○俺とENOZのZとのラブソング 
  第六楽譜『true intention after bluff』
 
 
昨日までの春の陽気はどこに行ったかと思うぐらい、今日は冷え込んでいた
この時期だ急に寒くなることもあるだろう、秋に桜が咲くよりは理にかなっている
 
 
白い息を吐きながら自転車を漕いで待ち合わせ場所の公園へと向かった
いつものように先に到着していた舞さんと合流してハイキングコースを登った
学校を目指す俺達は昨日の接吻の為か今日は二人の間に見えない壁があるようだった
その為か今日はぎこちない会話が続いて下駄箱で別れた
 
自分の下駄箱を除くと今日の何も入っておらず久々の平穏だった
教室へ向かう途中で久しぶりにハルヒと会うがいつも通りに振舞えるかなと考えたら少しだけ緊張した
 
教室に入るとハルヒはすでに自分の席に座って窓の外を眺めていた
キョン「よう、元気だったか?」
ハルヒは俺の顔をじろっと見た
ハルヒ「この一週間、忙しくて大変だったわよ」
キョン「そうか、大変だったな」
会話は一年前に戻ったかのように続かなかった
 
 
そして本日の最後の授業で俺の恐れていたことは起こった
英語の授業を睡魔と格闘しながら受けているとハルヒからメモ書きが回ってきた
受け取ったメモ書きを開くと俺は驚愕した
『あんた、ENOZの財前さんと付き合ってるって本当なの?』
俺は大声を出しそうになったが飲み込んだ
メモ書きに『なんで知ってるんだ』と書いて急いで後ろへ回した
すぐに『本当だったのね』と書かれたメモ書きが回ってきた
それから授業が終るまではよく覚えていない
 
 
授業終了後に俺はハルヒを連れて廊下へと出た
俺は人気のない階段の踊り場でハルヒとの話し合いの場を設けた
キョン「…いつ知ったんだよ?」
ハルヒ「あんた達が付き合った翌日に鶴屋さんから連絡があったのよ」
俺はそうかと納得した、鶴屋さんか全く盲点だったよ
しかもあの人も知ったその日のうちに言うかな
俺の動揺を見抜いたのかハルヒは言葉を続けた
ハルヒ「で財前さんと付き合ってるの」
ハルヒの顔を直視できずに視線を落とした
キョン「…ああ」
ハルヒ「遊びじゃなくて本気なの」
キョン「…ああ」
ハルヒ「愛してるの」
キョン「…ああ」
そう答えた後に少しの沈黙が流れた、数分ぐらいだったが俺にはその時間が何時間にも感じた
数分の沈黙の後に俺の肩に手を掛ける奴がいた
顔を上げると笑顔のハルヒだった
ハルヒ「好きならしょうがないわね」
キョン「え?」
ハルヒ「SOS団は部内の恋愛禁止だけど舞さんはSOS団じゃないし、それに彼女から告白されたんでしょう」
キョン「ああ」
ハルヒ「じゃ大切にしなさいよ、鶴屋さんに聞いたら彼女いい娘みたいだし」
キョン「いいのか?」
ハルヒ「雑用の癖にしょうがないけど、いいわ」
キョン「本当か?」
ハルヒ「その代わりなるべくSOS団の方を優先しなさいよ」
キョン「おう」
 
俺は正直にうれしかった
半年前の映画撮影の時はを団員からの反抗を一切許さなかったハルヒが俺の恋愛を認めてくれたことが
 
その後にハルヒから「今日は帰ってデートでもしなさい」と言われたので
本日はありがたく休暇を頂いて舞さんを誘った
帰り道、俺は全てがうまく回り始めたなと思っていたが…それはどうやら間違っていた
 
