わたしは目を開ける――。

 見慣れた白い天井がそこにある。
 四年の間、わたしは毎日それを眺めてきた。それなのに、たった今、初めて眺めた風景のようにも思える。
 ……なぜか?
 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、古泉一樹、そして彼。四人は帰宅し、今、ここにはいない。依然として、一定の負荷がわたし自身にかかり続けている。
 今現在、わたしは時の狭間にいる。この場所でわたしは、自身から発する、ひとつの不確定な情報にとらわれている。
 昨年、十二月十八日以降を持って同期を拒否したわたしが感じるそれは、言葉で表すのならば――――そう、“予感”。
 これまでにも感じることはあった。だが、その正体が何であるのか、わたしにはうまく分からなかった。しかし今、この、通常より遥かに行動の自由を奪われた状態で、それに気がついた。

 何かが変化しつつあるのだ、と。

 とても永い時間が経ったように思う。
 人類の尺度にすれば、負荷がかかるようになってから、まだ四十八時間。時間というものが与える長さは、めいめい異なる。すべてが過ぎた時、それは永遠となる。そしてこの四年間もまた。
 現在より先に伸びる時間。そこには未知がある。未知は、無限の暗闇となってわたしの周囲を包んでいる。不明瞭な意識の外側に、圧倒的な力の存在を感じる。それはわたしに…………“不安”をもたらす。時が進むことを、そして、その進行があくまでも有限であることを、有機体であるわたしに教える。
 時はすべてを変化させる。不可逆の進行は、特定の時空間にとどまることを許しはしない。三年間の待機も、一年にわたる日々も、戻ることは、ない。
「………………」
 白い天井を眺め、わたしは稼動を終える日のことを考える。いつか必ず訪れる時のことを。そして、残された時間のことを。わたしに許された猶予。それがあとどれだけ残されているのかを。

 まもなく次の時が訪れる。それを感じる。
 わたしや、わたしを取り巻くすべては変化し、新たなデータ――記憶がふえていく。

 記憶。
 それは、わたしが生まれた日に降った結晶と異なり、冬に限らずとも、たえず降りつづけるのだ。

 <了>
 


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