「キョン!!作ってきた!?」
「…ん?」
「まさかあんた…忘れてんじゃないでしょうね!?今日で終わりなのよ!?」
「へえへえ、わかっておりますとも。今日で今学期も終了だな。」
「ふーん、ならいいけど!」



……



終業式を済まし、学校を終えた俺たちは家へと帰宅した。

「さぁて、どうすっかなぁ。」

今夜、俺のこの部屋にてパーティーが開かれる。飾り付けは…別にしなくていいか?

「キョン君の部屋って地味だよね~!今日ここでパーティーするんだよね!?」

地味で悪かったな妹よ!っていうか、ノックもなしに勝手に部屋入ってくるんじゃない!

「ああ、そうだぜ。お前も参加するか?」
「え?いいの?わ~い!やったやった!有希やハルにゃん、みんなに会えるー!」

……

本当は、去年みたいに部室で行う予定だったんだがな…鍋物を食うにあたって
火器を使用したことが学校側にバレちまった。言っとくが、俺はハルヒにちゃんと忠告したんだぞ?
火器は厳禁だからやめとけ…と。悲しいことに、それで言うことを聞くハルヒじゃなかったわけだが。
結果、クリスマスや祭日での部室利用が禁止になった。当然っちゃ当然の処置だ。

…俺は思ったよ。ただでさえ教師や生徒会連中には目をつけられているのだから(もちろんSOS団がな)、
少しは自重していただきたいものだ…と。

そういうわけで、俺の家(部屋)へと会場が移された。

……

なぜ俺の家なんだ??と聞けば ハルヒ曰く、団長命令だとか。専制君主ここに極まり。
おおよそ、俺のとこなら思いっきり騒ぎ立てられるとでも思ったのだろう。
相変わらず、俺という人間には人権がないんだ。…まあ、別に気にしちゃいねえよ。
なぜなら、それが涼宮ハルヒだから。…うむ、それだけで理由になるのがまた凄い。

「わかったら、部屋から出てってくれんか妹よ…今から寝ようと思うんでな。」
「えぇ~??昼間から寝ちゃうの?生活リズム狂っちゃうよ~?」
「…今日はどうせ遅くまで飲んだり遊んだりすんだ。だったら、今から寝とこうと思ったんだよ。」
「あ、そっか!なら遅くまで起きとけるもんね!」
「そういうことだ。じゃ、お休みな。」
「ほ~い!」

ドアを閉め、去っていく妹。

……

俺がこれから寝るのには、もう一つ理由がある。それは…

単に眠いからだ。







いや、だって仕方ないだろう…?徹夜して曲作ってたんだ…。
なんとか間に合って、本当に良かった。じゃ、寝るとするか。

「キョンくーんッ!!」
「うわ!?」

再び妹が部屋へと入ってくる。それも、物凄い勢いで。

「部屋に入るときはノックをしろとあれほど!ってか、今度は何だ??」
「お客さんだよお客さん!」
「え?…お客?」
「ハルにゃんがね、やってきたんだよ!」
「へぇ~ハルにゃんがねぇ…」

……

今…何と言った?

ハル…にゃん?

「…本当に来てるのか?」
「ホントホント!ハルにゃん来てるよ!」
「…とりあえず、行ってくる。」

ハルヒ…こんな時間に何しに?パーティーは夜からのはずだが…。
すぐさま階段を下りるべく、曲がり角にさしかかった。…瞬間だった。

「きゃっ!!」
「うおっ!?」

……

1階から上ってきた人間と、俺は衝突しそうになったのさ。

「ちょっと!?あぶないじゃないのキョン!?危うくぶつかるところだったじゃない!!」
「…待て待て待て!どうしてお前がココにいる??」
「家に入っただけじゃないの!?悪い!?」
「いや…玄関で待っとけよ!勝手にあがるなんて不法侵入だぜ…。」
「何言ってんのよ!?ちゃんと、妹ちゃんに許可はとったわよ!!」
「え…?そうなのか?妹よ?」
「うん!入ってもいいよ!って言ってあげたの!」
「それを先に言え!!」
「うえぇ~ん、ハルにゃ~ん!キョン君がいじめる~」
「こんな年下のコを責めるなんて…あんた最低ね!」

すっかり悪者にされちまった。…やれやれだぜ。

「とにかく、部屋に入らせてもらうわよ!」

言葉通り、勝手に俺の部屋へと入っていくハルヒ。

……

「じゃ、二人ともごゆっくりね~!」

外からドアを閉める妹。









「で、一体何の用なんだハルヒ?昼からパーティーを始めるほど、俺は道楽家じゃないぜ?」
「あんたの成果を見せてもらおうと思ってね!」
「…え?」
「ってなわけで、早速パソコン立ち上げて!!」
「??」
「Singer Song Writerを起動させなさい!!」

ま、まさか…

「俺の作ったメロディーを聞くつもりか!?」
「ええ、そうよ!!」

なん…だと!?

