「キョン、おはよう、大丈夫かい?」
国木田か、ゴホゴホ、まだセキは出るが熱は引いた。
それに今日は金曜だから、明日明後日はまたゆっくり休めるし大丈夫だろう。
「そう。
 ウチのクラスはどういうわけかインフルエンザになった人が少ないんだけどね」
そう言えば、ハルヒはどうだ?
アイツも一昨日の帰りがけは、だるそうにしていたけどな。
「そうかい。
 涼宮さんは昨日も出席していたよ。
 キョンがいなかったせいか口数は少なかったけど、元気そうで一日中ニヤニヤしていたよ」
……またアイツ、何かたくらんでいるんじゃないだろうな。


国木田と話しながら坂道を登っていくと、小雪が降り始めた。寒いはずだ。
もう12月も半ばだ。
去年のこの時期は、長門による改変で大変だったが、今年は無事に休みに突入できそうだ。
ただし、休み直前の通知票、SOS団恒例のクリスマスパーティー,年越し合宿,初詣とイベントが目白押しなのであまり安閑とはしていられないが。
さて、ロシアで発生し日本中を震撼させている最新型インフルエンザは、国木田の言う通り、どういうわけかウチのクラスを避けていたのだが、地元の短大に推薦入学が決まっていた朝比奈さん経由で感染したらしい。
幸い薬を飲んで一日安静にしていたら、かなり回復した。


教室に着くと、団長様も直前に来たらしく、コートの雪を払っていた。
珍しくポニーテールにしているのだが、それがもの凄く似合っている。 うーん。
さすがのハルヒも寒さには勝てないらしく、初めて見る厚手のコートを着てきていた。
「ハルヒ、おはよう」
ハルヒはそれには答えず、微笑みながら俺を凝視した。
ま、まさか、俺の顔を忘れたわけではないだろうな……
「おはよう、キョン」
いつものハルヒの声だ。 ホッとした。
ほんの数秒のことだったろうが、えらく長い時間に感じられた。
どうも12月は、去年の雪山遭難事件も含めて、何が起こっても不思議が無いような気がする。


……実際、予期せぬ「事件」が起こってしまい、ハルヒが予想外の「ダメージ」を受けてしまう。
そして、この時には、もう、既にその「事件」は俺のすぐ近くで始まっていたのだが、俺は気づきもしなかった……


この日のハルヒは、いつもと変わらず、ハルヒそのものだった。
授業中でもお構いなしにシャーペンでつついてくるし、ろくに授業を聞いているようにも思えないのに教師からあてられると、さらっと答えやがる。
放課後になった。
どうもインフルエンザをなめていたようで、頭がガンガンしてきた。
「どうしたの? キョン」
ああ、どうもまた熱が出てきたようだ。 悪いが今日は先に帰らせてもらう。
「どれどれ」
ハルヒが俺の前に立った。
手を伸ばしてきたので、手の平で熱でも測るつもりかと思ったら、俺の後頭部をつかみ、俺の額に自分の額を押しつけてきやがった。
「うーん、結構熱があるわね。
 部室で少し休んでから帰った方がいいわね」
……たぶん、発熱の半分は今のお前の……
教室内が静まり返っているので、周囲を見渡すとクラスの連中の目がハルヒと俺に集中し、みんな固まっていた。
そりゃそうだよな。
「さあ行くわよ、キョン」
ハルヒは俺の腕を取ると部室に連れていこうとした。
おい、ハルヒ、頼むから今日だけはもっとゆっくりいってくれ。


