機械知性体たちの即興曲 メニュー

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□第六日目/夕

七〇八号室

ドタバタドタバタ

みくる        「はーい。長門さん捕まえましたー!」
にゃがと    「……体格差によるハンデがきわめて大きい。公平ではない」
あちゃくら  「わたしたちの体で鬼ごっこはちょっと厳しいですかねー」
ちみどり    (……こんなことしてていいのかなぁ)

みくる        「(キョロキョロ)あれ。キョンくんは?」
にゃがと    「さっき寝室に行ったきり」
あちゃくら  「また寝てるんでしょうか。最近寝すぎですよ」
ちみどり    (そういえば、お昼くらいから少し様子が変だったかも)

ちみどり    (キョンくんもなにか抱え込んでいるのかしら)
ちみどり    (……わたしたちみたいに)

にゃがと    「…………」
あちゃくら  「ちみどりさん!」ガバッ
ちみどり    「はうっ。な、なにを……!」
あちゃくら  「駄目ですよ、暗い顔してたら!」
ちみどり    「……あ」
あちゃくら  「みんなで約束したじゃないですか。だから、ね?(ウインク)」
ちみどり    「(クス)……そうでしたね。ごめんさない」

みくる        「……?(なに話してるんだろ)」

 

 

みくる        「さあて、次はなにして遊びましょうか」ニコニコ
にゃがと    「……ほかにどんなお遊戯を知ってる?」
みくる        「えーとですね……わたしの時代のものでいいのかなぁ」

あちゃくら  「みくるママの時代だと、子供はどんなふうに遊んでるんですか?」
みくる        「あ、ちょっと待ってくださいね……(ブツブツ)」
あちゃくら  「……?」
みくる        「えーとですね。(コホン)……わたしの時代では禁則事項の頃、禁則事項を……あう」
にゃがと    「……無理はしなくていい」

みくる        「(ションボリ)……こういうのまで禁則なのかぁ。ごめんなさい。説明許可が……」
ちみどり    「マインドセットですね。かなり強力な」
にゃがと    「そう。禁則ワードが強制変換させられるもの。自身ではその単語を話しているつもりでも、
                    無理やり上書きされてしまう。自分の意思はそこには介在しない」

みくる        「……でも、仕方ないんです。わたし、おっちょっこちょいだし。
                    うかつになにをしゃべってしまうのかわからないですし」
あちゃくら  「それでも……みくるママはただの人間なのに。ちょっとひどいと思います」
みくる        「いずれはそういうのも少しずつ許可されるようになってくると思うんです。
                    わたし、まだまだ下っ端ですから。でも、がんばってれば、そのうちに……」

 
あちゃくら  「がんばってるじゃないですか! こんなに!」
みくる        「え……?」
あちゃくら  「わたしが知ってる限り、みくるママはこの時代にたったひとり送り込まれてるはずです。
                    家族も、仲間もいない、まったく別の世界にひとり送られて来て、それでもがんばってるじゃないですか!」
みくる        「朝倉さん……」
あちゃくら  「いいですか。ここだけの話ですけど、この先、みくるママは組織に絶対必要不可欠な、とてもすばらしい人材にな……モガモガ」
にゃがと    「それこそまさに、禁則事項。これ以上話すことは推奨できない」(後ろからあちゃくらを抑えつつ)
ちみどり    「す……すいません。うちの急進派が、たわいもないことを……」(同上)

みくる        「……ありがとう。みんな」(クスリ)


七〇八号室・寝室

キョン        「……さてさて。これをどう受け取っていいのやら」(チャキ)
キョン        「この重さ……どう考えてもおもちゃには見えんしな」
キョン        「……お。ご丁寧に簡単な取り扱い説明書までつけてくれたか」(カサ)
キョン        「安全装置の取り扱いについて? これか」(カチ)

キョン        「……てっぽーだよな、これ。間違いなく」(カチャ)

キョン        「なにか……それほどマズい事態が迫ってるってメッセージなのか。古泉」
キョン        「……と、事情を聞きたくても、電話をしてくるな、か」(カサ)
キョン        「盗聴か……? ケータイ電波も傍受されるのかよ」
キョン        「……どうすりゃいいんだ、俺は」
 