「ちょ、ちょっと待ってくれハルヒ!」
「あら、どうして?期限は今日までだったはずでしょ?」
「た、確かにそうだが…。」
「まさか…作ってないんじゃぁ…!?」
「いや、それは違う!!作ってきた!!それは間違いない!!」
「じゃあ、どうして躊躇うのよ!?」
「そ…それは…、」

……

「もしかしてあんた、今日のクリスマスパーティーで披露しようとでも考えてたの?」
「!」
「ふふっ、その顔見ると図星みたいね。なかなかキョンも洒落たことするじゃない。」
「…ああ、そうだよ。だからよ、今はまだ…」
「ま、そんなことだろうとは思ってたわ。でもね、今あたしに聴かせてちょうだい!!」
「いや、しかし」
「あたしにだってね、考えがあるの!何も闇雲に聴こうとしてるわけじゃないわ!」

……

急にハルヒの口調が真剣になった。考え…か?

「…わかった。お前がそこまで言うなら、聴かせてやるよ…特別にな。試聴者第一号様だ。」
「それでこそキョンね!」
「ただし、期待すんじゃねえぞ?俺の出来なんか、たかが知れてるんだからよ。」
「いいからいいから!聴かせなさい!!」 
「せっかちなヤツだな…ちょっと待てって…。」

ソフトを起動し終えた俺は…再生のボタンを押した。…音が流れる。俺の作った曲が…メロディーがな。







……







「……」

鳴らし終えたのはいいが…なぜかハルヒは口を開かなかった。

……

あまりの酷さに面喰い、言葉も出ないってか…?
やっぱダメだったのか… 一応、それなりに懸命に作ってきたつもりだったんだがな。
いろいろと工夫もこなし、音域の高低もお前に合わせてきたつもりだったんだが…。

「…キョン。」

ようやく言葉を発するハルヒ。

「…ははっ、どうやらお前のお気に召すロディーは作れな」
「凄いじゃないのよキョンッ!?あんた一体何したのよ!!?」
「え…?」

「正直、舐めてたわ…あんたがまさか、ここまで作り込んでくるなんて。」
「は…ハルヒ?」
「しかもこれ…途中で転調してたでしょ!?少なくとも、2回はしてたわね…。」
「……」
「曲調だって十分明るいし、文句ないわ… なんとも、とんだ誤算ね。
気に入らないとこがあったら、とことんイチャモンつけてやるつもりだったのに…。」

ハルヒが…俺を褒めてる…??

「…キョンさ、以前あたしが言ったこと覚えてる?」
「…?」
「あたしに合った最高のメロディーを考えてくること…それがあたしのあんたへの注文だったわ。
キョンはそれ聞いていろいろと反発してたけど…、その後、あたし言ったじゃない?
『あたしのイメージ像を捉えられたあんたならきっと作れるわよ!』…ってね。」
「……」
「そして、見事にあんたは成し遂げてくれた…。いくらね、団長命令だからといって
キョンがここまで一生懸命作ってきてくれるなんて…思ってもなかったわ。
きっと、凄い時間と労力をかけたと思うの。素人のあんたがここまでやってくれたんだもんねえ。
そのせいで期末とか、納得のいく点取れなかったんじゃないの?」
「え?あ、まぁ…否定はせんが。」
「バカ。そこまでやらなくても良かったのに。」
「おいおいおい、最高のなんちゃらを作ってこいって言ったのは、他ならぬお前だろう?」
「それもそうだったわね。ゴメン、キョン。」
「…お前が謝るなんて。明日にでも空から岩が降ってきたりしてな。」
「どういう意味よそれ!?…ま、いいわ。何にせよ、あんたがここまで作ってくれたの見ると
あたしもやり甲斐があるってものね。そのために今日ココに来たようなもんだし。」
「…?どういうことだ?」
「はい、キョン。」

そう言って、ハルヒは何やらメモ用紙を渡した。これは…アドレス?

「それね、あたしのパソコンのメルアド。早速だけどね、
この曲のデータ…添付して私のとこに送ってもらえないかしら?」
「?別にいいが…」

早速データ登録して送ろうとする。

「…そうね、欲を言えば もう少しロック調だったほうが嬉しかったかしら。
あまりにポップよねこの曲。これなら、あたしのバッキングも必要なさそうだし。」
「…ああ、本当だ。確かにそうだな…すまんなハルヒ。」
「別に気にすることないけど。面白そうならそれでいいわ!!」

……

やっぱり今日のハルヒはどこかおかしい!だってそうだろう?!
いくら今日がパーティーとはいえ、こんなに上機嫌だとさすがに裏があるような気がしてならない!!
…と思うのは、俺がこれまで団長of団長様から受けてきた幾多ものカースト的扱いによるせいか…

ワケを聞こうとも思ったが、変に刺激してこの前のカレー作りの時みたいにヤブヘビになっても嫌だから
とりあえず…文脈から考えて、日常会話における常套句、いわゆる無難of無難に満ちた
この言葉を捧げようではないか!

