「──こんにちは。─…あなたは──とても─優しい──…こんな──作品に……目を通して─くれている」
「…九曜さん、開始早々のメタ発言は避けてほしいのです」
「…まぁ九曜さんらしいと言えば九曜さんらしいと言うか」
「…おい、こんなくだらないことの為に時間を割くのはもったいだろ。さっさと本編を始めた方がいいんじゃないのか?」
「そうは言うがね藤原くん。どうやら僕達の出番はここしかないようなんだよ」
「少しくらいお喋りしたっていいじゃないですか」
「─…空気─読んで」
「…ふん…しかし与えられた役割があるだろ?せめてそれだけでもやったらどうなんだ?」
「それもそうだね。早い内に終わらせておこうか」
「この作品は、秋の企画にあわせて書かれたSSなのです。中には原作と少しずれた設定があるかもしれないのです」
「─メタ要素も──含まれる」
「そういうのが不快に感じる人は見るのはお勧めしないな」
「とりあえず僕たちが伝えたいことはこれくらいだ。あとは気楽に読んでほしいかな」
「…もう私たちの出番は終了ですか?せっかくの企画モノなのに」
「─…これ」
「ん?どうしたんですか?…って台本!?『橘用』って書いてあります!」
「おや、どうやら僕たちにも出番を作ってもらえたようだね」
「─…『九用』。──…『九曜用』の間違い?」
「って本編始まるじゃないですか!急ぎましょう!」
「そうしようか。長ったるい前書きで申し訳なかった。では」
「─…また──後で…会いましょう」
「…僕の台本が無いのは規定事項だ…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
朝っていうものは誰にも平等に訪れる。
もちろん過ごし方はそれぞれ人の好きにしてしまって構わないだろう。
それが休日ならばなおさらだ。
学校なんぞに縛られなくてすむ。
 
ちなみに今日は金曜日にも関わらずの休校日。
毎日ハルヒに振り回されて疲れきった体を癒やすために俺はベッドで爆睡している…
 
…予定だったのに…
 
 
 
 
「キョンく―ん!朝だよ―!」
 
何が悲しくてその貴重な休みの朝っぱらから妹にたたき起こされなきゃいけないんだよ。
 
「…ちょっと待て…起きる前に少しつっこませろ…何で休日に早起きしなきゃいけないんだ?」
「え?キョンくんの学校って今日は運動会じゃないの?」
 
…運動会?
 
「そうだよ。去年は優勝できなくてハルにゃんが悔しそうにしてたじゃん!」
 
…去年?
…俺の記憶が正しければ高校一年生の時に運動会なんて行事があった気がしないのだが…
 
「…そう…だっけか?」
「そうだよ。キョンくん寝ぼけてるの?」
「いや…まぁいい」
「早く支度しないと遅刻するよー!」
 
そう言って部屋を出て行く妹をふと見て即座に呼び止める。
 
「ちょっと待て!…その格好はなんだ?」
「え?何が?」
 
振り向いた妹は白装束に身を包んで、木製の杖のようなものを持っていた。
 
 
「だからお前の服装だよ」
「えー?今日はハロウィンだよ?毎年こうやって仮装してたでしょ?」
 
妹が言うには毎年10月31日には日本全国でハロウィン一色になり、どこもかしこも仮装した人で賑やかになるそうだ。
北高はその騒ぎに便乗して運動会を開くのだという。
 
…しかし今まで過ごしてきてそんなことは一度もなかった。
 
…なんとなく予想、ハルヒパワー大炸裂。
 
大方日本にハロウィンの風習が無いのを嘆いたのだろう。
…あと学校に運動会が無いのも。
 
…せっかく休めると思った日にとんでもなく愉快な行事がふたつ。
 
「…やれやれ」
 
とりあえず起きて学校に行くために俺の上で丸くなっているシャミセンをどかして朝食を食いにリビングへ向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
…北高への通学路でいろんなものを目にした。
 
朝、妹が着ていたような白装束の行列や、お化けの被り物を被った人。
街の街灯はキャンドルに付け替えられていて、道のあちこちには顔の模様がくり抜かれたかぼちゃが置いてあった。
 
…なんか違う世界に来たようだな…
 
「あ、キョンじゃないか」
「おぉ、国木田。おはよう」
 
国木田は制服だった。
さすがに学校の奴らは普通の格好なんだな。
まぁ運動会に仮装してやる学校なんてないよな。
 
「何を言ってるんだいキョン。去年もみんなで仮装したじゃないか」
 
…あ、仮装はするんですか…
 
 
「一年生の時は谷口が張り切って大変なことになったじゃないか。突然…
 
「俺、透明人間の仮装やるぜ!」
 
とか言って全裸になりだしたじゃない」
 
あの馬鹿は何をしているんだ!?
…多少はモラルのある人間だと思ったのだが…
 
「教室に着いたらみんな準備してると思うよ。張り切って仮装するもの選んでたしね」
「へ?仮装って全員やるのか?」
「当たり前じゃないか!キョンだって昨日、ちゃんと用意してくるって言ってたじゃないか!」
 
知らねぇよ!
 
「え?本当に用意してないの?…考えてすらいない!?」
「いや…あの…すまん」
 
うなだれつつげた箱から靴を取り出す。
…国木田に責められると何か辛いものがあるな…
 
「とりあえず部室に行って丁度いいものがないか探してくる」
「あ、去年の映画撮影で使ったカエルの着ぐるみって残ってないの?」
「多分残ってるが…あんなのでもいいのか?」
「もちろん!仮装って言ったって特に規制は無いはずだし」
「わかった。先に教室行っててくれ」
 
そう言って俺は部室へと向かった。
 
 
学校の中も仮装している人で溢れていた。
…昨日いた場所と同じものとは思えないな。
 
「えっと部室…はこれでいいのか?」
 
一年半も通い続けた場所に対してこんな疑問をもつのはいささか変に感じるが…
 
…ドアがハロウィン用に飾り付けされてて訳が分からなくなっている。
 
扉の両脇にはカボチャの作り物、ドアノブにもカボチャのカバー。
「SOS団」と書かれた紙は白黒の蝋燭でデコレーションされていた。
 
…とりあえず入ろう。早くしないと集合時間に間に合わない。
ん?部室に誰かいる?
 
「…長門」
「…待ってた」
 
扉を開けると長門が定位置で本を読んでいた。
着ているものは北高の指定の体操着…に去年の映画撮影でつかった魔女の衣装を身につけたもの。
ついでにいうとあのオモチャのロッドも携えている。
 
「待ってたって…俺をか?」
「…そう。あなたにこの状況について説明する必要があると判断した」
「それは良いんだが…またハルヒが勝手に望んだことを現実化させただけじゃないのか?」
「…そう。しかし今回は不明な点がいくつかある」
 
 
 
…不明な?
 
「…一つ目にあげられるのは、この状況がいつから起こっていたのかということ。思念体も全く観測できなかった」
「気がついたらハロウィンが恒例行事になっていたってことか?」
 
長門は僅かに髪が揺れるだけ頷く。
 
「…二つ目は情報操作の規模。このハロウィン現象は日本全域において発生してる」
「それって凄いことなのか?」
「…私の場合全力をつくして西日本全域」
「…理解した。まぁハルヒが満足したら普通の日常に戻るんだろ?」
「…おそらく」
「だったら今日はこの状況を楽しんでしまおう。運動会も無かったことだし」
「…そう」
 
まぁこれも慣れの一種なんだろうなぁ。
去年の俺だったら慌てまくって元に戻す方法を考えたりして。
 
…まぁこの状況も結構なんだが。
 
「あれ?長門、ここら辺に置いてあったカエルの着ぐるみ知らないか?去年のアルバイトの時にもらったやつ」
「…それなら10分前にあなたのクラスの人間が借りに来た」
「俺のクラス?誰だかわかるか?」
「…チャック」
「…谷口か…」
 
