まだまだ寒さが残っているがもう菜の花が芽吹く季節になった。
1年程前に結成されたSOS団は右往左往ありながらも無事に続いている。
最近思うのだが何かがおかしい気がする。何がおかしいのか、と聞かれると
俺も困るのだが変なもんは変としか言いようがない。
宇宙人や未来人、超能力者が普通に出入りしているだけで十分変なのだが
まぁ、それは置いておこう。そんなこといいだしたらキリがないしな。
こんなことを考えてたのも一瞬でもはや生活習慣の一部になりつつある
SOS団のアジト、文芸部室へと足をはこんでいた。
ノックをすると可愛らしい声で返事が返ってきた「あっ、はぁい」
今日も似合い過ぎのメイド服を着た朝比奈さんはにこやかに微笑んで
音を立てているヤカンへと駆け寄っていった。
俺は部室を見まわした。
いつものさわやかな微笑みをうかべた古泉とこれまたいつもの無表情で
ハードカバーを読みふけっている長門がいた。
「どうも。涼宮さんは一緒じゃないんですか?」
古泉はチェス盤とコマを用意しながら言った。1回も勝ったことないのに
こいつもよくあきないな。
あいつは掃除当番だと言い俺は既に指定席になりつつあるパイプイスに
腰をおろした。
そんないつもの日常に俺は安心しきっていた。
まさかこんなことになるなんてな・・・。

俺は朝比奈さんの煎れてくれたお茶に今世紀最大の幸せを感じつつ
進級テストについて考えていると「どうしましたか?」
古泉が声をかけてきた。
「ちょっと将来のことを考えて暗澹たる気分にひたってたんだよ」
「いやぁ、あなたがそんな顔をしているのが珍しくて恋でもしてる
んじゃないかと思いましてね」
それはない。絶対にない。
古泉のクスクス笑いを無視しつつあいつ遅いなぁなんて考えていた。
あいつと言うのはわれらが団長、涼宮ハルヒのことだ。
「涼宮さん遅いですねぇ・・・。」
俺と同じことを考えていたのは俺の天使朝比奈さんだ。
どっからみても中学生か小学生の高学年にしか見えないのだが
実は俺より年上らしい。
まぁ、実年齢は禁則事項♪らしいので本当のところは
知らないが・・・。朝比奈さんが何歳かなんて問題は置いておこう。

最近感じていた違和感も忘れ退屈な日常を過ごしていた。
ただ、今日は何かがおかしかった。
何故なのだろう。ハルヒが部室にこなかった。
次の日俺が心臓破りの坂(命名俺)をのぼっていると後からやかましい
男が歌いながら近寄ってきた。
「WAWAWA忘れ物~っとキョン今日もしけた顔してんなぁ」
お前ほどじゃないよと言いつつ俺は冷たい手に息を吹きかけた。
「それより谷口チャックが開いてるがそれはファッションか?」
「なっ、ありがとな。このままだと変態扱いされるとこだったぜ」
元から変態だろ。
「お前程じゃないぜなんせキョンなんてあだ名で呼ばれるなんて
俺は死んでも無理だ」
うるさい。俺も好きで呼ばれてるわけじゃないんだぞ。
なんて無駄なやりとりをしている間に学校についた。
教室にはいると俺の後ろの席には誰もいなかった。
いつもは俺より早く来ているんだがな・・・。
まぁ心配するだけ無駄だな。前にも遅かったことあったしな。
だが、ハルヒはこなかった。担任の岡部に聞いても連絡はきてない
としか言わない。
ハルヒのことが気がかりで授業なんて聞いていられない。
理科の教師が谷口にチョークを投げつけて「おい!谷口!チャック
を開けるな!」と言ってたのも聞き流す。
そして4時限目の終了を告げるチャイムが鳴るやいなや俺は部室棟へ
向かった。もしかしたらハルヒはここに泊まってるんじゃないだろうな
なぁんてありえもしない事を考えながら、文芸室の扉をノックした。

