身体中の脂肪が自然発火して人体蝋燭化現象が起きそうな太陽を受けつつ俺は緩やかに急勾配を登っている
俺とはもちろんキョン(本名不明)の事であり何故登っているかと言うとそれはもちろん学校へ行く為だ
多量の汗を吸収し最早不快感しか与えない制服を上だけでも思いっきり脱ぎ捨てたい所だが、生憎他にも生徒が居る中でそんな事をする度胸は無い
大体何故こんなにも暑い。地球温暖化の影響ですかコノヤロー

「よお、キョン………」

今の俺には肩に置かれた手にすら殺意を覚えるな
谷口、その手を離せ。触られるだけで俺の体温が上がる
俺はチャック魔神のお前とは違って股間から熱を放出する事ができないんだ

「大変そうだねぇ?キョン」

くそっ、国木田、何故お前は汗一つかかないんだ。笑顔キャラは殆どが完璧な設定か

「まぁ、聞いてくれたまえキョン。」

知るか。俺にはお前のナンパが失敗した話など外国で誰かが転んだという報告よりどうでもいい
それよりはその身体中を汗に塗れた姿を俺の眼中から消せ


谷口による『海に出会いを求めに来る奴は大抵モテない』説を聞きたくも無いのに聞いている途中で校舎へ着く事が出来た
BGMが有ると多少は疲れが軽減できるのかもな。今度調べて見よう
それはそうと谷口、その節はピッタリお前に当てはまるんじゃないのか?

所変わって一年五組
人は目標物だけを視界に入れることは出来ず少なくとも周囲の景色は多少なりとも入る訳で
つまり自分の席に行くためには前後の席も目に入る訳だ
俺の後ろの席の奴は頬杖をして窓の外を睨んでいる
それで微笑み、少なくとも無表情でも浮かべていれば絵画と見紛うほどの美しさがあるが、いかんせんその顔は眉間に皺を寄せるほど不機嫌オーラを振りまいている
そう、その後ろの席の奴こそ我等が『世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒの団』通称SOS団団長にして涼宮ハルヒ
不機嫌な理由は暑さゆえだろう。時折鬱陶しそうに顔につく髪をはらっている
俺としてはポニーテール萌えなんだがな

「あたしも扇いでよ」

俺が下敷きで扇ぎだした途端それか。もうちょっと人に物を頼む態度ってもんを考えて貰いたいもんだな

「断る。今は人に尽くしてやるほどのエネルギーも惜しいんでな」
「ふん」

また不機嫌そうに頬杖をつき、時折髪を払っている
担任の岡部が入ってきた所で下敷き団扇はしばし中断を余儀なくされる

大体この暑いのに何もするなってのは拷問だよな
こうして見ているだけでも暑苦しい岡部による暑さに負けるなという意味の主張は5分の刻に渡った

眼を覚ませば夕方だった
服が汗を吸って濡れている
まぁ、あれだ。暑さで体力を殺がれている所に世界史だぞ?眠くならない訳が無いよな?

「…………」

誰に対するか分からない言い訳を打ち切って下校の準備をする

「やっと起きたのね」

思わずゾっとしたね
感情を憎悪だけ含めたような声だ。しかも偉く不機嫌な
声だけで人を殺せそうな者はコイツの他有るまい

涼宮ハルヒ

我等が(以下略)は俺の目の前で腕組みをしながら俺を見下ろしてる
感情で人を殺せたら俺は既に死んでいるだろうな。そんな感じだ

「SOS団の活動にも来ないと思ったらのんきに寝てるとはね……」

静かに言いはなつ
うん、怒られるよりはるかに怖いな、コレは

「………同じクラスなんだから起こせばよかったじゃないくぅあ!?」

無言で脛に蹴りを入れられた
お前、それは反則だろう

「………!」

抗議の声を上げようとした所を、思わず飲み込んだ
だってそうだろ?普通怒っているだろう状況で今にも泣き出しそうな表情をされていたら呆気にとられるよな?
まぁ、そんな一瞬の躊躇が不味かったのかハルヒは既に走り去っていた
抗議の為上げようとしていた手が虚しく宙を掴んでいる