 
何がしたいのか全くわからないがあれが無いと俺は仮装できなくなってしまう。
 
「返してもらわないとな…教室に戻るよ。長門も教室に行かなくていいのか?」
「…もう少しここにいる」
「そうか」
 
そう言って俺は教室に向かった。
 
――――――――――――
 
「あ、キョンくん来たのね」
 
教室に着くとみんな仮装しまくっていた。
入り口で迎えてくれた阪中は犬の着ぐるみを着ていたし、他にはお化けの格好をしたやつや、誰も知らなそうな映画のコスプレをしていたやつもいた。
 
「キョンくんは何の仮装にするのね?」
「あぁ、俺は―
「ちょっとキョン!あんた何で制服のままなの!?」
 
…人の話は最後まで聞け。
というか会話に割り込むな。
 
SOS団団長涼宮ハルヒがそこにいた。
 
「何でもいいからさっさと着替えなさい!」
「カエルの着ぐるみにしようとして部室に取りに行ったら無かったんだよ」
「あら、キョンくんも着ぐるみなのね」
「無かったって…誰かが持って行ったの?」
「谷口らしい。長門がそう言ってた…ってかハルヒのその格好…」
「吸血鬼よ吸血鬼!とりあえずマント羽織ってみたかったからこれにしたの!」
 
何というか…攻撃的なのが全面的にでてるな…
 
 
「何か言ったかしら?」
「…何でもない…そういや谷口は?」
「今日はまだ見てないのね…」
「まじかよ…」
 
…とそこへ
 
「どっせぇぇぇぇい!」
 
と勢いよく扉を蹴破ってカエル男が教室に突っ込んできた。
 
…谷口でいいんだよな?
 
「あぁ、そうだぜ!」
 
クラスみんな唖然としている。
 
「いや、何でもいいからその着ぐるみ脱げ。俺がそれ着て仮装したいから。あと扉直せ」
「なんだよ、ノリ悪いなぁキョンは」
「…空気ぐらい読んでくれ。そこまでハイテンションだと逆に引いてしまう」
「そうか…」
「お前もさっさと自分の仮装でもしたらどうだ?」
「…自分の仮装…だと?」
 
 
そう言ってククク…と笑う谷口。
どうでもいいから早くカエルの着ぐるみ脱げ。
 
「…まぁあせるなキョン…なぁみんな、あるところに一人の男がいたとする。その男はなかなか金持ちで、また自分の着る服には一切の妥協を許さない…そんな男がいたんだ」
 
…勝手に語り出したよ…
クラス一同の注目を浴びながら馬鹿は演説を続けていく。
 
「男は毎日服をとっかえた。有名な店で毎日オーダーメイド…しかし気に入るものが何もない…」
 
語りながらゆっくりと教卓へ歩み寄りみんなと対峙する。
 
「毎日のように服を仕立てる店の人は嫌気がさしていた。仕事が入るのはうれしいが、自分の作る服が1日も保たずに捨てられるのは気分が悪い。そこで店の人は考えた…だったら捨てられても構わない服を作ろうと!」
 
………
 
「…ねぇキョン」
「…なんだ、国木田」
「…去年の透明人間といい…嫌な予感しかしないんだけど…」
「…確かに…まぁ最後まで聞いてみよう…」
 
…周りの奴をみると苦笑いしている奴もいるな…
 
「捨てられても構わない服…それは透明な服!」
 
…どう考えても裸の王様だな…
 
 
「…間違いなくあの着ぐるみの中全裸だよね…」
「…だよな…おーい、誰か警察呼んでくれ」
「あ、私やっておくわ」
「サンキュー朝倉」
 
…今俺なんていった?
 
「警察です!変態がいると聞いてやってきました!」
「あ、こっちです!このカエルの着ぐるみの中の人です!」
「ち、ちょっと待て!俺はまだ何もやってない!」
「これからやるつもりだったのか。とりあえずあっちで話を聞くから」
 
そのままズルズルと警察に引っ張られていく谷口…じゃなくて…
 
「朝倉!?」
「ん?どうかしたのキョンくん?」
「なんでお前がここに!?」
「何でって…ここが私のクラスだからだけど…私がいたらそんなに変?」
 
変も何も…お前去年転校したことになってるはずじゃ…
 
…と言い掛けて口を噤んだ。
 
「…何言ったって無駄か…」
「え?」
「…何でもない」
 
どうせ情報操作とかでうまい具合になってるはずだ。
何で戻ってきてるのかは知らんが長門の警告も無かったことだ。害は無いだろう。
 
「おーし、みんな集まってるかー?」
 
 
しばらくして岡部が入ってきた。
 
「あ、谷口くんが警察に連れて行かれました」
「あぁ、さっき聞いた。報告ありがとな成崎。それとキョン」
 
…俺?
 
「あの着ぐるみあとで取り来いって。警察の人が」
「あ、わかりました」
「よし、じゃあ開会式始まるからみんな運動場に移動してくれ。こっちのチームが勝ったら全員にジュース奢ってやるよ」
「「「よっしゃあ!!」」」
 
まぁ正直ジュース如きで喜ぶような年では無いんだが…貰えるものはありがたく貰っておこう。
 
「あ、そういやハルヒ、チーム分けってどうなってるんだ?」
「あれ?結構前にプリントで配られなかったかしら?」
「…すまん、無くしちまった」
 
…元から無かったんだがな…
 
「全く…SOS団の団員ならそういうところはしっかりしなさいよね…」
「…へいへい」
「真面目に返事しなさい!」
「…はい」
 
とりあえず大ざっぱに聞いたところ、赤組が、俺達のクラス、鶴屋さんと朝比奈さんのクラス。
んで白組が長門のクラスと古泉のクラス。
 
…いい感じにSOS団が分かれてるんだな。
 
 
「ところでハルヒ、優勝したら何かあるのか?」
「あんたそんなことも忘れたの!?せっかく古泉君が情報仕入れてくれたのに…えっとねぇ…ゴニョゴニョ…」
「へ?嘘だろそれ?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「という話をもちまして、私、校長の前説は終わりにいたします。尚優勝チームには、校舎の屋上に山と積まれたお菓子が与えられます!」
 
マジでかあぁ!!!
 
「ほら、言ったでしょキョン!」
「いや…あれどうやって積んだんだよ」
 
運動場から見てもゆうに校舎の3分の1はありそうな量のお菓子が屋上につまれている。
 
 
「生徒会の人達じゃないの?あの会長なら黒い方法でやりかねないわ!」
 
そう言ってハルヒは運動場の一角を睨みつける。
運営テントのしたで涼しい顔をしながらパイプ椅子に座っている会長が目に入る。
 
というか吸血鬼の格好だとハルヒの睨みも一層迫力が増すな…
 
「あんたのそのカエル姿も滑稽だけどね」
 
…うるさい。
取り合えず頭だけでも脱ぐか。
 
「というかあの会長は仮装しないわけ!?」
「性格的に出来ないんじゃないのか?」
「年に一度のお祭りなのに…」
 
…まぁ俺としては日陰でのんびりしてる会長より…
 
「ほら、会長、早くこれに着替えてください!」
 
横で王様の衣装を押しつけてる喜緑さんが100倍気になるんだが…
ブルマにネコミミって反則技じゃないのか?…尻尾までつけてるし…
 
「…そんなにヤラシイ目で見てるわけ?」
 
違う違う!ただなんというかあの人のネコミミ似合うなとか妖しい感じが良いとかそんなことしか…痛ぇ!つねるなハルヒ!!
朝倉もそんな目で俺を見るな!!
 
 
「全くもう!」
 
というか喜緑さんなら不思議パワーであれくらいの量のお菓子は何とかできそうだな…
 
「ちなみにあの二人はどっちのチームだ?」
「白組よ」
 
長門と喜緑さん。
宇宙人二人相手ですかそうですか。
勝てる気がしないんだが…
 
「何弱気になってんのよキョン、今年は絶対優勝するわよ!」
「そうだよキョン。逮捕された谷口のためにも頑張ろうよ!」
「あいつは自業自得な気がしてならないんだが…ちなみに国木田」
「え?何?」
「…その衣装は何だ?」
「…ゴスロリの衣装だよ。阪中さんが用意してくれたんだ」
 
…そういうのって女性がするんじゃないのか?
 
