木々が葉を紅に染め、気温も過ごしやすい10月の末日、珍しく早起きして教室に行くと…、
 
ガラガラガラ
 
「……………。」
何故かハルヒが二人に増えていた。
因みに一人は何時も道理俺の後ろの席で、もう一人は俺の右隣の席に座っている。
「…おいおい。」
消えられたら困るが、増えるのもどうだよ。と言うか、クラスの奴はアレをスルーか?
「おっはよー!」
 
ガバッ
 
「おわっ。」
俺の右隣の席に座っていた方のハルヒが、いきなり俺に抱きついてきた。
これは一体!?神に誓ってもいい、俺とハルヒは朝っぱらから抱き合う仲じゃないし、
それ以前にハルヒはそんなキャラじゃないはずだろ。
「キョン。」
こらっ。俺の混乱を他所にほお擦りするな。
「ハルヒ。」
二人いるけど、この呼び名でいいんだよな多分。
「何?」
「周りのやつらが見てるんで、離れてくれんか。」
「やだ。もう少しこのままでいさせて。」
即答かよ。
「あのなあ。」
 
 
つんつん
 
誰だ?今こっちは忙しいんだ。
「なんd…。」
 
ぷにゅ
 
「朝から仲が良さそうね。」
今度は何時もの席に座っていた方の登場か。お前のほうこそ朝っぱらから
振り向く人の頬を指でつつくなんて小学生じみた悪戯するなよな。まったく。
「そう見えるか?」
「そう見えるわ。」
「そうかい。所で、お前もハルヒでいいのか?」
「そっ。あたしも涼宮ハルヒ。」
見た目だけじゃなく名前も同じかよ。区別しづらいな。
「ちょっと、キョン。こっちもかまってよ。」
「わかった、わかった。後でかまってやるから、とりあえず離れてくれ。
これじゃトイレにも行けん。」
「むぅー。」
 
ふう、やっと開放された。しかし、朝っぱらから騒ぎすぎたせいで周りの視線がいたい。
まさかハルヒが二人になるとは。こりゃあ、世界が改変されたのか、
俺が夢を見てるかのどっちかだな。できれば前者であって欲しい、
こんな夢を俺の脳みそが見せたとは思いたくないからな。まあ、何はともあれ、
部室に行くべきだな。長門か古泉が状況を説明してくれるかもしれんし。おっと、その前に…。
「すぐ帰ってくるから大人しくしてろよ。」
釘を刺しとかんとな。さもないと、このハルヒは俺がトイレに行くのにもついてきそうだ。
「わかったわよ。でも、できるだけ早く帰ってきなさいよ。」
おいおい、そんな捨てられた子犬みたいな目をするなよ。
「ああ。」
 
ポンッ
 
「モテル男は大変ね。」
チェシャ猫笑いで言われてもな。
「そりゃ皮肉か?」
「さあね。」
「まあいい、行って来る。」
「「いってらっしゃーい。」」
やれやれ、疲れた。
 
 
教室を出た俺は何故かすれ違う生徒に微妙な視線を送られながら文芸部にたどり着いた。
 
コンコン
 
「どうぞ。」
朝比奈さんのエンジェリックボイスが返ってきたってことは大丈夫そうだな。
 
ガチャ
 
「………。」
「そろそろ来る頃だと思ってましたよ。」
部室には宇宙人、未来人、超能力者が勢ぞろいしていた。
「早速で悪いが、一体何が起こったんだ?」
「涼宮ハルヒによってSTCデータが書き換えられた。」
STCデータってことはやっぱり…。
「ええ、そのとうりです。涼宮さんは世界を改変したんですよ。」
「それで、世界改変の結果、ハルヒが二人になったってか。」
「そのとうりです。」
「ただし、今いる二人の涼宮ハルヒは元の涼宮ハルヒと完全に同一では無い。」
「それはなんとなくわかる。」
ハルヒはあんなに俺にくっつかないし、あんな子供っぽいこともしない。
「二人の涼宮ハルヒは、元の涼宮ハルヒの性質の一部をより強くしている。」
「片方の涼宮さんはもとより甘えん坊に、もう一人の涼宮さんはイジワルになっています。」
ああ、どうりで。
 
