをやり過ごす事が出来たとはいえ、彼女はご褒美を呼ぶはずなのだ。
数分もしない内にメロが生きている事が露呈してしまう。
「メロ、急いでここを離れなきゃ」
「判っている。肩を貸せ。手当てをすれば治る程度だが、足が痛む」
「え。ええ、判ったわ」
すぐさまブルーが近づき、メロの右肩を下から抱え込む。
メロはブルーの肩を借りて歩き出す。
泥水を跳ねながら、歩いていく。
この場から離れていく。
急ぎ、思考をめぐらせながら。
今すぐに、とても重要な事を決めなければならないのだ。
「判っている。肩を貸せ。手当てをすれば治る程度だが、足が痛む」
「え。ええ、判ったわ」
すぐさまブルーが近づき、メロの右肩を下から抱え込む。
メロはブルーの肩を借りて歩き出す。
泥水を跳ねながら、歩いていく。
この場から離れていく。
急ぎ、思考をめぐらせながら。
今すぐに、とても重要な事を決めなければならないのだ。
ブルーを殺すかどうかを決めなければならない。
(肩を貸してもらうのも賭けだったが、咄嗟に切り捨てられはしなかったか。
だろうな。
身を挺して自分を守ってくれる人間だと判断したなら、この状態でも俺はまだ有用だ。
ブルーには俺を切り捨てるかどうか、ゆっくりと考える時間が有る。
そして俺にとってもブルーは有用……そう、ただ有用なだけだ。
感情は、抑え込める。
抑え込めなければならない)
媚薬によるブルーへの慕情はまだ存続している。
なにせメロは、今回の危機に当たって二度もブルーを助けているのだ。
どちらも自分の為に繋がる行為であったが、それだけと断言する事はメロ自身にも出来ない。
だが。
それでも、どうしても必要ならば、メロはブルーを切り捨てられる。
ニアを出し抜いてLを超えるためならば。
だろうな。
身を挺して自分を守ってくれる人間だと判断したなら、この状態でも俺はまだ有用だ。
ブルーには俺を切り捨てるかどうか、ゆっくりと考える時間が有る。
そして俺にとってもブルーは有用……そう、ただ有用なだけだ。
感情は、抑え込める。
抑え込めなければならない)
媚薬によるブルーへの慕情はまだ存続している。
なにせメロは、今回の危機に当たって二度もブルーを助けているのだ。
どちらも自分の為に繋がる行為であったが、それだけと断言する事はメロ自身にも出来ない。
だが。
それでも、どうしても必要ならば、メロはブルーを切り捨てられる。
ニアを出し抜いてLを超えるためならば。
メロは自分が決して理性的な人間ではない事を理解している。
メロが持つ殆どの動機の根幹は、ニアへの対抗心によるものだ。
ニアを超えなければ、メロはLに届かない。
羨望か、嫉妬か、嫌悪か。
向上心か、虚栄心か、名誉欲か。
何にせよそれは、メロの全てと言っても良い。
その為ならば、家族や恋人でも切り捨て“なければならない”と考える。
メロが持つ殆どの動機の根幹は、ニアへの対抗心によるものだ。
ニアを超えなければ、メロはLに届かない。
羨望か、嫉妬か、嫌悪か。
向上心か、虚栄心か、名誉欲か。
何にせよそれは、メロの全てと言っても良い。
その為ならば、家族や恋人でも切り捨て“なければならない”と考える。
だからメロはじっくりと考えた末に必要であれば、慕情さえも押し込めて。
ブルーを、殺せる。
今ここで三人目の殺害によりご褒美を貰う必要が有ると考えたならば、ブルーを殺せる。
最初に殺した大柄な少年に火事の現場に放置し放送で呼ばれた江戸川コナンを含めれば、
次の殺害でご褒美がもらえるのだ。
ブルーを、殺せる。
今ここで三人目の殺害によりご褒美を貰う必要が有ると考えたならば、ブルーを殺せる。
最初に殺した大柄な少年に火事の現場に放置し放送で呼ばれた江戸川コナンを含めれば、
次の殺害でご褒美がもらえるのだ。
殺害方法は容易い。
今メロが肩を借りている……つまりメロの腕の中に有るブルーの首を、抱き締めて。
絞めれば良い。
右手の握力は落ちているが、腕力への影響は無い。
ある程度は鍛え抜かれたメロの膂力なら、片腕でも女子供くらいは絞め落とせる。
風の剣を展開されると不味いが、絞めに入ってからなら勝算は十分に有る。
奇襲と呼吸困難による混乱から立ち直るのは難しいからだ。
それこそ絞めに入った時点で腕に握られてでもいなければ七割、いや八割方は殺せるだろう。
今メロが肩を借りている……つまりメロの腕の中に有るブルーの首を、抱き締めて。
絞めれば良い。
右手の握力は落ちているが、腕力への影響は無い。
ある程度は鍛え抜かれたメロの膂力なら、片腕でも女子供くらいは絞め落とせる。
風の剣を展開されると不味いが、絞めに入ってからなら勝算は十分に有る。
奇襲と呼吸困難による混乱から立ち直るのは難しいからだ。
それこそ絞めに入った時点で腕に握られてでもいなければ七割、いや八割方は殺せるだろう。
そうしてブルーを殺せば、ご褒美で傷を治す事が出来る。
全身の消耗を回復して両腕も万全にすれば、行動の選択肢はかなり広がる。
ブルーを殺すメリットは他にもある。
ここまで負傷が重なったメロは何時ブルーに切り捨てられてもおかしくない存在だ。
安全の確保という意味でも、メロにはブルーを殺すメリットが存在している。
リスクとリターン。
メリットとデメリット。
メロは考えに考えて。
ニアを超える為にどうするかを決めた。
全身の消耗を回復して両腕も万全にすれば、行動の選択肢はかなり広がる。
ブルーを殺すメリットは他にもある。
ここまで負傷が重なったメロは何時ブルーに切り捨てられてもおかしくない存在だ。
安全の確保という意味でも、メロにはブルーを殺すメリットが存在している。
リスクとリターン。
メリットとデメリット。
メロは考えに考えて。
ニアを超える為にどうするかを決めた。
「ブルー。そろそろ、良いだろう」
さっきの場所からは十分に離れていた。
エヴァが追撃に出てきても、足跡が消え視界も悪い豪雨の中での捜索は困難だろう。
事を起こすなら、今だ。
だからメロは、言った。
「さっさとやれ。その手に握った風の剣でな」
「なっ!?」
さっきの場所からは十分に離れていた。
エヴァが追撃に出てきても、足跡が消え視界も悪い豪雨の中での捜索は困難だろう。
事を起こすなら、今だ。
だからメロは、言った。
「さっさとやれ。その手に握った風の剣でな」
「なっ!?」
ブルーの手には自らの首に巻きつくマフラーの一端が握られていた。
即ち風の剣の一端だ。
ブルーは既に、メロを殺す為の凶器を握り締めていた。
即ち風の剣の一端だ。
ブルーは既に、メロを殺す為の凶器を握り締めていた。
「ち、違うわよ、メロ、これは……」
メロを放り出してあとずさるブルー。
その瞳に浮かぶのは激しい迷いと、動乱。
ブルーはメロを殺すかどうか迷っている。
メロを放り出してあとずさるブルー。
その瞳に浮かぶのは激しい迷いと、動乱。
ブルーはメロを殺すかどうか迷っている。
一方のメロは放り出されて泥水に膝を付く。
前のめりに倒れそうになり、辛うじて右手をついた。
