無事ではないような気はするものの、とりあえず進級を果たした俺たちだが、
これといって変わりはなく、いつものような日常を送っている。

今日は日曜日で、全国の学生は惰眠を貪っている頃だろう。

諸君、暇かい?
それはいいことだ。
幸せだぜ。

俺は、暇になりたくてもできないんでな。

日曜日。
ハルヒが黙っているわけもなく、金を無駄にするだけの町内散策・・・
いや、不思議探索の日となった。

今日も既に全員集合ときた。
いいんだ、もう慣れたよ。
もう、奢り役となって一年も経つんだな。

 

「キョン!はやくアンタもくじ引きなさいよ!」

 

分かってるさ。
ハルヒの手に収まった爪楊枝を引いてみる。

印付きか。
周りを見ると、ニヤケ古泉は印なし、朝比奈さんも印なし、長門も印なしを持っていた。

つまり、ハルヒとってことだな。

 

「珍しいですね。あなたと涼宮さんのコンビとは。」
「・・・長門と朝比奈さん襲ったらコロスぞ。」

 

古泉はフフフと微笑んだ。
気持ち悪い。
マジで襲ったらシメてやるからな。

 

「よし!じゃぁ早速行くわよ!」

 

ハルヒは俺のコーヒーをズズズとすすると、伝票を俺に突きつけた。

 

「早く来なさい!ドアの前にいるから!」
「キョン君、いつもごめんなさい。」
「いえいえ。」

 

あなたになら、店ごと買ってやっても構いませんよ。
と言いたいが、そんな金はねぇな。

いつもの様に財布を薄くし、自動ドアを出た。
古泉他二人はもう出発したらしく、希望に満ちたハルヒだけが立っていた。

 

「おっそいわよキョン!気合が足りないわ!」
「なんの気合だよ。」
「あのね!不思議もそんな甘っちょろいもんじゃないんだから!第一・・・」

 

ハルヒは後ろ歩きをしながら、俺に話しを聞かせた。
おい、後ろ道路なんだぜ、ちょっとは注意したらどうなんだ。

と思った矢先、向こうの車線から、ものすごいスピードで車が走ってきた。

おい、ハルヒ、危ねぇぞ!

 

「え?なに言ってんのよキョ・・・」

 

車は、ハルヒのすぐ後ろに迫っていた。
考えている暇はない。
俺は自分の出せるだけの力で、ハルヒを遠くへ突き飛ばした。

視界からハルヒが消えると、車が目の前にいた。


*******


感覚がない。
どこからかざわめきが聞こえる。
そして、耳元では、いつものあの声がしていた。

 

「・・・ョン・・・キョン!」

 

ハルヒが、顔面蒼白の面持ちで俺に寄り添っていた。
頭がガンガンする。
体もバキバキだ。
周囲の声も聞こえなくなってくる。

やっと分かった。

ああ、俺はきっと死ぬ。

何気なく見やった道路は真っ赤に血染めされていた。
俺の血だ。

ハルヒは助かったんだよな。
神様が消えることはなかったぜ、古泉。
長門の観察対象もなくならない。

ああ、でもせめて最後に朝比奈さんのお茶をー・・・

 

「キョン!?だめ!目を閉じないで!開けて!」

 

そしてハルヒ、俺、楽しかった。
最期に、ハルヒと不思議探索しそこねたな。

楽しかったぜ、ハルヒ・・・


突然、目の前が真っ暗になった。


闇にいる。
ただひたすら、漆黒の闇の中にいる。

 

キョン・・・

 

ハルヒなのか?

 

お願い、目を開けて・・・

 

俺は、開けているつもりなんだ。
どこにいる?
どこで泣いている?

 

キョン・・・!

