全てを黒で装った男。

肌を見せず、全てを覆い、全てを見渡す

 

 

『時を詠み時を視る…私の運命はアナタの運命。アナタの煌きは私の煌き・・・なあ、もう一人の【私】よ』

 

 

 

 

男は『ウタ』を口ずさむ

 

 

『時は悲惨だ

 

『絶対に忘れない』

そう決意した記憶さえ無情に散る

 

 

時は貪欲だ

 

『絶対に覚えておこう』

そう決意した記憶さえ跡形も無く奪って行く

 

 

時は超限だ

 

『絶対に心から離さない』

そう決意した無限の意志さえ時の前では儚い』

 

 

口ずさんだ後、男はとある【一人】を見つめながら怒りの琴音を放った

 

『 何 故 お 前 は そ ん な に 楽  し そ う に し て い る ん だ ? 」

 

 

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『遡ること数百年前。

それは始まりの時代

【一】が始まりを告げた時代

  

ここは数百年前のあの日』

 

 

 

 

 

 

「風が気持ちいい…」

 

俺は寝ころびながらそんなことを口ずさんでいた

ここに来る度に必ず言ってしまう『言葉』

 

ここは秘密の場所。

俺とあいつだけの秘密の場所

 

  

 

巨大な草原に見えて此処は小さな部屋だ

誰にも見つからず誰にも知られず誰にも荒らされない

 

冬なのに春のように暖かく、秋のような情景

下の雑草は丁度いい柔らかさのフトンで、心地よく俺の体反面に当たる

 

そんな最高の場所。この世にたった一つだけの世界

 

 

ここは良い…ここだけが俺の疲れを癒してくれる。

心を・・・癒してくれる

 

 

「またここに居たのね」

 

 

声のする方向に顔だけを向ける

彼女もここへ来たようだった

 

「よう」

 

 

長い髪をなびかせ、前髪を右手で少し触れる仕草をする彼女。

俺と同じように隣に寝転ぶ

 

「ここは気持ちいいわね」

 

来る度に同じ事を言う

そう、絶対言ってしまう『言葉』

 

 

「だろ。ここは消えないぞ、消させない。絶対にバレないよう一樹に頼んで結界を張って貰っているからな」

 

 

自慢毛に語る俺を見て僅かに微笑みながら、彼女は身体を俺にくっつかせる 

「ふぅん…そんなに私と一緒に居たい?」

 

「決まってるだろ?」

俺は愚問だ、と言わんばかりの表情を精一杯に出し、そう答える

 

(ハルヒ…いつまで俺達の邪魔をするんだ。お前の事は今はもう好きじゃない、俺は涼子を愛していると何度も言っているのに…何故俺と涼子を離そうとする?何故俺達が愛する事を邪魔する?何故諦められない?何故そっとしておいてくれない?

…もう俺は、お前の事を【二度と】好きにはなれないと言うのに…)

 

 

「ありがと…ねえ?」

 

いつの間にか彼女は目を閉じている

 

(キス・・・か)

 

「しょうがない奴だな…」

 

そう言いながら俺はこの世で自分が一番愛する女性に、深く濃く、口付けをした

 

大好きすぎて離せない

この唇も、長くサラサラした青い髪も、柔らかく魅力的な身体も…

 

 

「愛してるぞ…涼子」

 

 

 

 

ハルヒ・・・俺はお前を殺そう

有希も、一樹も、みくるも…お前のせいで皆は不自由すぎる【今】を送っている

 

これ以上お前の好きにはさせれない

そしてこの戦いが終わったら・・・俺は涼子と共に俺達を凍結する。

 

永遠に二度と離れない為に・・・

 

 

そして谷口…いや、【REGENDARY】・・・・お前との決着は・・・・

 

 

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谷口はクシャミをしていた

僕はそれを見ながら溜息をつく

 

「ふぇっくしょーい!!・・・なんだ?女の子が俺のことをカッコいいって噂しているのか?」

 

 

 

「それは無いと思うなあ。あっても真逆の噂だと思うけど。まあまず噂自体されてないと思うけどね」

僕は困ったものだねと言わんばかりに肩をすくめてみる。

 

今、僕と谷口は学校帰りだ

にも関わらず街に居る

 

北校でも有名なナンパスポットだ。

何故僕がこんなところに居るのかと言うと、まあ察しは大体ついていると思うけど谷口による半強制的な同行だ

 

「いや、しかしよぉ…国木田」

 

「ん?」

 

「なんか今日のクシャミは違う気がしたんだよな…なんつーか誰かが俺に怒ってる・・・みたいな、さ」

 

…君に対して怒っている人は数えきれないくらいいるんじゃないかな?

ナンパされて迷惑している女性とか女性とか女性とか

後は強制的にナンパに参加させられてるこの僕とか

 

まあそんな妥当すぎる突っ込みは谷口の精神がへタレて元々ヘタレだった人間が更に典型的なヘタレになりそうな気がするので止める事にする

 

 

「怒り…ねえ、誰かから恨みでも買ったんじゃないの?」

 

考える素振りをしながらそう答えてみる

怒りにあてられてくしゃみなんて聞いた事も無いけれど

 

 

「んな馬鹿な!?俺が買うもんってのはな…女性の熱い心・・・いや、火照った身体・・・」

 

言ってる事が非現実的すぎて流石に泣けてきた

この友人は生涯女性と付き合う事が出来ないんじゃないだろうかなんて思ってしまう

 

「はぁ…谷口は本当に凄いね」

 

「何が凄いんだ?」

 

意味が分らんとばかりに聞き返してくる谷口

 

 

「そうだね、強いて言うなら一人の人間にある『天才』と『ゴミ』の【資質】を半々にしたみたいだ。その半身が谷口…とかさ」

 

「じゃあ何か?俺はその天才の方だってことか?」

 

「…いや、まあ…それは涼宮さんにでも聞いてみるといいよ」

 

 

 

 

 

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目の前でいきなり倒れた朝倉・・・・

俺は今その朝倉をおぶって長門のマンションの前まで来ている

 

 

一度は命を狙われた身だから正直怖い。

今すぐに首にナイフを突きつけられる気もする

 

だが朝倉は一向に眠って動かないようだ

 

そういえば長門はこいつが昔の記憶を無くしていると言っていた。

更に情報統合思念体とは何の関係もなく自分の意思で動いてるらしい

それが本当なら俺は襲われる筈など無いのだが

 

 

しかし不思議な感覚だ…なんだろう?

ずっと昔にもこうしてコイツをおぶった事のある気がする

 

そんな感覚・・・

 

まあ俺が赤ん坊の頃から今までの記憶を鮮明に思い出してみても、朝倉は間違いなく高校で初めて知り合った筈の人間であり

おぶるなんざ勿論した記憶はないから、おそらくこの感覚は何か違うものなんだろうと思うがね

 

 

俺は長門の部屋の前まで来るとチャイムを鳴らす

 

《ピンポーン》

 

 

予想通り扉は一瞬にして開く

 

「入って・・・」

 

 

「…今度はちゃんと説明してくれるんだろうな?隠していること全部」

 

 

「……」

 

 

長門は首を縦に上下させた

それはハッキリと見てとれる『決意の表れ』のように見えた

 

 

朝倉は何故記憶を失って蘇ったのか?

長門や喜緑さんと違い、人間臭さが異常にする理由は?

 

色々な質問を全てぶつけるべく、俺は長門の部屋に足を踏み入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

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最終更新:2008年06月17日 03:48