部室に行くと、もう朝比奈さんと長門と古泉の三人は来ていた。
「キョンくん、大丈夫ですか。
 ごめんなさい、私がインフルエンザをうつしてしまって……」
そんなに心配そうな顔をしないで下さい。
俺がインフルエンザになることで、朝比奈さんが直るのなら本望です。
薬を飲みたいので水をもらえますか。
「は、はい、お水」
俺は昨日医者でもらった薬を朝比奈さんがもってきてくれた水で飲んだ。
「キョン、落ち着いてきたら帰りなさいよ。
 古泉君、送っていってあげて」
「か、かしこまりました」
どうも、朝比奈さんも古泉も落ち着かないように感じるのは、熱のせいなのか。
ウン? 長門もこっちを凝視しているし……
薬も効いてきたようだし、みんなの迷惑にならないうちに、さっさと帰ろう。
古泉、そろそろ帰る。 悪いが付き添ってくれ。 足元がおぼつかない。
「は、はい」
「待って、キョン」
なんだ、ハルヒ? 無理難題なら週明けにはしてくれ、今日は無理だ。
「そんなんじゃないわよ。
 ……キョン、ほんとはキョンが元気な時に言いたかったんだけど……
 クリスマス前にははっきりさせたいから……」
なんだ?
「あたし、キョンのことが好き!
 だから、付き合って!」
いかん、古泉、幻聴が聞こえてきた。 さっさと帰るぞ。
「げ、幻聴なんかじゃありませんよ、正真正銘、涼宮さんの貴方への告白ですよ」
「そ、そうですよ、キョンくん」
エート……
「キョン、今は熱で大変だろうから、帰ってからよく考えてね。
 もしOKなら、日曜日の12時に△△公園まで来て……そして……キスして……
 ……あたし、ずっと待っているから……」
目の前で俺に愛の告白をしているハルヒ似のポニーテールをしたすごい美人はいったい誰だ。
まさか、本人じゃないよな……
俺はすうっと意識が遠のいていった……


俺が意識を取り戻した時、俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。
「あっ、キョンくん、起きた。 良かった、ずっと眠っているんだもん、心配したよ」
妹がいた。
ずっと看病してくれていたのか、ありがとうよ。
この妹は生まれてから病気らしい病気をしたことがない。
自分が経験がない分、ひとが寝込むととても心配になるのか、熱心に看病してくれる。
俺が「ありがとうよ」と言いながら、頭を撫でてやるとニヘラと笑った。
「ねえ、キョンくん、ハルにゃんも古泉くんもみくるちゃんも……それから有希も、みんな、すごく心配していたから電話した方がいいよ」
ああ、そうだな。 あいつらが運んでくれたのか。
「ウン、おととい、あの新川さんが車で」
……そうか……新川さんが……って、一昨日だと!
「そうだよ、キョンくんが運ばれてきたのは、金曜日の夕方だったから」
今は?
「日曜日の…もうすぐお昼だよ。
 そう言えば、ハルにゃんが『日曜日の件は、もし来るのが無理だったら、携帯に電話をかけてくれればいいから、そう伝えておいて』って言っていたよ」
あ、あれは、幻聴では無かったのか?
こうしてはいられない。
「キョンくん、起きたりして大丈夫?」
ああ、こんな元気になったのは久しぶりさ。
妹が、ハルヒがやったように俺の額に額をつけた。
「ホントだ、熱が下がってる」
オフクロたちには元気になったと伝えておいてくれ!


俺が公園についたのは、ギリギリ11時55分だった。
ハルヒのことだから、とっくに着いているだろうと思っていたが、案の定だった。
いつものコートを着て落ち着かない様子で、立っていた。
「ハルヒ! 待たせたな!」
例のごとく「遅い! 遅刻! 罰金!」ぐらいのことは言われるかと思っていたのだが、借りてきた猫のように、
「ウ、ウウン……あたしもさっき来たばかりだし……」
そう言うと、ハルヒは顔を心持ち上に上げ、ギュッと目を閉じた。
確か「もしOKならキスして」って言っていたよな……
俺は心臓がドキドキとしているのがはっきりとわかった。閉鎖空間の時とは全然違う。
緊張が最高潮に達した時、ハルヒを見ると、唇を真一文字に結び、棒立ちになっている。
……キスを待っている感じじゃないよな……
しかもハルヒの肩は小刻みに震えている。
……ハルヒらしくないな……いや、ハルヒらしいと言うべきかな……
俺の緊張は一瞬で解けた。
俺はハルヒの肩に手を置くと、ゆっくりとキスをした。 ほんの僅かの間、唇をそっと重ねただけのくちづけだった。
俺が顔を離すと、目を開けたハルヒが、
「キョン!」
と言いながら俺に抱きついてきた。
俺たちは再びくちづけをした。 今度は長い長いくちづけだった。


