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「あのね、涼宮さんに聞きたいことがあるのね」
「何?」

放課後の教室で、文芸部室に向かおうとしていた俺とハルヒに話しかけてきたのは阪中だ。もちろん返事をしたのはハルヒだ。俺はこんなにそっけない返事はしない、だろう。
「キョンくんにも聞いてほしいのね。相談何だけど…」

阪中の話によると、阪中は面識のあまりない隣のクラスの男子生徒から告白されたらしい。しかし阪中はその男子生徒の事を良く思ってなく断りたいのだが、どう断ったら良いのかわからない。
そこで、中学時代に数々の男をフッてきたハルヒに聞いてみようと考えたらしい。俺は完全にオマケだ。

「でね、明日の放課後にもう一度気持ちを伝えるから、そのときに返事を聞かせてくれって言われたのね」
「そんなの興味ない、の一言で終わりじゃない! 何でそんな簡単なこと言えないのかしら」
「おいおいハルヒ、阪中は普通の女子生徒だぞ? もう少し阪中らしい断り方考えたらどうなんだ?」
「何よ、あたしが普通じゃないみたいな言い方はやめてくれる? それにあたしに相談してきたって事はあたしの流儀を聞きにきたって事よ! あたしのやりかたを言って文句あるの?」
「そうか。それはお前が正しい。だけどそれを押し付けるのはやめろ」
「喧嘩しないでほしいのね」

坂中の言葉で言い争いをやめた俺たちは真剣に協議をし始めた。
ハルヒの席を囲むように座っている。ハルヒと俺はいつもの席で阪中はハルヒの隣にイスを引き寄せて座っている。人が少なくなったので段々と声が大きくなってくる。

「じゃあキョン連れてって『コイツ私の彼氏なの~彼氏いるからむりなのね~』とか言わせて見ようかしら。」
「断じて断る。もっと普通なのはないのか?」

恋愛経験に乏しい俺にはアドバイスができるはずが無く、ハルヒの言った案を通すか通さないか役人的な仕事に専念していた。
ハルヒは非常に非現実的なアイディアばかりだすので俺は却下をくりかえした。阪中は自分の事なのに困った感じはなく、むしろ楽しげだった。
俺は今さらだが阪中は何故ハルヒに相談したんだろうと考えた。坂中の話しぶり、と言うか聞きぶりはハルヒに相談している形を取ってハルヒの過去の恋愛の体験談を聞きだしている感じだった。
不穏なことが起きなければいいのだが、と考えたが阪中なら平気だろうとスルーした。
そういえばルソーの一件以来阪中はハルヒに懐いてる。俺としてはハルヒが学校に溶け込んでる証拠のような気がして少し嬉しく思ってたりもする。
そんな事もあって俺はハルヒのためにも真剣に考えてやろうと思っていた。

「あーもう! 何で却下するのよ!」
「もう少し阪中の事を考えてやれ」
「これ以上はムリよ!!」

「じゃあ涼宮さんが言ってたようにキョンくん連れて行って恋人って言って見ようかななのね」
「こいつの言った意見ではそれが一番マトモなようだが、それは今後に関わるぞ?」

そう、俺の事を恋人と言い切ってしまえば翌日から男子生徒から始まり、少なくともこのクラスと隣のクラスの大半に知られてしまうだろう。
しかも、相手の男子生徒の事を考えると『あれは告白を断るため』とは言えない。

「わたしはいいのね。キョンくんがよければ」
俺が今後の事を考えていると、
「やっぱりキョンくんはわたしじゃ嫌なのね」
とか言われたので咄嗟に、
「嫌じゃあないし噂になるのはこいつのせいで不覚にもなれてしまっているんだ。」
何て口走ってしまう俺はどれだけお調子者なんだろう。ハルヒに助けを求める視線を出すとハルヒは少し不機嫌そうな表情で言った。

「噂になるのは恋愛禁止を掲げているSOS団としては困る事態だわ! 故に却下ね!!」
「じゃあどうするのね」

阪中は困ったように言った。でも俺には多少楽しそうに見える。これだけ考えた挙句振り出しなのだから俺もハルヒもどうしようもなくなっている。
「なぁ、理由なんて言わないで『ごめんなさい』とかだけじゃあダメなのか?何か聞かれても『ごめんなさい』で通ると思うぞ?」

恋愛経験ない俺が口出すのもどうかと思ったが素人の意見も取り入れた方がいいかも知れないと思った俺はそういった。
以外にもこれはシンプルでいいと言う事になってその方針で話を進めていた。ハルヒも阪中も良く考えれば簡単なことなのに思いつかなかったのはきっと2人が生まれつき変わった人間だからだろう。

「じゃあキョンくんと涼宮さんにちょっと実演してほしいのね」


まあ俺はそんな事を言われるとは思わなかったんで驚愕の表情をしていたと思うね。ハルヒほどじゃあないが。
ハルヒは顔を真っ赤にして口をパクパクしている。お前は金魚か?