親指が、痛んだ。
泥飛沫が舞った。
前のめりに倒れそうになり、辛うじて右手をついた。
親指が、痛んだ。
泥飛沫が舞った。
メロは仰向けに倒れ込む。
木々の枝を抜けてくる冷たい雨に顔を打たれながら、ブルーの姿を見上げる。
借りていた肩を避けられれば地に叩きつけられる程に、今のメロは弱かった。
「言い訳は不要だ」
それでも言い訳はせず、させない。
迷うブルーを説き伏せようともせず、逆に言葉で畳み掛けていく。
「俺を殺す気なんだろう? いいだろう、殺せ」
ブルーよりメロにとって有り得ないはずの選択肢へと追い込みを掛ける。
「おまえになら託せるからな」
「託す……?」
メロは断言する。
ブルーの心情を、自らの言葉で定義する。
ああと頷いて、宣言した。
「おまえは信頼できる女だ」
木々の枝を抜けてくる冷たい雨に顔を打たれながら、ブルーの姿を見上げる。
借りていた肩を避けられれば地に叩きつけられる程に、今のメロは弱かった。
「言い訳は不要だ」
それでも言い訳はせず、させない。
迷うブルーを説き伏せようともせず、逆に言葉で畳み掛けていく。
「俺を殺す気なんだろう? いいだろう、殺せ」
ブルーよりメロにとって有り得ないはずの選択肢へと追い込みを掛ける。
「おまえになら託せるからな」
「託す……?」
メロは断言する。
ブルーの心情を、自らの言葉で定義する。
ああと頷いて、宣言した。
「おまえは信頼できる女だ」
困惑。そして惑乱。
理解できない。
まるで意味の通じない言葉の連なり。
ブルーは問うた。
「それが、今から自分を殺そうとする女に向ける言葉?」
首肯が返る。
それが確かな事がと知っている、そんな頷きが。
「確かにおまえは信用できる女じゃない。きっぱりと悪女だろうよ」
「なら、どうして」
見つめる視線。返る視線。
内に秘められた、量れない意思。
ブルーにはメロが何を考えているかわからない。
同じように、メロにはブルーが信じられる人間かなんてわからないはずだった。
それなのに。
「おまえは人を裏切ることができる女だ。
親しい人間にさえ嘘を吐き、翻弄することができる女だ。
騙り、偽り、謀り、誤魔化し利用して陥れることができる女だ。
化かす女だ。
なのに、想いを裏切ることだけはできない」
メロは言い放つ。
ブルーの内に秘められた本質を。
「だからおまえは、信頼できる女だ」
理解できない。
まるで意味の通じない言葉の連なり。
ブルーは問うた。
「それが、今から自分を殺そうとする女に向ける言葉?」
首肯が返る。
それが確かな事がと知っている、そんな頷きが。
「確かにおまえは信用できる女じゃない。きっぱりと悪女だろうよ」
「なら、どうして」
見つめる視線。返る視線。
内に秘められた、量れない意思。
ブルーにはメロが何を考えているかわからない。
同じように、メロにはブルーが信じられる人間かなんてわからないはずだった。
それなのに。
「おまえは人を裏切ることができる女だ。
親しい人間にさえ嘘を吐き、翻弄することができる女だ。
騙り、偽り、謀り、誤魔化し利用して陥れることができる女だ。
化かす女だ。
なのに、想いを裏切ることだけはできない」
メロは言い放つ。
ブルーの内に秘められた本質を。
「だからおまえは、信頼できる女だ」
そう言って、メロは託す。
自らの想いを。
「俺の想いを託すに足る女だ」
自らの想いを。
「俺の想いを託すに足る女だ」
わからない。
ブルーにはわからない。
風の剣を握る手が震えているのは寒いからだろうか。
それとも、怖いからだろうか。
(多分、怖いからだ)
そう理解する。
ブルーは彼の知恵を、洞察を、意思を恐れている。
刃を振り下ろす勇気さえも。
その後に再び歩き出す強ささえも危うく思えるほどに、圧倒されている。
ブルーにはわからない。
風の剣を握る手が震えているのは寒いからだろうか。
それとも、怖いからだろうか。
(多分、怖いからだ)
そう理解する。
ブルーは彼の知恵を、洞察を、意思を恐れている。
刃を振り下ろす勇気さえも。
その後に再び歩き出す強ささえも危うく思えるほどに、圧倒されている。
「俺の目的は、俺の打った手がニアのそれよりも早くジェダの牙城を打ち崩すことだ。
だから俺はおまえに託すと言っている。
おまえに、俺のやったような事をやれとな」
だから、メロの言葉を返せない。
まるで染み入るように染み込んでいく。
ブルーを規定してしまうメロの言葉が入ってくる。
「足手まといは殺してもいい。もちろん邪魔な奴もだ。
親しい奴だろうと、自分を慕う奴だろうと関係無い。
手段は選ばず、だが俺の目的を継いでくれ。
俺を殺してな」
その言葉はこれから殺される人間とは思えないほどに力強くて。
思わず、ブルーは呟いた。
「……できないわよ、そんなの」
小さな弱音を吐いていた。
だから俺はおまえに託すと言っている。
おまえに、俺のやったような事をやれとな」
だから、メロの言葉を返せない。
まるで染み入るように染み込んでいく。
ブルーを規定してしまうメロの言葉が入ってくる。
「足手まといは殺してもいい。もちろん邪魔な奴もだ。
親しい奴だろうと、自分を慕う奴だろうと関係無い。
手段は選ばず、だが俺の目的を継いでくれ。
俺を殺してな」
その言葉はこれから殺される人間とは思えないほどに力強くて。
思わず、ブルーは呟いた。
「……できないわよ、そんなの」
小さな弱音を吐いていた。
ブルーが自ら決意したのであれば別だったかもしれない。
自ら殺害を心に決めていたのであれば。
だけどメロから向けられた遺言で逆に、揺らいでしまった。
最初の出会いの時からメロに感じていた敗北感が、圧倒的な迫力を見せ始める。
意のままに操れば。あるいは殺せば、メロを乗り越えられると思っていた。
だが、大きな過ちだった。
実際にメロが、その慕情から命がけでブルーを守り、命すら差し出してきた時、思ったのだ。
自ら殺害を心に決めていたのであれば。
だけどメロから向けられた遺言で逆に、揺らいでしまった。
最初の出会いの時からメロに感じていた敗北感が、圧倒的な迫力を見せ始める。
意のままに操れば。あるいは殺せば、メロを乗り越えられると思っていた。
だが、大きな過ちだった。
実際にメロが、その慕情から命がけでブルーを守り、命すら差し出してきた時、思ったのだ。
メロを殺した後、自分はどうするのだろうか、と。
メロの遺言を無視して自分だけの為に生きることはできない。
それは解くことのできない呪いを生涯背負って生かされるようなものだ。
だが、メロの遺言に従い彼を継ぐ事などできるのだろうか?
殺意すらもメロに握られたこの有様で。
ブルーは堂々巡りの迷路に嵌る。
そんなブルーに。
「殺せ」
「できない」
「やれ。何なら酒の勢いに頼ってでも、踏み出せ」
メロは一本のボトルを取り出していた。
それは解くことのできない呪いを生涯背負って生かされるようなものだ。
だが、メロの遺言に従い彼を継ぐ事などできるのだろうか?