「ヤレヤレ……貴方にも困った物ですねぇ」

教壇からいつもの如くニヤケ面を携えた古泉が現れる


―――――――いつから其処に居たんだよ、お前は

「大規模な閉鎖空間が発生していましてね。それも今日はコレで4回目です。流石に疲れてきました」

そうかい、それはご苦労なこった。で、俺に何の様だ

「何の様だ、は無いでしょう?原因は貴方にあるんですよ?」

何でだ

「前にも言ったでしょう?涼宮ハルヒさんが不機嫌になると閉鎖空間が発生すると」

そういや言ってたな。あの灰色の空間には良い思い出が無い。思い出したくも無かったよ
で、何で原因が俺にあるんだ

「心当たりは無いんですか?」

全くな

「……SOS団の活動に来なかったり、乙女心を理解しない発言をしたりと色々と思いつくんですけどねぇ」

乙女心って何の話だ

「物の例えです。とりあえず、今すぐ涼宮さんに謝って来て下さい」

何故俺が謝るんだ
むしろ危害を加えられた俺が謝って貰いたいんだが

「………鈍感ですねぇ。いいから行って下さい。それが無理なら実力行使しかありませんが…………」

実力行使ね。お前が俺より力が有る様には見えないがな

「お忘れですか?僕には機関の仲間だって居ます。」

含みを聞かせたようだがどうにも演技に見えるな。なんつーか胡散臭い

「そうですね、例えば………」

どうやら実力行使の内容を考えているようだが絶対に謝らんぞ、俺は

「貴方の生爪を一枚一枚剥いで指に一本ずつ針を刺し、じわじわと痛みを強めていきながら精神を弱らせ
発狂寸前の所を僕の言う事を聞く奴隷同然に仕立てあげる事だって出k「キョンッ!いっきまーす!!」

いや、本能がそうしろって伝えていたもんでね
俺は今ならカール・ルイスを越える自信すらある
背後から聞こえてくる物騒な言葉は完全無視だ、無視
でもコレは逃亡じゃないぞ?小泉の意見に耳を貸してやっただけだ。うん、そうだ

誰だって高校生で廃人にはなりたくないんでな

教室から走り出して下駄箱に来るまでに既に汗が吹き出ている。かなり不快だ
でもそんな事を言っている場合じゃないな、俺の人生が掛かっているんだ。
まぁ、焦りの所為かね。俺は一つ重大な事を見落としていた

校門まで走ってようやく気付いたよ
俺はハルヒの家を知らないってことにな
こんな当たり前の事に今更気付くとは俺もどうかしているな。暑さの所為か

ってそんな場合ではない!このままじゃ俺廃人フラグ一直線ktkr!!!

………焦っているな。かなり焦っている
冷静になれ俺。小泉に………じゃない、古泉に聞けばいい話じゃないか!

「涼宮さんの家ならあちらですよ」
「………いつから其処にいた」
「そんな事気にしてて良いんですか?
早くしないと組織の筋肉質の猛者たちが数人やって来て毎夜毎夜の肉欲の宴、
ムッキムキ黒人男性とうh「キョンッ!発進する!」

またこのパターンか
と言うか古泉、実力行使がグレードアップして無いか……?

走る、走る、走る
廃人となるのを防ぐ為!平穏な老後を過ごすため!俺は走るぞ!古泉ィィィィ!!!
………うん、暑いね

思考が現実逃避を初めつつ、やっとハルヒに追いつく事が出来た
体に纏わりつく制服は不快指数上昇すること現在進行形なわけだが、そんな事も言ってられない

「おいっ!」

叫びにも近い声で腕を掴んだ所為か、ハルヒは驚愕の二文字を浮かべている。少々罪悪感にかられるな、これは

「!?………な、何よ」

何ってそりゃあ…………うん、何だろうね
とりあえず謝れといわれたが…………

プライドと貞操………まぁ、天秤にかけるまでも無いよな

「………スマン」

とりあえず深々と頭を下げた
黒人マッチョとうほっ、よりはこっちの方が遙かにマシだ

呆気にとられていたハルヒの顔にいつも通りの表情が戻ってくる
あぁ、コレで良かったんだよな
とまぁ、今後の心配が一つ無くなった

「はいっ!活動をサボった罰ね!」

途端にコレは無いだろう
ハルヒが俺に渡した紙には町内の地図と、巡回経路と書かれていた。俺の目がおかしくなければな

「………なんだ、コレは」
「だぁーかぁーらぁー、サボった罰。其処に書かれている経路を今から三周して来なさい」

マジか

「大マジ」

…………今に至って、この選択肢も間違いだった気がするな
そうそう、こーいうやつだったよ、涼宮ハルヒって奴は

「いやぁ、お疲れ様です」

▼ニヤケ面が現れた!▼

→殴る 蹴る 暴行 うほっ

………とかやってる場合じゃないな。そんな事する気力もない。最後のはやるつもりもない

「どうやら閉鎖空間の拡大も止まったようです」

それは良かったな。所で俺も今非常に不機嫌なんだが、一度殴らせてもらって良いか?

