教室につくと、いつものうるさい奴が近寄ってきた。

 

「よう、キョン。朝から夫婦仲良く登校とはねぇ。」

 

ええい、ニヤニヤ気持ち悪い。暑いから近寄るな。
古泉みたくニヤケ顔の谷口を適当にあしらい、俺は自分の席についた。

 

「ねぇ、キョン。」

 

なんだ、俺は疲れたんだ。少しは休ませてくれ。
わざと大きく溜息をついてみせたが、
逆に火に油を注いだようなものだった。
解ってはいたけどね。

 

「ったく。あんたはそんなだからダメキョンって言われるのよ!」

 

俺は思うんだが、それはハルヒしかいってないと思うのは気のせいか。

 

「いいのよあたしは。団長なんだしね。」

 

どんな理屈だよ。っと俺は口に出さず肩をすくめた。

 

「そんなことより、放課後部室でミーティングするからちゃんときなさいよ!」

 

あぁ、っと軽く相槌を打っておいた。しかし、なんだろうね。

今日のこいつは、太陽みたいな笑顔で笑ってるんだろうね。

そういえば、神話にあったな。
「太陽に近付き過ぎた英雄は、蝋で固めた翼をもがれ地に堕とされる」

こいつの場合は、逆に太陽を堕としかねないが。
この後、担任の岡部が入ってきてHRを始めた。

 

 相変わらず授業に集中なんか出来るはずもなく、
俺はこの時間の最大の敵と戦っていたその時である。
チクッっと背中に痛みが走り、後ろを振り向いた。
ハルヒはニヤニヤしながら何やら口をパクパクさせてる。
俺は、読唇術を発揮することなくそれを読み当てる事が出来た。
起きろバカキョンである。
ふんっと鼻を鳴らし前を振り返った。
なにやら機嫌を悪くしたのか背中をプスプスさしてくる。
やめろ、背中が赤く染まってしまう。

 

 いつの間にか、昼休みになっていた。どうやら難敵に敵わなかったみたいである。

顔を起こすと、谷口、国木田の両名がいつもの定位置に座ってる。

 

「キョン、飯食おうぜ」

 

あぁ、と俺は鞄から弁当を取り出し机に広げた。

 

「そういえば、涼宮とはどこまでいったんだ?」

 

危うく口からご飯を飛ばしそうになったね。
谷口、俺はあいつとはそんな仲ではないと何回説明したらいいんだ。
なんで俺の周りにはニヤケ顔して話す奴が多いんだろうね。
一応身の潔白を証明しておいた。

 

「でも、実際まんざらでもないんじゃないの?」

 

とおかずの玉子焼きを丁寧に二つに切り分けながら、
何やらおかしな事を言い出した国木田である。

 

「俺はそんなつもりもないしなるつもりもないんだが。」

 

と答えてみたものの、なんだろうね。
二人のニヤケが一層ましたね。まったくどいつもこいつも、あぁ忌々しい。
そんな馬鹿話をしているうちに昼休みも終わり、
食欲を満たされた俺の脳は、またもや最大の難敵にすぐに負けてしまったのである。

 

 気付いた頃には授業も終わり、放課後になっていた。
俺はいつものように、文芸部兼SOS団部室に向かっていた。
渡り廊下を歩いているとふと視界の枠に人影が映った。
なんだ?と思い振り向くと、そこには何かが居た。
何がいたのなんか解らない。
しかし、そこには確実に、異様なオーラを纏ったなにかが居た。

 俺は魅入られるように、注視していた。
そいつは、そこに存在しているはずなのに、存在していないみたいな…。
俺はこいつを知っている。

 

─────周防九曜─────


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