「だっだれ!?」・・・ハルヒの声だ
「俺だ。それより教室にもこないでここで何してる」
ガチャガチャ・・・鍵閉めてやがる。
「キョン?何かよう?用がないなら帰ってよね」
「いや用があるわけじゃないんだがちょっと心配になってな」
「えっ・・・」
そこでハルヒは鍵を開けて顔を出してきた。
目が赤く少し腫れている。何かあったのか?
とたずねると。
「ちょっと親父と喧嘩しちゃってさぁ・・・それで家出してきたの!」
やれやれ。それはいつだ?
「昨日の夜よ?」「ってことは何か?お前は昨日の夜からここにいたのか?」
「そうよ」そこで俺は言葉を失ったね。
ハルヒは笑っている顔を作っているのだが下手っぴすぎる。
笑顔の目の端の方、涙が滲んでいる。
残念ながら俺はそんな顔をしている女性にかける言葉は知らないから
お前にかけてやる言葉はないぞ?古泉あたりならかまってくれるかも
しれんが。

そのまま沈黙を保っているとハルヒが
「しばらく授業にはでないわ。あと、SOS団は休m」
「ちょっとまった。」
俺はハルヒの言葉を聞き終える前に言った。
「理由はわからんが、とりあえず親父さんも反省してるはずだし
心配もしてるはずだ。だから帰ってやれよ」
「なっ・・・」
何故だかハルヒは悲しそうな表情を作って
「・・・やだ」
泣きながら拗ねている子供のように言った。
やだって・・・。
「キョンの家いってもいい?」
俺が何を言おうか迷っているとハルヒが何を血迷ったか
俺の家に行きたいなんて言っていた。
「あぁ、家に帰るのは夜でもいいが親御さんにあんまり心配
かけんなよ」
「遊びにじゃなくて・・・しばらく泊めなさいよ」
今にも泣き出しそうにしてるハルヒに俺はダメだ・・・とは言えなかった。

それから俺は、他のSOS団メンバーに今日は部室にこなくてもいいと
伝えて俺は魔の坂(命名俺)をハルヒと2人で下っていった。
その間に会話はなかった。沈黙。
そのまま沈黙を保ちつつ家に帰ると妹が
「ハルにゃん!どうしたのぉ?キョン君ハルにゃん泣かしたの?
うわぁ~。わ~るいんだわ~るいんだ」
そんな幼稚なことを言っていたがとりあえず無視しておいた。
そして事情をおふくろに説明すると
「ハルヒちゃんなら大歓迎よ。いつまででも泊まっていきなさい。」
「はい!ありがとうございます」おいおい・・・。本当に
何年間も泊まったらどうするんだ?まぁ、困るのは俺だけのようだが。
俺は妹+おふくろの行末を案じつつハルヒと一緒に俺の部屋に向かった。
その間ハルヒは小さく「ごめんね・・・」と呟いたのだが
聞こえない振りをしておく。人間できてるなぁ俺って。

部屋につくなりハルヒの元気は再活動をはじめやがった。
「ねぇキョン!今日の晩御飯は?あと、お風呂にも入りたいんだけど!」
やれやれ、と何度も封印しようと思った語を口にする。
こんな状況でもハルヒは元気な方がいいな。うん。
「風呂は沸いてるから好きにつかえ。晩飯は寿司の出前とるそうだ」
「わかったわ!じゃぁご飯食べてすぐお風呂つかわせてもらうね」
好きにしろ。
俺は3人分くらいの寿司を皿にのせて自室へと運んだ。
さすがのハルヒでも他人の家族の中にはいっていくのは抵抗があるかも
知れないと俺は考えたからだ。
部屋に入ると「遅い!」何て我がままなお客さんだ。
ほらよ。皿を渡して居間に戻ろうとすると
「ぇ?一緒に食べないの・・・」
「戻ろうと思ったが腹が減って動けねぇ。こっちで食べてくかな」
我ながらこれはひどい。
ハルヒは安堵したように吐息をもらした。