「そう言ってくれると助かるぜハルヒ。」
「じゃ、あたし帰るわ。夜のパーティーが楽しみね。」

これはこれであっさり終わってしまった。ちと悲しいもんだ…。

「って、えぇ!?ハ、ハルヒ、ちょっと待っ」

……

行っちまいやがった。…まるで嵐のように。

結局、『あたしもやり甲斐があるってものね。』ってのは何だったんだろう?
パソコンに送った俺のデータを…何か改造でもするつもりなんだろうか…?

…考えたってわかんねえな。相手が涼宮ハルヒなだけ…尚更だ。
とりあえず寝るとしよう。パーティーの時間までな。

……

そういやあいつ、俺のこと褒めてくれたんだよな。…素直に嬉しいと思った。
機嫌が良かったってだけかもしれんが…。それでも、頑張った甲斐はあった…かな。




































時刻は19時。俺たちはパーティーを楽しんでる最中…って うお!?危ねえッ!!

「あ、キョン君ゴメ~ン♪」
「妹よ!!狭い部屋で走り回るんじゃないッ!!」

冒頭からいきなりこれですか…満足に状況報告もできやしねえ。

「別にいいんじゃない?元気があるってのは良いことよ!」

いや、ハルヒ並に元気になられても困るが…っていうか、ここ俺の部屋だからな?暴れられでもしたら涙目だぞ?

「もしも今 あなた達二人がぶつかっていれば、後方のケーキが
丸ごと押し潰される事態へと発展したはず。何もなくて良かった。」

うむ、長門の言うとおりだ。

「心配は無用ですよ。ケーキの一つや二つ、機関のほうに連絡すれば、いくらでも調達できますので。」
「いや、古泉、そういう問題じゃな」
「そういう問題じゃないですよ!ケーキだけならともかく、
キョン君や妹さんはどうなるんですか??ケーキで服が汚れちゃいます!」

おお!朝比奈さんが俺の代わりに言ってのけてくれた!?

「おっと、そこは盲点でした。僕としたことが…」
「はっはっは!一樹君も修行が足りないね!」
「あ、あぁー!鶴屋さん!そこ踏んじゃダメ!お、お菓子が~!」
「!?わ、私としたことが…足元の存在に気付かなかったよ~注意してくれて助かったよ、みくる!」
「おやおや、どうやら鶴屋さんも僕同様、修行とやらが必要のようですね。」
「くぅ~!めがっさ悔しいにょろ…!言ったそばから、まさかこんな…」

…というか、お菓子の袋が無造作に散らかりすぎなんだ!!

「ハルヒ!どうにかしろ!」
「な、何であたしがどうにかしなきゃいけないのよ!?」
「もとはと言えば、床を歩けないくらい菓子ばらまいたのはお前だろ!片づけるから一緒に手伝え!」
「ったくもう、仕方ないわねえ…祭り会場なんだから、好き勝手やらせてくれたっていいじゃない。」
「だから、ここは俺の部屋だッ!!」
「キョン君!私も手伝うにょろよ~!」
「わ、私も!」
「ありがとうございます…鶴屋さんに朝比奈さん。」
「大変のご様子で。森さんと新川さんも呼んで、手伝わせましょうか?」
「古泉?お前は俺の部屋をこれ以上のカオスにしたいのか?」
「ははは、冗談に決まってるじゃないですか。」
「笑ってないでお前も手伝え!」

「……」
「ん?長門?」
「情報の操作と改変を使えば、こんな作業私にとっては造作もな」
「いや、長門…こんな些細なことで能力使う必要は全くないから…!」
「…そう?」
「キョン君キョン君!私、メロンのキャンディーがほしい!」
「妹ちゃん!それなら今片づけた中にあったような気がするわよ!」
「本当!?ありがとう~ハルにゃん!」
「ちょっと待て妹!今片づけたばっかの菓子袋を勝手にあさるんじゃない!!また散らかるだろう!?」
「一々うるさいわねキョンは。今日くらい妹ちゃんの好きにさせてあげなさいよ。」
「そうだよキョン君ー♪今日は祭りなんだから別にいいじゃない!」
「……」

