「…………」
「…………」
「…………」
 のっけからすまないな。
 訳が分からんだろう。
 そんなお前さんの為に今の状況を説明してやろう。
 我が家では毎日俺を使う優先権みたいなものが変わるんだ。
 使うってのはおかしな表現かもしれないが、語彙力が無いだけだ許してくれ。
 でもって、今日は妻の有希の方にその優先権があったわけなんだが、
有希が野暮用かなんかで家を出ている間に娘が俺を使ってたもんだから有希と娘がケンカしているんだな。
 無言の応酬がケンカ? って思うかもしれんが、我が家では、
いや、有希と娘のケンカは何時でもこうやって無言で相手を穴が開くんじゃね? 
って位に見まくるのがデフォなんだ。
 そんでもって、俺は何時も二人の間で肩身の狭い思いをしてるってな訳だ。
 これでだいたいの状況を理解してもらえただろう。
「……何故、約束を破ったのかを三行で」
 おお、有希が喋った。
「……破ったつもりはない」
 それって三行か?
 いや、むしろ何で三行なんだ?
「…嘘、これを破ったと言わずに何と言うの」
「……母さんが居ないのが悪い」
「……私は用事があったから家を空けていた。理由にはならない。…よってあなたはルールに反したと言える。
だから、明日も私の日とする」
「…いやだ」
「…あなたに拒否権はない」
 …あの~ 有希さん?
 怖いです。
 ガチなのか?
 頼むから穏便に済ましてくれよ。
「……父さんに決めてもらう」
 んな!? 娘よ俺を巻き込むのか!?
 いやな、確かに俺にもこうなった責任の一端はあるが…
 選択次第では命の危機に直面するやもしれないんだぞ。
「……推奨しない。というより拒否する」
 よく言った有希。
 二人で穏便に決めてくれ。
「…どうして?」
「…彼は優しい。故にあなたと私の主張の中間点の意見を採用するに違いない。
…それでは私の気持ちが収まらない」
「…………」
「…その無言は肯定と証であると見受けた。でわ明日も私の日とさせていt
「なあ、有希?」
「……何?」
「いや、俺が言って良いのか悪いのか分からんような分かるような…」
「…はっきり言って」
 …すんません。
 だから無表情で怒るな。
 何かちびりそうだ。
「流石に可哀想じゃないか? 自分で言うのはこっぱずかしいが、
楽しみを奪うみたいでさ」
「…ルールを破ったのはこの娘。罪には罰を」
「う、まあそうだがな…」
 …こいつあテコでも動かんな。
「……もういい。母さんと父さんは一生乳繰り合ってればいい」
「お、おい、何処行くんだ?」
「…何処だっていい」ダッ
「待t「…行く必要はない」
「…あのな有希、お前の気持ちも分かるさ」
 一応、高校の頃に比べてたら成長したつもりだからな。
「出来ることなら俺と居たいんだろ?」
 首肯。
 うん、いつも通りだ。
「だけど、あいつもそうだってのは分かるよな?」
「…………」
 無言は肯定なんだよな?
 そうだよな?
「その中でお前さんが妥協して今のルールを作ったってのも分かる。
だがな有希、お前はあいつの事嫌いなのか?」
「! ……そんなことはない」
「だろ。だったら今回のことは水に流してやろうぜ?」
「……やっぱりあなたは優しい。迷惑なほど優しい。
だけど、そこがあなたの魅力。そこに私が惹かれたのも事実」
 そこまで褒めてくれるとはな…
 ありがとよ。
「…近所の公園にいる、早く行ってあげて。でないと風邪を引いてしまう」
「あいよ」
「……そのかわり」
「ん? そのかわり何だ」
「……今日は寝させない、覚悟するように」


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