【余ったピース】
 
「出来たっと」
 
最近古泉君が部室にパズルを持ち込んでくるようになった、いくつかのパーツ
を組み立てて立方体とかを作るやつ、単純そうみ見えて結構やっかい、でも 
あたしと有希が片っ端から完成させるので、だんだん難易度の高いのをもって
くるようになった、今回のは放課後だけで、出来上がらずに 家の持ち帰って
やっていたのだ
 
少し強張った体を 伸びをして解す
 
すでに寝室の窓のカーテン越しに朝のやわらかい日差しが入り込んできている
 
「やだ、もうこんな時間 どーしよう、今から寝たら絶対に遅刻するな」
 
結局一晩がかりでパズルに夢中になっていたのだ、でも、古泉君のくやしそう
な顔を思い浮かべれたら 気分がいい でも こんなに夢中になれるとは思わ
なかった、答えに向かって、試行錯誤する、そして自分の作業が綺麗な完成形
でむくわれる快感 無味乾燥に思えた数学とが科学とかに、ちょっと新鮮な興
味を思えている そんなあたしが自分でも少し不思議
 
寝室の窓を開けて、少し肌寒くなった朝の空気を深呼吸する 今日もいい天気、
少し風が強いかな、ふいに風でカーテンが膨らみ机の上をなぜる 
 
カラン
 
「あ、ピース」
 
先ほど完成させたパズルのピースが床に軽い音をたてて落ちる 古泉君も 
なかなかの策士よね、全部のパーツを使わないのが正解だなんて、途中だいぶ
てこずっちゃたわ、なくしちゃうといけないから、あたしはピースを拾い鞄の
中へ
 
文化祭も終わって 高校にはいってもう半分すぎちゃんだよね、いろんなこと
があった、そのほとんどは、楽しいこと、SOS団のみんなの顔が思い浮かべで
朝ごはんまでの間、ちょっとだけ、感傷のふける、これからどんな不思議がわ
たしを楽しませてくれるのだろう
 
学校へ、今年も前の席にいるこいつは キョン、相変わらず気の抜けたような
顔をしている、そういえば こいつも昨日 古泉君のパズルもって帰ってたっ
け、もっともあたしがすでにクリアした奴だけど 話かけてこないとこ見ると
完成してないな 放課後部室でいじめてやろう
 
やっと放課後、そろそろ中間試験ってことで教師陣はなんか無駄に熱い、そん
なことはかるく聞き流して部室へ キョンは先に出て行ったのかな
 
「やっほー 出来たわよ 昨日のやつ!」
 
すでに有希と古泉君がきていた、感心感心、それにくらべてキョンはなによ 
あたしより先に教室でたくせに、団長様より遅いってどうゆうことなの
 
「涼宮さん 本当に一晩で完成させたんですか?僕はまるまる一ヶ月かかった
んですがね、それ、完敗です、さすが涼宮さんですね」
 
うーん 古泉君のそのくやしそうな顔 いいわ
 
「次回はもっと、手ごたえのあるやつを 捜してきなさい、もっともあたしと
有希が根をあげるようなものは、この世に存在しないといっても過言ではない
わ! ねえ 有希」
 
物静かな読書少女は、本に眼を落としたまま ちいさく頷いた様にみえた
 
「では、ご期待に添えますよう がんばってみます それより一度、作者の方
に会ってみませんか?」
「パズルの?」
「ええ、作者の方は 自分の作品をかたっぱしからクリアする美少女高校生に
は興味をもたれていますよ」
「どんな人?」
「もう結構なお歳ですが、大学で数学の教鞭をとられている方で、世界でも有
数のパズリストの方ですよ」
「考えとくわ、でもその時は、有希、いや、SOS団で押しかけてあげましょう」
「そうですね、きっと楽しい時間になるとおもいますよ」
 
古泉君との話は楽しい、バカキョンと違って、話題も豊富だし、なにより人の
話をいちいちさえぎったり反論したりしない、どうしてあいつはそうゆう部分
がどんくさいんだろうこのくらいスマートに落ち着いて話ができるってのは人
としての格が違うのかもしれないわね、話は立体のパズルから、天文、神話に
まで広がる 最近古泉君とこうやって話する時間が増えたような気がする
 
