<<前回のあらすじ>>
 キョンはついに自分の弱い心に打ち勝ちました。一言で言えてしまうほど簡単なことのようで、それはとても難しいこと。
 古泉との話の中でイニシエーションについて聞かされるが、そんなの理解できません。門外漢が学術的な話についていけるわけがありません。
 それでも、「自分自身を変えたいのなら、意識の根本的な部分を変える体験をしなければならないらしい」ということが何となく分かりました。
 けれどその方策など皆目分かろうはずもありません。どうしていいか分からないからこそ、みんな毎日悩んでいるのです。

 

 

~~~~~

 

 

 あれほど広く、殺伐としていて、無駄な物など一切無かった長門の部屋に今はゴチャゴチャと引越し直前の家のように荷物がごった返していた。
 フローリングの机の上にはハルヒのナップサックが投げ出されているし、床の上には古泉、鶴屋さんのバックが置かれている。部屋の隅にも朝比奈さんの大きな衣装バックが整えられている。
「みんな、そろったわね!」
 ソファーの上で胡坐をかくハルヒは、有頂天な表情で室内をグルリと見渡し、SOS団員たちに声をかけた。
 俺は「なんてこった……」と呟きながら、ハート柄のエプロンの袖に腕を通した。

 

 俺が長門のマンションに厄介になっているとハルヒが知り、そのハルヒが自分も長門宅に泊り込む!と宣言した時から、およそこうなるであろうことは予測していた。
 ……なにも、SOS団員全員で長門の家におしかけなくてもいいじゃないか……。
 この世に心配事など何もないかのようにはしゃぐハルヒと鶴屋さんに背を向け、俺はキッチンへと移動した。
 能天気なハルヒと同じじゃないんだ、俺は。自分という人間を見つめなおす転機として、ここに身を寄せているんだ。なのにそれを面白そうという理由で追ってくるなんて。迷惑千万だ。

 

「あ、キョンくん。お料理、手伝ってくれるんですか?」
 ピンクのエプロンに、白いモコモコしたスリッパがよく似合う朝比奈さんが台所に立っている。その後姿はまるで新婚ホヤホヤの幼な妻を夢想させるほど輝いていて……って、何を妄想しているんだ俺は。
「ええ。本来夕食を作るのは俺の役目ですから。料理ができるかどうか怪しい古泉は別としても、ハルヒと鶴屋さんも夕食の手伝いくらいしてくれればいいですのにね」
「うふふ。いいじゃないですか。家庭の事情でここにいるキョンくんにとっては、遊び半分でお泊りに来てる私たちが無神経に映るかもしれませんが、あれでも涼宮さんたちも気を遣っているんですよ」
 朝比奈さんが無神経なわけないじゃないですか。無神経なのは、突然SOS団全員に長門宅へ宿泊命令を出したハルヒただ一人ですよ。まったく、鶴屋さんなんて高級そうな菓子折りまで持参していると言うのに。
「鶴屋さんってノリが軽そうなのに、結構そういう礼儀作法的なところでは抜かりがないんですよね」
 しゅるしゅると器用にじゃがいもの皮をむいていく朝比奈さんの隣で、俺はばりばりと玉ねぎの皮を剥がしにかかった。
 普段は見られないエプロン姿の朝比奈さんの隣に肩を並べて立ち、一緒に料理をするというシチュエーションも悪くないな。むしろ大ありだな。

 

 その後も、朝比奈さんの自動車学校での出来事や俺の身の上話などをぽつぽつ交わしながら、二人でカレー用の野菜を切っていく。
「そういえば、キョンくんは家出って聞いたんですけど、ご家族の方には連絡をとってないんですか? ご両親も妹さんも心配されてると思いますよ?」
 俺の方をちらちらと覗き見ながら、朝比奈さんは心配気な表情で申し訳なさそうにそう言った。