「なんでまたあいつはこんな世界改変をやったんだ?」」
「これは憶測ですが。涼宮さんは昨日ハロウィンの事を考えていたんだと思います。」
去年はやりそびれたからな、ハロウィン。
「それで?」
「“Trick or Treat”この台詞をきっかけに、ある疑問を抱いきました。」
相変わらず回りくどいな。
「さっさと結論を言え。」
「失礼。涼宮さんはあなたがイジワルな自分と甘えん坊な自分のどちらのほうが好きなのかを知りたくなった。」
なんじゃそりゃ。
「しかし、それを実際に聞く事は彼女の性格上できません。それでもあなたの答えを
知りたかった涼宮さんは、不可能を可能にするために世界を改変したと言うわけです」。
そんなことのために世界を改変するとは…、つくづくはた迷惑な奴だな。
別にそんな事しなくても俺は…、いや何でもない。
「…名づけて、『ちょっとキョン! イジワルなあたしと甘えん坊なあたし……どっちが
好きなの!?~Trick or Treat☆大作戦。』
「「「!!!」」」
 
全世界が停止したと思われた。
 
「「「……な、長門(さん)?」」」
今のは長門流のジョークか何か?
「何でもない。忘れて。」
 
「コホン。では気を取り直して。…現状を理解いただけたでしょうか?」
「まあ、大体。」
本当は色々突っ込みたいところがあるがまあいい。
「それで?今回俺は、甘えん坊のハルヒと、イジワルなハルヒどっちがいいかを選ぶだけで良いのか?」
いくらなんでも選択によって世界崩壊とか無いよな。
「ええ。それだけだと思います。因みに、涼宮さんに余程酷い事を言わない限りは、
世界の崩壊も無いと思います。答えを聞けたら彼女は満足して世界を元に戻すでしょう。」
だよな。
「おそらくね。ああそれと、元に戻った後のことですが、おそらく今日の出来事は
涼宮さんの夢扱いになり、世界が元に戻ると、世界が改変される直前の10月30日の
夜から始まると思います。」
「そうなのか?」
念のために長門にも聞いてみる。
「そう。正確には10月30日23時34分15秒から世界は再スタートすると思われる。」
「そうか。それじゃあ、あまり長居するとハルヒがうるさそうだからそろそろ教室に戻るよ。」
「あ、あのうキョンくん。」
「どうしました?朝比奈さん。」
「さっきから気になってたんですけど背中のその紙どうしたんですか?」
「えっ。」
何ですと?
 
ぺりっ
 
「!!」
 
 
ダッダッダッダッダッ
 
ガラガラガラ
 
「ハルヒー!!」
教室に入るや否や俺の後ろの席のハルヒに詰め寄る。教室中の視線が集まってるが今はどうでもいい。
「あら、どうしたの?」
「お前、よくも抜けぬけと。」
さっきまで背中に張られていた紙を突きつける。
「こんなもん背中に張りやがって。どういうつもりだ。」
紙には“ポニーテール萌え”と書かれている。道理で文芸部に行く途中妙な視線を感じたわけだ。
「そんな怒んないでよ。ちょっとした悪戯よ悪戯。それに…、」
ハルヒは小悪魔みたいな笑顔を浮かべながら顔を近づけてきて、
「嘘じゃないでしょ。ポニーテール萌えのキョンくん。」
そう耳元で囁いた。
「あ、あのn…。」
 