いつのまにか、部室には朝比奈さんも来て、お茶をいれてくれる 
 
「涼宮さん はい」
「ありがとう」
 
そういえば、キョンの奴はいったいどこいったのだと訝るのと同時に、部室の
ドアがノックされる キョンだ、随分遅かったじゃないの
 
「ふぁーい」
 
みくるちゃんの声をうけ部室の扉が開き、キョンが入ってくる、なんかあんま
り顔色よくないわね、あんたもひょっとして徹夜
 
「キョン! 遅いわよ、一体どこいってたの!」
「ああ進路相談だ、それよりハルヒ、おまえ、昨日の相談すっぽかしたろ、岡
部がまってるぜ」
 
あいさつ代わりにいきなりその話?それってないんじゃない
 
「なによ、岡部ごときにあたしの進路を相談することなんてないわよ それよ
り、昨日のパズルは出来た?」
「いや、どうも俺はああゆうのはしょうに合わないようだ、一晩かかっても全
然だ、それより申し訳ないが、俺 今日はこれでいいかな、家で話しなくちゃ
ならない状態なんだ」
 
へへ、やっぱり出来なかったようね、こいつこんなに落ち込むほど成績悪かっ
たっけ?
 
「だらしないわね、まあ、キョンの頭じゃしょうがないか、そう、試験前には
また勉強会もいいわね」
「ああ、その時には、また頼むかもな、申し訳ないけど これで あと、
ハルヒ、一応 岡部のとこ顔だしとけよ じゃあ 邪魔したな」
 
なにが気に食わないんだろう、あいつは、みくるちゃんのお茶の飲まずにその
まま部室からでていった。なんか暗い奴、せっかく楽しい話でもりあがってい
たのに、水をさすなんて、空気が読めないやつよね
 
「涼宮さん、どうされます?」
「まあ いいわ、どうせいかなきゃならないんなら、行ってくる今日は解散!
古泉君その話はまた明日ね みくるちゃん、鍵しめちゃっていいわ、鞄もって
くから また明日ね!」
 
あたしはそういって、部室を後にした。

【足りない欠片】
 
「あーいまいましい」
 
最近古泉が部室にボードゲームの仕返しのつもりなのか パズルを持ち込んで
くるようになった、いくつかのパーツを組み立てて立方体とかを作るやつだ、
残念ながら俺にはこの方面の素養がないようで、ハルヒや有希がいとも簡単に
組み立ててゆくのを眺める、ちょっと癪に障る、それもあって、簡単そうなや
つを家に持ち帰ったのだが、やはりとても手に負えない
 
「ピース足りないんじゃないのか、これ」
 
それにしても、ハルヒはパズルにこんなに興味を示すとは思わなかった、少し
前なら、途中で癇癪を起こして例の空間を大量発生させていただろうに、古泉
が嬉々としてパズルを持ってくるということは、今ではそんなこともないんだ
ろう、いやまて、あいつのやることがなにか裏があるのかもしれないが、俺に
はしったことではないだろう
 
多分、あいつは、身の回りのいろんなことに興味をいだけるようになったんだ
ろう、それはきっと いい方向への変化なんだろう、入学当初のあいつの表情
からくらべたら、今ではまるで別人のように輝いて見える、お世辞じゃなくな
 
そういえば、すでに受験生になっている朝比奈さんも前に時々みせていた憂い
のような、もどかしいような表情をみせることも少なくなったし、長門もあの
事件以来、大きな問題は起こしていないし、あいかわらず俺にしかわからない
かもしれないが、随分表情が人間ぽっく豊かになったと思う まあ、古泉は同
じか いや、最近ではあいつハルヒや朝比奈さんと普通に話しをしている、最
初の頃の妙な敬語がそのままだけれど、態度は随分やわらかくなったな、確か

それにくらべて俺はこの1年半でなにか変ったたのだろうか
 
文化祭も無事に終わり、高校生活ももう半分すぎてしまった計算になる、巻き
込まれたとはいえ、いろんなことがあった、命の危険まであったしな、ただ概
ね楽しかったと思えるこんな毎日が後どれだけ続けられるのだろう
 