殺意すらもメロに握られたこの有様で。
ブルーは堂々巡りの迷路に嵌る。
そんなブルーに。
「殺せ」
「できない」
「やれ。何なら酒の勢いに頼ってでも、踏み出せ」
メロは一本のボトルを取り出していた。
バカルディ・ラム。
約八十度というかなりきつめのアルコール度数は、
ストレートで飲めば喉を焼くと共に理性をも焼くだろう。
メロはそれを軽く呷ってから、ブルーへと放った。
「飲め」
ブルーはそれを受け取り、戸惑い、躊躇いながらも。
それに、口を付けた。
ストレートで飲めば喉を焼くと共に理性をも焼くだろう。
メロはそれを軽く呷ってから、ブルーへと放った。
「飲め」
ブルーはそれを受け取り、戸惑い、躊躇いながらも。
それに、口を付けた。
初めて味わう高濃度のアルコールは、思ったより軽やかな味で喉を流れ落ちていった。
少し生っぽい泡を感じた気がして、だけどそれを気に留める暇もなく。
次の瞬間、腹にカッと火がついた。
「っ」
灼熱感とでもいうべき感覚。
戦いの中で炎に焼かれる痛みじみた熱さとは全く違う、なのに火に灼かれると表現すべき熱さ。
喉も胃も焼けるようだった。
ブルーは自分の支給品の水と噛み砕いた食料で喉を濯ぐ。
ストレートのバカルディは子供の体で飲みすぎれば酔い潰れてしまいかねない。
やがて少しずつ、酔いが回っていく。
気持ちが大胆になっていく。
「おさらいだ、ブルー。Q-Beeについての仮説は覚えているな?」
恐らく二人で考察を交わすのも最後なのだろう。
殺害と違ってこの行為に抵抗は無い。だから、素直に言葉が出てきた。
「ええ。あの復活劇は逆にQ-Beeの重要性を証明したって話でしょう。
次にすべき事は、Q-Beeを殺害した参加者を捜して情報を得ること」
「その通りだ。その参加者の居所についても考えてみたが、幾つか限定できる。
まずあの映像において、Q-Beeの死体は抉れた地面に転がっていたが、
あの地面にはアスファルトの破片が混じっていた」
流石、という感想が過ぎる。
つまりQ-Beeが殺されたのは、どこか道路が張り巡らされている場所だ。
「でもそれだけじゃ、殆ど島の全域よ? 何処を目指せばいいの?」
「砕けた地面について考えろ。
あの地面は元々砕けていた可能性も有るが、強力な攻撃で、
路面ごとQ-Beeの頭部から下を吹き飛ばした──そう考えても辻褄が合う」
「それがどういう……ああ、そういう事」
そういった攻撃は得てして轟音を伴う。
強力な爆弾を炸裂させたようなものだ。
ブルーの知識なら、マルマインの大爆発を一斉に炸裂させたようなものだろう。
「この近辺の奴じゃない。少なくともあの小坊主を殺した厄種の仕業じゃない。
それから、確率の話だが森の中や平地といった“移動中の道路”である可能性は低い」
これもブルーは理解した。
むしろブルーの得意とする領域の話だ。
戦場が開けた場所であれば、立ち回りによって狭い道路から外に移動する可能性は高い。
森の中ならば特に、遮蔽物を利用した戦いに持ち込むのは必然と言っても良い。
Q-Beeが殺されたのは恐らく市街地。
北東か、南西か、南東の廃墟か。
「八度目の使いという所からして、時間的には遅い時間帯のはずだがな。
夕方の六時時点でご褒美は四度だと言った。
その時点で一人~二人の殺害分が残っているとはいえ、半分よりは後だろう。
九時以降というところか。
夜遅く、轟音の響く戦いが起きた街で、誰かが、Q-Beeを殺した」
少し生っぽい泡を感じた気がして、だけどそれを気に留める暇もなく。
次の瞬間、腹にカッと火がついた。
「っ」
灼熱感とでもいうべき感覚。
戦いの中で炎に焼かれる痛みじみた熱さとは全く違う、なのに火に灼かれると表現すべき熱さ。
喉も胃も焼けるようだった。
ブルーは自分の支給品の水と噛み砕いた食料で喉を濯ぐ。
ストレートのバカルディは子供の体で飲みすぎれば酔い潰れてしまいかねない。
やがて少しずつ、酔いが回っていく。
気持ちが大胆になっていく。
「おさらいだ、ブルー。Q-Beeについての仮説は覚えているな?」
恐らく二人で考察を交わすのも最後なのだろう。
殺害と違ってこの行為に抵抗は無い。だから、素直に言葉が出てきた。
「ええ。あの復活劇は逆にQ-Beeの重要性を証明したって話でしょう。
次にすべき事は、Q-Beeを殺害した参加者を捜して情報を得ること」
「その通りだ。その参加者の居所についても考えてみたが、幾つか限定できる。
まずあの映像において、Q-Beeの死体は抉れた地面に転がっていたが、
あの地面にはアスファルトの破片が混じっていた」
流石、という感想が過ぎる。
つまりQ-Beeが殺されたのは、どこか道路が張り巡らされている場所だ。
「でもそれだけじゃ、殆ど島の全域よ? 何処を目指せばいいの?」
「砕けた地面について考えろ。
あの地面は元々砕けていた可能性も有るが、強力な攻撃で、
路面ごとQ-Beeの頭部から下を吹き飛ばした──そう考えても辻褄が合う」
「それがどういう……ああ、そういう事」
そういった攻撃は得てして轟音を伴う。
強力な爆弾を炸裂させたようなものだ。
ブルーの知識なら、マルマインの大爆発を一斉に炸裂させたようなものだろう。
「この近辺の奴じゃない。少なくともあの小坊主を殺した厄種の仕業じゃない。
それから、確率の話だが森の中や平地といった“移動中の道路”である可能性は低い」
これもブルーは理解した。
むしろブルーの得意とする領域の話だ。
戦場が開けた場所であれば、立ち回りによって狭い道路から外に移動する可能性は高い。
森の中ならば特に、遮蔽物を利用した戦いに持ち込むのは必然と言っても良い。
Q-Beeが殺されたのは恐らく市街地。
北東か、南西か、南東の廃墟か。
「八度目の使いという所からして、時間的には遅い時間帯のはずだがな。
夕方の六時時点でご褒美は四度だと言った。
その時点で一人~二人の殺害分が残っているとはいえ、半分よりは後だろう。
九時以降というところか。
夜遅く、轟音の響く戦いが起きた街で、誰かが、Q-Beeを殺した」
確信を持ったメロの言葉。
ブルーは何度も流石だと身につまされる。
情報収集力と相手の裏をかく力には自信が有ったブルーだが、
その二つはともかく情報分析力においてはメロが圧倒的に上回る。
メロとブルーはしばらく言葉を交わす。
情報を纏めていく。
ブルーは何度も流石だと身につまされる。
情報収集力と相手の裏をかく力には自信が有ったブルーだが、
その二つはともかく情報分析力においてはメロが圧倒的に上回る。
メロとブルーはしばらく言葉を交わす。
情報を纏めていく。
ブルーが何を選択したのか。
それがどちらであったにせよ、メロにとっての問題にはなりえない。
何故ならブルーの選択の如何に関わらず、メロの意思は続くからだ。
それがどちらであったにせよ、メロにとっての問題にはなりえない。
何故ならブルーの選択の如何に関わらず、メロの意思は続くからだ。
ブルーがメロを殺せなかった場合の理由は言うまでも無い。
数時間後にブルーの中で膨れ上がる『メロへの慕情』が掻き消えたとしても、
その頃にはメロの広く浅い傷と消耗もマシになり、切り捨てられる理由はなくなる。
メロからブルーへの想いも醒めているだろう。
メロは再び優位に立つ。
何よりそれまでの間、彼女の愛を受けられるというのは好ましい。
今、この瞬間のメロは、ブルーを愛し、穢し、貪り尽くしたいとすら想っているのだから。
メロにとってこちらの結果が最良である事は語るまでも無かった。
数時間後にブルーの中で膨れ上がる『メロへの慕情』が掻き消えたとしても、
その頃にはメロの広く浅い傷と消耗もマシになり、切り捨てられる理由はなくなる。
メロからブルーへの想いも醒めているだろう。
メロは再び優位に立つ。
何よりそれまでの間、彼女の愛を受けられるというのは好ましい。
今、この瞬間のメロは、ブルーを愛し、穢し、貪り尽くしたいとすら想っているのだから。
メロにとってこちらの結果が最良である事は語るまでも無かった。
だがしかし、それが叶わなかったとしても。
メロを殺せばブルーはその死に呪縛される。
例えしばらくして『膨れ上がるメロへの慕情』が掻き消えたとしても、
それまでにブルーは行動方針を確たる物にしているだろう。
ちょっとしたきっかけの一つが失われても既に歩き出しているはずだ。
死者への問いが解決する事は無い。
メロの意思は託される。
その成果を自分で確認できない事は悔しいが、ブルーが上手くやる確率はまあまあだろう。