 

 

七〇八号室を見下ろせる別のビルの屋上

市外の高校の制服を来た女性「……呑気なもの」
女性              「準備は整った。あとはどれだけ、『機関』がうまく立ち回れるかにかかっている」
女性              「……いいだろう。これくらいは?」(後ろを振り返り)

思索派端末  「推奨はできない」

女性              「直接介入は、しない。ただ単に手助けだけをするだけだよ。彼らの」
思索派端末  「ここで、あなたを直接制圧することもできる」
女性              「無理だね。あの穏健派端末、喜緑江美理なら可能かもしれないが」
思索派端末  「……どうして、今、ここでこんなことを?」

女性/

革新派端末  「停滞の時期が長すぎた。涼宮ハルヒの能力は確実に沈静化しつつある。 
                        いわば安定期だ。急進派がかつて試みた、あのような直接介入も理解はできる」
思索派端末  「焦りすぎ、と考えるが」
革新派端末  「そうでもない。あの天蓋領域が、直接、我々と同等のインターフェイスを創出してきたのだ。
                        今のままでは、彼らに遅れをとることは必至だ」
思索派端末  「それで。彼らの今回仕掛けた策を――」
革新派端末  「利用する。確かに、長門有希は稀有の存在だ。あの中に含まれたエラーデータ群。
                        昨年の冬に彼女の起こした、あの世界改変能力は思念体本体では到底再現ができない。
                        涼宮ハルヒの力を解析し、そのま自分のものとして利用するなど、まさに未知の能力だ」

 

 

思索派端末  「我々にそれができるというの? 長門有希にしかなし得なかった、それを」
革新派端末  「この世界に、もうひとつ、その手がかりがあった。彼らが今年になって発掘し、保全している。 
                        彼らはオーパーツだと分析している、あれだ」
思索派端末  「……革新派の思考は、我々には飛躍しすぎて理解不能だ」
革新派端末  「あれもまた、涼宮ハルヒの願望実現能力の果てに、あの場所に生み出されたものだと
                       我々革新派は推測している。"本来そこになかったもの"。定義上では確かにオーパーツではある」
思索派端末  「まだ、どの端末もあれに接触は……」
革新派端末  「していなかった。この一週間までの間には」
思索派端末  「……総体の許可を得ずに、それをしたのか。あなたが」
革新派端末  「あれこそ、コミニュケーションツールといえる。究極の。
                       涼宮ハルヒの無意識の根底にある、不満、不安、そういったものの寄せ集めが形になったものなのだろう。
                       他人をわかりたい、という」

思索派端末  「それで」
革新派端末  「問題なのは、それを生み出したのが"人間である涼宮ハルヒ"というところだ。 
                        それに同調し、機能を作動させることができるのは、我々の中ではごく限られた存在しかいない」
思索派端末  「だから、長門有希なのか」
革新派端末  「それに加えて、朝倉涼子、喜緑江美理も。涼宮ハルヒの近辺に配置され影響を強く受け続け、
                        内部に異常なデータを蓄積し続けた、あの三体はまさに適任だということだな」
思索派端末  「……今のあの状態の彼女たちのコアを使うのか」
革新派端末  「そうだ。精錬されたあの状態の彼女たちのコアは、そのオーパーツに同期するためろに最高の状態だといえる。 
                        余分なものがすべてなくなり、人間の思考を表装上ではなく、真に自分のものとしたデータを蓄積している」

思索派端末  「体のいい、生体燃料ではないか。それでは」
革新派端末  「ついでに、起動用キーもかねている。その上我々の意思も理解できるというのが重要だ」

思索派端末  「それで、そのオーパーツというものを起動させて、どうするつもり」
革新派端末  「我々は常に生存競争の渦中にある。ついに、同軸上に出現した、我々と拮抗するだけの存在が現れたのだ。
                        彼ら天蓋領域とはわかりあうことは至難ではあるが、しかし、戦うことは可能だろう。
                        情報そのものが我々の構成要素なのだ。その情報資源の争奪相手との相互理解が困難な以上は、素直に消えてもらうか――」
思索派端末  「…………」