自分でもバカなことを考えていたと思う、気が付けばもう空が白み始めていた
 
「やべぇ もう朝じゃないか」
 
妹の襲撃を受けるまでの間、少しでも寝ておくとしよう
 
秋の到来とともにめっきり寒くなった風を感じながら上り坂の通学をを肩をす
くめて歩く
 
「よう!キョン 金でも落としたか 下向いてあるいてるけど」
「谷口か なんつーあいさつだ」
「キョン、お前は今日だっけ」
「何が」
「進路相談」
「ああ、そうだ、谷口 お前はどうするんだ、進学だろ」
「そうだな、東京の三流私立文系ってのが、現実的な線ではあるな、親の説得
さえできれば、東京いってみたいな 一人暮らしはポイント高いぜ おまえは、
どうせ涼宮といっしょだろ?」
「ばか言うんじゃないよ、学力の差が天地ほどあんだろ、東京か、むりだろう
な俺は」
「まあ しぼられてこいや」
通学途中のちっとも心が温まらない会話と一緒に俺は学校へ行くのであった、
まじめだね、本当、感心するよ
 
ハルヒは昨晩、なにかいいことでもあったのか、朝から機嫌がいい、まあ、俺
には関係ないが、その元気の欠片くらいはわけて欲しいね。
 
放課後、進路指導のため担任の岡部の元に出頭 まあ あまり思い出したくも
ない話を延々聞かされる、まあ一つ一つには、心当たりがあったりするので、
反論もないが、こう面と向かって話されると気がめいる このまま今日は家族
会議ということになりそうだ
 
やれやれ
 
部室にたどり着いて習慣となった、ノックをする、まあこの時間で朝比奈さん
が着替え中ということはないはずだか、なれというのは怖いものだ
 
「ふぁーい」
 
受験生にもかかわらず、足繁く部室にやってくる、朝比奈さんの声に聞きなが
ら部室へ入る
 
「キョン! 遅いわよ、一体どこいってたの!」
 
いきなり、それがあいさつかよ
 
「ああ進路相談だ、それよりハルヒ、おまえ、昨日の相談すっぽかしたろ、岡
部がまってるぜ」
「なによ、岡部ごときにあたしの進路を相談することなんてないわよ それよ
り、昨日のパズルは出来た?」
ああ、おまえにとっては、進路より古泉のパズルの方が重要なようだ
 
「いや、どうも俺はああゆうのはしょうに合わないようだ、一晩かかっても全
然だ、それより申し訳ないが、俺 今日はこれでいいかな、家で話しなくちゃ
ならない状態なんだ」
「だらしないわね、まあ、キョンの頭じゃしょうがないか、そう、試験前には
また勉強会もいいわね」
 
別に朝比奈さんのお茶を飲む時間くらいは なんでもないはずなんだが、みん
なが楽しく談笑している中になんとなく入りずらく、そのまま帰ることにする
 
「ああ、その時には、また頼むかもな、申し訳ないけど これで あと、
ハルヒ、一応 岡部のとこ顔だしとけよ じゃあ 邪魔したな」
 
俺はそういって部室を後にした。

【インターミッション】
 
キョン君も涼宮さんも部室を出て行った。
部屋をでてゆくキョン君の顔がなんとなく暗い
パタン
長門さんの本を閉じる音
 
「古泉君 お話したいことがあります」
「なんでしょう、朝比奈さん」
「いったい何をたくらんでいるんですか」
「どうゆうことでしょう?」
「最近 古泉君と涼宮さん 仲良しすぎませんか」
「僕は一介の男子高校生でもあるんですよ、魅力的な方じゃないですか、涼宮
さんは」
 
「ちょっと話は変りますけど、最近の涼宮さんをどうみます?」
「落ち着かれているようにみえます、最近時空震の観測もありませんし」
「長門さんはいかがでしょうか?」
「観測の対象であることに変化はない ただ力の    」
「そう、ただ、力の使い方に変化が現れている、そうですね、長門さん」
「そう」
「どうゆうことなんですか?」
「涼宮さんは、最近、自分の力をある程度、制御できているんじゃないか、
そう思われます、意識的にしろ無意識的にしろ 前のように世界全体を改変す
ることなく、あたかも自分の力で問題を解決しているかのように」
「あのパズルはそのために」
「そのためだけってことはありませんよ、でもその過程で観察され確認された
ことは否定しませんけど、昨晩、涼宮さんが一晩でといたパズル、作成者はゆ
うに一ヶ月かかると太鼓判おしてもらったやつなんです、話をしたらきっと卒
倒しますよ」
「いいですか、涼宮さんは変られた、よてもよい感じで、いままで鍵として考
えられていた彼のサポートなしでも世界をやり直さない程度に」
「だからって 古泉君」
「機関の命令ではないですよ、涼宮さんに近づいているのは 僕の意思です」
 