早くもハルヒの考えに毒されている妹を見て、頭痛がしてきたのはたぶん気のせいだ。

「本音言えば、あたしだってもっと騒ぎたいんだから…  あ、そうだ!お酒とかあればもっと」
「切実にやめてくれ!」
「……」
「ん?長門?」
「情報の操作と改変を使えば、お酒を作ることなど造作もない。酎ハイに焼酎、日本酒にウイスキ」
「長門…頼むからやめてくれ…、頼むから」
「?どうして?」
「それはですね、この日本という国においては未成年のアルコール摂取は法律で禁止されているからなんですよ。」
「いや、古泉、そういう問題じゃな」
「そういう問題じゃないですよ!万が一、泥酔して倒れちゃったり、
酔ったはずみでキョン君の部屋が散らかったりしたら、どうするんです!?」

おお!また朝比奈さんが言ってのけてくれた!いやぁ…今日の彼女は冴えてるなあ。

「はっはっは!古泉君、また言葉足りずだったようだね~」
「確かに、鶴屋さんにとっては何も問題ありませんよね。酒豪であるあなたなら。」

しゅ、酒豪!?鶴屋さんが!?

「い、一樹君!?一体何言って…」
「あ、でも鶴屋さん なんかお酒に強そうなイメージ。」
「そ、そんな、ハルにゃんまで…  くっ…!!」

あれは…復讐に燃えている目だ…  古泉、鶴屋さんに仕返しでもされないよう注意しとくんだぞ。
って、マジであなた酒豪だったんですか… まあ、性格が仙人のようなお方なだけあって違和感はないですが。

「ねえねえキョン君、お酒っておいしいの?」
「小学生はまだ知らなくていいです。」
「相変わらず固いわねキョンは。この際パーッといきましょ!?」

お前は俺の部屋を破壊したいのか?それとも単に飲みたいだけか?

「あーもう、しょうがないわね。冗談だってば冗談!半分。」
「半分本気だったんかい。」
「そ の 代 わ り 、キョンにはこのマンネりとした状況を打破してもらうから。」
「…何をするつもりだハルヒ?」
「みんな!!キョンの作った曲、聞いてみたくない!?」

そうきたか。

「キョン君、作曲なんかしてたんだ~?道理で、夜にいろんな音が鳴ってたんだね!」

なんだ、お前気付いてたのか。

「いや~、お姉さんそんなこと全然知らなかったにょろよ?こりゃ、楽しみだねッ!」
「…とは言っても、メロディーだけなんですけどね。」
「それでもめがっさ凄いと思うよ!うんうん!」
「キョン君、ついにメロディーが完成されたのですね。ぜひ拝借してみたいものです。」
「わ、私も早く聴いてみたいです!」
「…気になる。」

なんだなんだ?みんなそんなに聴きたいか?…面白さ半分ネタ半分ってやつか。

「わかったよ。今から鳴らしてやる。」
「ちょっと待ったキョン!!」
「?どうしたハルヒ??」
「その前にね…みんなにこれを配っておくわ!」

そう言って、ハルヒは人数分のメモ用紙を皆に渡す。…何か文章が綴ってある。

「はい、キョンにも。」
「お、おう。」

これは…



『なぞなぞーみたいに~ちきゅうーぎーを(以下略』



正直、第一印象は【意味不明】だった。そうには違いないんだが…どこか精巧に作りこまれてるような気がする。

……

『あたしもやり甲斐があるってものね。』

あの言葉は…こういうことだったのか?

「…ハルヒ。もしかしてこの文章は…歌詞か?」
「そっ!あんたのメロディーにのせた歌詞!」
「お前…まさかあの後、家でずっとメロディー聴きながら、歌詞でも模索してたってのか??」
「ええ…。もっとも、ずっと前から歌詞の題材みたいのは決めてたから、作り込むのに
そう時間はとらなかったけど。所々テンポに合わせたりとか追加削除したりとか、そんな感じ。」
「…そうか。いや、何やらただならぬものを感じてな…なんというか、独特すぎるっていうか…。」
「当然よ。誰が作ったと思ってんの!?」

…ああ、そうだな。この世界観はお前にしか出せないさ。

……

『涼宮さんはあなたが何事にも縛られず、純粋に感じたままのメロディーを
一から作り出してくれることに期待しているのですよ。簡潔に言えば、
涼宮さんは、あなたのメロディーをもとにコードや歌詞を付けたいと思っているわけです。』

以前、古泉にこう言われたことがある。

……

俺が今、一番強く思うこと。それは、どうして【俺】の作るメロディーに
ハルヒはそこまで執着しているのか??ってことだ。なぜ、【俺】でなければならないのか?
もっとも、この理由を尋ねたら、古泉・長門・朝比奈さんの3人に鈍感だの何だの言われてしまったわけだが…。