 

その声と同時に、世界に光が差し込んだ。
いつかの閉鎖空間のように、バリバリと裂けていく暗闇。


目の前に、ハルヒがいた。


「ハルヒ・・・!」

 

思わず、叫んでいた。
しかし、ハルヒの目は俺を見ていない。
涙が溢れるだけだ。

そして、俺の真後ろを、さも俺がいないかのように見つめていた。

いや、俺はいないんだ。

 

「キョン・・・!嫌よ!バカキョン!目、開けなさいよ!」

 

振り返ると、そこには俺が寝ていた。
蘇る思い出。
ここは、消失事件の病室だ。

そこに、俺が白い顔で寝ていた。

血なんてどこにも付いていない。
まるで、寝ているかのように・・・

俺は、死んでいた。

そして、今の俺は、幽霊だ。
ついに、異世界人になっちまったか。
天国という異世界のな。

 

「キョン!」
「ぅぇっ。キョンく~ん!目を・・・目を開けてくださぁ~い!」
「・・・。」
「・・・。」

 

珍しく、古泉も無言だった。
いつものニヤケ面なんてどこにもねぇ。

みんな、俺を見ていない。

ただ、

ただ、一人だけ、

長門と、目が合った。


******


病室から団員が帰る時、長門は俺に

「私の家に来て。」

と、聞こえるか聞こえないか、の声で囁いた。
ドアに触れることはできない。
でも、壁を簡単にすり抜けられた。

幽霊って、どこに逃げても付いてくるって本当だったんだな。

そんなことを考えられるほど、俺は冷静だった。

軽々と長門のマンションの壁をすり抜けると、いつものように置物状態の長門がいた。

 

「長門・・・。」
「待っていた。」
「お前、俺のことが見えるのか?」
「そう。」

 

やはり、万能選手だ。

 

「あなたが今日この世界から居なくなるのは、規定事項だった。」
「なんで言ってくれなかったんだ?」
「私にその権利はない。権利を握っているのは、情報統合思念体。」
「朝比奈さんも言ってくれなかったぜ。」
「朝比奈みくるも、朝比奈みくるの異時間同位体も、それは禁則に該当する。」

 

やっぱりな。
そんな未来を左右すること、未来人が言ってくれるはずがない。

朝比奈さん(大)も。

 

「朝比奈みくるの異時間同位体からの伝言を預かっている。」

長門は、俺にファンシーな封筒を差し出した。
朝比奈みくる と丸っこい字でかかれた封筒。
いつだったか、下駄箱に入っていたっけ。


キョン君へ

ごめんなさい。
私はそちらへ向かうことができませんでした。
ヒントもなにも言えず、本当にごめんなさい。

そっちの私を面倒見てくれて、ありがとう。
あなたがいたから、今の私があるの。

あなたに出会えてよかった。

朝比奈みくる


向かうことができない、てことは、来ようとしてくれていたんだな。
ありがとう、朝比奈さん。
俺も、朝比奈さんがいてくれてよかったです。
でなければ、あの消失事件で、この世界に戻ることができなかった。

いや、それ以前に三・・・いや、四年前の七夕に行かなかったら、
きっとハルヒにも出会えていなかったさ。

 

「俺、もう戻れないのか?」
「戻れる可能性はある。私もその可能性のおかげでここにいる。」
「どういうことだ?」
「私は一度、死を経験している。」

 

どういうことだ?
長門は、情報ナントカに製造された人造人間なんじゃないのか。

 

「私は以前、普通の人間だったという記憶がある。
しかし、私は突然死に遭遇した。そこで彷徨い、偶然、情報統合思念体に出会った。
感情などの人間性を抹消し、データや情報統合思念体との連結を備え付けられた。
そして、涼宮ハルヒの観察を命じられ、今に至る。」

「俺には詳細が分からんが、お前は元幽霊ってことなんだな?」

「そう。以前、物語を書いた時に、それを題材に書いたはず。」

 

思い出すは、生徒会長に命じられ、無理やり作ったあの冊子。

幻想ホラーとい難しいお題の話を書いてたっけ。

どこかリアリティがあるのに、なんのことか分からないあの話。

 

私は幽霊だったのだ・・・みたいなこと書いてたよな?

それって、長門、お前自身のことだったのか。

死んだ記憶だけを残されて、自分が何なのかも分からなかった長門。

自分の棺の上にいた人物・・・

それが情報統合思念体の一端末・・・

そこで長門は情報統合思念体と繋がり、自分を有希、と名付けたってワケだ。


「そう。ただし、あなたの可能性は、情報統合思念体と結合することではない。」
「じゃぁ、なんだ?」

 

来人になって、TPDDを備え付けられるとか、
超能力者になって、あの神人を倒せ、とかか?