「…ベンチ、座るか」
「う、うん」
普段とはうって変わってしおらしいハルヒは、上気させた顔で小さくうなずいた。
お互い、なんか、ぎこちない。
何を話したらいいのか、よくわからなかったが、まずはハルヒが告白をしてくれたことに感謝すべきだろうな。
「ハ、ハルヒ」
「な、何?」
「金曜日はありがとうな」
「ウウン、こっちこそ」
「まさかお前があんな風に告白してくれるとは思わなかったよ」
「エッ????」
どうしたんだ、いきなり立ち上がったりして。
「ま、まさか、金曜に、あ、あたしがキョンに、こ、告白をしたって言うの?」
「あ、ああ」
いったい、どうしたんだ?
「キョン、その時のあたしが何て言ったか覚えている? 言ってみて」
ああ、熱を出してはいたが、一言一句はっきりと覚えているぜ。
「『あたし、キョンのことが好き!
  だから、付き合って!
  キョン、今は熱で大変だろうから、帰ってからよく考えてね。
  もしOKなら、日曜日の12時に△△公園まで来て……そして……キスして……
  ……あたし、ずっと待っているから……』
ハルヒはそう言ってくれたじゃないか」
ハルヒはなぜか怒りを露わにし、周囲の木立を見渡すと、
「ハルカ! どうせその辺に隠れて見ているんでしょう! さっさと出てきなさい」
ハルカ? 誰だ、それ?
ガサガサ
俺の目の前の木立から、もう一人の『ハルヒ』が現れた。顔も髪型も背格好もそっくりだ。
二人の『ハルヒ』の違いはカチューシャの有無ぐらいか。
なんだ、これは。
「へへへ」
「笑い事じゃないわよ! ハルカ」
もう一人の『ハルヒ』が俺の方を向いてペコリと頭を下げた。
「はじめまして、じゃないわよね。
 金曜日に会って、愛の告白までしたし。
 ハルヒの従姉妹の涼宮ハルカです、よろしく」
エーッ!
「ハルヒとそっくりでしょう」
「あたしはあんたみたいなイタズラ好きじゃないわよ!」
訳がわからず呆然とする俺。
しかも、ハルカの後から、朝比奈さん・長門・古泉のトリオまでゾロゾロとでてきたではないか。
唖然とする俺に、ハルカが話し始めた。(ところどころ、ハルヒも口出しをしたが)


ハルカとハルヒの親たちは、父親も母親も一卵性双生児だった。
たまに、双子同士が結婚というのがテレビに出たりするが、ハルヒの親たちもその中の一組らしい。
馬好きだったハルヒたちの母方のじいさんが、双子の高校生の娘を連れて、北海道の涼宮牧場に遊びに行った。そして娘たちは牧場主の双子の息子たちと恋に落ちた。
大学を卒業した後、兄と妹、弟と姉という組み合わせで二組が結婚し、兄が牧場を継ぎ、弟がサラリーマンになったというわけだ。
そして同じ年に兄夫婦にハルカが、弟夫婦にハルヒが生まれた。
父親も母親も一卵性双生児だったせいか、ハルヒとハルカもまたそっくりだった。
休みのたびにお互い行き来はしていた。夏休みにハルヒが北海道に行き、冬休みにハルカがこちらに来るのが常だった。
その時には両方の親にもハルヒとハルカの区別がつかなかった。(ハルカがわざわざハルヒと同じ髪型にしたりしたせいらしい。)そのため、ハルカのイタズラのせいでハルヒが叱られることもたびたびあった。
そこで、ハルヒは目印代わりにカチューシャを買ってもらってつけるようになり、それが習慣になった。
ちなみに、ハルカのいたずらに手をやいていた双方の両親はカチューシャだけはハルカに買ってやらなかった。
今回は先に冬休みに入ったハルカ(北海道の学校は内地に比べて、夏休みが短く、冬休みが長い。)がハルヒの家に遊びに来ていた。
ところが、ハルヒがインフルエンザで寝込んでしまい、その隙に、木曜と金曜、ハルカがハルヒのカチューシャをつけ制服を着て学校に来ていたわけだ。