…まあ、いい。鈍感なら鈍感で、それもいいじゃないか。

「よーし!じゃ、音楽鳴ったらみんなで一緒に歌うわよ!!」
「おー!それは随分と楽しそうにょろ!」
「で、でも涼宮さぁん!私たちまだ一回も聴いてないから、
どういうリズムで歌えばいいのか、よくわからないですよぉ…」
「大丈夫よ、みくるちゃん!!あたしに倣って歌えばいいだけなんだから!」
「何!?ハルヒ、お前はすでにマスターしてんのか??」
「当然!何回も聴きこんだからね。」
「ハルヒ…」

何気ないその一言が、俺には凄く嬉しく思えた。

「みんな紙もったー?じゃ、お願いキョン!」
「あ、ああ。…な、なぁ、再生押すのはいいんだが…俺も歌わなきゃいかんのか?やっぱ?」
「当たり前でしょ!?みんなでって言ったじゃない!?」
「そ、そうか…。古泉、低音同士頑張ろうぜ…。」
「そうですね。当たり障りなく歌いたいものです。」

……

…それじゃ、いくかな。

スイッチ   …オン





……





…♪(間奏~2Aメロ)





「いや~合唱がこんなめがっさ面白いとは、お姉さん思わなかったよ♪」
「みんな!?声が小さいわよ!もっと大きく!!特に、有希とキョン!!」
「……」
「いや、俺はともかく…長門が大声ってのは、ちょっと無理があるんじゃ…?」
「なるべく私も頑張る。だから、あなたは心配しないで。」
「そ、そうか?それならいいんだが…。」
「え、ええっと、次は2番ですよね??」
「そうよ、みくるちゃん!」





…♪(間奏~3Bメロ)





「あら、みんな なかなか慣れてきたじゃないの?」
「キョン君の作ったメロディー、とても口ずさみやすいです!」
「わー、キョン君 凄い凄い!」
「妹よ、褒めたって何も出ないぞ…」
「長門さん、この間奏でギターソロを入れてみてはいかがでしょうか?カッコイイと思いますよ。」
「…考えておく。」
「にょろおおおおおおおおん!!!!!!!!!!!」
「鶴屋さん!?これはシャウトする曲じゃないですよ!?」





~♪(アウトロ)





……





ようやく曲と、そして歌が終了する。

「えっと…ってな具合だったんだが、どうだったかな俺の曲は?」

……

……

え…何だこの空気は??まさかダメだったとかいう

「Yeah------------------ッ!!!!!!!!!!!!!!!」
「MEGASSASAIKO-------------ッ!!!!!!!!!!!!!!!」
「SUGOIDEATH---------ー----ッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「…unique」
「Wooooooooooooooooooooooooo-----ーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「Bravo------------------ッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

……

時間差? & 何でみんな無駄にテンション高いの?(一人除いて)

「めがーっさ!楽しかったにょろー!!」
「わー、楽しい楽しい!」
「あまりの出来の良さに、私…びっくりしちゃいました!」
「…とても、明るい曲調…」
「あなたにはコンポーザーの才能があるようです。」

why??どうしてこんなにもみんな誉めてくれるんだ??陰謀か!?陰謀なのか!?
大きく持ち上げ、後で落とす作戦なのか!!?いや、朝比奈さんもいるからそれはないだろう…

……

本当にみんながそう思ってくれてるのなら…。いかん、なんか照れるなこういうの。

「みんな気に入ってくれたみたいね!?良かったわね~キョン!」
「お…おう。」

実感はないけどな。正直、みんな場に酔ってるってのもあるだろう。
それを差し引いても嬉しいことには変わりないが。

「お前こそ、作詞ご苦労だったな。」
「当然よ!むしろあたしの協力があったからこそ、ここまで盛り上がったとも言えるわ!感謝するのね!!」

ここで謙遜したりしないのが、なんともハルヒらしい。

……

しかし、よくよく考えればその通りだ。面白おかしい意図不明の歌詞だったからこそ、
みんな雰囲気に任せてヒートアップしてたとも言える。いや、むしろ比率としてはそっちのがでかいだろう。

「素晴らしいですね。キョン君と涼宮さんの努力の賜物、と言ったところでしょうか?」
「古泉君いいこと言うわねー!ま、共同作業の成果ってやつ?」

実質的にはほとんど個人作業だな。まぁ、ここは合作といったほうが適切なような気もする。

…しかし

共同作業と自ら名をうってるところを見ると、ハルヒ自身は一連のこの盛り上がりを自分一人だけの手柄に
するつもりはないらしい。やっぱり何かおかしいな今日のハルヒは…いつもなら百発百中真逆の行動をとるはずだ。

「それってつまり、キョン君とハルにゃんの愛の結晶ってことだよね♪」

何か変な言葉が聞こえたが、無視する。

「朝比奈さん、音は何を使います?」
「キーボードのことですか?そうですね…やるのであれば、
キラキラしたような音を使ってみたいですね!古泉君はどうするの?」
「僕は…そうですね。基本ハイハットでいきたい感じですね。」