「違うのね!国木田くんは童顔だから似合うと思ったのね!」
「…去年もそう言って僕に着せたよね…」
「…ゴメンなのね」
「まぁ自分で着る衣装迷ってたから助かったよ」
「ほら、国木田くんに阪中さん、喋ってると注意されるわよ」
 
朝倉の衣装は…エプロンだけ?
 
 
 
「え?そうよ?変かしら?」
 
仮装になるのかそれは…っていうかブルマにエプロンっていいな…
いや、何でもない!耳を引っ張るなハルヒ!!
 
「えーっと、会長が衣装に着替えているため、生徒会書記の喜緑が開会宣言をさせてもらいます。というかみんなで元気よくさけんでしまいましょう!!せーの!!!」
「「「「トリックオアトリート!!」」」」
 
こうして祭りが始まった。
 
―――――――――――――
 
「結構父兄の人来てるんだな」
「まぁお祭りみたいなものだしね、他の高校に比べて見に来る人多いみたいよ」
 
子供もたくさんいるなあ…
 
「ハルヒの家は誰かくるのか?」
「んーどうなんだろう。一応伝えたけど…仕事で来ないと思うわ。一応ハカセくんにも言ったんだけど、テスト勉強でいけそうにないって」
 
ハカセくんって?
 
「ほら、私が家庭教師してる子」
「あぁ、あの子か」
 
『それでは、第一競技を始めたいと思います。司会進行は、名も無きコンピ研部長がお送りします』
 
 
「あ、始まるみたいね」
「プログラム見せてくれ…3年生の借り物競走か…」
 
お、朝比奈さんだ。
 
「あの衣装去年の映画で使ったウエイトレスじゃない?やっぱりあの子は可愛らしいわねぇ」
「走るのはものっそい遅いけどな…」
 
やっとお題の紙の所までいったようだが…
 
「…紙見たまま固まってるわよ?」
「ってか周りの人も固まってない?はいキョン。お茶」
「お、サンキュ国木田…お題何が書いてあるんだろうな?」
「多分そういうのって生徒会の人が考えるんじゃないかしら?」
「江美里が考えたとしたら危ないわよ」
「え、何?朝倉なにか知ってるの?」
 
っていうか喜緑さん呼び捨て?
 
「あぁ、ちょっとした知り合いなのよ。江美里、あぁ見えて腹黒いからえげつないこと書いたかもしれないわ」
「あ、第一走者がみんな運営席にいったね」
「何か揉めてるわよ…あ、みんなスタートに戻ったわ」
 
『えー…只今の第一レースに置いて、走者全員のお題に「ドッペルゲンガー」という無茶ぶりが施こされていたので無効となりました』
 
 
…えげつないってレベルじゃねーぞ。
無差別攻撃かよ。
 
「ね?ひどいでしょ?」
「というか何で喜緑さんはそこまで勝ちに執着するんだ?」
「最近お菓子にハマってるんだってさ」
 
…もうなんでもいいよ。
 
ちなみに朝比奈さんは「モデルガン」を引いたらしく、なぜかたまたま大森電気店の店員と見学に来ていたヤマツチモデルショップ人がなぜかたまたま持っていたモデルガンを片手にパタパタとゴールしていった。
 
「さりけなーく映画の宣伝になったのかな?」
「言うな、国木田…」
 
さすがに最初の無茶ぶり以外はまともなお題のようでちゃくちゃくと進んでいった。
 
「あ、キョン!あれ鶴屋さんじゃない」
「…本当だ。あの人は…和服?」
「あの人って何着ても似合うのね。ルソーにも沢山着せてあげたいのね」
 
…犬連れてきたのかよ…
 
「お母さんが連れてきてくれたのね」
「あ、あのレース江美里もいるわね…面白いものが見れそう」
「二人とも負けず嫌いぽいっしね」
 
始まった…二人とも走るの速いな…
 
 
「ぶっちぎりなのね。涼宮さんと朝倉さんとタメを張る速さなのね」
「だれかぁー!!『猫』連れてきてる人いませんかぁ!?いたらちょろっと貸して欲しいっさ!」
 
鶴屋さんのお題は『猫』か…
 
「キョン!今すぐあんたの家からシャミセン連れてきなさい!」
「無茶言うなよ…」
 
なかなか猫連れてくる人もいないだろう、犬ならリードを付けておけば安心だが…
 
「あ―!鶴にゃん!シャミで良かったら連れて行っていいよ!」
「サンキュ!妹ちゃん!すぐ返すっさ!」
 
…なに連れてきてんだあの野郎。
 
「あの隣の子は妹さんの友達なの?」
「あぁ、あれ同級生。ミヨキチってんだ」
「最近の子は発育が早いのね…」
 
…むしろあれは特殊な気が…
 
「妹ちゃんの友達なら挨拶に行きましょうよ!」
「何でそうなる。それに鶴屋さんは応援しなくていいのか?」
「大丈夫なんじゃない?ほら、他の人はまだお題のもの探してるみたいだし」
「国木田くんの言うとおりなのね。ルソーはここに置いていって大丈夫かな?」
 
どっかに繋いでないと危なくないか?
 
 
「…それもそうなのね。私はお留守番してるのね」
「良かったら私が預かりましょうか?」
 
その声を聞いてレースを観戦していた朝倉がピクッと動く。
 
「…喜緑さん?レースはどうしたんですか?」
「いえ、探しものをしていたもので」
 
そう言って微笑みながら『犬』と書かれた紙をヒラヒラと見せる。
 
「駄目よ阪中さん!勝負ごとなんだから敵に手助けしちゃだめよ!!!」
「そ、それもそうなのね、駄目なのね…ってルソーは?」
「…もう江美里が連れてったわよ」
 
そう言って朝倉が指指した先にはもの凄いスピードで鶴屋さんを追いかける喜緑さんがいた。
 
「ちょっと!ルソーしっぽ引っ張られてるわよ!!!」
「ルソー!!!あんな魔性のネコミミ女に着いていったら駄目なのね!!!」
 
…なんとなく阪中の中で喜緑さんの位置付けが決まってしまった気がする。

「…ってか見てたなら止めてやれよ朝倉…」
「…あなたも見てたじゃない」
 
…何?
 
「江美里が『犬』って書かれた紙を見せてから、ルソーを奪ってレースに復帰するまで0.8秒よ」
「…残像かよあれ」
「わかってても止められるレベルじゃないのよ、あれは」
 
 
まぁレースは鶴屋さんが勝つだろうが…
 
「さすがに江美里も人が沢山いる中では変なことしないでしょうね」
「…そういう発言するってことは…お前やっぱり長門と同じ…」
「宇宙人よ?今更何で?」
 
いや今更というか…お前はカナダに行ってた筈で…かくかくじかじかで。
 
「あぁ、それは涼宮さんの情報操作で、ハロウィンと運動会が追加されたのと一緒に私も戻ってきたみたいなの。それで、長門さんに頼んで今日1日だけクラスに戻してもらったの」
「…ってことは今日が終わったらまたいなくなるのか?」
「…寂しい?」
 
まて、微笑みかけるな。
反則並の笑顔だそれは。
 
「…別に。刺された時のトラウマが蘇らんですむ」
「信用ないなぁ、私」
「ってかすぐそこにハルヒ達がいるのにこんな話してていいのか?」
「大丈夫よ。レースに夢中になってるみたいだし」
「いけー!鶴屋さん!!後少し!!!」
「…今鶴屋さんの横、何か通り過ぎていかなかったかな?」
「あーっ!!!あのネコミミ女!!!!ルソーのこと投げたのね!!!!」
 
慌ててルソーの下に走って行く阪中達を見送りながら、朝倉は寂しそうに言った。
 
 
「…やっぱり、私ももう少しだけいたいんだ。みんなと」
「…まぁ、たまになら着てもいいんじゃないか?…情報操作でなんとかなってるみたいだし」
「ふふ、ありがとう」
「…クリスマスにでも部室にくれば、鍋でもやってると思うぞ」
「…うん」
 
…まぁ…その…そんなこんなで第一種目終了。
…顔真っ赤だったろうな…俺…
 
ちなみに喜緑さんは反則で負けたようだ。
 
――――――――――――
 
『えー、次の競技はクラス代表による「障害物競争」になります』
 
「クラス代表か。俺たちのクラスは誰がでるんだ?」
「あぁ、僕だよ」
「山根か、早く行かなくていいのか?」
「朝倉さんの髪のにおいを嗅いで、朝倉さんのタオルをしゃぶりつくしてから行くよ」
 
…今酷い変態紳士を見た気がする。
 
「まぁいいか…国木田、障害物って何があるんだ?」
「えっとね…網くぐりと、飛び箱飛びと、あと飴玉とるやつ」
 
…飴玉とるやつって何だよ。
 
「ほら、粉の中にある飴玉を口を使ってとるやつ。名前よくわかんないや」
「なんとなくイメージは出来たがな。誰か知り合いはでてるかなっと…」
「ん、朝比奈さんまた出てるみたいだね」
 
 
…朝比奈さんが障害物競争ってミスチョイスじゃないのか?
 