ピタッ
 
「なーんてね。大丈夫よ。これどうせ夢なんだから。」
ハルヒは小学生みたいな笑顔を浮かべ、俺の唇を人差し指で押さえながらそう言った。
「はあ…。」
そんな無邪気な笑顔を見せられたら責める気が失せるじゃないか。まあいい、
古泉や長門の話によると本当に今日の出来事はハルヒの夢扱いになるらしいし、許してやるか。
 
「キョン、お帰りー!」
「おわっ。」
今度はもう一人のハルヒかよ。
「だから、抱きつくなって。周りに生暖かい目で見られるだろうが。」
「HR始まるまでこうさせて。」
今度は離す気が無さそうだ。おもいっきり抱きつてやがる。結構苦しい。
「わかったから、もう少し力を緩めてくれ。苦しい。」
背に腹は変えられん。それにどうせこれも夢扱いになるんだし、まあいいか。
「これくらい?」
「ああ。」
ふう。これで少しは楽になった。
 
「ところで。ハルヒ。」
「「何?」」
「二人ともハルヒだと俺が呼びにくいし、そっちもどっちが呼ばれたかわかりにくそうだから、どちらか片方をあだ名で呼んで良いか?」
因みに二人の見分けの方は長門がナノマシンを入れてくれたおかげでできるようになっていて、
今の俺には甘えん坊のハルヒの頭の上に天使のわっかが、イジワルなハルヒには悪魔の尻尾が付いて見える。
「「どっちかって、どっちよ?」」
「そうだな、じゃあこっちのハルヒ。」
俺はイジワルなハルヒを指差す。
「えっ、あたし?」
「ああ。今日だけお前のことをハルハルと呼ばしてもらう。」
「ななななな。」
あな珍し。ハルヒが羞恥で赤面している。
さっきの軽い仕返しのつもりで言ってみたが効果抜群だな。
「あっ、岡部が入ってきた。ハルヒ、そろそろ離れてくれ。」
「はいはい。」
そう言いながらハルヒは自分の席に戻った。
「そんじゃあな、ハルハル。」
追い討ちを受けてさらに赤面するハルヒ、いやハルハルを視界の隅にとらえつつ俺は前を向いた。
 
「やっと、昼休みか。」
あの後は、授業中にハルヒが教科書を忘れたと言い出し俺の教科書を見せてもらうために
机をくっつけてきたり、机をくっつけたことをいいことに授業中ハルヒに手を握られたりとか、
ハルハルが何時ものハルヒ以上に俺の背中をシャーペンでつついてきたりとか、背中に
変なことを書いてきたりしてきた等、色々あったが何とか午前中の授業はつつがなく終了した。
「キョン。一緒にお弁当食べよ。」
「今日は弁当なのか?」
「そうよ。キョンと一緒にお昼食べたかったからね。」
まあ、たまには悪くないな。
「いいぞ。」
「やったー。」
「だからいちいち抱きつくなっての。」
ハルヒを振りほどこうとしてると、不意に後ろから視線を感じたので、
ちらっと後ろを見てみるとハルハルが弁当を持ったままこっちを見ていた。
なるほど、そう言う訳か。
「おい、ハルハル。」
「なっ、何よ。」
「お前も今日、弁当なのか。」
「そうだけど、それがどうしたのよ。」
「いや、せっかくだからお前も一緒に弁当食わんか?」
もう一人の自分と一緒に飯を食うなんて滅多にできることじゃないぞ。
「しかたが無いわね。あんたがそう言うんだったら一緒に弁当食べてあげるわよ。」
全く素直じゃない奴だな。本当は俺たちと一緒に弁当着たかったくせに。
「何よ、その顔。」
「別に。何でもないよ。」
「嘘。あんた絶対あたしに言いたいことあるでしょ。」
相変わらず鋭いな。
「ホントに何でもないって。」
「はいはい、言い合いはそこまでにして、早く机くっつけよ。あたしお腹空いちゃった。」
ハルヒの仲裁によりハルハルの追求も中断され、俺たちは昼飯を食うことにした。
 