「いいわ、やりましょう!」
何を言っているハルヒ! ここにはすでに阪中とハルヒしか居ないとはいえ恥ずかしすぎる!
「あたしはフラれるのは嫌いだからあんたフラれる役ね!」
こうなったらハルヒはとまらない。ムダに逆らうと後が恐いし実演が困難になる。覚悟を決めるしかない。

「しょうがない。じゃあ言うぞ?」と俺は恥ずかしいので視線を落とす。
「ハルヒ、好きだ。付き合って欲しい」

ああ、何でこんなに恥ずかしいんだろう。思ったより全然恥ずかしかったな。それより返事はまだなのか?
視線を上げてハルヒを見ると顔を真っ赤にしている。俺は余計に恥ずかしくなってきた。

「涼宮さん、返事しないとダメなのね。返事が聞きたいのね」
ハルヒはハッと我に返って、
「いいわ! 付き合いましょう!」
とか言いやがった。俺が断らなければダメだろ、と言うと咄嗟にでちゃったなんて言い訳してる。

「涼宮さんにキョンくんをフるのはムリそうなのね。ウソでもフれないのね」
「そんなことないわよ! 中学時代にふった事ないから咄嗟に……」
やめろハルヒ! ごまかしてると思われるぞ、と言おうとしたが言えなかった。阪中の言葉に遮られたからだ。

「じゃあ今度は涼宮さんがキョンくんに告白してみてほしいのね」

ハルヒは俺の顔を見て、少し考えてから言った。
「いいわ! よく聞きなさいキョン! あたしはアンタが好きよ! 付き合いなさい!!」
俺はハルヒの勢いに少し焦って思わず、『廊下に響くぞ、他の人に聞かれたらどうする!』と思って廊下の方に目をやると、廊下側に座っている阪中という女の子の期待に満ちた表情で我に返った。
とりあえず任務を完了しなければ、と一呼吸置いた。そしてやはり視線を落として言った。

「すまんがハルヒ、俺はお前とは付き合えない」
「何でよ!」
「すまん…」
「団長命令よ!!」
「すまん…」
「あたしの事嫌いなの?」

俺は一瞬狼狽した。ハルヒの声が少し悲しそうで、演技には思えなく視線をあげた。そこには悲しい顔をしたハルヒがいた。だけど、阪中に目をやると未だに期待に満ちた表情をしていたのでハルヒは気にしないことにした。
「嫌いじゃあない。だけど、すまん。」
「じゃあ、なんでよ…」

ハルヒの声は消え入りそうだった。見ればほんのり涙目だ。ハルヒの表情は呆然としている。なんだか演技とはいえ、心が痛んだ。
「もういいだろう阪中。こんな感じでいいのか? というよりはこんな感じでいいんじゃないか?」
「ありがとうなのね。でも、涼宮さんの悲しそうな顔を見てたら何だか断れる自信なくなったのね。だから明日の朝手紙で断る事にするのね」

たしかに阪中の期待の表情が無ければ俺は断り切れなかっただろう。それほどハルヒの悲しそうな表情は切なげで、守ってやりたくなってしまった。
未だに呆然としているハルヒに目をやった。俺は、もう演技は終わったんだぞ、と言った。

「涼宮さんはキョンくんに演技でもそんなこと言われて、割り切ってるハズなのにショックだったのね。だから反対の事を言ってあげれば元にもどるのね」
そういい残して阪中はさっさと帰ってしまった。俺は、最初から手紙にすればいいのにとか、こんな状態のハルヒをおいて返るなんて、とかいろいろ阪中の批判を思い浮かべたが阪中は本当に困ってたんだろうという結論に着いた。

きっと阪中は手紙じゃあ失礼だと思ったのだろう。そして、今のハルヒには阪中はいないほうがいいと判断したんだろう。そう思うことにする
それからハルヒは呆然として、俺はハルヒを置いていくわけにもいかずにハルヒの前の席に座ったまま過ごした。
そうしてハルヒが回復するまで待とうと思ったが、夕日が落ちてきた頃にはとりあえず家まで送ってやろうと決心した。