「あぁ、それはみくるが自分からやってみたいって言ったのさ!」
「のわっ!鶴屋さん!びっくりしましたよ…」
「いやぁ、ゴメンっさ!そっちの可愛い衣装の子は国木田かなっ?」
「はい、そうです。さっきは一位おめでとうございます」
「ありがとう!しっかし妹ちゃんがシャミセンを連れてきてくれて助かったよ。キョンくん、あとでお礼を言っておいておくれ」
「わかりました…あ、今のレース終わっちゃったみたいですね…朝比奈さん見逃しちゃった…」
「あれ?でもゴールのところに朝比奈さんいないよ?」
 
どこいったんだ?と辺りを見回そうとしたその時
 
「ぷっ…ぷぷっ…ダメだっ…アーッハハハハハハハハハハハハハハハ…」
 
突然鶴屋さんが爆笑し始めた。
 
「…あれっ…あれみるっさ…アハハハハッ…」
 
苦しそうに笑う鶴屋さんが指差した先をみると…
 
「はぅ~…動けないですぅ…」
 
最初の網に絡まったまま全く進んでない朝比奈さんがいた。
 
「…まぁあの人らしいというか」
「…あれでこそ朝比奈さんだよ」
「みくるー!頑張るっさー!飴玉が待ってるにょろよー!」
 
「そうです!飴玉が待っていたのです!」
 
 
 
おぉ、抜け出した。
やればできるんだなぁ。
 
「みくるは本気になるとなかなか侮れない力をだすからね」
「…でもあれはやりすぎだと思うなぁ…」
「やりすぎって?」
 
そう言って運動場の方をみると、飛び箱にぶち当たって派手にすっころんでる朝比奈さんがいた。
 
「どうやら飛び箱に真正面からぶつかってったみたいだね」
「何でお前はそんなに冷静なんだ…」
「だってここで慌ててもしょうがだいじゃないか」
「ありゃ、みくる気絶しちゃったみたいだね。ちょっと私、保健室まで運んでくるっさ!」
「お疲れ様です。良かったらこの飴玉持って行ってあげてください」
 
そう言って谷口の鞄を漁って発見した袋を渡す。
 
「おぉ!ありがとう!きっとみくるも喜ぶよ!!」
 
あっと言う間に現れてあっと言う間に去っていったな…
 
「…まぁあれはあれであの人らしいというか」
「…あれはあれで鶴屋さんらしいよな」
「おっ、キョンに国木田、そこにいたのか」
「榊か。どうした?」
「どうしたって、次の競技はうちのクラス全員参加だろ?集合かかってるぞ。先行ってるからな」
「了解、すぐ行くよ。ところで国木田、質問があるんだか」
「まぁ何となーく予想はできるんだけど、何」
「次の競技は何だ?」
「…司会の人が教えてくれるよ」
 
 
 
―――――――――――――
 
『引き続きまして司会進行役のコンピ研部長です。作者が設定を忘れかけていました。さて、次の種目は二年生による「玉入れ」になります』
 
「というわけで白組の連中をめっためたに叩きのめすわよ!!特に特進クラスのがり勉どもなんかけちゃんけちゃんにしてやりなさい!!!!」
 
…正直、玉入れごときでそんなに熱くなるなよと突っ込みたい。
玉入れ籠の真下で仁王立ちをし、わめき散らすハルヒを見て何となくそう思った。
 
「何寝ぼけたこと言ってんの!勝負事には何事にも全力でとりくむのよ!勝つ気できなさい!勝つ気で!」
「まぁ勝てばお菓子も沢山もらえるのね。競技も楽しめば一石二鳥なのね」
 
…そういうもんか。
 
そういや玉入れなんていつぶりだろう。
多分小学校低学年のころにやったきりなんだろうなぁ。
 
そう思い、地面に置いてある赤玉をなんとなく拾ってみる。
この頼りない感触が妙に懐かしい。
 
 
「おや、あなたも玉入れは久しぶりでしたか」
「お、古泉。その格好は…シェークスピアだっけ?去年の文化祭のやつ」
「覚えていてもらえましたか」
 
いや、文化祭でのお前はそれくらいしか印象にない。
 
「…そうですか。とりあえず、今日の運動会では勝たせてもらいますよ。機関の方でも物理的物質が無理やり作られたわけじゃないので今回の件は重要視しなくてよいとのことです」
「いいのか?お前らが勝ったりしたら閉鎖空間が発生するんじゃないのか?」
「そうなるかどうかは、あなたが一番良く知ってるかと思いますが」
 
…まぁ負けて悔しがっても閉鎖空間は発生させないだろうな。
 
「まぁやるからには全力かかってこい。ハルヒは大いに張り切ってるが。あ、あと長門に言っといてくれ、不思議パワーは無しだって」
「えぇ、わかりました」
 
『それでは間もなく競技開始になります、皆さん位置についてください』
 
「とりあえず玉だけ持っておくか」
「出来るだけ多くなげたいもんね」
 
俺と国木田が赤玉を手にしたそのとき、
 
ピピーッ!!!!
 
突然笛を吹かれた。
何だ?開始の合図じゃないよな
 
「駄目ですよ、開始前に玉を持つのは、フライングになりますよ」
「いや、何やってるんですか喜緑さん…」
「何って、不正行為が無いよう見張ってるだけですよ。生徒会の仕事です」
 
 
確かに、よく見るとそれっぽいのが二、三人いるな。
 
「次に開始前に玉を持ったら腕を切り落としますからね」
「…了解です」
 
『それでは、始め!!!』
 
パァンという乾いた音とともに一斉に玉に群がり籠にむかって放り投げる。
 
「思ったように入らんな」
「意外と難しいね。とりあえず投げるだけ投げちゃおう」
「ちょっ、やめっ、キョンくん助けて!!」
 
朝倉?一体どうした?
 
「長門さんが執拗に玉ぶつけてくるの!何とかして!!」
「何とかしてっつったって…」
 
長門の方をちらりと見ると、必要最低限の動きで籠に玉を投げ続けている。
…一発も外してないのが気になるが
 
「特に問題無いと思うんだが」
「キョンくんが見てる時に投げるわけないでしょ!!痛っ!!」
「またか?そんな素振りが全く見えないんだが…」
「今のは江美里よ!!」
「いえ、何のことかさっぱりです」
 
そう言って喜緑さんはにっこり微笑む。
 
 
「…反論したら怖そうなんだが」
「懸命な判断ね。トラウマを植え付けられるわよ」
「…とりあえずどこぶつけられたんだ?」
「…全部おしり」
 
うん、反応に困る。
 
「おしりにぶつけられたのかい?早くみせてごらん、ほら、ブルマをめくって。僕がしてあげようか?」
 
山根、それ犯罪。
 
「うん、それ無理」
 
朝倉、笑顔でナイフを出すな。
 
「ちょっとそこ!キビキビ投げなさい!!!」
 
ハルヒ、助けてくれてありがとう。
収集がつかなくなってたところだ。
 
「とりあえず長門は俺が見張っといてやるから」
「ありがとう」
 
しっかしハルヒのやつは凄いな。
長門に負けず劣らずの正確さでポンポン入れていく。
朝倉も加わって投げるので、気がついたら圧倒的な差で赤組が勝っていた。
 
「「…チッ」」
 
…長門と喜緑さんの舌打ちがハモった気がしたが気のせいだろう。
 
 
「前半終わりか。一年生が頑張ってくれてるみたいだな」
「白組にリードをゆるしてるけど、まだ十分追いつけるのね」
「まぁお昼ご飯食べて力つけましょう!」
 
『ここで、お昼の休みに入る前にもう一つ募集性の競技を行いたいと思います』
 
…何?
 
