織田家の生活は、常に優雅だった。
 食品会社の社長の父、自宅の広大な敷地、名前を覚えきれない程のメイド。
 そんな、天が選んだかのような特別高貴な環境で、織田敏憲は生まれ、中学三年生まで、何不自由のない生活を送ってきたのである。

 しかしながら、そんな彼を認めようとする者は、彼が現在在籍いるクラスには……いなかった。

 下品なクラスメイトたちが騒ぎ立てるのは、顔が良く、背が高い男ばかり。
 それ以外の有象無象も、自分を崇めた奉る事がない。
 実に不愉快で無礼であるが──だが、まあ仕方が無い話だ。
 何しろ、彼らは頭が悪く、下品極まりない凡人に過ぎない。
 せいぜい、下品な男たちの下品なスポーツや下品な音楽に聞き惚れているが良い。
 貴様らに真の芸術は理解できまい。
 高貴な織田は、もはや彼らとは別の次元で生きているのだ。
 ……彼らが人として当然の事すら出来ないのは、仕方の無い事だ。

 そう、高貴な者には、あんなクラスよりも、もっと高貴な場が相応しい。
 早々に、進学が決まっている私立高校に行きたいものだ。
 そこで、思う存分バイオリンを弾かせて貰いたい。


 ──と、それより前に、だ。


 高貴な家庭に生まれた織田は、中学を卒業する前に、あるゲームに参加する事になっていた。
 それが、この「聖杯戦争」というゲームである。
 魔術師たちがサーヴァントという使い魔を駆使して、「聖杯」を得る為に殺し合うのがこの聖杯戦争だ。

 この高貴な魔術師たちだけに許されたリアルな殺し合い──。
 その果てに得られる「聖杯」なる物は、正真正銘、高貴な人間にこそ相応しい願望機である。

 そして、織田は魔術回路を有さなかったが、見事に≪セイバー≫のクラスから、一人の女騎士を呼ぶ事に成功している!
 セイバーとはつまり……この聖杯戦争における七つのクラスにおいて、最高位!
 他のサーヴァントの勝る事のない、最強のサーヴァントを引き当てたのは、まさに織田が選ばれた人間であるという証に違いなかった!


「やあ、セイバー……何をしているんだい?」
(呼んでるんだからとっとと来いよ、お前は俺のマスターだろうがッ!)


 織田は、織田邸の庭で朝方に修練するセイバーに、パジャマ姿のまま声をかけた。
 セイバーは、グラスに水を注いだ上で、そのグラスを剣の切っ先で弄んでいた。
 剣の上にグラスを立てるという時点で相当精密な剣捌きとバランスが必要なのだが、彼女はそれを空中に投げ、一滴の水滴も零すことなく、再び剣でキャッチするという動作を繰り返している。
 もはや、それは人間の業ではなかった。
 生前、戦闘のみに生きたセイバーでなければ、およそ不可能と言っていい。
 彼女であっても、かなりの集中力を要する修練であるらしく──動きは少ないにも関わらず、セイバーの額には汗が滲んでいる。
 セイバーは美人の女性であったが、その表情は、今日は固かった。


「……」


 修練中のセイバーは、織田の挨拶に何も返さなかった。
 先ほど言った通り、これはかなりの修行を要する修練なのである。
 それゆえに、他人と口を利く時間がない。彼女の意識も、言葉も通さないようになっているのだろう。
 織田は、無視されているのに気づいていたが、表だって不機嫌な顔をせずにセイバーに、一応声だけかけてその場を去った。


「……いやあ、朝から精が出るねえ……修行を欠かさないのは良い事だよ、ウン」
(くそ、無視しやがって……下品なサーヴァント奴僕がッ! 修行なんかしている暇があるなら、さっさと他のマスター奴僕やサーヴァント奴僕を殺して来い!)


 セイバーとはいえ、所詮は、かつて戦に使われた駒に過ぎない。
 かつてセイバーが何であったのかもよくわからないが、あれだけの達人ならば、「道具」としては実に役に立ってくれる事だろう。
 この織田家に、聖杯を齎す者として──。


「──」


 織田家は、代々、魔術師の家系であった。
 奇妙な事に魔術回路を持つ人間はいなかったが、代々、男子が聖杯戦争でマキリやトオサカやアインツベルンの連中と共に聖杯戦争を行っていたらしい。
 いつ家族がそんな話をしたかはわからないが、織田家の人間はそれを当たり前のように知っていた。
 そして、今回は、その役割が織田敏憲に来たと言う訳である。