既に武器を握り締めていたブルー相手にこれならば、上々と言っても良かった。
メロを殺せばブルーはその死に呪縛される。
例えしばらくして『膨れ上がるメロへの慕情』が掻き消えたとしても、
それまでにブルーは行動方針を確たる物にしているだろう。
ちょっとしたきっかけの一つが失われても既に歩き出しているはずだ。
死者への問いが解決する事は無い。
メロの意思は託される。
その成果を自分で確認できない事は悔しいが、ブルーが上手くやる確率はまあまあだろう。
既に武器を握り締めていたブルー相手にこれならば、上々と言っても良かった。
切った札は媚薬入りのバカルディ・ラム。
メロが口を付けた水と同じ、最初から封を開けられていた飲料。
メロはそれがそうであるという確証さえなかった。
ただ、ブルーが既に武器を握り締めていた以上ブルーの殺害はありえなかった。
ブルーに殺されない手段としても追い込む方が確率としては高かったし、
ブルーに託して現状の散々なメロより上手くやってくれる見込みはそれなりに有った。
メロは既に、ブルーに対して勝利していた。
メロはそれがそうであるという確証さえなかった。
ただ、ブルーが既に武器を握り締めていた以上ブルーの殺害はありえなかった。
ブルーに殺されない手段としても追い込む方が確率としては高かったし、
ブルーに託して現状の散々なメロより上手くやってくれる見込みはそれなりに有った。
メロは既に、ブルーに対して勝利していた。
メロとブルーの視線は絡み合い、そして。
* * *
「私はもう、光の側へは戻らん」
感情を押し殺した吸血鬼エヴァンジェリンの言葉が、淡々と闇に響いた。
それはニケの死も、想いも、全てを踏み躙る言葉に思えた。
とても残酷な答えだと。
だから蒼星石は抗った。
「──それで、いいの?」
手も。
足も。
仮初めの仲間も。
生きうる見込みも。
全てを奪われたって、それでも。
「彼は、それじゃダメって言ったじゃないか」
ニケは怯まなかった。
身動きも取れず死にゆく身でさえ、己の意思を貫き通した。
蒼星石は思う。
それはニケの死も、想いも、全てを踏み躙る言葉に思えた。
とても残酷な答えだと。
だから蒼星石は抗った。
「──それで、いいの?」
手も。
足も。
仮初めの仲間も。
生きうる見込みも。
全てを奪われたって、それでも。
「彼は、それじゃダメって言ったじゃないか」
ニケは怯まなかった。
身動きも取れず死にゆく身でさえ、己の意思を貫き通した。
蒼星石は思う。
勇気ある者とは彼のようなものを言うのだろう。
だから想う。
自分のためではなく彼のために、何かをしてやりたいと。
蒼星石は元より、自分の為に動くのは性に合わない。
善い事の為でも、悪い事の為でもなくて、誰かを進ませる為に何かを為したかった。
エヴァはそんな蒼星石を見下ろして。
蔑むように、哀れむように、嗤った。
「蒼星石。ククリの話にはまだ続きが有るのだろう?」
「………………」
自分のためではなく彼のために、何かをしてやりたいと。
蒼星石は元より、自分の為に動くのは性に合わない。
善い事の為でも、悪い事の為でもなくて、誰かを進ませる為に何かを為したかった。
エヴァはそんな蒼星石を見下ろして。
蔑むように、哀れむように、嗤った。
「蒼星石。ククリの話にはまだ続きが有るのだろう?」
「………………」
見抜かれていた。
蒼星石は仕方なく、しかし構わない事だと受け入れて頷く。
ニケに隠し通せたのだから、隠し続ける理由はもう無い。
「彼に告げた通りだよ。
ククリさんは何人もの仲間に守られて、北東の街の旅館に居た。
温泉も有るところだった──だけど。
僕が見た時、旅館は既に破壊されて、ククリさんは僕の姉妹に殺されていたんだ」
沈痛な結末にエヴァはやはりかと頷いた。
全てではなくとも、その死は予想の内に有ったのだろう。
「おまえの姉妹は人殺しで、おまえも人を殺す生き方に手を貸した。
相方に裏切られてそうなっているのはおまえの正しさではない。
ただの弱さだ。
おまえが悪としても半端だったという、それだけの結果にすぎん」
辛辣な言葉に、蒼星石は頷く。
けれど食い下がった。
「そうだ。僕はもう、何にもならないものになってしまった。
だからこんな話を僕がするのは幾らでも笑ってくれていい。
全てが、自業自得なんだから。
でも君はそうじゃない、エヴァンジェリン」
返るのはせせら笑いだけ。
それでも蒼星石には懸命に言葉を重ねることしかできない。
「ニケ君は君に、帰ってこいって言ったじゃないか。
それなら君は帰ることができるはずだ。
例え彼が死んでしまっても、彼は帰る道を示したんじゃないか」
蒼星石は仕方なく、しかし構わない事だと受け入れて頷く。
ニケに隠し通せたのだから、隠し続ける理由はもう無い。
「彼に告げた通りだよ。
ククリさんは何人もの仲間に守られて、北東の街の旅館に居た。
温泉も有るところだった──だけど。
僕が見た時、旅館は既に破壊されて、ククリさんは僕の姉妹に殺されていたんだ」
沈痛な結末にエヴァはやはりかと頷いた。
全てではなくとも、その死は予想の内に有ったのだろう。
「おまえの姉妹は人殺しで、おまえも人を殺す生き方に手を貸した。
相方に裏切られてそうなっているのはおまえの正しさではない。
ただの弱さだ。
おまえが悪としても半端だったという、それだけの結果にすぎん」
辛辣な言葉に、蒼星石は頷く。
けれど食い下がった。
「そうだ。僕はもう、何にもならないものになってしまった。
だからこんな話を僕がするのは幾らでも笑ってくれていい。
全てが、自業自得なんだから。
でも君はそうじゃない、エヴァンジェリン」
返るのはせせら笑いだけ。
それでも蒼星石には懸命に言葉を重ねることしかできない。
「ニケ君は君に、帰ってこいって言ったじゃないか。
それなら君は帰ることができるはずだ。
例え彼が死んでしまっても、彼は帰る道を示したんじゃないか」
買えたのは少しの疑問だけ。
エヴァは蒼星石に問いかけた。
「おまえは何のために殺し合いに乗ったのだ」
「優勝者に与えられる願い事でみんなを生き返らせて、全て無かった事にするために」
エヴァはそれが可能であるか不可能であるかを問おうとは思わなかった。
優勝の見込みも、ジェダがそこまでの願いを叶えるどうかも問おうとはしなかった。
「復活が存在する事は間違いない。僕は修復された体に呼び戻されてここに在る。
他にも復活の魔法が存在する世界から連れて来られた人は居る」
「そうか。それで?」
ただ、問うた。
蒼星石は答えた。
「だけど、殺して、殺しあって、殺されて。
嫉み、怨み、憎み、怒り、嘆いて。
そんな想いを抱いたまま、全てを無かった事にする事なんてできないんだ。
例え蘇ったとしても、その死が呼ぶ妄執は心の樹に絡みつく。
どうしようもなくなった後で、ようやく気付いた。
例えどんな理由で、何をして戦うにしたって。
歪んだ想いを、歪んだまま果たしちゃいけなかったんだ」
「そうか」
エヴァはその言葉をただ、聴き。
そして、
「だが」
言った。
「正しさの結末が奴の死だ!!」
まるで全ての想いを吐き出すように。
エヴァは蒼星石に問いかけた。
「おまえは何のために殺し合いに乗ったのだ」
「優勝者に与えられる願い事でみんなを生き返らせて、全て無かった事にするために」
エヴァはそれが可能であるか不可能であるかを問おうとは思わなかった。
優勝の見込みも、ジェダがそこまでの願いを叶えるどうかも問おうとはしなかった。
「復活が存在する事は間違いない。僕は修復された体に呼び戻されてここに在る。
他にも復活の魔法が存在する世界から連れて来られた人は居る」
「そうか。それで?」
ただ、問うた。
蒼星石は答えた。
「だけど、殺して、殺しあって、殺されて。
嫉み、怨み、憎み、怒り、嘆いて。
そんな想いを抱いたまま、全てを無かった事にする事なんてできないんだ。
例え蘇ったとしても、その死が呼ぶ妄執は心の樹に絡みつく。
どうしようもなくなった後で、ようやく気付いた。
例えどんな理由で、何をして戦うにしたって。
歪んだ想いを、歪んだまま果たしちゃいけなかったんだ」
「そうか」
エヴァはその言葉をただ、聴き。
そして、
「だが」
言った。
「正しさの結末が奴の死だ!!」
まるで全ての想いを吐き出すように。
「正義は、弱い」
煮え滾る言葉。
その怒りの言葉は何故か、敗北者の如き苦渋に満ちた声で紡がれていた。
「手を汚さず、足を泥に沈めずに何が出来る。
汚れる事を怖れず襲ってくる相手にどう抗う!?