「ハルヒ、かえるぞ」
コクリとうなずき立ち上がるが、動こうとしない。俺はいつもと立場が逆だとは思いながらもハルヒの手を取って引っ張った。
俺はハルヒに何て言えばいいんだろうとか、そういえば今日のSOS団はどうなってるんだろうとか考えながらハルヒの家の近くまで送った。長門並みの無言が続いた。
ハルヒの家の近くまで来て、こんな状態でハルヒを家に帰していいのか考えた。頭の中で阪中のセリフが蘇る。

『涼宮さんはキョンくんに演技でもそんなこと言われて割り切ってるハズなのにショックだったのね。だから反対の事を言ってあげれば元にもどるのね』

どうしたらいいのか分からなかったのでとりあえずハルヒの家の近くの公園に連れて行く。ベンチに座らせ、俺も隣に座る。とりあえずあれは演技であることを強調しようと思う。うまく言えるかな。

「ハルヒ、そろそろちゃんと目を覚ませ!」
ハルヒは多少意識が回復したように見えた。今度はハルヒは悲しそうな表情を浮かべている。俺を見て、視線を落として、もう一度俺を見てから消えるような声で言った。
「キョンはわたしが嫌いなの?」

俺は戸惑った。そんな事を言われるとは想像もしていなかった。あれは演技だから気にするな、と言おうとしていたのに言えなかった。
いや、会話の流れを考えるなら十分普通のセリフだし、言わなければならないのだが何故か口にできない。

「ハルヒ、俺がハルヒの事の事を嫌いなわけがないじゃないか。いつも一緒にいて、そんな事もわからないのか?」
「でも、好きじゃないんでしょ? あたしはキョンにとってはその他大勢。あの球場の5万人の観衆と一緒。同じ場所にいるけど深く関わることはない。」

小学生の時の話か。どうしようか迷ってあることを決心した。告白だ。

「ハルヒ、一度しか言わないから良く聞け。俺はお前の事が好きなんだ。さっきの演技とは違って今度は俺の本心だ。」
「ウソよ!」
ハルヒは急に叫んだ。
「だってあたしはあんたに好きって言われたときは演技だってわかってても断れなかった。そのときに気付いた。あたしはアンタが好きって。
でもあんたはアッサリあたしをふったじゃない。気付いたのよ。キョンはあたしの事を好きではないって。本当に好きだったら言えないハズだって。」

返す言葉もない。古泉なら何て言うだろう。いや、変な言葉でも俺は自分の言葉で言わなければいけないんだろうなと考えた。
「もう一度だけ言うぞ? 俺はハルヒが好きなんだ。」
と言ってからさらに続けた。
「俺も心が痛んださ。でも、演技だってわかってたから堪えることができた。きっと俺はハルヒの事を好きだと自覚していた分だけ心の準備ができていたんだろう。
でも、それでも心が痛んだ。ハルヒの気持ちも痛いほどわかる。ハルヒが俺の事をどれだけ好きかも伝わった。…

 …だからハルヒ、お前がそれだけ好きになった人の言う事を信じてくれないか?」

ハルヒは無言でこっちを見た。でも何故だかさっきまでの焦燥感や不安感はなかった。気がつけばハルヒは俺の手を握っている。
「ありがと。キョンのいう事だから信じる。」
「そうかい。」

俺はやっとの事でぎこちない微笑みをハルヒに向けた。そっとハルヒの両頬に手のひらを当て、ハルヒの顔に近づいて目をつぶり、キスをした。
ゆっくりと、甘いキスをしながら両手をハルヒの背中において抱きしめた。
そしてゆっくりとハルヒを放してから見たハルヒの顔は学校帰りの顔とは違って嬉しそうな表情をしていた。その中には安堵の表情も読み取れた。
「帰ろう。ハルヒと過ごす時間はいっぱいあるんだからゆっくり楽しんでいこう。」
そういってハルヒを家の前まで送っていった。

翌日の朝になって阪中の事を思い出しうまくやったか気にもなったが俺にはハルヒの方が気になったので阪中には悪いが気にしない事にした。
そして、教室でハルヒを確認して軽い挨拶をして、じゃあ、あらためて今日からよろしく伝えた。

俺とハルヒの関係は誰にも言わない事にした。
しかし言わなくても誰もが気付いている。
そして、交際を始めてからもハルヒと俺はいつでもどこでも変わらない事に気付いた俺は、谷口とかの言う俺とハルヒの関係は昔から付き合っているようなものなんだなと気付いた。

俺はあれから毎日部活の後にハルヒを送っていき、あの公園で話して、最後にキスをして帰るという日課が追加された。
そのことに幸せを感じながら日々を送っていく。
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