「……さて、それじゃあ僕は、学校の準備でもするか」


【CLASS】

セイバー


【真名】

セフィリア=アークス@BLACK CAT


【ステータス】

筋力B+ 耐久B 敏捷A+ 魔力D 幸運C 宝具A


【属性】

秩序・善


【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】

直感:A
 戦闘中の「自分にとっての最適の行動」を瞬時に悟る能力。
 ランクAにもなると、ほぼ未来予知の領域に達する。視覚・聴覚への妨害もある程度無視できる。

カリスマ:B
 軍を率いる才能。
 クロノナンバーズのトップとしての人望は底知れず、その気になれば一国を納める事も出来る。

アークス流剣術:A
 セイバーが生前に極めた剣術。
 Aクラスともなると、ガドリング砲ばりの剣速で敵を粉々にする最終奥義『滅界』までも使用可能。

桜舞:B+
 緩急をつけた動きで敵を翻弄する無音移動術。
 実質的には、『縮地』と変わらない。

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。


【宝具】

『刻を護りし番人の剣(クライスト)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人

 超金属オリハルコンによって作られたサーベル型の長剣。
 いかなる攻撃でも壊されることはなく、またどれほどの高温でも原形を失わない。
 セイバーの剣速を以ては、どんな強固な武器も容易く崩れてしまう為、この宝具でなければセイバーの本領はそもそも発揮できないとされる。
 この剣から放たれるアークス流剣術の最終奥義『滅界』などは、剣技でありながら敵を粉々に吹き飛ばすだけの威力を持つ。
 仮に『滅界』を使った場合、再生能力や不死性を持つ敵でない限り、確実に滅する事ができるだろう。


【weapon】

『刻を護りし番人の剣(クライスト)』


【人物背景】

 秘密結社クロノスが擁する最強の抹殺者(イレイザー)集団、『時の番人(クロノ・ナンバーズ)』のトップ。
 各メンバーがNo.I~No.XIIIのナンバーを持っている中で、彼女はNo.Iにあたる。つまり、最初のメンバー。
 生まれた時からクロノスのために戦うことを宿命付けられており、クロノスに絶対的な忠誠を誓っている。
 その為、任務には冷徹に、強かに挑むが、仲間の殉職の報に涙するなど、本来は心優しく温厚な人柄である。


【サーヴァントとしての願い】

 マスターに従う?


【基本戦術、方針、運用法】

 セイバーの名に恥じないかなり強力なサーヴァントだが、マスターがマスターなので上手く扱えるか微妙。
 現在の基本はマスターに従う方針とはいえ、クロノスの任務以外では優しかった彼女の性格と織田の性格では齟齬も早い段階から生まれるだろう。
 織田には、上手く彼女を騙し続ける必要が強いられる。



【マスター】

織田敏憲@バトル・ロワイアル(漫画版)


【マスターとしての願い】

 願いは特にないが、聖杯は高貴なこの自分に相応しい。
 聖杯戦争において、最も強力なサーヴァントであるセイバーが高貴な自分のもとに召喚されたのも当然である。
 このセイバーとかいう女を道具として使い、何としてでも聖杯を得てみせる。


【weapon】

『防弾チョッキ』
 ガンマニアでもある彼が、特別に取り寄せた物。
 これによって、他マスターからの銃撃を受けた場合に備えられる。


【能力・技能】

 高貴である事。
 上品なバイオリンの腕。
 ガンマニアとしての豊富な知識。


【人物背景】

 香川県城岩町立白岩中学校三年B組、男子4番。
 プログラムに巻き込まれた中学生の内、殺し合いに乗った少年。
 蛙のようなブサイクな顔の低身長。クラスメイト全員を見下している。

 彼の嫌いなもの
 1、顔のいい男
 2、背の高い男
 3、総じて下品な男


【方針】

 聖杯を得る。


【備考】

 この織田敏憲には、織田家が魔術師の家系だという奇妙な記憶改竄が起きている。
 それゆえに、彼の中では、「四大魔術師家」が「オダ>>>>>>>>>マキリ、アインツベルン、トオサカ」となっているが、他のマスターにはこんな認識はない。
 しかも、織田自身が、そもそもこの「御三家」の事を名前以外よく知らず、御三家の人間と今のところ面識もない可能性が高い(そもそも、聖杯戦争の成り立ちに関わる「御三家」と違い、何が「四大」なのか不明)。
 更に言えば、敏憲よりも前の織田家の人間が聖杯戦争を行っていた事は一切記録になく、過去に聖杯戦争を行った者も「織田」などという家系は覚えていないはずである。
 ちなみに、織田家には、家族の誰にも魔術回路はない。魔術に関しては素人そのもの。
 どう考えてもおかしいはずだが、織田自身はあまり気にしていないようである。
 一応、「織田家が魔術師の家系」というのは今現在は織田家の共通認識となっているらしく、セイバーが普通に織田家で過ごしていても、織田家の人間は何も言わない。

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最終更新:2015年12月14日 20:57