「それは困りますね。今はMPも尽きかけな仲間の援護に行かなければ行けませんから」

そうかそうか、とっとと行け。お前の姿は見たくない

「そうですか。それでは………おっと、くれぐれも涼宮さんの機嫌を損ねないで下さいね?」

言われなくともさ
俺だってマッチョに貞操を捧げたり廃人にはなりたくない。将来やりたい事もあるんでな

とりあえず今は、この巡回経路とやらを回るのがベストなんだろうな…………

まぁ、思いっきり後悔する羽目になったけどな
ただ座っているだけでも汗が吹き出る暑さの中、町内を回っていると少々自殺願望すら出てくる
もし体型に困っている人にはお勧めだ。精神を削る代わりにやせる事が出来るぞ

…………なんてな

すっかり暗くなったが別段涼しくなる訳でもなく昼間と同じく暑い。嫌がらせか
目前にその姿を見せる我が家。中では妹がアイスを貪っている事が容易に想像できるな。殺意を覚える

そんな事に気を取られていた所為か、街灯で照らされる我が家の戸の前に人影が有った事には暫く気付かんかったがな
どうやら私服に着替えたらしいその人物………

「………ハルヒ?」

そう、我等が(中略)団長涼宮ハルヒ
そういえばハルヒってだけ聞くとホスト部も思い出すな。どうでもいいが


それより、そのハルヒが何でうちの前にいるかっ、てのが問題なんだよな

「!?キョ、キョン!?なんでここに!?」
「いや、なんでも何も此処は俺の家なんだが」
「そ、それもそうよね…………」

何だ?夢遊病の症状でも出たのか?……いや、夢遊病ってのは子供とかに発祥するんだっけか

「あ、あたしはアンタがサボらずやってるかと思ってきただけよ」

いや、何もきいて無いですけど

「うるさい!それより、ちゃんと回ったんでしょうね!三回!」

それは俺の状態から察してくれ。後、声を小さくしてくれ。

「フ、フン………!まぁ、いいわ。ちゃんと回ってきたみたいだし」

ご理解いただけて光栄ですな

「とりあえず、あたしはこれで帰るk「あれ?キョンくん、お友達?」

妹よ、いつの間に出てきた
ってかハルヒ、見る見るうちに顔色が悪くなっていくんだが………

「キョン………」

何だ

「こんな小さい子を連れ込むなんて、アンタまさかロリコn「妹だ」

「……何でこうなってんの?」
「さぁな」

今俺はハルヒと向かい合って正座している状態にある。何故かって?ほら、元凶がやってきたぞ

「さ、どうぞ~粗茶ですが~」

あぁそうだ。俺の妹(本名やっぱ不明)が元凶だとも
帰ろうとしたハルヒを引きとめなし崩しに家に上げた妹は好奇の眼差しでハルヒを眺めている
ハルヒの方というとこれまた不思議な事に妙にしおらしい
いつもの如く城の明かりを一人で補えそうな輝きを放つ太陽の様な歓喜ではなく美しく咲いた花のように見るものを幸せにさせる微笑である
う~ん、詩人だねぇ

ハルヒのこんな様子を見たのは何時だっけな………そうだ、朝倉の転校の理由を探りに行った時だったな
こいつもこんなにしてりゃ可愛いのにな。谷口曰くAランクプラスは伊達じゃない…………か

「………何見てんの?変な事考えてたらブッ飛ばすわよ」

感情が顔に出てたか?ソリャ行かんな、どうやら俺はポーカーフェイスが苦手らしい
にしても何時にも増して怪訝な目つきだな。其処まで信用無いのか、俺

「まぁいいわ、あんたに何か出来る度胸があるとはおもわな」

い、と続けようとしたんだろうな。まぁ、どの道聴こえなかったが
唐突に、雷が鳴った

「……嘘」

ハルヒが小さく呟いている。ソリャそうだろう
先程まで快晴―――夜でも快晴って言うのか?―――だった空には台風でも来たかのように雨雲が敷かれ、雨に交えて雷まで降り注いでいる
多分この雨の中帰る事は不可能だろう。俺の目で見ても明らかだ

「ねー、ハルにゃん泊まっていきなよ」
「え、」

何か色んな感情をごちゃ混ぜにしたような声だったな。其処まで嫌か
所で妹よ、いつの間にそんな略称で呼べるほど仲が良くなったんだ?

