天蓋領域との壮絶かつ困難なバトルの話は俺の中で整理がついた時にでもゆっくり
語ろうと思う…… 。

 季節は三度目の桜がまるで流氷を漂うクリオネの姿で舞う光景を見ながら、
俺はシーシュポスの苦痛を3年間も続けたんだなという感慨にふけり、後ろを
振り返った。
 北高に入り、ハルヒと対面したあの日が走馬灯のようによみがえってくる。
思えば「宇宙人、未来人、…… 」あの言葉を聞いた瞬間から俺は夢のような時を
過ごしてきたんだなとも思う。
 まさに光陰矢のごとし、カマドウマにも五分の魂ってやつか…… 。

 そんなこんなで今日は朝比奈さんの卒業式当日。
もちろん鶴屋さんもその満面に笑みを称え、卒業生の輪の中にいた。

 「安定していますね、まさに一般人に戻ってしまった涼宮さんそのものですね。
あっ、それと僕の能力も消えてしまいました」

 顔が近すぎるんだよ、古泉、あいも変わらずなぜそんなにくっついて話す
必要があるんだ?
「情報統合思念体も二次的なフレアの原因は涼宮ハルヒという生命体が持つ
内部の自己矛盾から開放されたと推測している。わたしの役目も終わりに
近づいているのかもしれない」
 寂しそうな笑顔を向ける長門…… 寂しそうな笑顔? 長門、お前はいつから
そんな感情を露にした表情ができるようになったんだ…… 。

「観察が終わればわたしはここから去らねばならない…… 」

その神のごとき能力を失ったハルヒは泣きじゃくる朝比奈さんと大笑いしている
鶴屋さんの真ん中で大いにはしゃいでいた。
 卒業式の余興にあのバニーのコスプレでどうやら「GOD KNOWS」を
歌うらしいのだ。
 もちろんSOS団内に結成したENOZⅡというバンド名なのはいうまでもない。

 はしゃいでいるハルヒを俺はずっと目で追っていた。相変わらずハイテンション
なハルヒ、昨日まで世界はお前を中心に回っていたといっても過言じゃないんだぜ!

 あの日を境にな、あの日を境にお前の能力が失われていることに気づいたのは
つい最近なんだ、だが俺はなぜかほっとしている。これで、お前を、ちゃんと真正面から
見ることができるんだ。
不思議から開放されることが、いやもう二度とあの世界へは戻れないんだと
してもだ、俺は心からハルヒ、お前が普通でいてくれることをありがたく思うよ。

 この世界の創造主なんて役目はかわいい女の子には荷が重過ぎるだろ、違うか!?

 なんたって神様好きになっちゃバチが中るってもんさ、
卒業まで一年俺はこう思ってるんだ。不思議じゃない高校生活もきっといいもんだぜ…… 。 
ハルヒ、告白しちゃいけないか、手をつないじゃいけないか、デートしちゃいけないか? 
 この世界にたった一つ不思議があるとしたらめぐり合った奇跡じゃないのか?

「ハルヒ…… 俺は…… お前を…… アイシテル…… 」

                 <了>

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