「連絡はしてますよ。家を出た初日の夜に、妹に。理由は言っていませんが、しばらく家には帰らない、と」
 親から連絡がこないように、ここ数日は携帯電話の電源をずっと切っている。連絡はあれ以来取り合っていないが、きっと妹なら俺がここにいると知っているに違いない。
 毎日公園での顔合わせが終わり次第、SOS団は長門のマンションへ移動しているって妹は知っているからな。分かっていながらそっとしてくれている妹の心遣いに、改めて感謝の念を抱かざるをえなかった。

「キョンくんは、どれくらい長門さんのお家に居るんです?」
 あ、ごめんなさい!と慌てて付け加える朝比奈さんの困った顔に苦笑しながら、俺は手元のニンジンへ目線を戻した。
「長居する気はないですよ。長門はしばらく居てもいいと言ってくれてますが、さすがにそれは気が引けますし。後何日かで帰ろうと思ってます。早ければ、明日にでも」
 そう。いつまでも長門の好意に甘えているわけにもいかない。いつまでも現実から逃げているわけにはいかない。極力逃げるのはよそうと、自分で決めたばかりなのだから。
 ただ、俺は家を離れて自分というものを見つめなおしてみたいと思っている。それで何かが得られそうな気がするから。

 


 できあがったカレーの鍋を持って、俺はフロアルームに移動した。朝比奈さんが食器の準備をしている間に重い物を俺が運搬してきたのだ。朝比奈さんにカレー鍋を運ばせては、うっかり転んで落としてしまう可能性もあるしな。
「まただわ! もう、むかつくわねえ!」
 居間に戻ると、ソファーにふんぞり返るハルヒが携帯電話を手にプリプリと怒っていた。スパムメールにでも悩まされているのだろうか。
「違うわよ。最近何故か、やたら非通知の電話がかかってくるのよ。それで、出たら即行で切られるか、無言電話。腹立つわ!」
 どこかでいらぬ恨みでも買ったんじゃないか? で、その相手から嫌がらせを受けているという線が考えられそうだ。
「でも私、よっぽど親しい人にしか携帯番号教えてないのよ? 恨まれるような相手に電話番号を知られているわけないし。それとも、どっかの企業から個人情報が流出してるとか!?」
 そんなことは知らん。そんなのは相手にしなけりゃいいだけの話だ。それより、ほら。机の上を片付けろ。朝比奈さんと俺の合作カレーが食えないぞ。
「分かってるわよ、そんなこと!」
 ぶつくさと文句をたれながらも、古泉と鶴屋さんの手を借りて机の上とその周囲の荷物を脇へどけるハルヒ。
 ようやくスペースの空いた机へカレー鍋を置くと、無言の長門が俺に大きな袋を差し出した。ファンシーな柄の布だが、見覚えのある袋だ。
「さっき、あなたの妹が着替えだと言ってもってきた。あなたが料理中だったから、代わりに受け取っておいた」
 そうか、これは妹の袋か。あいつ、俺の着替え持ってきてくれたんだ。そっか……嬉しいな。
 長門から受け取った着替えの重みを自分の手で感じた時。携帯を切って家族との連絡を一方的にシャットアウトしていた自分が恥ずかしくなる。妹がこれほど俺をアシストしてくれているのに、俺ってやつは。後で礼を言っておかないと。
 その後、朝比奈さんが台所からお茶や食器を持ってやって来て一斉に居間がにぎやかになっても、長門はじっと俺を見ていた。無言の視線ではあるが、そこからは、何か言いたげな強い意志を感じる。
「長門、どうかしたのか? なにか俺に言いたいことがあるのか?」
 家賃を払えといわれても、俺には断る権利はないな……。もし本当にそう言われたら、出世払いまで待ってもらうしかないな。