ハルヒが成すがままに引っ張られていくと、俺の携帯が鳴った
液晶画面に表示された文字には嫌な予感を覚えざるを得なかったがな

「………古泉」
『はい、何でしょう』
「また閉鎖空間がどうとか言うんじゃないだろうな」
『いえ、寧ろその逆……でしょうか』

逆?

『ええ、この転校は恐らく涼宮さんの望んだ事でしょう。恐らく彼女は何かこうまでしてしたい事が有るのではないでしょうか』

大雨を呼んでまでしたい事って何だ。結果といえば家に帰れなくなったぐらいだぞ
しかもそのお陰で俺の家に泊まる事になってしまってるしな。悪い方にしか転がってないように思えるが

『………ホンット鈍感ですね。貴方は』

知るか。大体溜息混じりにそんな事を言われる筋合いは無いぞ

『まぁいいです。とりあえず涼宮さんの機嫌を損ねないように気をつけて下さい
もしそんな事になったら貴方のこれからの人生を黒人6白人4の割合で密着されて過ごしてもらいブツッ!!』

最後に雑音が混ざったのは少々強くボタンを押しすぎた所為だな

風呂場のほうから、妹の楽しそうな声とハルヒの悲鳴が聞こえた

「天空×字拳!!!」

ボスッと言う音と共に俺の体は多少の熱気を帯びたベットへと沈む。なぁに、やってみただけさ
それにしても今日は疲れたな、精神的にも肉体的にも。ぐっすりと眠ることができそうだ

「………」

背中に違和感を感じるな。別に霊感の類が俺に有るとは思っちゃいないんだが…………

「ねぇ、キョン………」

扉を少し開けてハルヒが目だけを覗かせている。目目連か、お前は
しかし見ようによっちゃ体を隠してるようにも見えるな

「笑ったら死刑だからね」

そう言ってハルヒは扉を開けた。俺はお前の姿を見て笑う要素があるのかが疑問だがな
とまぁ、そんな疑問は一瞬で解決された
その姿は見慣れてはいるんだが見慣れていないというかソイツが着る事がありえないと言うか
解説が面倒だから今起こったことを有りのままに話すぜ

ハルヒがメイド服を着ていた

き、気の迷いとか夢オチとかじゃねぇ……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ………

「…………」
「…………」

両者、当然の如く絶句。何だこれは?なんか言った方がいいのか?
その思案をどう取ったのか、先に口を開いたのはハルヒの方だった

「あんたの妹に服剥かれたから仕方なく来てるのよ。これしか持ってなかったし……」

剥くって。というか常時メイド服を携帯してるのか、お前は

「うるっさいわねー………クリーニングに出そうとしてただけよ」

ああそう。じゃあその格好にはつっこまないでやるよ。これ以上いじったらまたニヤケ面から脅しが入るかもしれんからな

「で、何か用か」
「…………!」

おや。何気ない発言のつもりだったが何かが癪に障ったんだろうか。ハルヒの顔がゆっくりと紅潮していく。謝った方がいいのか?

「わ、私はただあんたが眠れてるかどうか確かめに……団員の健康管理も団長の役目なのよ!」

そうかい、それは初耳だよ。生憎雷で眠れなくなるような精神はして無いし、あんたの無茶な罰ゲームのお陰でぐっすりと眠れそうだとも

ピシャァンといった感じに、雷が鳴った

「!」
「うおっ!?」

いやぁ、心臓が止まるかと思いましたね

ハルヒが、俺に抱きついていた

「げふぅ!?」

この奇声は俺の物だ。だって仕方ないだろう?運動部で普通にレギュラー取れる奴が腹に思いっきりタックルして来たんだ。
いや、抱きつきなんだけどな
握力×スピード=破壊力らしいしな。後一つ何か有ったっけか
まぁとりあえず俺はハルヒから加えられた運動エネルギーで後方のベットへと倒れこんだ訳だ。頭が痛い

「………ハル、ヒ?」

自分の腹部辺りに顔を埋めているハルヒに目を向けてみた。少し肩が震えている
こんな女の子らしい面を普段も出せば可愛いもんなのにな
それはさておき………どうするかねこの状況