「僕は彼より3年も前から涼宮さんを追っかけているんですよ もっとも最初
は憎しみの対象でしたけどね 涼宮さんの隣が僕になったところで許容範囲
じゃないですか、朝比奈さんや長門さんだって、そのほうがなにかと便利じゃ
ありませんか、それにこの程度変革では未来の規定事項に影響を与えないのは、
鶴屋家経由で確認ずみです、ご不審ならご確認を」
 
「古泉君」
 
「約束しますよ、あくまでも個人のレベルで行動することを、フェアじゃない
ですからね それでは、僕もこの辺で失礼します」
 
「古泉君」
「長門さん いまの話って」
「彼のいったことに嘘はない、力のことはこちらでも確認すみ、規定事項の
解釈に関しても問題ない どちからといえば、提案は合理的」
「合理的って、問題なければそれでいいんですか!キョン君と涼宮さんの
気持ちはどうするんですかぁ!」
 
秋の夕暮れの西陽の射す部室に2人の少女がただ 立ち尽くしていた。

【余ったピース】
 
あーめんどくさい、どの大学いくかなんて、本人の勝手じゃないそんなこと
 
「涼宮です」
「おーはいれ 昨日はどうした」
 
ハンドボールバカがそこにいた、まあ、さからっても時間かかるだけか
 
「すみませんでした」
「例の同好会か、まあ、座れ」
 
別に目新たらしいことがあるわけでもない、どうせ聞かれるのは、進学希望先
についてだ、2年になるときに進路別のクラス替になると聞いていたので、わ
たしは、キョンと同じ国立文系に進路希望をだしている、あたしの成績ではな
んの問題もないはず
 
「なあ、涼宮 進路を理系に変更しないか、お前の今の現状と成績なから、
東大、京大、筑波どこでも充分狙える それに前の模試でも おまえ理系科目
の方が成績いいじゃないか、数学と物理は9組抑えて学年2位だそ 先生はもっ
たいないと思うんだが、そもそも将来どうするんだ、なにかやりたいことある
のか?」
 
進路の変更?なんで今頃こんな話になるの、将来なにをするかだって、そんな
先のことまだ判るわけないじゃないの、あんたバカ うっかり口にだしそうな
言葉たちを飲み込む、あたしの返事はないので、岡部はそのまま話を続ける
「時間は短いぞ、こう言うのもなんだが、俺が今になって宇宙に行きたいといっ
てもやり直す時間は足りないだろう、やりたいことがあるなら、脇見をせずに
めいっぱい進んでいったほうが後悔しないぞ 力を思う存分発揮するのは、そ
れなり舞台が必要なんだと思うぞ、そこで相談なんだが、9組への編入を考え
てみないか? おまえの今の学力なら問題なくクリアできる、ただ実際の編入
は3学期か、3年になってからになるんだが、考えてみないか 9組なら例の同
好会のメンバーもいたろう」
 
ちょっと意外な岡部の話、そうか、たしかに今、あたしは理系科目の方に興味
がわいているのは確かだし 不思議を探す舞台として理系学部っての確かに魅
力的に見える、時間が短いってのは、もう全面的に共感できる 最近、古泉君
にその系統の話を一杯きいていたからかもしれないけど、それに9組への編入
なら古泉君と一緒だ
 
あれ?なに考えているだろあたし ちょっとしどろもどろになりながらやっと
次の言葉だけつげる
 
「少し考える時間もらっても」
 
「ああ、もちろんだ、ただ来週の頭に とくに編入を受けるか否かに関しては
一度早めに答えが欲しい まあ 悩め悩め それが若人の特権だ!」
 
岡部は、30年ぐらい時代錯誤のコメントをして話しを締めくくった
 
秋の陽は短い、もうだいぶ薄暗くなった坂道を校舎を背にしてくだってゆく、
さっきの岡部の話を考えながら
「涼宮さん」
 
ふいに声を掛けられる 同じ制服 誰だっけ? えーっと、あっ
 
「えっと JJ」
「ひっどーい 阪中です なんで ルソーの名前はでてくるのに、あたしの
名前がでないかなぁ 去年は同じクラスだったのにね」
「ごめん ちょっと考え事してた」
本当は 本気で思い出せなかった、ごめん
 