―――――――――――――
 
『競技は「三人四脚」です。ただし制限があります。家族で参加してもらいます』
 
…恥ずかしいだろそれ。
 
『尚、この競技にも得点は加算されます』
 
「キョン!出なさい!!!」
「馬鹿言うな。身内は二人も来ていない」
 
っていうか本当に参加者いないな。
 
「まぁ高校生にもなって身内と三人四脚は恥ずかしいよね」
「多分だれも出ないだろ。得点のプラスマイナスは無し。さっさと昼飯にしてしまおう」
「…ねぇ、あそこのスタートラインに立ってるのって古泉くんじゃない?」
 
 
まさか。
あいつの身内が登場したことないのに作者が書けるわけ…
 
『白組からひと組参戦です。2-9の古泉一樹くん。親子で参加です』
 
森さんと新川さんなにやってんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 
「ちょっとまて!あれ家族じゃないだろ!!!」
 
『古泉一樹くんは家族と生き別れになったため、親身になって世話をしてくれた二人と一緒に参加することを特別に認めました』
 
「無駄よキョンくん。どうせ江美里が糸引いてるから」
「キョン!あんたも妹ちゃんとでなさい!勝ってきなさい!!!」
「あ、あの~…お兄さん…」
「だから身内が妹一人じゃしょうがないだろ!!」
「…お兄さんってば…」
「シャミセンでもくくりつけて行けばいいのね。ルソーが良ければ貸してあげるのね」
「お兄さん!」
「猫や犬なんか論外じゃないか!」
「キ、キョン!同じ中学校の中河だけど俺でよければ!」
「知らん!お前なんか知らん!アメフト部に帰れ!!!」
 
「 お 兄 さ ん ! ! 」
 
「のわっ!!ミヨキチ!?どうしたんだ?」
「妹さんに伝えてきてって言われたんですけど、もしよかったら…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…おや、あなたも参加ですか」「…古泉、目が死んでるぞ」
 
『赤組からは2-5の○○くんことキョンくんの参加です。妹さんと従姉妹に当たるミヨキチさんと走ります』
 
「…あなたも銀髪の侍のように死んだ目になってますよ」
 
…声優ネタは止めろ。
わからない人が困る。
 
 
「あの…お兄さん、迷惑でしたか?」
「いや、いいよ。せっかくミヨキチが誘ってくれたんだしな」
「わーい!キョンくんと遊ぶの久しぶり~☆」
 
…お前はもう少し空気を読んでくれ。
…さっきから「ロリコン」、「シスコン」って単語が行き交ってるんだ。
 
「…で、お前は何で参加したんだ?」
「…長門さんに『…行って』と」
「…拒否しろよ」
「『…行かないと私と喜緑江美里で一生モノのトラウマを植え付けることになる』って…」
 
…あぁ、それは無理だな。
 
「…何されるかわかったもんじゃないですから」
「…なんかスマンな。で、森さんはメイド服、新川さんは運転手の姿ですか」
「最近はこれが普段着になってるもので。元から車はよく運転しますしね」
「メイド服も馴れると動きやすいですよ。負けませんから」
 
…二人ともやる気満々ですか。
 
もう俺と古泉の精神がズタボロなので詳しい描写は避けさせてくれ。
 
結果だけ言うと、歩幅が殆ど違う俺と妹とミヨキチが三人四脚なぞできる訳が無く、前日に練習したんじゃないかってくらい息のぴったりな古泉たちにぶっちぎりでゴールされた。
 
あと、本日限りではあるが、「シスコン」及び「ロリコン」の称号を手に入れた。
 
いやな、別に子供とくっついて走ってもなんも嬉しくないぞ?
いくらミヨキチが妹より成長が早くて…こう…いい体つきだとしても全然嬉しくなかったからな。
 
 
「キョンくんごめんね?…転んでばっかりで」
「別にいいよ。楽しかったか?」
「うん!ミヨキチちゃんは?」
「私も楽しかったです!」
 
…まぁいっか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その頃、谷口は
 
「で、何であんなことしようとしたの?」
「いや、だからまだ何もしてなかったじゃないですか…」
「まだ、ってことはしようとしたんだね?」
「違いますよ、ただ着ぐるみが素肌にフィットする感じが好きで…いや、まぁ脱いでましたけど…パンツは履いてたからセーフじゃないっすか?」
「嘘ついちゃだめだよー。着ぐるみの下全裸だったじゃないか」
「…はい、すんません」
「あ、あと谷口くんだっけ?君の身の回り調べさせてもらったんだけど…これ」
「…!?」
「『涼宮ハルヒ』に『朝倉涼子』、どちらも君の名前じゃないよね」
「…そのリコーダーは…」
「君の机からでてきたんだけど、これって窃盗…」
「違う!俺じゃない!!みんなが体育でどっかに行ってる間に強奪して吹いていたなんてことは無いんです!誰かの陰謀です!!」
「一応、舌の細胞とか唾液から使用した人間が割り出せるけど?」
「すいません、僕がやりました」
「おじさん正直な人は嫌いじゃないよ~」
「あの、トイレ行きたいんですけど…いいすか?」
「あぁ、いいよ。ちょっと彼、トイレまで連れてってくれない?」
「…では」
「何リコーダー持って行こうとしてんのさ」
「…つい」
 
事情聴取を受けていた。
 
―――――――――――――
 
 
「ゲッ!!」
「ん?どうかしたかいキョン」
「弁当忘れた…」
 
慌てて用意したからな…
 
「何かわけてあげようか?」
「いや、いい。妹に何かわけてもらってくる」
「そうか。じゃあ先に食べてるね」
「あぁ、すまんな」
「あ!!キョン!!!あんた昼ご飯は!?」
 
すまんなハルヒ。
忘れちまったからお前が横取りする分は無いんだ。
 
「えっ?いや…それなら私の…」
「すまん!後にしてくれ!すぐ戻ってくるから」
「ちょっと!待ちなさい馬鹿キョン!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
で、妹はどこにいるのだろうか…
当てもなく探しに来たものの、保護者の人が大勢いてわからん。
 
虱潰しに探すか…
 
「おや、キョンじゃないか」
 
その声は…
 
「佐々木か、それと…橘と九曜だったか。来てたのか」
「台本にここに来るように…じゃなくてですね」
「純粋に見学に来ただけさ。さっきの三人四脚は見ものだったよ」
 
…止めてくれ。トラウマになりそうだ。
 
 
「──…ロリコン、シスコン───この場所は…知らない事が──たくさん…ある」
「九曜さんはまだ知らないままで良いのです」
「まぁ僕はキョンはロリコンでは無いと思っているよ」
 
…シスコンは?
 
「「「…………」」」
 
二人とも目を反らすな!!
九曜も「なるほど」みたいな顔するんじゃねぇ!!!
 
「まぁいい…そういやあの未来人はどうした?」
「あ、藤原くんならあの電柱の陰にいるのです」
「──…あそこ」
 
そう言って九曜が指指した先をみると、確かに恨めしそうにこっちを見ている男が1人いた。
 
「…何であいつはこっちに来ないんだ?」
「…台本が無いとか」
 
何だそりゃ。
 
「『これは規定事項、別に僕が本編に出ないことは連絡済みだ』とかブツブツ呟きながら着いてきたのです」
「─彼は…とても──意地っ張り」
「まぁ寂しくなったらくるだろう。ところでキョンは何をしにここへ?」
 
あぁ、妹探してたんだ!
 