「………悪かったわ」

ハルヒが顔を上げた。いやぁ、俺としてはもうちょっとこうして居たかった………いや、変な意味じゃないぞ。か弱い女の子を慰める為だ、ウン

「………雷、怖いのか?」

どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。俺の顔の横からボスッ、と拳をベットに叩き付ける音がした
ハルヒが顔を近づける。このままキスで来てしまいそうなほどに………変態みたいだな、俺

「…………悪い?」

怖いんですが、ハルヒさん

なるほど、ハルヒは雷が嫌いなのか。また一つ知識が増えたな。それはそうとやっぱりホスト部を(以下略)
それじゃあどの道この天候じゃ帰る事が出来なかった訳ね。GJ、GJだ妹よ
………止めた、現実逃避しても何にもならん。とりあえず俺の目前で今すぐ俺を殺しそうなこの団長様を落ち着かせねばな
もし殺気だけで人が殺せるのならば俺は既に死んで………あれ、コレ前にも言ったな

「まぁ、落ち着け、ハルヒ」

と言うわけで説得を試みる。コイツをこのままにしておくとあのニヤケ面から黒人マッチョを召還されかねない

「雷が怖い事なんか気にするな、うん、その方が女の子らしくて可愛いと思うぞ、俺は」

ふっ、こんな事もあろうかと………思っていたわけではないが、谷口の話す『女性のおだて方』を伊達に聞き流してた訳じゃないぜ
いや、駄目だよな聞き流してちゃ
しかしどうやらハルヒも段々落ち着いてくれてる様子。谷口、お前案外役立つな。チャックさえちゃんと閉めればもてるかもよ

「まぁ、いいわ………」

ミッションコンプリート!トラトラトラ!我奇襲に成功セリ!!!我奇襲に成功セリ!!
・・・・・・・よし、落ち着け俺。素数を数えて落ち着くんだ
しかし世の中そんな訳にも行かないんだな

「その代わり………一緒に寝なさい!」
「はぁ?」

いつもの如く、ビシィっと指を刺す

「団長を守るのは団員の役目でしょ!」

いやぁ、それも初耳だわ
てか一緒に寝るって添い寝か?健全な女子高生にしては危機感が足りないのではないかね?
もしかして人が混乱する状況が続くのにはなんかの因果関係があるのか?
今度長門にでも聞いてみるか。俺が理解できるとも思えないがな

などと一般論を組み立ててみた物の


………正直、たまりません


まぁそんなこんながあって俺は今ハルヒと添い寝中なわけだ
添い寝といってもハルヒは布団を頭まで被って俺の胸の辺りに顔を埋めているがな
雷の音が何処かでする度に肩が震えるのは愛おしさを感じずには居られない
………………とは言ってみたものの、このままでは俺の理性が持つかどうかが疑わしい
落ち着け俺。素数を数えて落ちつ……ける訳がない
生憎俺は同級生が成り行き上宿泊する事になり挙句の果てに一緒のベットで寝るというそれなんて(ry な展開には免疫が無い
谷口なら何か対策を練れそうだな。まぁプラスに転がる事は十中八九とは言わず十ありえないだろうが

「…う……うぅ………」

ふとハルヒの声が聞こえた。声といっても出来るだけ声を抑えようとした泣き声だってのは俺でも分かる
其処まで怖いのか、雷が

「えーと、ハルヒ、大丈夫だ。俺が付いてるから」

言った後に思ったが何が大丈夫なんだろうな
年頃の少年少女が一緒に寝ているというのは雷よりはるかに危ないと言うのが一般論という物だろうに
それはそうと今俺が言ったセリフは思い返してみるとかなり恥ずかしい事を言った気がする。まぁ、仕方が無いよな。状況が状況だ。不可抗力と言う奴だよ

「…………ずるい」

ハルヒが顔を上げると同時に俺の胸ぐらを引っ張った
あ、そんな勢い良くすると頭ぶつかr

ゴンッ

………ほらな

「ずるい!不公平よ!」

ハルヒの言う事が一回で理解する事ができないのは既に規定事項と言った所か。ハルヒの目に溜まってる涙が痛さの為か怖さの為かは区別できんな
で、何が不公平なんだ

「私はっ……!いつも……!あんたの事……!かんがえ…!のに……!」


泣くのを我慢しながら無理矢理声を出している事は俺にだって解る。その前に今驚くべきは内容のはずだ
考えている?ハルヒが?俺の事を?