「そんな顔してましたね、悩み事ですか、あたしでよければ聞きますよ 
聞くだけだけど たぶん」
「そんなたいした話じゃないわ、進路相談だったんだ 今」
「進路かぁ、あたしじゃあんまり役にたちそうにはないですね」
「阪中は?」
「あたし ですか、一応近所の大学に潜り込めれば、でも今の成績だと
短大ってのもありかな出来たら4年間遊びたいんですけどね てへ 成績上位
者リストに名前のある涼宮さんの足元にもおよびませんってね、でも涼宮さん
なら、どこでも大丈夫でしょうに、あ だからこその悩みかぁ このしあわせ
もの!」
 
なんか変な話になっている
 
「あたしは何がしたいんだろ」
「そんなことあたしが判るわけないですよね、自分のだってわかんないんだもんね 
でも、その話なら、相談しなきゃいけない人がいるでしょう 涼宮さん」
 
なにを言い出すんだ この娘は
 
「しらっぱくれてもだめですよ みんな気づいてますって ごちそうさま 
あ あたしこっちなんで、それじゃ、またみんなで遊びにきてくださいよ、
ルソーも母もシュークリーム作って待ってますからね 是非 じゃあね」
 
いうだけいって、阪中はいってしまった、彼女と話すようになったものSOS団
の一件だった、でもなんだ、あの思わせぶりなセリフは、一体誰のことをいっ
ているんだ、相談しなきゃいけない人ってのはなんだ でもルソーに会いに行
くのはいい提案かな
 
帰宅して自室で 鞄を開けると昨日のパズルがそのまま入っていた、あ、部室
へ返すのわすれてた。一度解いたパズルだが、手慰みに、ばらしてみる 今日
の古泉君の話、岡部の話 阪中の話、そういえば、今日はキョンと話してない
なぁ なんか暗い顔してたし、あいつそんなに、成績わるいんかな
 
チャチャチャーンチャチャ
着信音? こんな時間にだれだろう
 
「はい」
「古泉です 夜分失礼します」
「古泉君 なに?」
「明日の放課後お時間をいただけないかと思いまして」
「え、いいわよ」
「涼宮さんにご提供しているパズルもネタが尽きましてね、できれば、
明日ご一緒に」
「作者さんのとこ?」
「いえ、あれはまた別の機会に、今回は、僕がネタの仕入をしている店に
ご招待をと、できたら2人で」
「なんで?」
「いえ、ここは、涼宮さんと共闘して、まず長門さんを攻略しようかと、
朝比奈さんとキョン君と相談するのはむずかしそうなので」
「ふーん、そうゆうことなら 協力するわよ、あたしも有希の悩んでる
顔みたいし」
「それでは、放課後できれば直接 駅前に」
「うん、じゃあ明日」
 
うーん やっぱり古泉君って如才ないわよね
 
組み上げたパズルはやっぱり、一つパーツが余る。
 
あーもう

【足りない欠片】
 
秋の黄昏にまけないぐらいめいっぱい黄昏ている俺は、とぼとぼと帰宅。
明日のためにその2 母親との家族会議に臨んだ、岡部からいただいたありが
たい資料を元に開催された会議の模様を中継する気はさらさらないが、結果と
して、まあ、文化祭も終わったことだし、ここらへんで気合をいれて学業に邁
進する必要があること、まだ小学生の妹がいる身としては、当然下宿などとい
う余計な出費が考えられないこと、また出来れば国立への夢は捨てないでがん
ばること、そのためには、すぐにでも予備校に通うための学費がだせること、
とにかく今時 人に聞かれて恥ずかしくない程度の大学に入らなければならな
いこと などなどなど。
 