「あなたの、妹の件」
 俺の妹? 妹が何か言ってたのか? さっさと帰って来い、くらいは言われてそうだな。
「あなたに伝えるべきかどうか判断がつかず、今まで黙秘していたことがある」
 長門は、真剣だった。

 

 俺と長門の背後で、ハルヒたちがワーワーと騒ぎながらカレーを食器によそい、サラダにドレッシングをかけて机の上に並べている。
 あきらかに、そこに流れる明るい夕食の空気と、俺と長門の間に流れる重苦しい沈黙の雰囲気は異質だった。
「あなたが家を出てここへ来た初日から、あなたの妹がこのマンションの前に立っていた」
 重い口を開き、長門がしゃべり始めた。
「それから毎夜、あなたの妹はマンションの表から、私の部屋をずっと見ていた」

 

 俺は返答に窮する。妹が、マンションの前で毎晩?
 まさか妹がそこまで俺のことを心配してたなんて……いい年した兄貴をそこまで気遣うというのもどうかと思うぞ、我が妹よ。そう言って苦笑しようとした俺の笑顔を、長門の言葉が凍りつかせる。
「あなたの妹は毎夜マンションの前へ現れては、平均して20時から26時まで、マンションの前に立っていた」
 一瞬、俺の思考がマヒする。長門の言った言葉の意味がよく理解できなかった。
「……なあ、長門。20時って……夜の8時だよな。26時は、ええと、深夜の2時? 6時間も、俺の妹が、夜毎……マンションの前に?」
 タチの悪い冗談かと思った。しかし、そんなタチの悪い冗談ともっとも遠い位置に立っている人物が長門有希ということを、俺はよく知っている。
 長門はいつも真実しか口にしない。長門が俺に嘘をつくなんてありえない。だが、妹が、毎晩毎晩深夜に6時間も……そんな話、にわかには……
「あなたに混乱を与えるだけと思い今まで黙っていた」
 わずかに悲しそうな顔をして、うつむいて、長門は、そっと俺の前から歩み去った。

 

 

 な、なんだってんだ? どういうことなんだ? さっぱり分からないぞ。俺は長門から与えられた情報をいかに飲み込んだものか判じかね、手の中の着替えの入った袋をじっと見下ろしていた。
 その時、背後から携帯電話の呼び出し音が聞こえてきた。昔っから一途までに変わらない音だから誰の携帯だか一発で分かる。ハルヒの携帯だ。
「あ、まただわ……!」
 さっきまでの喧騒が嘘の静り返る。この静寂は、通話の邪魔にならないようにと皆が気を遣ったものではない。ハルヒにかかってきた電話が、さっき言っていた非通知のイタヅラ電話だったから誰もが言葉を失ったのだ。
 あんまりしつこい非通知電話なら即座に切ってやっても良いだろうが、そうしないのが好戦的な涼宮ハルヒという人物だ。
「もしもし!? どちらさま?」
 眉を吊り上げ、迷わず受信ボタンを押すハルヒ。非通知で相手が誰かも分からないのに、しょっぱなから怒りモード全開で誰何する。
「……もしもし? 黙ってたら分からないでしょ。名前くらい名乗りなさいよ」
 予想通りの展開だ。電話の相手は無言を通しているらしい。その様子を見つめていると、電話を受けているハルヒ本人より、むしろ周囲にいる俺たちの方が心情的につらい。
「あんたね、毎日毎日飽きもせず、安くない携帯代を払って何で私に無言電話なんてかけてくるの? 私に何の恨みがあるって言うのよ? 何とか言いなさいよ……もしもし? もしもし!?」
 直感した。電話が、切られたのだ。
 ハルヒは無言で携帯を閉じ、乱暴にズボンのポケットにねじこんだ。
 その後の夕食は楽しいものとなったが、それでも最初は、乾いた、どこかよそよそしい雰囲気が拭えなかった。

 

 

