「ちょっと痛い奴だと思うかもしれないけど、質問させてくれ。俺は今の状況が夢だと思っているんだ。いきなり知らない土地に飛ばされたり、知らない高校に来て、知らない同級生と一緒に授業を受けたり、わけがわからん。ここは、俺の知っている世界じゃない。ああ、わかってるよ。夢なんだろ?」
長門以外の3人は、それぞれ顔を見合わせていた。
あー、やっぱり頭がおかしい奴だと思ったか。そりゃそうだ。俺自身何がなんだかわからないのだ。まあいいさ、所詮夢の中の出来事さ。それでも馬鹿にされるのは腹立たしいので、さっさと帰ろう。
「あれ?」
俺は笑われると思ったのだが、予想とは裏腹に古泉は今までのにやけ顔を真顔に変化させ、俺の両肩をつかみ
「あなたの世界について教えて下さい」
顔をものすごく近づけて言った。
俺は、信じてもらえないだろうなと思いながら、昨日までの日常について説明をした。ひととおりかいつまんで話をしたところ、3人そろってでっかいため息をついた。
「どうやら、またとんでもないことになりそうだな」とだるそうにキョン
「そうですねー」とほわほわした笑顔で朝比奈さん。
「世界が終わるわけではありませんし、何とかなりますよ」とさわやかスマイルで古泉。
なぜか、3人は俺の話を無条件で信じたらしい。古泉がしたり顔でこう言った。
「どうやら、あなたは別の世界からやってきたようですね。理由はわかりませんが」
別の世界だって?まるで、長門から貸りた本みたいだな。全く笑えない。こいつら、俺以上に頭がおかしいらしい。別の世界といっても、俺の世界とこの世界はたいした違いなんかないんだ。だいたい、一体なぜこんな事になったんだよ。
「おそらくハルヒの仕業だな」
キョンが右手を頭に乗せ、疲れた様子でため息をつきながら言ったところ、突然ものすごい勢いで部室の戸が開き
「お待たせー」
満面の笑顔の女の子が入ってきた。何か光のような物が彼女の身体から発しているような気がした。それに、この懐かしい感覚はなんだろう?初対面のはずなんだけどな。
その女の子は、肩くらいまでの長さの髪で、黄色いカチューシャをつけており、とんでもなくかわいかった。 ああ、ちょっと勝ち気な目をしているが、こんな笑顔を見せる女の子は、性格がいいはずだ。
淡い期待を抱いていると、彼女は俺がいることに気づいた瞬間、急に目を細め
「あんた誰?」
明らかに不審者を見るかのような態度をとった。
前言撤回、こいつはきっと性格が悪い。
「涼宮さん、どうやら入団希望者みたいです」と古泉。
涼宮っていうのか。っていうか古泉勝手なことを言うな。だいたい入部の間違いじゃないのか?
俺はどういうことだと古泉に目で訴えたのだが、古泉は合わせてくださいとジェスチャーをした。
「へー、物好きもいたものね。あれだけ1年の入団希望者をけちょんけちょんにしてやったのに。あんた知らないの?SOS団には、ただの人間は入れないのよ。1年は勉強してからきなさい」
涼宮だっけ?やれやれ、変な奴。全くもって意味不明だ。だが、俺はこの手の変な女の扱いは慣れているのさ。
「俺は2年だ。ただの人間じゃないってのは間違いないな。そうだな、別の世界からやってきた……、異世界人ですってのはどうだ?信じてもらえないと思うけど」
てっきり馬鹿にされるかと思ったんだが、涼宮は急に真面目な顔をして睨みつけてきた。
「……あんた宇宙人っていると思う?」
「いてもおかしくないな」
何億以上の星があるんだから、その内の1つくらい地球みたいな星があってもおかしくない。
「未来人は?」
「そこらへんを、ほっつき歩いてるんじゃないか?」
タイムマシンの理論はあるんだから、その内タイムスリップができるんじゃないかって淡い期待を抱いている。かなり未来の話で、俺には関係ないだろうが。
「超能力者は?」
「案外、この学校にいるかもしれないな」
地球には人間が数億人いるんだ。人間は脳の能力を数パーセントしか使っていないらしい。だったら、100パーセントの力を使う人間は、普通の人間以上の力、それこそ超能力だって使えるかもしれない。
「なんでそう思うの?」
本気でいるとは思ってないぞ。あくまで常識的に考えた俺なりの理論だ。それにさ、こうも思うんだ。
「んー、いないと思うより、いるって思っていた方がおもしろいだろ?」