 
これは後日、朝比奈さんと古泉から聞いた話になる
なんでもハルヒは文芸部に到着するなり、3人に俺と舞さんが付き合っている話をした
まー3人ともすでに知っているんだがな
その後のハルヒはというと団長の三角錐が置かれた机でうなだれており
俺に対する不平不満や愚痴を並べてたそうだ
その時のハルヒの心情は古泉曰く去年の春先の状態に大変類似していたそうだ
あいつが階段の踊り場で俺を応援した時は強がっていたんだなと思った
ハルヒは俺の文句ばかりかSOS団自体を解散しょうかとヤケを起こして口走ってしまったらしい
この発言はさすがに朝比奈さんやイエスマン古泉もまずいと思い、考え直すように諭そうとしたがもう一人の方が早く動いた
長門は立ち上がってハルヒの前に行き、ハルヒの頬に平手打ちをした
この長門の行動はさすがのハルヒもびっくりして固まっていた
長門「…この空間はあなた一人の為の空間ではない、ここは私にとっても大切な場所」
ハルヒ「…有希」
長門「…あなたは自分の気持ちを隠している」
ハルヒ「…自分の気持ち…あたしの本心を」
みくる「涼宮さん正直になってください、正直にキョン君に思いを話すべきです」
ハルヒ「…でもキョンを悩ませたくないのよ」
古泉「涼宮さんらしくないですよ、あなたならライバルがいた方が燃えるんじゃないんですか…それと僕の掛け替えない場所を奪うという悲しいことは言わないでください」
ハルヒ「古泉君」
みくる「SOS団は私にとっても大切な場所です、キョン君に気持ちを伝えて戻ってきてもらいましょう」
ハルヒ「みくるちゃん」
長門「…あなたらしく彼を取り戻すべき」
ハルヒ「有希」
みんなの話を聞いてハルヒはその場に泣き崩れたそうだ
泣き終わったハルヒは3人に向かってこう話した
ハルヒ「みんなごめんね、あたしがどうかしてた、そうよ取られたら取り戻すべきよ」
ハルヒは凛々しい顔でそう告げたそうだ
 
 
そんなことが起こっているとは露知らずに
俺は舞さんと遠出をしてイタリアンレストランでランチを食べたり、ビルの屋上の観覧車などを楽しんで帰宅した
全ての問題がクリアとなり、今日こそは安眠できると眠りについた
眠りについてから俺の脳がノンレム睡眠からレム睡眠に変わった時に俺は不思議な夢を見た
 
 
目の前にハルヒが立っている、その顔はえらく不安な顔だ
ハルヒ「キョンに聞いて欲しいことがあるの」
ハルヒは俺の手を掴んだ
ハルヒ「あたしはキョンのことが好き、キョンを愛してるの」
俺はハルヒの顔を直視できずに視線をそらした
ハルヒ「目をそむけないであたしを見て」
ハルヒは俺の胸へ飛び込み、背中へと手をまわした
 
 
そこで俺は目が覚めた、なんてリアルな夢だ
あいつの温もりや感触が体に残っている、まるで去年の春と同じだ
 
 
今日は舞さんが日直の為に俺は一人で登校している
あんな夢を見た後なので一人で登校したかったからちょうど良かった
 
校舎の下駄箱には到着して上履きを取ろうとしたら、メモ書きが入っているのに気づいた
『着いたら屋上に来なさい』
こんなメモ書きを入れる奴は一人しかいないだろう
 
 
俺が階段を上がるとその最上階の踊り場にハルヒがいた
この場所はハルヒに新クラブを作るのに協力しろと言われた思い出の場所だ
夢と同じでハルヒの顔はえらく不安な顔をしていた
まるでたちの悪いデジャブを見ているようだった
ハルヒ「キョンに聞いて欲しいことがあるの」
夢と同じでハルヒは俺の手を掴んだ
ハルヒ「あたしはキョンのことが好き、キョンを愛してるの」
夢の通りに俺は視線をそらした
ハルヒ「目をそむけないであたしを見て」
ハルヒは俺の胸へ飛び込み、背中へと手をまわしたところで夢は覚めたが…どうやら続きがあったらしいな
ハルヒ「授業が終ったら軽音楽部の部室の前に来て、お願い」
そう告げるとハルヒは駆け足で階段を降りていった
いつもならあいかわらず一方通行な奴だと思うのだが今日ばかりはそんな考えは浮かばなかった
 