 
「さっき一緒に走ってた子か」
「すまんな、あんまり話せなくて、また今度な!」
「うん」
 
さて、もう一回探すかな。
 
――――――――――――
 
「…やっと見つけた」
「あ、キョンくんどうしたの?」
「昼飯を忘れたから何かもらいに来たんだ…っていうか」
「また会いましたな、キョンくん」
 
機関の人総出で何やっとるんですか。
 
「いや、森と新川が連れてきたんだ。『戦い会ったもの同士で和解したわ』って」
「ミヨキチちゃんが妹さんと同い年って聞いて驚きました。私がこのくらいの時なんか…いや、何でもないです。鬱になりました」
「いや…その…」
 
ミヨキチ、気にしなくていいぞ。
 
「…はい」
「そういや圭一さんと裕さんは仮装してないんですね」
「まぁ仮装って年でもないしね」
「…私と森の立場はどうなるのですかな?」
「…すいません」
 
合宿の時も思ったが、機関の人って仲良いんだな。
 
 
「あ、ねぇねぇキョンくん」
「ん?どうした?」
「ご飯全部食べちゃった」
 
…えええええ!!
 
「ご、ごめんなさい!」
「いや、ミヨキチが謝ることじゃないさ。弁当忘れた俺が悪いんだし」
「私たちの分あげましょうか?」
「んー、クラスの奴らから分けてもらいます。すいません」
「そうですか、ではまた会いましょう」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…というわけで何かくれ」
「もう全部食べちゃったよ」
 
あきれた顔で国木田は言う
 
無理しないでもらって置けば良かったな。
 
「どーすんの?何も食べないまま午後の部に入るの?」
「まぁ食べるものないしなぁ…」
 
…我慢するか。
 
「あ、そうだ。朝倉、ハルヒ知らないか?」
「…キョンくんが馬鹿やったから落ち込んでるわよ」
「へ?俺が何したってんだ」
「…はい、これ、涼宮さんから」
「弁当?」
「今日の為に作ってたみたいよ」
「…俺に?」
「じゃなかったら誰に渡すのよ」
 
…じゃあさっき俺を呼び止めたのは…
 
「食べたらちゃんとお礼を言うことね。次にまた馬鹿やったら…」
 
…やったら?
 
「刺すわよ☆」
 
…了解。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ハルヒは運動場の隅でぼーっとしていた。
…正直なんて言葉かけて良いかわからんが…
 
「…ハルヒ」
「…何よ」
 
うわ、怒ってる。
当たり前か…
 
「その…弁当ありがとうな。美味かったよ」
「………」
 
 
…あの…ハルヒさん?
 
「せっかく作ってきたのにどっか行っちゃうんだもんね」
「ぐっ…だからすまんって…」
「…まぁいいわ。今度100倍返しね!!」
 
…まじでか。
 
「あったりまえじゃない!!このあたし自ら弁当を作ってあげたのよ!!誠意を尽くして感謝なさい!!ほら、ちゃっちゃと白組の連中叩き潰しに行くわよ!」
「…へいへい」
 
と、言うわけで午後の部開始。
 
――――――――――――
 
『午後の第一種目は、クラス対抗の「パン食い競走」になります』
 
…昼飯食ったあとにこの競技か。
 
「というわけで行ってくるわ」
「朝倉さん行ってらっしゃいなのね」
 
お、長門もいるな。
宇宙人対決か。
 
「キョンくんや」
 
…ん?
 
 
「こっちだよキョンくんや」
「国木田、呼んだか?」
「え?呼んでないよ」
「下なのだよ」
 
…下?
 
「…鶴屋…さん?」
「ちゅるやさんなのだよ!」
 
…説明は不要な気もするが…鶴屋さんをちっさくして人形みたいにしたものがそこにあった。
「ものじゃないよ!生きてるんだよ!」
「あ、ごめんなさい…初めまして」
「初めまして!」
「…キョン…その子誰?」
「ちゅるやさんなのだよ!君は国木田くんかな?」
「あ、はい。そうです」
 
…で、どうしましたか?
 
「提案なんだけどさ!パン食い競走じゃなくてチーズ食い競走にしたら良いと思うのだよ!」
「………」
「………」
「スモークチーズだとなおよいのだよ!キョンくん、国木田くん、どうしたんだい?」
「いや…あの…運営に言った方が早いかと…」
「国木田くんナイスアイディアなのだよ!ちょっくら申し出てくるっさ!ところでキョンくん?」
 
…スモークチーズは無いですよ?
 
「…にょろーん」
 
 
…行っちゃった。
 
「本当に運営に申し出に行くのかな」
「…知らん。というか無理だろう」
 
『ここで迷子のお知らせです…え?迷子じゃない?…運営?チーズ?…あぁ、運営ならすぐ隣です』
 
「…行ったのかよ」
 
『あ、書記の…いや元カレって何なんですか?…企画変更?…あ、わかりました』
 
「…企画変更だって」
「…知らん」
 
『突然ですが競技の変更をお知らせいたします。午後の部の第一種目は「カレー早食い競走」になりました』
 
なんでだあぁぁぁぁぁぁ!!!!
 
「…キョン」
「…言うな、頭が痛い」
「…もう走る必要無いのね」
 
長門がすでにガッツポーズしてるのが見える。
というか間違いなくお前と喜緑さんの陰謀だろう…
 
ってかレース進行遅い!!!
 
 
「カレー一杯食べきらないと先に進めないからね…」
「あ、朝倉さんなのね」
「…いくら足が早くても早食いは厳しいか…」
「…長門さんいつカレー食べた?」
「…一瞬だったのね。手品みたいなのね」
 
ダメだ…休憩挟んだはずなのに頭が痛い…
 
「少し休んでくれば?次の種目、キョンがでるんだし」
「へ?そうなのか?」
「そうだよ。出番になったら呼びに行くから」
「わかった。あっちの方にいるよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
運動場の隅のベンチに腰を下ろす。
 
「…疲れたなぁ」
 
秋って色んな行事があったんだなぁ…
あんましハロウィン要素無い気もするが…誰か俺がカエルの着ぐるみを着用していることを覚えてる奴はいるのか?
っていうか今現在29日、31日に間に合う気もしない。
無理に全員だそうとすっからこんなグダグダになるんだよ…
 
「あんまりメタな発言したら駄目ですよぉ」
 
…朝比奈さん
 
「久しぶり、キョンくん」
 
…(大)。
 
「…どうかしたんですか?」
「うん、せっかくの企画だからやって来たっていうのと、伝えたいことがあって」
「俺にですか?」
「今の時代の私に、『中に入ったら明日の今に時間移動して』って」
「はぁ…わかりました」
 
って、中ってどこですか
 
「その時がくればわかるわ」
 
というかその一連の行為に何の意味が…
 
 
「意味はわからなくとも、きっと必要な時がくるわ」
「…そうですか」
「おーいキョン!出番だよ!」
「あ、次俺が出るらしいんで」
「頑張ってね、私も最後まで見守ってるわ」
「ありがとうございます」
 
ちなみにカレー早食い競走はなぜか赤組が勝ったようだ。
まぁ長門以外高速で食えないからそうなっても可笑しくはないか。
 
―――――――――――――
 
「あ、キョン!早くしなさい!」
「あぁ、すまん。ハルヒも次の競技に出るのか?」
「はぁ!?出るも何も
 
『次の競技はクラス代表による「大玉転がし」になります。各走者は位置についてください』
 
あたしとあんたで転がすんじゃない!」
 
あ、そうなのか。
 
「すまんすまん。少し休んでた」
「全く…」
「で、俺たちは何番目に走るんだ?」
「えっと…最後から三番目だから…トラックのあの位置ね」
 
…あれ?あの位置にいるのって…
 
 
「生徒会長じゃない!」
「…喜緑さんもいるな」
 
会長はこちらを一瞥すると、苦々しい顔をしてそっぽを向くのに対し、喜緑さんは柔らかい笑みを向けてくれた。
 
「今はまだ白組がリードしてるようだけど、最終的には赤組が大逆転してみせるからね!覚悟しなさい!!」
「そうはいきませんよ。私と会長の無敵ペアで返り討ちにして差し上げます」
 