「いやあ、驚いたわ。
 有希ったら、木曜日に部室に入ったあたしを一目見て『…あなたは涼宮ハルヒじゃない。誰?』って見抜いたんだから」
「キョン! 有希にわかったのに、なんで、あんたにはわからないのよ!
 あたしの方が3ミリ背が高いのよ」
……ハルヒ、3ミリの差なんかわかるわけないだろう。
頼むから長門と一緒にしないでくれ。
「ねえ、キョンくん、バストはあたしの方が1センチ大きいのよ」
お願いだから、胸を突き出さないでくれ。
ハルヒの眉が限界まで吊り上がるから。
「去年の冬はキョンくんが階段から落ちて入院したでしょう。
 ハルヒが泣きながら電話をかけてきたりして大変だったから来れなかったのよ」
「……」
ハルヒが真っ赤になって俯いた。
「今年もメールで毎回キョンくんの話ばっかり送ってくるから、てっきりもう種付けは済ませたのかと思っていたのよ」
「た、た、た、種付けって、な、な、何よ!」
「…種付けとは繁殖のために交尾を「長門! 説明しなくていい!」」
「でも、木曜日はキョンくんも休みで会えないし、SOS団のみんなに聞いたら、まだハルヒとキョンくんは付き合ってもいないって言うじゃない。
 そこで、ここはお姉さまが一肌脱いであげようと思ったわけよ」
「お姉さまって、誕生日は3日しか違わないじゃない」
「お父さんたちを見なさいよ、2時間差でも兄は兄よ」
古泉は、相変わらずのニヤケ顔で二人のやりとりを見ている。
「古泉、お前たちの様子がどうも落ち着かないと思ったら……ハルヒと入れ替わっていたのはわかっていたんだな」
「ええ、そうです。
 僕としては、こちらの涼宮さんが、あなたと涼宮さんがお付き合いをするようにしてあげたい、と言われると協力しないわけにもいきませんので」
てめえ、古泉……
「ごめんなさいね、キョンくん……」
あなたはいいんですよ、朝比奈さん。
「……」
長門、お前が珍しくじっと見ていたと思ったら、こういうわけか。
待てよ、お前ら、まさか俺たちの……見ていたのか?
「ええ、よかったですね」
「涼宮さん、とても可愛かったですよぉ」
「……ユニーク」
「あたしのファーストキスもあんな感じがいいわね。
 ウン? どしたの、ハルヒ?」
ハルヒが真っ赤になり、さっきとは微妙に違う感じで肩を震わせていた。
「み、みんなまでハルカに協力していたなんて……」
「す、すみません」
「ご、ご、ごめんなさい」
「……」
さすがにビビるな、ハルヒの迫力には。
「まあまあ、みんなも悪気があったわけじゃないし、勘弁してあげなさいよ」
「ハルカ! 首謀者が何を言っているのよ!
 あんた、あたしを騙したのね!
 金曜日に家に帰って来た後、あたしに何て言ったかは覚えているでしょうね!」
「そんな昔のこと、覚えていないわよ」
「…じゃあ思い出させてあげるわ!
 『ねえ、ハルヒ、大変よ。
  キョンくんがあたしに向かって、
    ハルヒ、お前が好きだ、愛してる
  って言ったのよ。あたし、何て答えたらいいかわからなくて困っていたら、
    ハルヒ、もし俺と付き合ってくれるのなら、日曜日の12時に△△公園に来てくれ
    そしてキスさせてくれ!
  そう言うのよ。
  キョンくんって情熱的なのね』
 ハルカ、あんたは確かにそう言ったのよ!
 大嘘だったじゃないの!」
……その時点で少しは疑わなかったのか、ハルヒ。
俺はそこまで情熱的に告白したことはないぞ、というか告白をしたこと自体が無いのだがな。
「別にいいじゃない、うまくいったんだから。
 ハルヒだってすごく嬉しかったでしょう」
「それとこれとは……」
「あたしの話を聞いて、顔を真っ赤にして目をウルウルさせていたじゃない、ハルヒ」
「そ、それは熱のせいよ」
「昨日の晩は着ていく服を選ぶのをあたしに手伝わせて、半分徹夜だったわよね。
 ああ、美容に悪いわ」
「だ、だって、寒そうだから服を選ぶのも……」
「新品の可愛いパンツはキョンくんに見てもらわなくてもいいの?」
パ、パンツ?
「ハルカーーー!!!」
「ハイハイ、わかったわよ。
 相変わらず素直じゃないわね、ハルヒは。
 キョンくんのこといらないんだったら、あたしがもらっていくわよ。
 ねえ、キョンくん、あたしと一緒に北海道にくれば涼宮牧場4代目になれるわよ。
 ルックスはキョンくん最愛のハルヒと同じだし、お買い得よ。
 一緒にリアルで将来のダービー馬を育てない?
 ゲームより面白いわよ」
「ダメー、キョンは、キョンは……」
「冗談よ。
 キョンくんのこと取ったりしないから、泣かないの、ハルヒ。
 キョンくん、ハルヒのこと、お願いね、一生面倒見てあげてね」
あ、いや、あの、その……
「ハ、ハルカ、ちょ、ちょっと、何を……」
「何よ、キョンくんとは遊びなの?」
「ち、違うわよ、でも……あの……」
こら、古泉、笑うな。
朝比奈さんも、必死で笑いをこらえないで下さい。