抗えはしない! ならばっ」
いや、きっとそうなのだろう。
彼女は。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは。
「誰かが全ての罪を背負って往かねばならんのだっ」
死という終着に向けて歩いていたのだから。
沈黙が横たわる。
雨の音がただただ響き続けている。
その怒りの言葉は何故か、敗北者の如き苦渋に満ちた声で紡がれていた。
「手を汚さず、足を泥に沈めずに何が出来る。
汚れる事を怖れず襲ってくる相手にどう抗う!?
抗えはしない! ならばっ」
いや、きっとそうなのだろう。
彼女は。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは。
「誰かが全ての罪を背負って往かねばならんのだっ」
死という終着に向けて歩いていたのだから。
沈黙が横たわる。
雨の音がただただ響き続けている。
「君は……まさか……」
エヴァの言葉を噛み締めると共に、蒼星石は理解しつつあった。
彼女が何に対して怒っていたのか。
ニケが言ったように、どんな理由であれ。
それが他の殺害者を減らしたり誰かを助けるためであれ、人を傷つければ怨み憎しみが生まれる。
傷つけられた者が苦しみ、被害者とその仲間が加害者を怨むだけに留まらず、
加害者も苦しみ、その仲間と加害者の絆さえも危うくなる。
それこそが負の連鎖だ。
断ち切れない悪夢の侵蝕だ。
「正しさを拠り所にすれば罪は皆に降り注ぐ。
それを悪いとは思わんが、勝手な都合を押し付けるつもりも無い。
ならば私は、悪を往こう」
エヴァの言葉を噛み締めると共に、蒼星石は理解しつつあった。
彼女が何に対して怒っていたのか。
ニケが言ったように、どんな理由であれ。
それが他の殺害者を減らしたり誰かを助けるためであれ、人を傷つければ怨み憎しみが生まれる。
傷つけられた者が苦しみ、被害者とその仲間が加害者を怨むだけに留まらず、
加害者も苦しみ、その仲間と加害者の絆さえも危うくなる。
それこそが負の連鎖だ。
断ち切れない悪夢の侵蝕だ。
「正しさを拠り所にすれば罪は皆に降り注ぐ。
それを悪いとは思わんが、勝手な都合を押し付けるつもりも無い。
ならば私は、悪を往こう」
エヴァはニケに言われるまでもなく理解していた。
例えば高町なのはなどは、そうやって孤立した末に迷走したのだろう。
ヴィータを殺さずに止めた時は賞賛したが、やはりあれは、
(あの娘は罪を背負うべきではなかったのだ)
叶うならば、エヴァが行いたかった。
あの時のエヴァにはその余力が無くて、ヴィータを殺すことが出来なかった。
だからそれを殺さずにしてのけた高町なのはを賞賛すらした。
彼女は悪を背負えるのだと信じて。
もしもエヴァが行えていれば、高町なのはがあんな姿になる事はなかっただろう。
そう思うと、胸が痛んだ。
例えば高町なのはなどは、そうやって孤立した末に迷走したのだろう。
ヴィータを殺さずに止めた時は賞賛したが、やはりあれは、
(あの娘は罪を背負うべきではなかったのだ)
叶うならば、エヴァが行いたかった。
あの時のエヴァにはその余力が無くて、ヴィータを殺すことが出来なかった。
だからそれを殺さずにしてのけた高町なのはを賞賛すらした。
彼女は悪を背負えるのだと信じて。
もしもエヴァが行えていれば、高町なのはがあんな姿になる事はなかっただろう。
そう思うと、胸が痛んだ。
古手梨花の殺害から、エヴァは悪に生きて散る事を決めた。
これまで歩いてきた道を、命尽きるまで走り果てる事を選んだ。
光に住まう者達が愛しいから、護りたい。
もう、誰もこちら側──闇側に堕ちる必要など無い。
あらゆる罪は一切合切エヴァが背負い、悪の代表として正義の前に果てるのだ。
たった一人、誰も道連れにすること無く。
それがエヴァの胸に燈る最期の望みだ。
これまで歩いてきた道を、命尽きるまで走り果てる事を選んだ。
光に住まう者達が愛しいから、護りたい。
もう、誰もこちら側──闇側に堕ちる必要など無い。
あらゆる罪は一切合切エヴァが背負い、悪の代表として正義の前に果てるのだ。
たった一人、誰も道連れにすること無く。
それがエヴァの胸に燈る最期の望みだ。
エヴァは哀切と共に床に横たわるニケの遺骸へと視線を下ろす。
(おまえが死んでどうするのだ、ニケ)
正義の味方は他にも居る。
あの工場に居た、リンクやインデックス達は皆そうだと思えた。
だけど叶うならば、この勇者に。
世界に存在する理不尽にツッコミを入れ茶々を入れ、悲劇を台無しにしてくれる、
この喜劇舞台の勇者に倒されるならば、どんな結末も笑って赦せそうな気が、少しだけしたのだ。
ほんの少しだけ、他よりも小さじ一杯程度には強く期待していたのだ。
万感を込めた視線は、一瞥だけで離れた。
(おまえが死んでどうするのだ、ニケ)
正義の味方は他にも居る。
あの工場に居た、リンクやインデックス達は皆そうだと思えた。
だけど叶うならば、この勇者に。
世界に存在する理不尽にツッコミを入れ茶々を入れ、悲劇を台無しにしてくれる、
この喜劇舞台の勇者に倒されるならば、どんな結末も笑って赦せそうな気が、少しだけしたのだ。
ほんの少しだけ、他よりも小さじ一杯程度には強く期待していたのだ。
万感を込めた視線は、一瞥だけで離れた。
「私は光を知らしめる影となる。おまえはそれを手伝え」
「僕が……?」
蒼星石は困惑と共にエヴァを見上げた。
「あれだけの事があり、あれだけの事を言って、何もしないとは言わせん。
おまえには私を手伝ってもらう。
別に罪を背負えとは言わん。私に付いてくる必要も無い。
悪を映えさせる者として正義に味方してもかまわん。
ただ私の在り方を手伝え。それすらしないというなら死ね」
あまりにも身勝手な言い分だった。
だけど蒼星石が何もすまいと、エヴァはそう生きて、死ぬのだ。
彼女に従うにせよ抗うにせよ、少なくとも放っておけるはずはなかった。
一つの、致命的な問題を除いては。
「今の僕に何が出来るっていうんだ」
「僕が……?」
蒼星石は困惑と共にエヴァを見上げた。
「あれだけの事があり、あれだけの事を言って、何もしないとは言わせん。
おまえには私を手伝ってもらう。
別に罪を背負えとは言わん。私に付いてくる必要も無い。
悪を映えさせる者として正義に味方してもかまわん。
ただ私の在り方を手伝え。それすらしないというなら死ね」
あまりにも身勝手な言い分だった。
だけど蒼星石が何もすまいと、エヴァはそう生きて、死ぬのだ。
彼女に従うにせよ抗うにせよ、少なくとも放っておけるはずはなかった。
一つの、致命的な問題を除いては。
「今の僕に何が出来るっていうんだ」
彼女の両手足はニケの咄嗟の反撃と、グレーテルの悪意によって破壊されている。
両腕が有ればふわふわと浮かびながら金糸雀のバイオリンで戦えなくもない。
片腕と両足が有れば、機敏に駆け回り庭師の鋏で戦えなくもない。
しかし全てが破壊されれば、浮かび移動する事は出来てもその先が何も無い。
まだこの肉体を『自らが在るべき体』として認識し“生きて”いられる事さえ驚きなのだ。