…会長。
 
「…何だ」
「…王様の衣装似合ってますね」
「キョンくんもそう思いますか。実は私が選んだんですよ、これ」
「喜緑さん、良いセンスしてるわね!高慢チキそうなところがぴったりだわ!!」
「お前がいうな、ハルヒ。また頭が痛くなる」
「…キョン、だっけか?お前も苦労してるんだな」
 
…会長こそ。
 
「キョン!ぼーっとしてないで!あたしたちの番よ!」
「っと、すまん」
 
赤組リードで俺達に大玉が渡される。
この感覚も懐かしいなぁ。
 
しかしすぐ後ろに会長と喜緑さんのペアも迫っている。
…というか差が縮まってるのがわかる気がする。
 
「キョン!もっと早くしなさい!!」
「これで全力だ!!」
 
 
白と赤の大玉が並ぶ。
ちょっと、何ぶつけてるんですか喜緑さん。
 
「何のことだか存じませんが?」
「喋ってる暇があったら足動かしなさいよ!!」
 
結局、平行したまま次の走者にバトンタッチ。
 
「…抜けませんでしたか」
 
残念そうに喜緑さんは言う。
 
「あんたがもう少し真面目にやれば引き離せたのよ!この馬鹿キョン!!」
「ふざけるな、俺は全力で走ったぞ!」
「よそ見したりしてたじゃない!!」
「あれは大玉をぶつけられたからで!!」
「…お取り込みの所申し訳ないのですが、この大玉送り、白組の勝利のようですよ」
 
ゴールを見ると、確かに白組のアンカーが飛び跳ねながら喜んでいるのが見える。
 
「残る競技も後わずか、赤組が逆転できるかどうか…楽しみにしてますね」
 
そう言うと喜緑さんは運営席に戻っていった。
 
「キョン!優勝できなかったらあんたのせいだからね!!」
 
ハルヒもそういい残して去っていった。
 
…というか何でそうなるんだよ。
 
 
「あ、キョンくん…かな?」
 
苛々しながら立ち尽くしていると声を掛けられた
 
「えっと…岡島さん?でしたっけ…ENOZのドラムの」
「そうそう!覚えててくれたんだ!」
 
他のメンバーの人は来てないんですか?
 
「なかなかみんな予定会わなくてね。去年卒業したとはいえ、北高は懐かしいなぁ」
「そうでしたか…」
「そういえばさっき、涼宮さんと揉めてたみたいだけど…どうしたの?」
 
…あぁ…実はですね…
 
「…というわけで…ハルヒを怒らせたみたいで」
「アハハハ…なんか涼宮さんらしいなぁ…」
「…笑い事じゃないですよ」
「涼宮さんは、多分勝ち負けにはそんなにこだわって無いと思うわ」
「………」
「多分この運動会を全力で楽しもうとしてるんじゃないかな?」
「…まぁ…そうだと思いますが」
「私だったら、せっかく一緒に走ってる時に、よそ見されるのは嫌だな」
 
………
 
 
「あと、一応勝負も諦めちゃ駄目だよ?」
「…へ?でも今ハルヒは勝ち負けにこだわってないって」
「うん。何て言うのかなぁ…『負ける!』って時でも諦めちゃ駄目だと思うの。ほら、文化祭の時、メンバー足りなくなって演奏できなくなってたじゃない。私達」
「あぁ、それでハルヒと長門が加わったんでしたよね」
「うん、涼宮さん達のおかげでライブすることが出来たの。メンバーは揃わなかったけど、凄く楽しかったわ」
 
…えっと…つまり…
 
「どうせ負けるにしろ勝つにしろ、笑って終われたほうがいいでしょ?」
「…はい」
「よし、それでこそ男の子だ!」
「なんかありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ。涼宮さんにヨロシクね」
「わかりました」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「と、言うわけで、ここから逆転を狙いにいく勢いでやってこうと思う」
「いや、別にそう思うのはキョンの勝手なんだけどさ」
「あと二競技だけなのね」
「…なぬ!?」
「まぁ逆転できなくはないけど…二つとも勝たないと辛いわね。でも、次の競技は江美里がでるわよ」
 
…なんと。
 
「というかハルヒはどこだ?」
「わかんない。大玉転がしのあとどっか行っちゃったみたい…まさかまた馬鹿したの?刺していいのかしら?」
「…よくないよくない。ってか馬鹿してないから」
「…ならいいけど」
「で、次の種目は?」
「何か仮装を利用した競技みたいなのね」
 
―――――――――――――
 
『えぇと、次の競技はクラス代表による「早着替え競争」になります。走者は中央に置いてある仮装から一つ選んでボックスに入ってもらいます、その後、所持した仮装に着替えてからゴールを目指してもらいます』
 
また適当な。
 
「キョン、作者も必死に考えたんだ。察してあげて」
「あ、朝比奈さんもでるみたいね」
 
あぁ、復帰したのか。
 
『中に入ったら明日の今に時間移動して』
 
 
…ん?
 
朝比奈さん(大)の言ってた中って、あのボックスのことか…?
 
「キョンくん?どうかしたのね?」
「あ、ちょっと朝比奈さんのところに行ってくる」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あれ?キョンくん、どうしたんですかぁ?キョンくんもこの競技にでるんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど…」
「あ、飴玉ありがとうございましたぁ。凄く嬉しかったです」
「いえ、どういたしまして…あの朝比奈さん、訳は言えないんですけど、あのボックスの中に入ったら、明日の今に時間移動してもらえますか?」
「え?…無理無理!無理ですよ!そんないきなり言われても…あれ?未来から連絡…ふぇ!?最優先コード!?何で!?…あの、指令が来ました。キョンの言うようにしろ、って…」
 
…何がどうなってんのかさっぱりわからないが、こうすることが規定事項になってるようだ。
 
 
「…ということで、ヨロシクお願いします」
「は、はいぃ…何がなんだか…」
 
…俺もです。
 
『それでは競技を始めます。走者は位置に着いてください』
 
「あ、じゃあ俺行きますね」
「はい…明日の今に移動すればいいんですよね?」
「…多分」
 
乾いたピストルの音とともに第一走者が駆けていく。
 
今自分が着ている仮装から別の仮装に着替えるのはなかなか時間がかかるようだ。
 
「…喜緑江美里はこれを見越して、ブルマとネコミミだけというシンプルな仮装にした」
「のわっ!長門!いるならいると言ってくれ!」
 
気がついたら無口印の魔法使いがそこにいた。
 
「…赤組には残念であるが、喜緑江美里が朝比奈みくるに負けることは絶対に有り得ない」
「いや、別に朝比奈さんが勝てなくても一年と二年が頑張れば…」
 
『さぁ、残る走者もあと一組になりました!ここで赤組の走者が勝てないと優勝は消えてしまいます!』
 
…なんというご都合主義…
 
三年生の各走者が一斉に並んでる。
確かにその中には朝比奈さんと喜緑さんの姿も確認できた。
 
「…お菓子の山はもらった」
 
 
…いや、まだだ。
朝比奈さん(大)の言葉の真意はわからないが…このままでは終わらないはず!
 
「…喜緑江美里がダントツの速さでボックスに入った。あとは時間の問題」
 
それに続いて他の走者もそれぞれのボックスに…朝比奈さんは走るのが遅すぎて一番最後…
 
朝比奈さんがボックスの扉を開けて中に入り扉を閉める。
…次の瞬間。
 
「…あれ?ここは…運動会ですかぁ?」
 
サンタさんの姿に身を扮した朝比奈さん登場。
 
ボックスの扉が閉まってから朝比奈さん登場まで約一秒。
 
「へ?何で私こんなところに…」
「朝比奈さん!早くゴールまで走って!!!あっちです!!!」
「は、はい!」
 
…手品かよ。
 
「…あれは…朝比奈みくるの異時間同位体」
「…へ?そうなのか?」
「…あなたは現代に置ける力学的力の範囲を越えないようにと私に言ったはず」
 
…えーと…つまり…ボックスの中に朝比奈さん(現代)が入った瞬間に朝比奈さん(未来)と入れ替わって、朝比奈さん(未来)がそのままゴールに向かってて、明らかにそれは不思議パワー炸裂させてんじゃねぇかと。
…そういうわけですか?
 