「いただきま~す!」
「いただきますっと」
ハルヒは大きく口を開けて寿司を放り込んだ。
うぉ。何故かハルヒが泣きながらバタバタと暴れだした。どうしたんだこいつ?
「キョンお茶!はやくっ!」
どうやら山葵が鼻にきただけらしい。
「バカキョン!遅いわよ!」
持ってきた緑茶を1瞬で飲み干してあろうことか俺の分まで飲みやがった。
それから30分もしないで寿司は空になりハルヒは風呂へ。俺は妹の宿題をやらされていた。
こんなの小学校でならったっけ?俺は習ってないぞ?
と独り言をもらしつつ最終ページにある答えを解答欄に書き写した。
そんな作業を5教科分終わらせた頃に妹が俺を呼びに来た。
「ハルにゃんお風呂にいるんだけどぉキョン君呼んできてぇって言ってるの。
あっ、宿題終わったんだぁ。ありがとね」テヘっと舌を出してシャミセンをどこかに
つれていった。さらばシャミセン。
しかし風呂で用があるって・・・なんだ?背中あらえとか頭洗えとかだったら
速攻で拒否してやる。理由?俺だって健全な高校生だからだ。

風呂場についた。うちの風呂は曇りガラスのドアなので中は見えることはないが
それでも少し変な妄想をしてしまう。あぁくそ。あいてはハルヒだぞ?
そんなことを考えつつ俺はドアをノック。
「・・・キョン?」少しこもって聞こえるのは風呂場に声が反射しているのだろう。
「ああ、んで何だ?用ってのは?」
「・・・がないの」ん?なんだって?
「着替えがないの!急に家を飛び出してきたんだもん・・・」
「俺か妹の服でよければ貸すが・・・妹のは無理そうだな」
「まぁ、仕方ないわ。あんたので我慢する」
俺はとりあえず自室に戻りTシャツとハーフパンツを手に取ったが
そこで気がついた。下着がないな・・・。残念ながら俺はそういう趣味は
ないから女物の下着なんて持ってないんだ。ほっ、本当だぞ?
そんな事を考えながらもう一度風呂場へ。
「なぁ。Tシャツとハーフパンツは持ってきたんだが下着はどうするんだ?」
「あっ、考えてなかった・・・。」
やっぱりな。

その後の会話は思い出したくない。
俺が必死にチャリを漕いでいる理由と相違ない。
「キョン・・・下着だけでいいから買ってきなさいよ!」
「何で俺が?」
「だって裸で外出たらつかまっちゃうでしょ」
それはそうだが・・・。それでも俺が女性物の下着を買いに行くのは忍びない。
妹にいかせろと言ったらハルヒは
「妹ちゃんはキャラ物とか買ってきそうで危険そうだもん」
それにコンビニでいいからさとハルヒは付け足し制服のポケットから1000円札を
俺に渡した。「風邪ひいちゃうから速攻で買ってきてね。3秒以内で!」
おいおい3秒って・・・。それでも風邪なんかひかれたら目覚めが悪いので
俺はチャリを漕ぎ続けている。立ち漕ぎダッシュだ。

コンビニの前で急ドリフト。キレイに停めてコンビニへと入っていく。
織物が置いてあるコーナーの横に女性物の下着が売っていた。
色とか大きさは知らないので一番端にあった白いのを手に取った。
そしてレジへ・・・。今までにないドキドキと緊張感。やれやれ。
これは何プレイだ。店員は「738円です」と平坦な声で言ってくれた。
店員は40代くらいのおばさんだ。若い人だったらきつかったな。
ハルヒに渡された1000円札を店員に渡しておつりを貰うまでの時間が
かなり長く感じた。まぁ、実際数秒しかたってないんだがな。
それから走ってチャリに向かい、急いでチャリを漕いだ。

行きよりも早いと思われるスピードで家に着いた。
息は切れ切れだ。だが待ってもいられないのでハルヒの待つ風呂場へ。
バスタオルを巻いたハルヒが立っていた。
「遅いわよキョン!すっごい寒かった!」
やれやれ。俺の超マッハダッシュ(命名俺)でも遅いというなら
どんな速度ならお前の速いに該当するんだ?
「・・・って」「ん?」「・・・・てけ」
「ああ?」「服きるからでてけ~!」
ハルヒがそう叫んだときこう・・・バスタオルが
ハラリっていうかフワっていうかそんな感じにハルヒの体
から剥がれ落ちた。目の前にはハルヒが生まれたままの姿で・・・。
お互いに違う理由で沈黙した。っていうか俺は気を失っていた。

