少女たちとその観察対象は、高校を卒業した。
同時に、平凡な毎日はつまらないと嘆いていた神は力を失う。
彼女は彼の隣で笑い、時には怒り、時には泣き、退屈というものを忘れていった。
少女と彼女を監視していた未来人は本来自分が居るべき場所へと帰る。
彼女は泣きながら怒り、未来人を引き留まらせようと考えたが、もうその能力は消え去っていた。
彼女と同じく、超能力者であった男は力をなくす。
男は彼に礼を言い、それを最後に消息不明となった。
少女は彼と彼女が結ばれるために尽くしたが、ある日始めて気がつく。
わたし、も、彼、が、す・き?
少女は宇宙人である。
そのような感情など、持つはずが無い。
それでも少女は、納得がいかなかった。
"わたしは彼のことがすきなのかもしれない"
それを聞いた少女の創り主は酷く驚き、処分しようと考えた。
しかし彼は、少女が一度時空改変を起こしたあの日の約束通り、自らの力で少女を守る。
好きにしろ、と創り主は言った。その代わり私は何の責任も持たない、と。
彼はそれを了承し、少女は自覚した。
やっぱり、わたしは―――
気がついたときには、もう彼と彼女は所帯を持ち、少女は一人になっていた。
人間の感情を持つことが出来るようになった少女は、彼女からその話を聞かされ涙した。
どうして泣くのよとうろたえる彼女に、少女はなんでもないと嗚咽を堪える。
震える声でおめでとうと言うと、彼女は少女の涙がうれし泣きであると誤解し、幸せそうに笑って礼を言った。
薬指にはめられた指輪が、憎くて仕方なかった。
その夜のこと。
買い物の帰り、特に意味もなく公園に立ち寄った少女は、特に意味もなくベンチに座った。
――冷たい。
吐く息は白く、心までも冷えてしまいそうだった。
好き。わたしは、彼のことが好き。
忘れようと思っていた。でも忘れられなかった。
少女は彼の名を呼びながら、声の限り泣き続けた。
つい前まで何の感情も持たない宇宙人であった少女は、自分が何故泣いているのか分からなかった。
とにかく、胸が熱い。
強く閉じられた瞳の奥に、彼と彼女が笑う姿が見えた。
暗い、暗い公園の隅。
滅多に人も寄り付かないであろう寂しいそこに、少女の泣き叫ぶ声が響く。
一日が、終わろうとしていた。
終