……

「有希!有希!ギターのことなんだけどね…!」






…気付けば、俺の目はハルヒを追っていた。どうしてかはわからないが…何か気になるものがあった。

「みくるちゃん!この曲、キーボードの役割はでかいわよ!!」

「古泉君!ドラムはね、出だしからこう…!」

…ハルヒ。

「え?あの歌詞はどういう意味かって??そんなのあたしだってわかんないわよ!
なんとなく、想像に任せて書いたってだけ!!あははははっ!!♪」

……、

ハルヒ…楽しそうだな。本当に楽しそうだ。幸せそうな顔を見れば…すぐわかる。

……

どうしてだろうな?こういうときに限って、昔のことが思い出されるんだ。










……










『…バカなことを。仮にも神の化身であるあたしが、そんな考えをすることは許されないわ…。』
『化身である以上、これからもずっと神の意志に束縛されて生きていくのは自明で…。』

あのときのアイツの目は、死んでいた。そんなアイツと、俺は出会った。

『それでね…そのときは、これまで自分が神の代行者だったって記憶を、消したいと思ってる。
だって、そんな記憶があったら一人間として楽しく生きられないもんね。』
『…それいいわね!!ぜひ神に懇願…いや、干渉してみせるわ!あんたと一緒なら何か楽しい感じがするし…!』

楽しく生きたい。ただ、それだけだった。

……

『…あたしね、あんたと会えて本当によかったと思ってる。
だって、あんたがいなきゃ…今のあたしはいなかったんだもんね…。』

ちょうど1か月前だったか…ハルヒからこの言葉を受け取ったのは。…遠い昔に感じる。






ハルヒ…伝えとくよ。記憶をなくしたお前はな…昔のことは何一つ覚えてないけど、
そりゃぁ、楽しく生きてるぜ。現に…今もこうやって笑ってる。

だからさ。どうかそんなハルヒを…いつまでも、温かく見守っててくれよな…。

ハルヒ…。本当に、おめでとう…っ


……


……


……、


…、


「きょ、キョン!?あんた…泣いてんの…?」

……

え…?

俺は…泣いているのか?

「ちょ、ちょっと、大丈夫??」
「キョン君?調子でも悪いの…?」
「あらら、どうしたにょろ?お姉さんハンカチでも貸してあげよっか?」

…なんてザマだ。思い出しただけで涙腺が弛んじまったのか?
弛むくらい、あのときのハルヒを思わざるをえない状況だったってことか??

「いや…なんでもない。気にせんでくれ。」
「気にするなってほうが余計気になるんだけど。何かあったんなら聞くわよ…?」
「ハルヒ…」
「だって…心配じゃないの。」
「……」
「……」

「くっ!はははは!!」
「な、なぁ!?」
「単に目にゴミが入ったってだけなのに…まさかそう来るとはな。ははっ、面白かったぜ。
お前の思い詰めた顔なんか、なかなか見れるもんじゃないからな!」
「…ひ、人が真面目に心配してりゃぁ…!!よくもバカにしてくれたわね!?」
「気付かなかったお前が悪いんだぜ。」

俺は部屋から出て行く。

「あ、こら!?待ちなさいキョンッ!!みくるちゃん!!キョンを捕まえて!!」
「え…?ふぇ、ふぇええ??」
「あっはっは!この展開は想像してなかった!キョン君もなかなかやるねぇ~」
「あぁ、もういい!!あたしが探しに行く!!」
「まったく…喧嘩するほど仲が良いと言いますか、何というか…。」
「……」

「ねぇねぇ、キョン君とハルにゃんどこ行ったの?」
「え、ええっとね、今ちょっとややこしい状況になってるみたいだから…
妹ちゃんはこっちで遊びましょ?お姉さんね、今日はトランプもってきたの♪」
「わー!みくるちゃん見せて見せて!」
「みくるー!私も混ぜるにょろよ!」
「しかしですね、僕は思うんですよ。」
「……」

「こういう雰囲気こそ、SOS団なのではないか…とね。」
「…私もそう思う。」

























はぁ…どうすっかなぁ俺。勢いで外に飛び出したはいいものの。調子に乗りすぎた。やりすぎた。
いくら誤魔化すためとはいえ、あそこまで奴を挑発して一体俺は何がしたかったのか??
次に奴と対面するとき、一体どういう顔をしてればいいのか??お先真っ暗以外に形容の言葉はない。

というわけで、しばらく中へは入れない。入ろうと思えば物理的に入れるが。俺が入りたくない。
…近くの自販機まで歩くか。たまには、夜風に当たりながらの散歩も悪くないさ。

……

近くの塀から、やけに賑やかな声が聞こえてくる。家族でパーティーでも開いてるらしいな。
…誰かの誕生日か?いや、今日に限ってはそれは違うだろう。なぜなら…、などと考えているうちに、
気付けば自販機だった。さて…何を買おう。寒いからHOTコーヒーにでもするか?