 
「…そう」
「…すまん。あぁなるとは予想出来なかった」
 
ゴールを見ると、朝比奈さんがクラス一同に迎えられ、あたたかい歓声を浴びていた。
何が起こったのかわからないって顔してるな…
 
「…決着はリレーでつける」
 
そう言って長門は白組の方へ戻っていった。
…まぁ…いいのかな?
 
とりあえず優勝のチャンスができたわけだし。
とりあえず戻ろう、ハルヒにまた謝らねばならん。
 
余談だが、喜緑さんはネコの耳と尻尾を犬のものに変えただけというスタイルで立ち尽くしていたそうな。
 
―――――――――――――
 
「遂に白組に追いついたのね!」
「ここまで来たなら優勝を狙ってもいいかもね」
 
というか勝つ気でいこうぜ。
 
『それでは、最後の競技、クラス代表の「リレー」になります。各走者は準備をしてください』
 
「よし!じゃあうちのクラスの代表を盛大に送り出してやろうぜ!!女子の代表は誰だ!?」
「涼宮さんよ!」
「男子の代表は!?」
「確か谷口だったよ」
 
 
………。
…あれ?
 
「…ねぇ」
 
…皆の考えを汲み取ったのかハルヒが口を開く。
 
「谷口って…今警察じゃないかしら?」
 
………。
 
「え?どうするの?」
「わからないのね」
 
………。
 
「…キョンくんが行けばいいんじゃない?」
 
突然、朝倉が口を開いた。
 
「俺?走るの遅いぞ?」
「そういう意味じゃないの、言ってたじゃない。負けても楽しめればいいって。全力でやればいいって」
「確かにそうなのね…大玉で失敗したぶんもう一度楽しんでくればいいのね!」
 
…いや、そんなんでいいのか?
 
「良くなかったらこんな提案しないわよ」
「…それもそうか」
 
…ハルヒ。
 
 
「何よ」
「もう一回だけチャンスをくれ」
「…次やったら罰金だからね」
 
…了解。
 
俺は中盤の走者、ハルヒはアンカーらしい。
 
「あいつそんなに足速いのか」
「単純に走りの速さだけなら三年生とも引けをとらないみたいよ」
 
…朝倉より速いのか?
 
「うん」
 
…凄いな。
 
トップランナーが走り出す。
赤組リード
 
「あなたもこの順番でしたか」
「げ、古泉…お前も走るのか?」
 
二番に渡る。
依然赤組リード。
 
「えぇ、足の速さだけは自信がありまして」
「…勝負にはならんと思うが全力でいかせてもらう」
 
 
 
三番、大きく引き離して赤組がリードしているが、白組の走者は長門に。
 
「長門…あいつも足速いのか…」
「ほら、次は僕達が走る番ですよ」
 
赤のバトンを手渡されて、思い切り土を蹴る。
 
古泉もすぐ走り出したようで真後ろにいるのがわかる。
 
…というかもう横にいる。
 
しかし諦めるわけにはいかない。
どうせ負けるのなら、少しでも差は広げさせない。
 
「っだぁ!!」
 
根性で古泉に食らいつき、次の走者にバトンを渡す。
 
「…キョンにしては頑張ったじゃない」
「…罰金か?」
「そんなわけないでしょ、このくらいの差なんてちょちょいと縮めてみせるわ!!!」
 
そう言ってアンカーのハルヒにバトンが手渡される。
 
「…凄ぇ」
 
二メートルほど許してしまったリードをどんどん縮めていく。
気がつけば白組のアンカーと並び…抜いていた。
 
大歓声の中、ハルヒはゴールした。
 
 
「…負けてしまいましたか」
 
残念そうに古泉は言う。
 
「…勝てた…んだよな?」
「えぇ、赤組の優勝ですよ。ほら、あなたも涼宮さんの下に行ってはどうです?」
 
…それもそうだな。
 
「まぁ、楽しかったよ。ハルヒの不思議パワーもたまにならいいかもな」
「観測者としては退屈しない限りです」
 
ニコッと笑う古泉に別れをつげ、未だ歓声の鳴り止まないハルヒの下へと俺は走った。
 
『赤組のみなさん、おめでとうございます』
 
アナウンスが流れる。
…全力で走った直後なのも忘れてもう一度走る。
 
『それでは、優勝チームの赤組には、お菓子の山が与えられます!!!』
 
あぁ、そんなのもあったなぁ…と思いながら走りつづける。
 
直後、
 
大きな爆発音が…運動場に響いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その時の様子を、谷口はこう語る。
 
いや、運動場の奴らは辺りをキョロキョロしてたけど、俺はすぐ目を付けた場所があったね。
ほら、中から見るより外から見た方が全体がわかりやすいじゃないですか。
 
 
 
直ぐに気がつきましたよ。お菓子の山が揺れてるって。
校舎半分ほどの山を揺らすほどですからね、よほどでかい爆発だったんじゃないでしょうか。
 
あとはもう雪崩みたいにお菓子が滑り落ちていきましたね。
どこにって?赤組の中心に決まってるじゃないですか。
アンカーの涼宮ハルヒを中心にみんなが集まってたところですよ。
 
狙い澄まされたとしかいえないなぁあれは。
そういや屋上に犬の耳を付けた黄緑の髪の人がいたけど…気のせいだったかな…
 
へ?僕が脱走した理由?
やだなぁ、脱走なんかしてないですよ。
たまたまトイレの窓が開いてただけで…あぁ、はい。逃げました。
ごめんなさい。
 
服?窓から出る拍子にビリビリっと…すいませんまた嘘つきました。
自主的に脱いだんです。全裸です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
っていうか見てたなら助けようとしろ谷口ぃぃぃぃぃぃ!!!!
 
そんなこと叫んでる間にも、お菓子の雪崩が迫って、迫って…
 
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――――――――――――
 
「…という夢を見たんだ」
「…はぁ」
 
ん?古泉、俺なんか変なこと言ったか?
 
「はい、キョンくん、古泉くん。お茶煎れました」
「ありがとうございます…その夢はどこで覚めたんですか?」
 
ほら、あれだ。お菓子が降ってきたところ。
あと一センチってとこで目が覚めたんだ。
そしたら妹がボディプレスかましてたよ。
 
「…疲れてんのかな、俺」
「…むしろ楽しみにしすぎてそんな夢をみたんじゃないかと」
 
…まさか。
そういうのはハルヒの専売特許だろ。
 
「キョンくんそんなに今日のハロウィンが楽しみだったんですかぁ」
 
 
いや違いますよ朝比奈さん。
仮に100歩譲ってそうだったとしても、俺がハルヒから弁当もらうシチュエーションなんて想像するわけないじゃないですか。

「………」

待て長門、何で今ため息を吐いた。

「…あなたは少し素直になるべき」
「僕もそう思います」
「長門さんの言うとおりですぅ」
 
…素直ったってなぁ。
 
「お待たせ!今日はハロウィンだからみんなに仮装してもらうわよ!」
 
部室の扉を蹴破ってハルヒが登場した。
 
「さっさとクジ引いてそれに着替えるのよ!」
 
まぁそういう行事楽しみというか…みんなでワイワイやるのが楽しみなんだがな…
 
そう思いながらクジを引く。
 
「私お化けですかぁ…」
「…バニー…」
「おや、フランケンシュタインです」
 
いや…ハルヒ…
 
「ん?何かしら」
「これは勘弁してくれないか?」
 
そう言ってハルヒに見せた紙には
 
『裸の王様』
 
そう書かれていた。
 
おわり


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