「なあ、ハルヒ。」
「何?」
「食事中くらい離れてくれんか。食いづらい。」
「ええー。」
「『ええー。』じゃない。」
たくっ。HR前や休憩時間は言わずもがな、授業中まで何だかんだでくっついていたのに、まだ足らんのか。
「むー、足りる足りないの問題じゃないの。目の前にいるのに触れれないと寂しいのよ。」
「あのなあ。」
おいおい、そんな潤んだ目で見るんじゃない。何か俺が悪いことしてるみたいじゃないか。
「それに、あんただって何だかんだ言いながらまんざらでもなさそうだったくせに。」
「うっ…。」
そりゃあ、大抵の男は女の子に甘えられて悪い気はしないだろうし、その相手が黙ってる限りは
一美少女高校生であるハルヒなら尚更だろう。俺だってその中に入らないとは言い切れん。
しかしだ、それが食事中だったら話は別だろ。食べづらい。
とは言え、何だかこのまま無理やり離れさせるのも気が引けるな。ふう、仕方が無い。
「お前の言いたいことはよくわかった。しかしだ、やはり食事中にくっつかれてると食べにくい。
弁当食い終わったら授業が終わるまでお前の言うとうりにしてやるという条件付で今は離れてくれんか。」
「しょうがないわね。いいわよ。ただし、弁当食べ終わった後にやっぱそれなしなんて言ったら罰ゲームだからね。」
「はいはい。」
ふう、やっと開放された。さてと、弁当食い再開するか…。
「スキあり!」
「はあ!?」
 
俺が驚きの声をあげた直後にハルハルは俺の弁当箱から最後のから揚げを盗み取りやがった。
「こら、ハルハル。人のから揚げ取るな!」
「へへーんだ。いちゃついててスキだらけなのがいけないのよ。」
「誰がいちゃついてたって?」
「あんたともう一人のあたしに決まってるじゃない。」
「断じて違う。ってか、隙があるないにかかわらず人の弁当のおかずを盗るなよ。」
「そんなにこのから揚げ食べたい?」
「そりゃあ…、お前に食われるよりはな。」
「仕方が無いわね、本当だったら一度手に入れたものは何であろうと手放すつもりは
無いんだけど今回は特別に返してあげるわ。」
「そりゃどうも…。」
「はい。」
そう言いながら、何故かハルハルはから揚げを弁当箱に戻さずに俺の口元へと運ぶ。
「おい、何のつm、むぐっ。」
「何って。あんたにから揚げを食べさせてあげてんのよ。」
いちいち食べさせなくても、弁当箱に戻せばいいだろうに。
「そうかい。」
「そうよ!」
しかし、何だその実にいい笑顔は。お前がそんな顔をしてるときはろくなことが無いんだが。
「ねえ、キョン。」
「何だ?」
「間接キスね。さっきの。」
「ゴホッ、ゴホッ。」
「ちょっと、大丈夫?」
ハルヒが慌てて俺の背中をさすってくれた。
「…ああ。サン…キュー。」
くそっ。ハルハルの奴、変なこと言いやがって。
「お前は小学生か。」
「あら、真に受けてるあんたも十分小学生並みよ。」
悪かったな。
 
昼休みのハプニングもなんとか終わり、その後は比較的穏やかな時間を過ごすことができた。
午後の授業が始まり始めた頃から二人のハルヒが何か考え事を始めたからだ。
おそらく放課後に何かしだすつもりなんだろう。ハルヒ的には夢だがそれでも今日がハロウィン
であることには違いないからな。たく、今度は何をする気だ?
 