……

小銭を出そうとしたところで俺は、意識を奪われた。不意に視界に入った…その白い何かに。

「これは…」

…まあ、時期的に考えて答えは一つしかないわな。もしこれが火山灰や紙吹雪だった日にゃあ、
それは地球の終わりだ。特に後者が一体どういう状況なのか、それはそれで気になるが。

…見たのは1年ぶりってとこか。12月に入って初めての雪だ。それも、まさか今日12月24日に降ろうとは…
なかなか考えさせられる状況には違いない。クリスマスイヴなだけにな。

「…それにしても。」

あまりのタイミングの良さに…つい言葉を詰まらせる。まるで誰かが意図的に降らせたかのごとく…
それはそれは、完璧なまでにホワイトクリスマスだったからだ。
…誰かがって、一体誰が?神様か?ははっ…とんだ洒落た神様だなそりゃ。

……

いや…今の表現は不適切だったかもしれない。その【神】も、今となってはもはやいないのだから。
仮にいたとしても、雪なんて降らせてくれねえよ…あの【神】は。




…神か。まさか…な。




なぜか、あいつの顔が思い浮かんだ。もしかしたら、この雪を降らせたのは【ハルヒ】だったんじゃないか…
一瞬そう思ったが、それもすぐ消えた。だって、あの【ハルヒ】は…もういねえんだからな…。

「あ、キョン!!ようやく見つけたわよ…っ!!」

噂をすれば何とやら…突然の奴の声に、俺の心臓は止まりそうになる。
こいつ…!?まさかここまで追いかけてきたってのか!?いくらなんでもそれは予想外だったわ…
何も準備しないままラスボス戦へと突入する感覚と似ている。しかし、世の中には
『窮鼠猫を噛む。』という言葉がある。こうなってしまった以上、後は全力で奴と対峙するだけだ。

「ハルヒよ…さっきは悪かった。お詫びにジュース一本おごる!だから、それで勘弁してくれないか?」

これが俺の全力だった。

「あたしも安く見られたもんね?そんなんで、あたしが許すとでも思ってんのっ!?」

そして、案の定それで許してくれるハルヒ様ではなかった。

「…っていうのは嘘。こんなイヴの日に降る雪を見てたら…怒る気なんか無くしちゃった。」








……








「とか言いつつ、ちゃっかりおごってもらうんだなお前は…。ほう、俺と同じくコーヒーか。」
「あのね、おごるから許してって言ったのはあんたでしょう?!バカね。そんなこと言わなきゃよかったのに。」
「あぁ…そうだな。そうなんだろうよ。…にしても、よく許してくれる気になったな…?いくら雪が綺麗とはいえ…。」
「…そうね。自分でも不思議な感じ。だってこの光景を見てたら…何て言えばいいの?幻想的?
目に焼き付けとかないと、なんかもったいないって感じがしたの。ホワイトクリスマスとは言ったものね。」
「幻想的…か。わからんこともないな。」

……

…やけにハルヒの様子がしおらしいと思えば、そのせいか。

「ホント、不思議な気分。怒ってたのがどっかいっちゃったから?
今ならあたし、どんなことでも受け入れられそうな感じ。さすがに、悪口や暴言は論外だけど。」

こちらに視線を移すハルヒ。って、そんな恐ろしいこと言えるわけがないだろうッ!?
敢えて自らを滅ぼさんとする愚行、俺は絶対犯さんぞ!?…あ、さっきのはノーカウントな。

「つまり、今のあたしはそれくらい寛大ってことよ!」
「…そうですか。」

人差し指をこっちに向け、やけに強調してきた。とりあえず頷いておいたが… 一つ思った。
『それくらい』ってどこまで??いや…そもそも、こいつは本当に『寛大』といえる状態なのか?
…何か無性に試したくなってきんだが。なるほど、これがよく聞く、かの有名な【悪魔の囁き】ってやつか。
って、感心してる場合じゃない…っ!これでまた怒らせでもしたら、それこそ俺終了だぞ…?
しかし、そうとわかっていても口にしてしまう。そんな俺なのであった。

「今寛大ってことは、つまり普段のお前は寛大じゃないんだな。」
「何ですって!?…とは言わないわ。さっき、怒らないって言ったもんね。」
「……」

結果として俺は終了しなかった。…マジで?あのハルヒが??こんなこともあるんだな…

「…ハルヒ。さっきの言葉は…本当だと捉えていいんだな?」
「さっきって…」
「……」
「あぁ…受け入れるってやつ?まあ、そうなんじゃないの?よくわからないけど。」