「…………いつの間にかっ……あたしは………あんたの事ばっか想ってるのに…………なのにっ!」

ハルヒの瞳から涙が一粒、流れる

―――ああ、そういうことか
これがどういう事かは馬鹿でも解る。俺が解るくらいだからな

「なんで………あんたはっ、落ち着いていられるのよ……!今だって………私は………!」

声を無理矢理出そうとするハルヒの様子は―――不謹慎かもしれんが―――反則的なまでに可愛い。ポニーテールだったら襲ってたかもしれないな
でも今は、この消えてしまいそうに儚げな………折れてしまいそうなほどにか弱い団長様を包んでやる

俺は、ハルヒを抱きしめた

「!?」
「…………平気な訳、無いだろ」

聴こえるかどうかも微妙だったが、精一杯絞り出した声だ。それでも伝わったと思える
そう、平気な訳が無かった。コレでもさっきから煩悩を消す為に余計な事を考えるのに集中していたんだからな

「俺だって、ハルヒが好きだ」

我ながら芸の無い告白だとは思ったがな。シンプルイズベストって言葉もあることだ、問題は無いだろうよ
俺の腕の中でハルヒは微動だにもしなかった。
……………妙に沈黙が怖い
しかし、以心伝心と言う奴だろうか。ハルヒのやらんとする事が解り、抱いている腕の力を緩めた
ハルヒは横になった状態で器用に上へと登ってくる

俺の唇に、ハルヒの唇が重なった

「……ん…………」

ハルヒの口から小さく声が漏れる

唇を重ねたまま、数秒か、数十秒か、数分か………時間の感覚が無かった
唇を離すと、いつもの様なハルヒの笑顔が其処にはあった
その笑顔に惹かれる自分を自覚し、自分がやはりこのお方に惚れている事を自覚する
それでも照れ隠しにと、俺は声を発する

「…………これで俺はお前の彼氏、って事か?」

ハルヒの笑顔に合わすように少し笑いを含んだ声で聞いてみた。今はコレでいいはずだ
案の定、ハルヒは笑顔を崩すことなく……
それも何処か嬉しそうな声で答えた

「そう、ね………そう名乗る事を………許可してあげ、る………」

そう言った後、ハルヒがベットへ崩れる
緊張が解けたのやら安心感やらが要因か、直ぐに寝息を立て始めていた。その寝顔が何処か嬉しそうに見えたのは気のせいじゃないだろう、多分
その寝顔を見ていると何か悪戯をしてやりたくなったが……どうやら俺も限界な様だ
精神的にも肉体的にも疲れたしな。寧ろ今まで良くもったものだ
それでも襲ってきた睡魔に軽く抵抗した

「………オヤスミ」

俺は小さくそういって、ハルヒの頬に唇を当てた。何故唇にじゃないかって?俺もそれなりに恥ずかしいのさ

その行為が活動限界点だったか、俺は睡魔に身を任せて瞼を閉じた

「ってきまーす」

そういって家を出る。昨日の天候が嘘だったかのように快晴だ
しかし降り注ぐ太陽光線は熱気を届け熱気はいまだ残る湿気に熱を蓄えその熱をゆっくりと放出せいでじめじめとした暑さが続いている
回りくどく言ったが兎に角暑い
早くも玉のような汗をかきつつ、俺は太陽への呪いの言葉を呟き続けた。傍から見れば変な奴だな、こりゃ

「キョーンッ!」

制服を取りに帰っていた団長殿がやってくる
その表情は湿気も吹き飛ばすように溌溂としたものだった。見る者を安心させる笑顔、と言った所か。性格さえ知らなけりゃな
因みに迎えに来てもらったのは俺の要望ではない。そこん所勘違いしないように

そんな事を考えて居ると、ハルヒが俺の腕に抱き着く。オイ待て、何処のバカップルだ、これは

「いいじゃない、恋人になったんだし。問題は無いでしょ」

視線が痛いな。それだけで精神に大ダメージだ
と、言おうとしたがハルヒの笑顔を見ているとその気力を削がれる
いや、別に無気力になるわけじゃないぞ?何となく認めてしまうといった感じの方だぞ?

とりあえず今は暑さに負けない様、胸を張って歩かせてもらうよ

なんてたって、この団長様の彼氏な訳だしな―――



end

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