破損部は残っているものの、繋げられるのは稀有な人形師だけで、完全に八方塞──。
両腕が有ればふわふわと浮かびながら金糸雀のバイオリンで戦えなくもない。
片腕と両足が有れば、機敏に駆け回り庭師の鋏で戦えなくもない。
しかし全てが破壊されれば、浮かび移動する事は出来てもその先が何も無い。
まだこの肉体を『自らが在るべき体』として認識し“生きて”いられる事さえ驚きなのだ。
破損部は残っているものの、繋げられるのは稀有な人形師だけで、完全に八方塞──。
「それは……?」
何時の間にか、エヴァの手には人形が抱かれていた。
いかにも口の悪そうなカクカクとした口の人形だ。
エヴァは人形を見下ろして、旧知の仲の様子で話し始めた。
何時の間にか、エヴァの手には人形が抱かれていた。
いかにも口の悪そうなカクカクとした口の人形だ。
エヴァは人形を見下ろして、旧知の仲の様子で話し始めた。
「本当に倉庫に転がっていたか。久しぶりだな、チャチャゼロ」
「オウ。オレハ御主人ガブッ倒レテル時ニ会ッテルケドナ」
「神社の時か。やはりあの男の言っていた事は本当だったのだな」
「めろノ事カ? アイツハナカナカノ悪党ダッタゼ。ソーイエバドコイッタ?」
「私が殺した」
「エッ」
「なんだその驚き様は。いつもの事だろうが。」
「ダッテアイツ、御主人ガ気ニ入リソーナ気合ノ入ッタ悪党ダッタゼ。
ソレニ御主人、最近ツマンネー程マルクナッチマッテタジャネーカ」
「………………」
「昔ノ筋金入リダッタ頃ノ御主人ミテーダゼ」
変わった。
いや、戻った。そうなのだろう。
エヴァは自分が少し前とは違い、ずっと前のようになっている事を自覚していた。
闇の底を這いずるように生きていた、あの頃のように。
「イヨイヨヤル気ニナッタッテーナラオレハ楽シインダケドヨ」
「なら口を挟むな、チャチャゼロ」
「御主人、ヤケニナッテネーカ?」
自棄。
そう、それも間違いなく今のエヴァを駆り立てる理由の一つなのだろう。
悪であろうという決意はあっても。
光に寄り添うことすらせず、闇として討たれようなど、少し前のエヴァならば考えなかった。
「ソコニ転ガッテル吸血痕付キノガキト関係」
「もういい、黙れ」
「オウ」
疑問の言葉は封殺された。チャチャゼロは黙った。
矢継ぎ早に命じた。
「オウ。オレハ御主人ガブッ倒レテル時ニ会ッテルケドナ」
「神社の時か。やはりあの男の言っていた事は本当だったのだな」
「めろノ事カ? アイツハナカナカノ悪党ダッタゼ。ソーイエバドコイッタ?」
「私が殺した」
「エッ」
「なんだその驚き様は。いつもの事だろうが。」
「ダッテアイツ、御主人ガ気ニ入リソーナ気合ノ入ッタ悪党ダッタゼ。
ソレニ御主人、最近ツマンネー程マルクナッチマッテタジャネーカ」
「………………」
「昔ノ筋金入リダッタ頃ノ御主人ミテーダゼ」
変わった。
いや、戻った。そうなのだろう。
エヴァは自分が少し前とは違い、ずっと前のようになっている事を自覚していた。
闇の底を這いずるように生きていた、あの頃のように。
「イヨイヨヤル気ニナッタッテーナラオレハ楽シインダケドヨ」
「なら口を挟むな、チャチャゼロ」
「御主人、ヤケニナッテネーカ?」
自棄。
そう、それも間違いなく今のエヴァを駆り立てる理由の一つなのだろう。
悪であろうという決意はあっても。
光に寄り添うことすらせず、闇として討たれようなど、少し前のエヴァならば考えなかった。
「ソコニ転ガッテル吸血痕付キノガキト関係」
「もういい、黙れ」
「オウ」
疑問の言葉は封殺された。チャチャゼロは黙った。
矢継ぎ早に命じた。
「それから、眠れ。おまえの中の魔術の回路は封鎖されているようだが、素材は生きている。
おまえの体を部品に使って、仮の人形契約も結べば、私が送る魔力で動かせる物にできるだろう」
側に転がっていた蒼星石が、息を呑んだ。
おまえの体を部品に使って、仮の人形契約も結べば、私が送る魔力で動かせる物にできるだろう」
側に転がっていた蒼星石が、息を呑んだ。
「まさか君は、僕の修復の為に従者を壊すつもりなのか!?」
エヴァはチャチャゼロを見つめたまま、答えなかった。
沈黙は肯定だった。
治される身である蒼星石当人が、誰よりも驚愕した。
「その子は長年連れ添った君の従者なんだろう!? それを、そんな理由で……!」
「アァ。オレハ御主人ニ従ウゼ」
「な……っ!!」
別に大した事でもない。
チャチャゼロはそんな口ぶりで終わりを受け入れた。
エヴァはチャチャゼロを見つめたまま、答えなかった。
沈黙は肯定だった。
治される身である蒼星石当人が、誰よりも驚愕した。
「その子は長年連れ添った君の従者なんだろう!? それを、そんな理由で……!」
「アァ。オレハ御主人ニ従ウゼ」
「な……っ!!」
別に大した事でもない。
チャチャゼロはそんな口ぶりで終わりを受け入れた。
エヴァは自らの従者に告げる。
「中枢部は使わないが、私は生きて帰るつもりが無い。永い眠りになるだろう」
「ソーカ。オワカレダナ、御主人」
起こす者は居なくなるだろう、と。
チャチャゼロを宿した人形の中枢は、誰にも省みられる事無く徐々に朽ちて逝くだろう。
何十、何百年という時間の果てに。
チャチャゼロは茶化すように、言った。
「マ、ドーセ御主人ガ学園ニ囚ワレテカラハ別荘デ暇シテタンダ」
「うっ」
エヴァは思わず言葉に詰まる。
エヴァが学園結界に囚われ、チャチャゼロを動かす魔力が無い頃、
チャチャゼロが動ける唯一の場所でも有る“別荘”の管理を任せていた。
ただでさえ退屈で冗長な学園生活に鬱屈したエヴァが使わなくなっていた、
外の一時間で中の一日が過ぎ去る異空間の別荘だ。
「ナニ気ニシテンダ、御主人」
チャチャゼロの表情はいつも通り、カクカクと喜劇めいた人形の顔。
そこに苦しみや辛さは見受けられなかった。
人形であるチャチャゼロの時間感覚は人間のそれとは違う。
「オ人好シニ悪党ハデキネーゼ?」
「判っている。だが」
「ダガ?」
それでもエヴァは言わずに居られなかった。
エヴァの都合で使えなくなり一時期遠くに置いても、代わりを作っても。
それでも最後の最期まで忠実であった、この従者に、ただ一言。
「すまなかった」
詫びを送りたかった。
チャチャゼロが、ケタケタと笑った。
「中枢部は使わないが、私は生きて帰るつもりが無い。永い眠りになるだろう」
「ソーカ。オワカレダナ、御主人」
起こす者は居なくなるだろう、と。
チャチャゼロを宿した人形の中枢は、誰にも省みられる事無く徐々に朽ちて逝くだろう。
何十、何百年という時間の果てに。
チャチャゼロは茶化すように、言った。
「マ、ドーセ御主人ガ学園ニ囚ワレテカラハ別荘デ暇シテタンダ」
「うっ」
エヴァは思わず言葉に詰まる。
エヴァが学園結界に囚われ、チャチャゼロを動かす魔力が無い頃、
チャチャゼロが動ける唯一の場所でも有る“別荘”の管理を任せていた。
ただでさえ退屈で冗長な学園生活に鬱屈したエヴァが使わなくなっていた、
外の一時間で中の一日が過ぎ去る異空間の別荘だ。
「ナニ気ニシテンダ、御主人」
チャチャゼロの表情はいつも通り、カクカクと喜劇めいた人形の顔。