…ホント、卑怯だよな…。大事な瞬間ってのは、いつも不意に訪れる。今までだってそうだった。
幾多の困難の末、提示される解決法は…いつだって突然現れた。それも、ただ現れるだけではない。
時間制限というオマケ付きだ。そして、今この瞬間だって…同じことがいえる。もっとも、今回はそれらと違って
俺が実行に移さなかったところで、世界が崩壊したりだとかそういうことにはならない。何も変わりはしない。

…変わりはしない。もしかしたら、これからもずっと奴との関係は変わらないかもしれない。
それはそれで楽しいかもしれない。だが…俺は、あのとき確かに約束した。





『キョン…今の言葉、ハルヒにも…ちゃんと言いなさいよ…?
あたしと…約束しなさい…!これは…団長命令……よ……、』





思い出すつもりが、どこからかそんな声が聞こえた…気がした。なんとなくそんな気がしたんだ。

……

そもそも、この雪が降らなかったら俺は…踏み切る勇気さえ出なかったかもしれない。
あいつが降らせたってのも、あながち間違いじゃないのかもしれんな。

…だから、今伝えるよ。お前に言った言葉を、今こいつに伝える。
今度こそ本当の意味で…俺とハルヒの関係は変わる。だから、後ほんの少しの辛抱だ。




どうかそれまで 雪は絶やさないでくれよな?




「ハルヒ…話があるんだ。大事な…話が。」


































天啓(てんけい)とは 天の啓示。天の導き。神の教え。

涼宮ハルヒの天啓 2012年12月24日 第四世界崩壊

本来あったはずの天啓

……

涼宮ハルヒの天啓 2012年12月24日 …雪が降った

本来なかったはずの天啓

【ハルヒ】が雪を降らせた…? 仮にそうだったとして、果たしてそれは『天啓』?
【ハルヒ】が俺たちの成就を望んだ… それこそが天の啓示?天の導き?神の教えだった?




…バーカ。そんなの、もはや天啓ですらねえ。そんな大それた言葉、あいつには必要ない。
昔、俺は奴に言ったんだよ。『誰が何と言おうとお前はれっきとした人間だよ。心に温かみをもつ人だ。』ってな。
なら、この言葉で十分だろう?

応援

…そう。あの日、【ハルヒ】は俺たちの肩を押してくれた。…さりげなくな。

涼宮ハルヒの応援 2012年12月24日 …雪が降った



……



さて、こちらのハルヒさんは応援してくれるだろうか。というのも、カバンの中に爆弾が…

「ハルヒ…ちょっといいか?」
「どうしたのキョン?」
「実は今日提出の宿題があってな…けど、不幸にも今日国木田が来てなくて…。」
「…前にも似たようなことなかったっけ?」
「あったような気がするが…とにかく、そういうわけだからハルヒ!力を貸してくれ!」
「…呆れた。あのね、宿題ってのは自分でやんないと身につかないの!!
人のを見せてもらおうなんて、そんなの言語道断よッ!!…前にもこんなこと言った気がするけど。」
「そこをなんとか…頼む!」
「ダメなものはダメよ。今日までなんでしょ?なら、放課後までまだ時間あるから自力でやりなさい!!」

…やっぱりハルヒは相変わらずハルヒだった。しかも、いちいち言うことが正論だから困る。

「っても、確かあの宿題って結構量があったわよね…
さすがに自力で放課後までは酷か。ねえキョン?昼休み、あたしと図書室に行きましょ。」
「え?」
「わからないとこあったら教えてあげるから。付きっきりで
見てあげるって言ってんの!それなら、放課後までは間に合うはずでしょ?」
「マジか!?そりゃ願ってもないことだが…付きっきりとなると、
昼飯食う時間がなくなるぞ??ましてや俺の理解力しだいじゃ…」
「さすがに抜きってのは勘弁したいけど。でも、要はそうならないよう
あたしが監督してりゃいいんでしょ?何かあったらビシバシ言うから覚悟しときなさい!」
「ビシバシって…図書室だし、あまり騒がしくしたら」
「あんたは自分の身と学校のそんな一規則、どっちが大事なの!?というか、
そんなに図書室が嫌なんなら教室で指導してあげてもいいんだけど。あたしは一向に構わないわよ?」
「いや、やっぱり図書室でいい!」

衆人環視の中、ハルヒとのマンツーマンを見られた日にゃ…顔から火がでるどころの騒ぎじゃない。

……

まぁ紆余曲折あったものの、なんとかハルヒは協力してくれるようだった。…応援ってやつなのかなこれが。

「?何か言った?」
「あ、いや…。面倒かけてすまない、それと、ありがとう… ってのが言いたかったんだ。」
「…素直なのはいいことよ。でも、別に畏まって言うことでもないわ。だって…」



顔を赤らめ、そしてハルヒは言った。



「だって、あたしはあんたの     …彼女なんだからっ!」

 

 

 


Fin


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