しかし、長門はまた違うことを言った。

 

「あなたにとっての可能性は、涼宮ハルヒに必要とされること。」

 

古泉は以前、ハルヒは神だと言っていたっけ。

その神の力を最大限に利用し、生きろ、と言っているわけだ。

 

俺だって生きたいさ。

やり残したことだらけだ。

 

でも、俺が自分の意思だけを貫いたら、どうする?

俺が死ぬのは規定事項のはずだ。

俺が生きれば、未来にずれが生じるだろう。

また、朝比奈さんがベソかきながら走り回るに違いない。

 

・・・俺だって、考えていないわけじゃないんだぜ。

 

「それはできない。」

 

長門は俺をじっと見つめたまま動かない。

 

「俺も生きたいけど・・・そんな、ハルヒの力を利用するなんてできねぇ。」

「そう・・・」

「死人は生き返らないんだ。」

 

長門はなにも言わなかったが、少し、悲しそうな表情をした。

長門には色々お世話になったさ。

朝倉に殺されかけたとこを、2回も助けてくれたんだ。

無限の八月を一人、記憶を持ったまま、助けも呼ばないで。

もっと、俺を頼ってほしかったさ。

なにもできなくとも、支えくらいならしてやれる。

 

「・・・ありがとう。」

 

長門は小さな声でそういうと、

本当に僅かだし、気のせいかもしれない。

でも、

少しだけ、笑った気がした。

 

「俺がこの世界に留まれるのは、いつまでなんだ?」

「涼宮ハルヒが望むなら、いつまでも。彼女には、あなたに対してやり残したことがある。」

「それを解明すればいいんだな?」

「そう。」

 

幽霊がいつまでも人間界にいていいもんじゃないからな。

 

「ただ、彼女がどんな非常識なことでも思ったことを実現させるということを忘れないで。」

「ああ、分かったよ。」

 

長門は、いつもの平坦な声で、更に続けた。

 

「あなたと私が話せるのは、最後。私はもうあなたを見ることができなくなる。」

「期限がある、ということなのか?」

「そう。その期限は、あなたがこの部屋から出るまで。」

 

えらい急な話だ。

いや、でも幽霊と人間がいつまでも話をするのは、変だな。

 

「うまく言語化できない。ただ・・・あなたには、色んな感情を思い出させてもらった。」

 

俺が?

長門に感情を?

 

「それらを全て、言語化するのは難しい。」

「俺でも、役にたったか。」

「感情が皆無だった私に、あなたはたった一つの光だった。」

「光・・・?」

「あんなに気にかけてくれたり、完結に言えば、大切な人であった。」

 

俺なんて、何もできてないぜ。

なんせ、何の能力もない凡人だ。

長門には、色々迷惑かけっぱなしだったのに。

 

「あなたと私がSOS団で繋がりを持てたのは、規定事項と信じている。

詳細は不明。でも、繋がりを持てて本当によかったと思っている。」

「俺も、長門と一緒に図書館に行けて、楽しかったぜ。」

 

また 図書館に

 

約束、守ってやれなくてごめんな。

 

「ハルヒを頼んだぞ。朝比奈さんと、古泉にもよろしく言っといてくれないか。」

「了解した。」

「あとのことはまかせろ。絶対に世界を終わりにしたりしねぇから。」

 

長門は小さくこくり、と頷くとそれ以上はもう何も言わなかった。

 

この壁をすり抜ければ、長門とはもう喋れない。

会えるけど、もう目を合わせることはできねぇ。

 

「じゃぁ、俺はもう行く。」

「そう。」

「じゃぁな、長門。」

 

長門は、もう一度小さく頷いた。

俺はそれを見届けると、壁をすり抜けた。

体が浮いていた。

 

情報統合・・・ナントカを、「くそったれ」と思っていたが、そうでもないかもしれない。

そいつがいなかったら、長門とは会えなかったからな。

もうすこし、お手柔らかにしてやってくれ。

情報統合・・・思念体。

 

*******

 

さて、ハルヒのやり残したこととはなんだろうね。

通夜にはたくさんの人が参列してくれていた。

 