今日は高校一年の最後の日なので授業もなく、終業式と通知表を受け取るだけで終った
先に教室を飛び出したハルヒを追うように俺は軽音楽部の部室に向かった
 
 
軽音楽部の部室前に到着すると他のSOS団の面々はすでに集結していた
一足先に教室を出たハルヒはまだいない
みくる「キョン君」
俺は古泉に「今から何をするんだ」と尋ねた
古泉「僕らも放課後にこの場所に来るようにとしか言われておりません、プロセスは解りませんが目的は存じ上げていますよ」
そう言い終わるとハルヒが到着した
ハルヒ「キョン来てくれてありがとう、みんなもごめんね」
言い終わるとハルヒは堂々と軽音楽部のドアを開けた
軽音楽部の部員達はびっくりして一斉のこちらへと顔を向けた
ハルヒ「騒がしてごめんなさい、あたしはSOS団の涼宮ハルヒ、ENOZの財前さんはいる?」
何のことか分からずびっくりしている舞さんはギターを置いて、ハルヒに近寄った
財前「涼宮さんどうしたの?、キョン君も一緒に」
舞さんは俺の顔を見てこれから何が起こるのか教えて欲しそうな目で見ているが、すまん俺も全く解らん
ハルヒ「財前さんいきなりでごめんなさい、でも聞いて」
ハルヒは一遍の迷いのない顔で続けて話した
ハルヒ「あたしはキョンが大好き、だからあなたからキョンを取り戻します」
あいかわらずなんてど真ん中の直球を投げやがる
だが欲しいものはどうやっても手に入れるというハルヒらしい考えだと思った
財前「そ、そんな…キョン君どういうことなの?」
舞さんは不安な顔で俺に助けを求めてきた
ここで俺が否定の一言でも言えば舞さんとの日常が戻るのだが…俺は否定できなかった
ハルヒ「あたしが一方的に奪い取ったら財前さんも納得できないでしょう、だからあたし達SOS団はENOZにライブでの対決を申し込みます」
財前「ライブ対決?」
ハルヒ「そうライブ対決よ、勝った方がキョンと付き合いましょう、先につき合ったアドバンテージから財前さんの得意なもので勝負してあげるわ」
なんて無茶苦茶な話なんだ付き合っている彼氏を奪うのに対決を申し込む話なんぞ聞いたことがない
こんな一方的な話なんぞは舞さんが否定すれば脆く崩れると思ったがそうはならなかった
財前「…キョン君はそれでいいの?」
舞さんは俺に意思確認をした、ここで否定すれば全ては元通りになるのに俺は否定どころか一言も言葉を発せずにいた
そんな情けない俺を見た舞さんは
財前「…分かったわ、勝負を受けるわ」
ハルヒ「受けてくれるのね」
財前「ええ…これ以上、キョン君を悩ませたくないんで」
俺は自分の気持ちを何も言えない事に後悔した
ハルヒ「場所と時間なんだけど、ここで今すぐがいいんでしょうけど、さすがに昨日思い浮かんだことなんでこっちはまだ何も用意してないの」
何も決まってないのに勝負を申し込んだのか
すると後ろで聞いていた榎本さんが話に割り込んできた
榎本「私達は新学期に新入生への部活紹介で一曲演奏するんだけど、その時はどう?」
ハルヒ「いいわ、全校生徒の前で対決しましょう」
榎本「舞もいい?」
財前「私もいいわ美夕紀」
古泉「では生徒会へは僕の方から話を通しておきます」
ハルヒ「お願いね、古泉君」
財前「涼宮さんには去年の文化祭の恩があるけど、この勝負は一切手を抜かない」
ハルヒ「ええ望むところよ」
 
こうして俺が一言も発しない内に2人はライブ対決をする運びとなった…
 
 
第七楽譜へ続く
 


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