そして放課後。
 
「おわっ。」
放課後になるや否やハルハルが俺の右手首を、ハルヒが俺の左手を捕まえて走り出しやがった。
「おい、鞄。」
「「団活が終わってから取りに来れば良いじゃない。それよりさっさと部室に行くわよ!」」
「はあ。わかったよ。」
ハルヒが一度何かを始めると俺が止めれたことなんてほとんど無い。まして、
そいつが2人いるんなら尚更だ。無駄な抵抗はよそう。
 
バァンッ
 
「「やっほー。」」
「あっ、キョンくん、涼宮さん。お茶入れますね。」
二人のハルヒに引っ張られて部室に入ると。すでに朝比奈さんも長門も古泉も勢ぞろいしていた。
俺たちは放課後になってすぐにここに来たはずなのに全員いるのかよ。ひょっとして、3人はHRに出てないのか?
そんな疑問を抱きつつ俺は何時ものパイプ椅子に座った。因みに団長席に座ったのはハルハルで、
ハルヒは客用のパイプ椅子を俺の横に置いて、俺の片腕に抱きつきながら座っている。
そのせいか、古泉と朝比奈さんの微笑ましいものを見るような笑顔でこっちを見るのが精神的につらい。
「はいどうぞ。」
「「ありがと、みくるちゃん。」」
「どうも。」
朝から今まで二人のハルヒに振り回されまくった俺にはあなたの淹れてくれるお茶が何よりの
回復薬ですよ、朝比奈さん。
 
俺がありがたく朝比奈さんのお茶をいただいているとハルハルが団長席から立ち上がり、
「みくるちゃん、今日が何の日か知ってる?」
「ええっと、確かハロウィンですよね。」
「そのとうり、今日はハロウィンよ。」
正確には無かったことにされてハルヒの夢扱いになるがな。
「と言う訳で、今日のSOS団の活動はそれにちなんだものにするわ!」
「仮装パーティーでもするんですか?」
「違うわ、古泉くん。確かにそれもいいなとは思ったんだけど、衣装を準備する時間がないしね。」
そう言いながらハルハルは鞄から飴玉がいっぱい入った袋を6つ取り出した。
ああ、道理で6時間目にいないと思ったよ。それを買いに行ってたのか。
「これらにはそれぞれ20個づつ飴玉が入っています。」
「6つづつあると言うことはそれは僕たち全員に一袋づつ配られるんですね。」
「そのとうり。それで、今からゲームをします。」
「ゲーム?それって、ここに置いてあるボードゲームのことですかぁ?」
「ここにいる全員が同時にできるなら、ボードゲームだろうがカードゲームだろうが
それ以外だろうが何でもいいわ。とりあえずゲームと名の付くもの全てよ。」
「はあ。」
「それで、ゲームをするときに、飴玉を一つ以上賭けるの。賭けた飴玉は1位の人が
全部もらえるってわけ。それを部活終了時間30分前くらいまで繰り返して、そのときに
一番手持ちの飴玉が少ないか、飴玉が無くなった人がこれをつけて皆に悪戯されるの。」
そう言いながらハルハルは今度はジャック・オ・ランタンのお面を取り出した。
駄菓子屋の婆さんがくれたんだろうか?じゃなくて。
「おい、ハルハル。」
「「「ハルハル?」」」
「ばかっ!皆の前でその呼び方するな!」
ハルハルは団長と書かれた三角錐を投げてきた。よかった飴のほうじゃなくて。
「悪い悪い。しかし、何時からハロウィンはそんなギャンブル的なイベントになったんだ?
それにジャック・オ・ランタンは悪戯するほうだろ。」
「「まあ、そんなことはどうでもいいじゃない。楽しければ。」」
俺の意見はダブルハルヒのこの台詞によりにあっさりスルーされることとなった。やれやれ。
 