「・・・ッン?・・・キョン?」
ハルヒの声が聞こえる。だが一度寝た俺はそう簡単には起きないぞ?
「このバカキョンっ!団長様の命令に逆らう気?死刑よ死刑。絞首刑!」
目が半開きの状態で真上を見るとハルヒが涙目で俺を殴り起こしていた姿
が目に入った。
サイズが合わなくてブカブカのTシャツ(俺の)とハーフパンツ(これも俺の)
を着ているハルヒ・・・下から見ると色々と丸見えだぞ?
「あぁ・・・。なんか見てはいけない物を見てしまった気が・・・」
そう言うとハルヒが顔を真っ赤にして俺の襟を掴んできた。
「記憶から抹消しなさい!宇宙人と契約して!アブダクショーンって呼ぶのよ」
やれやれ。無茶言うなよな。もしアブダクションで長門や朝倉なんかが来たらどうすんだ
長門はいいが朝倉にはトラウマがある。しかももう立ち直れないくらいのな。

ハルヒはそのあともギャーギャーと騒ぎ立てていたが、心配して妹が来たあたりで
「まぁいいわ。不可抗力だったし」わかってんならこんなことするなよな。
やれやれ。まぁこれで大きな問題は解決だ。
「お風呂入ったから何か眠い・・・」
子供の用に両手で目をこするハルヒはすごくかわい・・・何考えてるんだ俺
相手はハルヒだぞ?(本日2回目)
「ああ。じゃぁ妹の部屋にでも布団ひいてやる。」
「何言ってるのよぉ・・・あんたのベット使わせて貰うわぁ・・・」
もう寝そうだ。まだ9時だぞ?俺の妹でさえまだ寝てない・・・
ってこいつ今何ていった?俺のベットで寝るって・・・俺はどこで寝ればいいんだ?
「下に布団ひけばぁ・・・。それとも一緒にねるぅ?」
眠気に負けて投げやりだ。
「んじゃぁ下に布団ひかせてもらうな」「うぅん・・・」
ハルヒは覚束ない足取りで俺の部屋へと向かった。
俺もその後ろを追って自室へとむかった。

部屋に入るやいなやハルヒは俺の枕へ顔を埋めた。使ってもいいが
涎はつけるなよと言い残し俺はさっさと布団をしいた。
まだ眠くなる時間でもなかったので長門から借りていた
【宇宙の原生物】とかタイトルのハードカーバーを広げた。
ハルヒが電気をつけるなとかうるさいのでスタンドライトを使って文字をたどった。
そうして何時間たったんだろうな。本に熱中してしまうと時間の経過が
わからなくなる。1人の少女が上から降ってきた。
ここで言う少女は紛れもなくハルヒの事で上と言うのはベットのことだ。
結構派手に落ちたのだが俺がクッション代わりになったらしい。
どうりで腹が今までにないくらい痛いわけだ。

「おい、ハルヒ。起きろーおーい・・・だめか」
そのまま読書を続ける気にもなれずハルヒを起こそうとした。
声をかけても反応が無いので体をゆすってみた。
すると寝ていて力の入っていない体は俺の真横に・・・。
我ながらこれは失敗だったな。俺の顔面とわずか15cmくらいの所に
ハルヒの顔が!?理性のタガが外れそうになったが相手はハルヒ相手はハルヒ
と呟いてどうにか自分を押さえ込んだ。

とりあえず現状をどうにかしないとな・・・。
と、考えている時にハルヒの目から涙が溢れていた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
家族の夢でもみているのだろ。
泣いているハルヒをこのままほおって置くのも何なので体の動くまま
起こさないように弱い力で抱きしめてやった。
明日俺の体が五体不満足になっていても知ったことか。何故かおれはこうしなきゃ
いけない気がした。気のせいかも知れないが。
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