いやはや、ハルヒをここまで手玉に取る人間がいるとは……日本も広いぜ。


さて、ハルカも参加して行われたクリスマスパーティー、年越し合宿、初詣は滞り無く終わった。
ハルカと鶴屋さんは非常にウマが合うらしく、二人が一番盛り上がっていた。
そんな忙しい日々の合間に俺はハルヒとデートを重ね、とうとう結ばれることができた。
お互い初めてだったからいろいろと大変だったがな。
これもハルカのおかげ、なのかな。


冬休みは短い。
すぐに始業式の日になった。
ここ2日ほど、ハルヒの家で重大な用事ができたということで連絡も取れなかった。
俺が学校に着くと、ハルヒは珍しく席にいない。
また風邪でもひいたのか。
俺が心配していると、担任の岡部が入ってきた。
その後からハルヒが……
ウン? ハルヒの後からまたハルヒが入ってきた。
教室中がどよめく。
あのカチューシャの無いハルヒはハルカか?
ハルヒは、北高の制服を着たハルカを教壇に残し、俺の後ろの席に着いた。
「おい、ハルヒ、あれは……」
「キョン、あたしだって最善を尽くしたつもりよ……
 必死になって、抵抗したわ……
 でも……」
教壇ではハルヒそっくりの100ワットの笑顔を浮かべたハルカが、
「皆さん、はじめまして、涼宮ハルカです。
 このクラスにいるハルヒの従姉妹です。
 北海道の□□高校からやってきました。
 実家は牧場でサラブレッドを育てています。
 こちらにやってきたのは、牧場の仕事のために、獣医学部に入って獣医になろうと思ったからです」
あちこちで、ホーという声があがった。
クラスのみんなは、ハルヒの従姉妹で瓜二つの容姿の割に常識的な挨拶をするハルカに安心したようだ。
まあハルヒの強烈な自己紹介と比べればそりゃあ……
それにしても、谷口の目が爛々と輝いているのが気になるな……
ということで、みんな同様に安心しきっていた俺だったが、ハルカは俺を見てニヤリとすると、
「それから、あたしのあかげで、ハルヒとキョンくんは結婚を前提としたお付き合いを始めましたので、皆さん、あたたかく見守ってあげて下さいね」
エーという声とともに、クラス中の視線が俺たちに集まった。
おいおいおい。
恐る恐る後ろの席を振り返ると、ハルヒは机に突っ伏したまま動かない。
ハルヒが小声で呟くのが聞こえた。
「ハルカならそのぐらいのこと言いかねないものね、想定内よ、そう想定内なのよ」
何かを自分に言い聞かせているようだ。
今年は去年以上に大変な年になりそうだぜ。
やれやれ。


そうそう題名に脱字があったぜ。
正しくは「北から来た『小』悪魔」。

 


|