あの後、ハロウィン的ゲーム対決が行なわれた訳だが、ゲーム対決の内容や
罰ゲームの内容などは特に描写する必要が無いか、あるいは俺が描写したくないので
結果だけを報告させていただくと、二人のハルヒと長門は言うに及ばず殆ど毎回優勝争いを
繰り広げ、朝比奈さんは飴玉を全部はなくさない程度に勝っていて、あの古泉でさえ今日は
何回か勝っていた。そして今日に限って一回も勝てなかった俺の飴玉はゲーム終了時には
なくなってしまい、その後、俺はかぼちゃおばけのお面を付けさせられ、皆と言うか
主に二人のハルヒに悪戯という悪戯をされつくしたのである。
たくっ、イジワルなのは片方だけじゃなかったのかよ。
「はあ。」
因みに今の俺は地獄の罰ゲームタイムが終了し本日の団活は終了したので、俺は教室に鞄を取りに帰っている最中である。
 
ガラガラガラ
 
「あった、あった。」
自分の机にかけてある鞄を取って帰ろうかと振り返ると開けっ放しのドアの所に一人の少女が立っていた。
「よう、遅かったじゃないか。もう学校は終わっちまったぜ。」
俺の台詞に少女は珍しく苦笑する。
「遅いかったなって…。あたしは朝からずっと学校にいたわよ。あんたも見てたでしょ。」
「さあ?今日はお前そっくりな甘えん坊といたずらっ子しか見てないぞ。」
そう言いながら少女に歩み寄る。
「お前は元のハルヒなんだろ?」
少女は一瞬驚いたかと思うとすぐに満面の笑みを浮かべた。
「何でわかったのよ。」
今日始めて見るハルヒの赤道直下の笑顔だった。
「1年半もお前の前の席にいるからな、何となくわかるんだよ。」
「何それ?」
俺の返答が可笑しかったのか声を上げて笑い出すハルヒとそれにつられる俺。
夕暮れの教室に二人の笑い声がこだました。
 
「それでさ…、キョン。」
「何だ。」
「どっちが…良かった?」
「どっちって?」
「もう。イジワルなあたしと甘えん坊なあたしよ。どっちのほうが、その………キョンの好みなのよ?」
ああ、そうか。ハルヒはこれを聞くために世界を改変したんだったな。地獄の罰ゲームのせいで忘れてた。
「そうだな…。」
二人のハルヒと過ごした半日あまりを思い出す。
「何よ、その歯切れの悪さ。ひょっとしてどっちも好みじゃなかった?」
「そうとも言えなくも無いな。だがそうじゃないとも言える。」
実はと言うと部室で長門や古泉の話を聞いたときくらいから答えは決まってたんだが、
実際にそれを言葉にするのはいくら夢扱いになるとはいえ、気後れするな。
「はっきりしないわね。」
「ああ、つまり…だ。両方ともよくなかったし同時に両方ともよかったというか…。」
「ちょっと、訳わないわよそれ。」
気の短いハルヒはネクタイを掴み俺を引き寄せ至近距離で睨みつけてくる。
このままじゃまずいかもな。仕方が無い覚悟を決めるか。これは夢だ、これは夢だ、これは夢だ。
「ハルヒ。」
「何よ。」
「一度しか言わんからよく聞いてくれ。」
何時ぞやの閉鎖空間のようにハルヒの肩を掴む。
「俺は―――。」
 
ガタンッ
 
次に気が付くと俺は自分の部屋のベッドから転げ落ちていた。
「いてて。」
寝ぼけた頭で取った携帯のディスプレイには10月30日11時34分と表示されている。
どうやら元の世界に戻ったらしい。
「ハルヒはあの回答に満足してくれたか。」
よかった。あんな恥ずかしいこと言って却下だったら精神的にかなりきついからな。
ただ、慣れない事を言ったせいか未だに心臓がうるさ自己を主張している。こりゃあ、
閉鎖空間のときと同様に寝れないかもしれん。
そう思いつつベッドに入ろうとしたときにふとカレンダーが目に入った。
明日は、あいつにとって夢じゃない、本当のハロウィンになるわけか。
「さて、ハルヒのやつ明日は何をしでかすんだろうな?」
 


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