そこに苦しみや辛さは見受けられなかった。
人形であるチャチャゼロの時間感覚は人間のそれとは違う。
「オ人好シニ悪党ハデキネーゼ?」
「判っている。だが」
「ダガ?」
それでもエヴァは言わずに居られなかった。
エヴァの都合で使えなくなり一時期遠くに置いても、代わりを作っても。
それでも最後の最期まで忠実であった、この従者に、ただ一言。
「すまなかった」
詫びを送りたかった。
チャチャゼロが、ケタケタと笑った。
「ジャーナ。ドーセナラ派手ニ散レヨ、御主人」
「フ……フフ……分かっている、私を誰だと思っている?」
「最強ノ悪ノ魔法使イ、えヴぁんじぇりん様ダロ? オレノ自慢ノ御主人ダ」
「ああ、そうさ。そうだとも。じゃあな。……眠れ、チャチャゼロ」
「フ……フフ……分かっている、私を誰だと思っている?」
「最強ノ悪ノ魔法使イ、えヴぁんじぇりん様ダロ? オレノ自慢ノ御主人ダ」
「ああ、そうさ。そうだとも。じゃあな。……眠れ、チャチャゼロ」
短い会話の末に、チャチャゼロは眠りに就いた。
きっと、目覚めることの無い眠りに。
きっと、目覚めることの無い眠りに。
その左腕から抜き出された素材は蒼星石の左腕を繋ぐ為に使われた。
その右腕から抜き出された素材は蒼星石の右腕を縫う為に使われた。
その左足から抜き出された素材は蒼星石の左足を直す為に使われた。
その右足から抜き出された素材は蒼星石の右足を継ぐ為に使われた。
その右腕から抜き出された素材は蒼星石の右腕を縫う為に使われた。
その左足から抜き出された素材は蒼星石の左足を直す為に使われた。
その右足から抜き出された素材は蒼星石の右足を継ぐ為に使われた。
エヴァは蒼星石と契約を結ぶ。
人形契約。
人形を人形の従者に変える為の契約を。
意思無き者に意思を与える物でもあるが、既に意思が入っている相手にその効果は無い。
これは単に、蒼星石の新たな手足を動かすためだけの物だ。
新たな手足を魔力で繋げ、動かす為だけの物だ。
魔力を篭められた手足は蒼星石と接合され、蒼星石の意思で動き出す。
人形契約。
人形を人形の従者に変える為の契約を。
意思無き者に意思を与える物でもあるが、既に意思が入っている相手にその効果は無い。
これは単に、蒼星石の新たな手足を動かすためだけの物だ。
新たな手足を魔力で繋げ、動かす為だけの物だ。
魔力を篭められた手足は蒼星石と接合され、蒼星石の意思で動き出す。
そしてエヴァは繰り返し告げた。
「もう一度、言っておく。おまえが手伝うのは私の往き方だ」
私が悪で在る事だけを手伝ってくれればそれでいい。
それだけがこの手足の条件だとエヴァは告げた。
「もう一度、言っておく。おまえが手伝うのは私の往き方だ」
私が悪で在る事だけを手伝ってくれればそれでいい。
それだけがこの手足の条件だとエヴァは告げた。
悪として生き、立ちはだかる全てを薙ぎ払うエヴァの生き方を、蒼星石に真似できるとは思えない。
彼女は結局、心の芯から善良な選択をしたのだから。
何よりもして欲しくなかった。
エヴァは誰も道連れにする事無く、ただ一人闇に沈み果てるつもりだった。
彼女は結局、心の芯から善良な選択をしたのだから。
何よりもして欲しくなかった。
エヴァは誰も道連れにする事無く、ただ一人闇に沈み果てるつもりだった。
だが悪を手伝うだけなら出来るだろう。
それを打ち倒す為、正義を助けても良いのだ。
というよりも、むしろ。
エヴァは、蒼星石が何をどう選ぼうと構わなかったのだ。
それを打ち倒す為、正義を助けても良いのだ。
というよりも、むしろ。
エヴァは、蒼星石が何をどう選ぼうと構わなかったのだ。
だってエヴァのほんとうの願いは、ニケの想いを汲んだ蒼星石が生き延びることなのだから。
ただそれだけの想いを篭めて、エヴァは蒼星石を救った。
【D-3/森/2日目/黎明】
【メロ@DEATH NOTE】
[状態]:全身に無数の負傷。左手の小指と薬指欠損。右手親指亜脱臼後の痛みによる握力低下。
左肩に刺傷(殆ど感覚がないが無茶をすれば何とか動く程度)(以上は全て応急処置済)
左肩、左脇腹、右膝に切り傷。負傷+冷気+雨による体温低下。
弱い催淫効果の影響で、ブルーのことが理屈抜きで気になっている。
[装備]:賢者のローブ@ドラクエⅤ(上半身裸)
[道具]:なし
[思考]:どちらにせよおまえは俺のものだ、ブルー。
第一行動方針:ブルーの選択を待つ。
第二行動方針:『ご褒美』で情報を得たい。QBを殺した奴が誰か知りたい。
第三行動方針:どうでもいいが板チョコが食べたい。どこかで手に入れたい。
基本行動方針:ニアよりも先にジェダを倒す。あるいはジェダを出し抜く。
[備考]:ブルーが絡むことについて、理屈でなく衝動で行動してしまう恐れがあります。本人も自覚しています。
ブルーを通して、「ブルーが聞いた光子朗の考察」の一部を知りました。
【メロ@DEATH NOTE】
[状態]:全身に無数の負傷。左手の小指と薬指欠損。右手親指亜脱臼後の痛みによる握力低下。
左肩に刺傷(殆ど感覚がないが無茶をすれば何とか動く程度)(以上は全て応急処置済)
左肩、左脇腹、右膝に切り傷。負傷+冷気+雨による体温低下。
弱い催淫効果の影響で、ブルーのことが理屈抜きで気になっている。
[装備]:賢者のローブ@ドラクエⅤ(上半身裸)
[道具]:なし
[思考]:どちらにせよおまえは俺のものだ、ブルー。
第一行動方針:ブルーの選択を待つ。
第二行動方針:『ご褒美』で情報を得たい。QBを殺した奴が誰か知りたい。
第三行動方針:どうでもいいが板チョコが食べたい。どこかで手に入れたい。
基本行動方針:ニアよりも先にジェダを倒す。あるいはジェダを出し抜く。
[備考]:ブルーが絡むことについて、理屈でなく衝動で行動してしまう恐れがあります。本人も自覚しています。
ブルーを通して、「ブルーが聞いた光子朗の考察」の一部を知りました。
【ブルー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全身に骨折、打撲、擦過傷等多数(以上応急処置済み)、精神疲労(中)、激しく動揺
メロに惚れつつある。マフラー状態の風の剣を握っている。びしょ濡れ。
[服装]:新体操で使うレオタードに、ジャージの上だけを羽織った格好
[装備]:風の剣(マフラー状態)@魔法陣グルグル、シルフスコープ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×3(食料、水分少し減)、
ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン(やや不調)
年齢詐称薬(赤×3、青×3)、G・Iカード(『聖水』)@H×H、チョークぎっしりの薬箱、
Lのお面@DEATH NOTE、マジックバタフライ@MOTHER2、
シャインセイバー(サモナイト石・無)@サモンナイト3、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
[思考]:殺せって、そんな……
第一行動方針:メロを殺す? 殺さない?