~~~~~

 

 

 これは私にとって日課のようなもの。涼宮ハルヒの怒声を一通り聞き流し、相手のイライラが限界に達そうという直前に、電話を切る。
 そんな私の日課を見ている者は誰もいない。携帯につけてあるウサギのストラップの、うつろな瞳以外には。
 私は底意地の悪い愉快な気分を腹の中にためこんでベットの上に寝転がった。
 今ごろ、キョンくんは何をしているだろう。晩御飯を食べてる頃かな? あのSOS団と一緒に。
 無性に、いらいらと、落ち着かない。

 

 キョンくん、キョンくん。どうして家を出てしまったの? 私には分からないよ? 何の不満があったの?
 数日前、私が朝キョンくんとゲームで遊ぼうと思い、つい心無い言葉を口走ってしまったから? きっとそうだ。そのせいで、キョンくんは出て行ってしまったんだ。
 そうに違いない。そうじゃないと、他に理由が思い浮かばないもの。
 私はいつも彼の理解者であろうと努めてきたし、その甲斐あってキョンくんも私には、お父さんお母さん以上に心を開いてくれていたもの。
 なんて失態。つい口からまろび出てしまった舌禍とはいえ、悔やんでも悔やみきれない後悔。ああ、イライラする。落ち着かない。

 

 昔からそうだった。ズボラな性格のキョンくんには、私がいてあげないといけないんだ。私がいてあげないと、彼は朝も満足に起きられないんだ。
 私がいてあげないと。ちょっと年の離れた兄とはいえ、彼はまだ精神的に成熟していないんだ。だから私の面倒見があってようやくそれなりに大人をやっていけるんだ。

 

 涼宮ハルヒたちSOS団なんかに、キョンくんの世話なんてできるわけない。いつもいつも兄を引っ張り回して一緒に遊んでいるけれど、SOS団にできるのは、せいぜいそこまで。身の回りの世話とは別次元の話。
 なのに、自分の面倒も満足に見られない集団が、そんな彼の傍に昼夜いるなんて!

 

 長門有希のマンションにキョンくんが泊り込んだのは、キョンくん自身の意思。それはしかたないことだから、有希ちゃんを責めるのはお門違いだと理解している。
 そもそも有希ちゃんは他人に対してあまり興味を抱いていないようだから、キョンくんどころか誰の世話だって焼かないはず。兄をマンションに泊めているのも、隣家の飼い犬を一時預かる程度にしか思っていないに違いない。
 朝比奈みくるは世話焼き女房のような性格だが、それは兄には関係のない話。あくまで兄に対しては友人の範疇を出ない付き合いだし、彼女は兄と一定の距離を保った関係を適切と判断している節がある。彼女も問題ない。
 鶴屋さんなんかは論外だ。日々を楽しければそれでいいと思っている彼女は、キョンくんのことを友人以上の存在だなんてカケラも思っていない。まさに兄の女友達として最適な女性。
 しかし涼宮ハルヒは違う。高校生時代から、兄に対して友人以上の感情を持っているようだ。だから必要以上に兄に絡むし、連れまわす。兄の気も知らないで。
 そんなことを思うようになったのも比較的最近のことで、昔は彼女のことも心許せる素晴らしい友人だなんて思ってたんだけれど。子供だったとはいえ、なんて愚かな勘違い。
 それにあの人の何が気に入らないかって、あの人が兄を見ている時の目が気に入らない。友人だとか友情からくる信頼だとか、そういう物を超えた、ひどく感情的な色が、たまに入り混じる時がある。
 それがたまらなく嫌なのだ。あの人の「女の目」を見ていると、まるで背筋を巨大なイモムシが這い登ってくるようなおぞましさを感じる。その時、私はたいそう不愉快になる。
 だから、私はあの女を認めない。たとえ兄があの女を認めたとしても、私だけは決して認めない。

 

 

 

 私はずっと勉強に追われてきた。寝ても覚めても勉強漬けの毎日。最初のうちは何か目標があって、そこを目指して勉強していたはずだったけれど、ここ数年は違った。目標なんてない。ただ勉強するために勉強していた。
 勉強のために勉強して、その勉強のためにさらに別の勉強に取り組む。そしてまたその勉強を続けるために異なる勉強を……。
 ずっとループする勉学の輪の中で、次第に私には、自分が勉強のために生きているような錯覚の中で日々を送っているような感覚が芽生えてくる。すると勉強そのものが私の存在意義となり、摩り替わり、定着して、固定される。
 学校では友人たちと楽しくおしゃべりしたり遊んだりしていたが、それ自体も勉強に他ならない。勉学で偏った脳をリフレッシュさせ、机上の参考書以外のことを吸収するための勉強。
 言うなれば他人とのコミュニケーション。社会科の勉強っていう感じかな?
 私の行動はすべからく勉強こそを第一義としたものだった。全て理にかない、計算のうちでの行動のみをとってきた。
 勉強。勉学。勤勉。そう、あらゆる面において勤勉であることが私の美徳であり生き様だった。また、日本という国はそうあることを奨励する国でもある。常に学び、実直であることが私の美徳であり、この国の美徳なのだ。
 だから私はずっと、胸を張って生きてきた。

