「君はいつもそうだ。いつもそういう風にしか僕に接してくれないんだ!」
「そういう風にってお前… 俺の接し方の何がいけねえって言うんだよ!」
「それだよ! 今のこそ僕が不満に思っている事の全てが詰まっていたよ。ホント… どうして君はいつもそうなんだいキョン?」
 だあああ、訳っ分からん!
 こいつは一体俺の何が駄目だって言いたいんだよ!
 さっきからず~~~~っとこれだ。
 それより、『君はいつもそうだ』ってお前はドラえもんかよ!
「あ~、キョンは僕の話なんか聞いてくれないんだね」
「な!! 俺はさっきからずっとお前さんの話は訳の分からん不満を聞いてるだろが」
「訳の分からない不満だって? 君は正気かいキョン?」
「ああ、いたって正常だ!」
 少なくとも俺はお前さんみたいにヘンテコな要素のない一般ピーポーだよ。
「全く、呆れて物が言えないよ」
「はあ、どういう意味だ?」
「そのまんまの意味さ。キョン君は成長ということを知らないのかい? はっきり言って君の鈍感さは学生時代から何一つ進歩していない」
「だったら、それが俺っていう人間だってことだ。違うか?」
「いや、確かに君の言わんとすることは分からなくも無い。しかし、今はそのことを話しているんじゃない」
「じゃあ何なんだよ!?」
 ああ、こいつはぐちぐちと…
 そろそろ、俺はきてるぜ。
 色々ぶちまけるぜ。
 理不尽な位ぶちまけるぜ。
「これだからキョンは… 仕方が無い。いいだろう教えてあげよう僕の不満を」
 そうしてくれ。
 とっととぶちまけてくれ。
「なんで君は僕の事を名前でよんでくれないんだ?」
 んな…………
「どうして何時も何時も『お前』ってしか呼んでくれないんだ?」
 いやですね… あのー…
「あ、勘違いしないでくれ『お前』って呼ばれるのが嫌だって言っているんじゃない。むしろそう呼ばれたほうが興奮する時だってある。
だけどキョン、君は一度として僕の事を名前で呼んでいないじゃないか。どうしてなんだ?」
「あのですね… そのー、これに関してはかなりの禁則事項というかそのー…」
「禁則事項? 一体何が禁則事項だって言うんだ? この世界には僕と君との関係を円滑に進めさせない禁則事項があるっていうのか?」
「い、いや、そんなんじゃなくてだな…」
「じゃあ何なんだ?」
 か、顔が近い… その上怖い。
 いや、お前さんの不満は分かった。
 確かにこれはお前さんとしては許せない事なんだろうな。
 だがな… こればっかりは…
「…はあ、もういいよキョン。君には失望した」
「失望ってお前…」
「だってそうだろ? 愛している人が自分の名前を呼んでくれない悲しみがどんなに辛いものか位はいくら鈍感な君にだって分かるはずだ。
にもかかわらず君は僕の事を名前で呼んでくれない。…キョン、君は僕の事を愛してはいないんだね。
もういいよキョン、あきらめることにする、すまなかったね」
「       」
「え?」
 皆、色々と許してくれ。
 俺自身こいつにこんな風に悲しんでほしくは無いんだ。
「どうした? お前さんのことだろ、それとも間違ってたか?」
「…キョン」
 ああ、泣くな泣くなこの位のことで。
 全く仕方がねえ奴だな…
「なあ、今まで名前で呼んでやらなくて悪かったな。ホント悪かった… これからはちゃんと名前で呼んでやるからな、
もう泣くな、頼むよ」
「グスッ…、ホントに悪い人だ君は…、キョンこの際だからもう一ついいかい?」
「…物によるが、言ってみろ」
「ちゃんと僕のことを名前で呼んでもう一度プロポーズをしてくれないか?」
 
 

 

 

 

 
 ああ、お前さんたちの言いたいことはよ~~っく分かる。
 二回目のプロポーズはどうだったかだろ?
 ……最低だよ。
 羞恥の極みだ。
 だれか刃物を貸してくれ。
 今なら浅井長政も驚愕する様な見事な切腹が出来そうだ。
 …まあ、冗談だがな。
 だってよ、今俺の胸の中で寝ているこいつの寝顔を見てたらそんなの小さい事なんだと思えてならなんのだわ。
 にしても可愛い寝顔だ…
 差し詰め欲しいものを与えられて満足して眠る子供ってとこか。
 しかし、結婚してもう随分経ったよな………そろそろいい頃合だろ。

 さっきは俺がお前さんの頼みを聞いたんだから今度はそっちが俺の頼みを聞く番だぜ。

 もっとも二人で協力しないといけないがな。

 まあ、今日はこの世界で一番愛おしい寝顔をしっかり堪能させてもらうとするか。 

 

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最終更新:2020年03月12日 20:15