やれやれ
 
上記のような内容、箇条書きにすればほんの30分程度の話に過ぎないのだが、
延々繰返しで聞かされるには一種の拷問であろう、永遠に続くかと思われたが、
妹のおながすいたーの声に救われ一時開放の身となった、よくやった妹よ。
 
夕食後に父親を含めた明日のためにその3の気配を察知した俺はそうそうに
約束があるといって家を飛び出した。
 
行くあてなんぞないんだかな。
 
あてもなくふらふら歩く、秋の夜風が身にしみる、たぶん気温が低いせいだけ
はないだろう、気が付くと駅前の公園近くまで来ていた。
 
水銀灯で照らされたベンチに人影がある、
 
「長門」
「なに」
「なんだ、こんな時間に」
「散歩の途中で休憩」
「ほんとか?」
「信じて」
「ああ、信じるさ」
 
相変わらず、セリフが原稿用紙一行以上にならない奴である。
でも、ありがたい、むしょうに人恋しかったからな、ひょっとした長門、
どっかで俺のこと見てた?
 
「安心した 今日のあなたは 不安定だった」
「そうか」
「そう」
 
沈黙も悪くない、そんな思いがする。
 
「そういえば、長門はどうするんだ?」
「なに?」
「来年はまだいいとして、その後のことだ」
「まだ決定はされいていない」
「まあ、そうだろうけど」
「多分、私は一度帰ることになると思う」
「なぜ?」
「体がもたない、この体はもう5年つかっている 気が付いた?」
「なにに?」
「私という個体はあなたから いろんなものをもらった、コンタクトのスキル
の向上も出来た でも あたしは肉体的に成長しない、このまま観察を継続す
るのは不自然」
「そうか でもいつまでも若いってのもいいんじゃないか」
「あたしの肉体は若いではなく、幼い」
「でも似合ってるぞ、その体」
 
なんか卑猥な感じがする言い方だが、それよりたいしたもんである、あの
長門が会話を続けようと努力している。つたない言葉だけれど、いやからこそ
長門の想いがつたわってくる。そんな気がする、多分この一年でもっとも
変わったのは、長門なのかもしれない。
俺は長門に充分なことをしてやれたのだろうか?
 
「残酷だな、時の流れって」
「残酷って」
「変らずにありたいと願っても 変ってゆくものがある、変わりたくても変れ
ないものがある」
「あなたには、感謝している 私は、一度帰ったとしても、またあなたに
会うためにここに戻ってきたい そう願っている」
「待っているさ、長門が新しい体で戻ってくることを あ でも そうすると
俺は長門かどうか判らないってことになるのか?」
「そんなことはない、大丈夫 あなたには判る」
「そうか」
「そう」
「でも、まだまだ先の話だな、まだ1年半は 今のままなんだろ」
「そう 先の話」
 
たぶん、夜の公園のベンチで俺たち2人は まるで恋人同士のように見えたか
もしれないまあ誰かがみてればの話だが
 
すっかり遅くなって帰宅したところ、本日の家族会議の続きはなく、俺はその
まま部屋に戻った、さっきの長門との話を思い出しながら、昨日のパズルをい
じってみる。
 
やっぱりパーツが足りないだろ これ

【インターミッション】
 
彼と分かれて、マンションに戻る、帰り際の彼に顔には少し生気がもどったよ
うにみえた
これでよかったのだろうか、彼の助けになっただろうか
 
「少し軽率じゃない、有希」
 
声がかかる、喜緑江美里 あたしと同じインターフェイス、でもあたしより
ずっと安定性の高い次世代モデルの彼女 そしてあたしが異常行動を起こす
ことがないかの監視役
 
「観察対象への過度の関与は観察結果へ影響を与えるわ」
「問題ないレベルと判断した 今日の彼は明らかに不安定」
「本来なら涼宮ハルヒに対応させるべきだったんじゃない?」
「そんなことは無い、涼宮ハルヒは現在、彼を支える精神状態では無かった」
 
本当にそうだったか、そうあって欲しいという 私の願望
 
「まあ、今回はいいわ でも有希 あなたが同じ過ちを犯す道を辿るようなら
私は容赦しないわよ 涼宮ハルヒと同様、彼もわれわれの重要な観察対象」
「わかった」
 
冷たい風がうなじを通りぬけてゆく
 
私はまた狂い始めているのだろうか


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