「馬鹿野郎・・・なんで死んじまったんだよ。」

「キョン・・・最後まで格好よかったね・・・涼宮さんは、助かったんだから。」

 

谷口と国木田だ。

もう一度、バカやったり、一緒に弁当囲んだりしたかった。

 

「キョン君・・・寂しくなるよ・・・。」

 

いつもより元気が50割減になっている鶴屋さん。

あなたには笑顔のほうが似合ってます。

 

「うわぁぁぁぁん!キョンくーん!」

 

妹はわんわん泣き叫んでいる。

せめて、お兄ちゃんと呼んでほしいもんだ。

 

「キョンく~ん、寂しいです・・・」

 

朝比奈さんは、目を真っ赤に腫らせていた。

そんなに泣かないでください。

素敵なお顔が大変なことになっていますよ。

 

「残念です。すてきな仲間だというのに・・・」

 

古泉は、ニヤケ面をどこに置いてきたんだ、という顔をしていた。

すてきな仲間。

素直に嬉しいぜ。

 

「・・・・。」

 

長門は終始無言で、俺の遺影をじっと見つめていた。

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

そして、ハルヒは泣いていなかったが、目は腫れていた。

そりゃ、あんだけ泣いてたんだ。

団長さんよ、SOS団を頼んだぞ。

雑用兼財布係はもういない。

けど、世界を終わらしたりしないでくれよ、ハルヒ。

 

*******

 

数日経てば、ハルヒの元気も戻るさ、と思っていたが、そうではなかった。

静まり返った文化部・・・SOS団の部室に、俺はいた。

誰とも目は合わない。

いつもの指定席に座るハルヒは、外をじっと見つめたまま動かない。

古泉もゲームを取り出すことなく、じっと一点を見つめていた。

 

まるで、全てが喪失してしまったかのようだった。

 

俺は・・・こんなSOS団を望んでいない。

ハルヒだってそうだ。

 

結局その日は、誰一人口を開く者はいなく、そのまま解散となった。

ハルヒの跡をつけてみた。

ハルヒの後姿はとても小さく見えた。

 

異変に気付く。

 

ハルヒ、そっちはお前の家の方向じゃねぇだろ?

 

そっちは確か・・・俺が死んだ場所・・・

 

予想は合っていた。

俺の事故現場には花がたくさん手向けられていて、ハルヒはそこに手を合わせた。

 

「キョン・・・キョンのバカ・・・なんであたしなんか庇って・・・」

 

バカ、て・・・

 

「死んだなんて嘘よ!戻ってきて・・・お願い・・・。」

 

 

ハルヒ、しっかりしろ。

俺はもう死んでるんだぞ。

お前がしっかりしないでどうするんだ。

 

「うぅ・・・キョン・・・。」

 

ハルヒはその場に泣き崩れた。

街行く人たちが、ハルヒにちらりと視線を送っていく。

 

一番星が出ていた。

 

******

 

事件は早々に起きた。

 

俺は、急に意識が飛んだ。

幽霊に意識があるなんて、初めて知ったよ。

 

真っ暗な世界。

 

まるで、眠っているような感覚だった。

 

「・・・・ン・・・?キョン?」

 

聞き覚えのある声。

目を開くと、そこにはハルヒがいた。

 

すぐ、なにが起こっているのか、分かった。

 

灰色の空間。

いつかの、閉鎖空間。

神人はまだいない。

 

あの日目覚めた時と同じ場所。

 

「キョン!?どうして?生きてる、本物?」

「ハルヒ・・・。」

「バカ!どうしてあんな・・・!」

「ハルヒ。」

 

俺はハルヒの言葉を遮った。

ハルヒは、また、俺と2人の世界を望んだんだ。

 

戻ってきて・・・お願い・・・

 

この言葉は、本当のことになった。

長門は言った。

ハルヒの力を忘れてはいけない、と。

 

「俺は、死んでるんだ。」

「どうして!?今、現にここにいるじゃない!」

「ここは、夢なんだよ。」

「え・・・。」

「前にも、ここに来なかったか?」

 

丁度、一年前くらいか。

ここで、ハルヒとキスをした。

あれは夢という記憶になっているが、現実なのだ。

 