 

 しかしある時から、不意に、恐ろしい考えが私の胸に病巣のように住まい始めた。
 どんなにどんなに勉学に努めようとも、学ぼうとも、それは私自身の中で全て解決がついてしまうことなのだ。つまり、勉学は、私と私の外の世界をつないではくれないわけで。
 高校生の頃。私は急に不安になった。こんな広い、広大な世界の中で、私はひとりぼっちなの?と。
 親の友達も、学校の先生でさえも、私に関わる人間たちはことごとく上辺だけの存在だった。誰も、どんな人も、私の心の琴線にふれてはくれない。
 当たり前だ。私は勉強だけを信奉する、勉学人間なのだ。勉学とは己の内のみで解決し、解消し、消化し、昇華していくものなのだ。それはたぶん……絶対的な意味での、孤独。

 

 それが、ちょっと悲しかった。勉強さえしていれば何の感情もわいてこなかったけれど、孤独であることは、寂しいことだなと思った。
 けど、違った。私の存在を、勉強以外の面で私という人間を理解してくれる、たった一人の人がいた。
 それが、兄だった。

 

 兄はズボラな人だった。毎日朝は寝坊三昧で、休みの日ともなると私が起こしてあげないとそのまま夜まで寝ているような人だった。
 私が勉強に目覚めるずっと前からつきあっていた家族だから、彼との関係にだけは勉学の影を感じなかった。親のように成績がどうこうと言ったりすることは絶対になかったし。
 彼は世話を焼いてあげないといけない人。そしてそれはもっとも身近にいる私にしかできないこと。

 

 

 こんな話を聞いたことがある。他人に世話を焼かれる人は、3種類の行動を執るという。反発して反抗する。現状を受け入れてなすがままにされる。そして、甘えて依存する。
 兄は、3番目の人だった。つまり、私が世話を焼くことによってその状況が当然のことだと認識し、私に依存してしまう人だった。
 私が兄をそんな無気力な人にしてしまったのだ。ズボラな兄に世話を焼きすぎたから。もう兄は、私の力添えなしでは日常生活を送っていけない人なのだ。
 私が彼を支えてあげなきゃ。いつの日が兄も自立する日がくるかもしれないけれど、少なくともその日までは、一緒にいてあげるから。
 あの人には、私がいないとダメだから。

 

 ───あの人がいないと、私はダメだから。

 

 ああ。兄は今頃、あの酷い涼宮ハルヒの無理難題に悩まされていないだろうか? むごい仕打ちを受けていないだろうか? ご飯は食べられたかな? 歯も磨いたかな? あったかくして寝てるかな?
 今日はSOS団全員が有希ちゃんのマンションに押しかけたって聞いたけれど、騒がしすぎて眠れないんじゃないかな?
 ひょっとしたら、兄もそろそろ家が懐かしくなってホームシックにかかり、帰ってきたくなってるんじゃないかな。私がいないと何もできない人だもんね。
 ひょっとしたら、今晩マンションを抜け出して帰って来くるかもしれない。あの騒がしい涼宮ハルヒがいたんじゃ、おちおち眠ってもいられないものね。
 迎えに行ってあげよう。今晩もまた、兄がマンションから出てきて寂しい思いをしないよう、表で待っててあげよう。
 だから。待っててね。キョンくん。

 

 

  つづく

 

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最終更新:2020年08月14日 17:53