第二行動方針:イヴと合流できてまだ利用価値があるようなら、上手く利用する
第三行動方針:第五行動方針:グリーン、イエローのことが(上の行動方針に矛盾しない程度に)心配
[備考]:
イヴの心変わりに気付いていません。イヴがGIのカードを使って脱出した可能性に思い至りました。
頑張って光子朗の考察内容を思い出しました。どの程度思い出したのかは未定。
メロの考察を知りました。メロが自分に「惚れかけて」いることに勘付いています。
ターボエンジン付きスケボーは、どこか壊れたのか、たまに調子が悪くなることがあります。
[状態]:全身に骨折、打撲、擦過傷等多数(以上応急処置済み)、精神疲労(中)、激しく動揺
メロに惚れつつある。マフラー状態の風の剣を握っている。びしょ濡れ。
[服装]:新体操で使うレオタードに、ジャージの上だけを羽織った格好
[装備]:風の剣(マフラー状態)@魔法陣グルグル、シルフスコープ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×3(食料、水分少し減)、
ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン(やや不調)
年齢詐称薬(赤×3、青×3)、G・Iカード(『聖水』)@H×H、チョークぎっしりの薬箱、
Lのお面@DEATH NOTE、マジックバタフライ@MOTHER2、
シャインセイバー(サモナイト石・無)@サモンナイト3、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
[思考]:殺せって、そんな……
第一行動方針:メロを殺す? 殺さない?
第二行動方針:イヴと合流できてまだ利用価値があるようなら、上手く利用する
第三行動方針:第五行動方針:グリーン、イエローのことが(上の行動方針に矛盾しない程度に)心配
[備考]:
イヴの心変わりに気付いていません。イヴがGIのカードを使って脱出した可能性に思い至りました。
頑張って光子朗の考察内容を思い出しました。どの程度思い出したのかは未定。
メロの考察を知りました。メロが自分に「惚れかけて」いることに勘付いています。
ターボエンジン付きスケボーは、どこか壊れたのか、たまに調子が悪くなることがあります。
【D-4/体育館内/2日目/黎明】
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま! 】
[状態]:全身に痛み、左腕が殆ど動かない、魔力消費(大)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、手足の無いチャチャゼロ(半永眠)@魔法先生ネギま!
[思考]:…………次は、どうするか。
第一行動方針:休憩するか、それともすぐに動くか。
第二行動方針:リリスと遭遇することがあったら、リリスを倒し身柄を押さえ、情報を得る。
第三行動方針:ジェダの居場所に至る道を突き止め、露払いをする。
第四行動方針:ジェダを倒そうと挑む者たちの前に立ち塞がり、討たれる。
基本行動方針:ジェダ打倒のために暗躍。ただし仲間は作らない。誇り高き悪として、正義の前に散る。
[備考]
梨花の血を大量に吸いました。雛見沢症候群、及び女王感染者との関連は不明です。
ジェダ打倒を目指している者として、ニアの名前をグリーンから聞いています。
パタリロを魔族だと思っています。名前は知りません
紫穂の『能力』が、触れることで発動することを見抜きました。詳細までは把握していません。
雲に隠れていても満月による補正は有るようです。
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま! 】
[状態]:全身に痛み、左腕が殆ど動かない、魔力消費(大)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、手足の無いチャチャゼロ(半永眠)@魔法先生ネギま!
[思考]:…………次は、どうするか。
第一行動方針:休憩するか、それともすぐに動くか。
第二行動方針:リリスと遭遇することがあったら、リリスを倒し身柄を押さえ、情報を得る。
第三行動方針:ジェダの居場所に至る道を突き止め、露払いをする。
第四行動方針:ジェダを倒そうと挑む者たちの前に立ち塞がり、討たれる。
基本行動方針:ジェダ打倒のために暗躍。ただし仲間は作らない。誇り高き悪として、正義の前に散る。
[備考]
梨花の血を大量に吸いました。雛見沢症候群、及び女王感染者との関連は不明です。
ジェダ打倒を目指している者として、ニアの名前をグリーンから聞いています。
パタリロを魔族だと思っています。名前は知りません
紫穂の『能力』が、触れることで発動することを見抜きました。詳細までは把握していません。
雲に隠れていても満月による補正は有るようです。
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:金糸雀のローザミスティカ継承、雨で服が湿っている。
殺人には激しい抵抗有り、チャチャゼロの部品と人形契約により四肢を維持
[装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン、金糸雀のバイオリンと弓@ローゼンメイデン
[道具]:基本支給品×2、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、 戦輪×4@忍たま乱太郎
素昆布@銀魂、旅行用救急セット(消毒薬と針と糸)@デジモンアドベンチャー
トンネル南側入り口の鍵
[思考]:僕は……
第一行動方針:エヴァに付いて行き手伝うか、あるいは。
基本行動方針:優勝のお願いで全てを無かった事にしたかった。
[備考]:現在蒼星石の四肢はエヴァとの人形契約により動いています。
蒼星石の自由に動き、エヴァにとっての負担もほぼ有りませんが、
昼間のエヴァの魔力の減衰や、死亡によって影響を受ける可能性は有ります。
[状態]:金糸雀のローザミスティカ継承、雨で服が湿っている。
殺人には激しい抵抗有り、チャチャゼロの部品と人形契約により四肢を維持
[装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン、金糸雀のバイオリンと弓@ローゼンメイデン
[道具]:基本支給品×2、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、 戦輪×4@忍たま乱太郎
素昆布@銀魂、旅行用救急セット(消毒薬と針と糸)@デジモンアドベンチャー
トンネル南側入り口の鍵
[思考]:僕は……
第一行動方針:エヴァに付いて行き手伝うか、あるいは。
基本行動方針:優勝のお願いで全てを無かった事にしたかった。
[備考]:現在蒼星石の四肢はエヴァとの人形契約により動いています。
蒼星石の自由に動き、エヴァにとっての負担もほぼ有りませんが、
昼間のエヴァの魔力の減衰や、死亡によって影響を受ける可能性は有ります。
≪260:消せない罪 | 時系列順に読む | 264:ギップリャアアアの謎≫ |
≪262:川音が喧しく響いていた | 投下順に読む | 264:ギップリャアアアの謎≫ |
≪232:屏風の虎 -their roots- ≪245:臨時放送、あるいはイレギュラー |
ニケの登場SSを読む | GAME OVER |
メロの登場SSを読む | 279:死が二人を分かつとも≫ | |
ブルーの登場SSを読む | ||
≪248:ワルプルギスの夜/宴の支度 | エヴァの登場SSを読む | 274:目撃者と追跡者≫ |
蒼星石の登場SSを読む | ||
グレーテルの登場SSを読む | 272:なまえのないかいぶつ≫ |
2010/4/4:バカルディのアルコール度数修正