「え、キョンも同じ夢を見たの?」

「ああ。たぶん、ハルヒと同じ夢だと思う。」

「戻ろう。こんなところ、ずっと居るもんじゃない。」

 

手を引こうと、ハルヒに近づくと、俺はハルヒに引っ張られた。

顔がぶつかるのを、寸前で止めた。

 

「嫌よ。」

 

ハルヒは真剣な目をしていた。

こいつも、本気なようだ。

 

「あたしはあんたがいればそれでいい。ここであんたが生きれるなら、あたしはこの世界を選ぶ。

あんた、幽霊なんでしょ?天国の人、異世界人じゃない!私が探していた、最後の不思議。

そして、ずっと探していたわ。 ジョン・スミス」

 

俺は、驚いた。

ジョン・スミス。

なんでハルヒが知っている?

 

「あんたが死んだ日、夢を見たの。あたしが中学の時、校庭に書いたメッセージ。

それを書いた人よ。それ、あんただったのよね。あの時のあたしは、ジョンの顔が

見えなかったわ。でも、夢のジョンは、顔がよく見えたの。」

「な・・・」

「あたしを理解してくれて、あたしの初恋の人。」

「・・・」

「それが、あんたよ、キョン。」

 

つまり、ハルヒは夢で時間遡行をしたんだ。

全ての原点の4年前に。

 

そうか、その時から俺は異世界人だったんだな。

違う時空から来てんだ。

異世界人で間違いねぇだろ。

 

「もう、不思議なんて探さなくていいわ!あんたが最後の不思議だもの!」

「ハルヒ・・・。」

「嫌よ、あんたのいない世界なんて、価値はないの!」

 

ハルヒは、大きな目から涙をこぼした。

まるで、訴えるような目。

 

「キョン、あたしはあんたが好き。」

「!」

「ずっと、そうだった。精神病でも構わない。だから、お願いだから・・・」

 

・・・ああ、俺だってそうだったさ。

自己中心的で、我がままで、無駄に元気で、笑顔が似合ってて、優しいハルヒをな。

 

「ハルヒ。」

 

ハルヒは目に涙を溜めたまま、俺を見上げた。

 

「俺は、元気なお前が好きだった。でも、今のお前は違う。」

「・・・。」

「SOS団だって、元気のカケラもねぇじゃねぇか。」

「あんたがいないから・・・。」

「俺は、こんな世界望まない。」

 

俺はその場にしゃがみ込み、ハルヒを見上げた。

 

「SOS団はどうなるんだ?せっかくあそこまで仕上げたのに。

ハルヒ、まかせてもいいよな?」

「あたしをなんだと思ってるのよ、団長様よ?でも、あんたがいないのは嫌。」

「俺は死んでる。死んだ人は生き返らない。」

 

ハルヒの目から落ちた涙が、俺の顔に落ちた。

あったけぇ。

 

「大丈夫だ。俺は待っている。何年でも、いや、何十年でも、何百年でも。」

「・・・。」

「お前はゆっくり来い。大丈夫だから。」

「・・・待ってないと、死刑だからね。」

 

死刑は嫌だからな。

 

俺は、ハルヒを連れて校庭の中心へ行った。

神人はいない。

青白い世界。

 

こんな世界より、ハルヒには希望に満ちた元の世界で生きてほしい。

 

「ハルヒ・・・好きだ。」

「あたしも、好き。」

 

ハルヒの小さな肩に手を置く。

 

「俺は・・・

 

ここにいる。」

 

ハルヒの涙だらけになった顔が近づき、俺はハルヒにキスをした。

一年前のように、嫌々なんかじゃない。

 

俺も、ハルヒも望んでいる。

 

元気なハルヒが大好きだった。

引っ張られっぱなしのあの日常も、俺は大好きだったさ。

 

やがて、目を閉じていてもまぶしいくらい、周りが明るくなった。

 

元の世界が閉鎖空間と入れ替わる。

それと同時に、光も消えていった。

 

 

 

その光と共に、俺の体も消えた。

 

 

ハルヒ、大丈夫だ。

 

俺は、ここにいる。

 

*お*わ*り*


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