革新派端末  「……彼らの存在そのものを、我々が奪う。未知の情報の塊なのだから」
思索派端末  「今回のあなたの行動は、総体主流派は認証していないはずだ。意見調整を司る折衷派も容認はしていない」
革新派端末  「知っている。だから独断でやる」
思索派端末  「保守系派閥の端末としては承服しかねる。危険が大きすぎる上に……」
革新派端末  「……長門有希たちを失うのが惜しいのか」
思索派端末  「…………」

革新派端末  「あれらも、我々と同じで結局は作られた情報端末にすぎない。
                        かつてのあなたも、仲間を抹消処分したのだろう。いまさら」
思索派端末  「……我々は変容している」
革新派端末  「それは知っている。長門有希たちと同様に」
思索派端末  「同時に、思念体も変容している。特に、この事件に同調して」
革新派端末  「そうなのか? わたしにはわからないが……」

思索派端末  「……我々の本体は、親と子、という関係に強い興味を抱き始めている」

 

 

 

七〇八号室・居間

キョン        「もうそろそろ晩飯の支度か?」
みくる        「あ、キョンくん!」
あちゃくら  「パパ、寝すぎですよ。つまんないです」
キョン        「パパ……もう完全に朝倉はそのキャラか」
みくる        「わたしはママですよねー」
あちゃくら  「ですよ!」(スリスリ)
キョン        「……(こいつら、元に戻ったらどうなんだろうな)」

にゃがと    「じー」
キョン        「なんだよ、どうした?」(ひょいとつまみ上げる)
にゃがと    「にゃう」
キョン        「なにか言いたいことでもあるのか? 長門」
にゃがと    「……別に」ブラブラ
キョン        「なーんかおまえも昨日あたりから様子が変だよなぁ」
にゃがと    「……も?」ブラブラ
キョン        「(うっ)……いや、なんでもない」

ちみどり    「じー」(グイグイ)
キョン        「……喜緑さん。じっと見上げてズボンのすそを引っ張るのはやめていただけますか」
ちみどり    「じー」(グイグイ)
キョン        「……わかりましたよ」(ひょいと抱き上げる)
ちみどり    「…………」(キョンの首に抱きついて離れない)
キョン        「喜緑さんまでなんか……(変だよ、なぁ……)」

 

 

にゃがと    「……もし(ポツリ)」(抱きかかえられながら、キョンの耳元で)
キョン        「ん? なんだ」
にゃがと    「わたしたちに、なにかのことがあっても……」
キョン        「……なに?」
にゃがと    「……わたしたちは、必ずここに残るから。だから……」
ちみどり    「…………」
キョン        「……長門?」
にゃがと    「だから、悲しまないでほ――」

ビロリロビロリロ

みくる        「あ、電話……この部屋の?」
あちゃくら  「? 誰でしょう?」
キョン        「? もしかしたら古泉のやつからか……?(連絡できるようになったのか、あいつ)」

キョン        「……非通知か。あいつらしいといえばらしいが……」(ガチャ)
にゃがと    「! 待って。それは……!」
ちみどり    「(はっ)だめ! 受話器を取らないで!!」
キョン        「……え? なんだ、この音!?」(受話器を取り落とす)

 

ビーガービー

 

みくる        「え、え……?」(グラグラ)
キョン        「これは……部屋が歪んでいく……のか?」(グラグラ)

にゃがと    「……いけない。これは」
あちゃくら  「フィールド無効化コード? これはわたしたちの知ってる汎用コード……どうして……!」

ちみどり    「……キョンくん! 朝比奈さん! 急いでこの部屋から出てください!」
キョン        「な、なんだと?」(グラグラ)
みくる        「ぎゃあああっ」(グラグラ)

にゃがと    「……侵入された。よもやこんな形で……」
あちゃくら  「わかる範囲でも、もうここは……」

ちみどり    「急いでください! キョンくん!」
キョン        「喜緑さん……なにを?」


ちみどり    「今、この部屋に施された、すべての防御フィールドが失われました! 
                    ここに"敵"が来ます! すぐに!」


―第六日目/夜につづく―

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最終更新:2020年08月22日 15:17