「なあ長門。この話はなんなんだ?本編も終わってないのに外伝か?」
「この話は作者が本編で行き詰まり、ついカッとなってやったもの」
「後悔はしてないんだな?」
「・・・微妙にしている。それに連載中の外伝なら他にも例があるから大丈夫。例を挙げえるなら範馬刃牙10.5」
「苦しいな。それは言い訳か?」
「言い訳」
「それで、これはどんな話なんだ?」
「これはあなたが後日に回すと言って誤魔化した部分の話」
「おいおい、別に誤魔化したわけじゃ・・・ってアレを話すのか!?」
「前後の話が気になるなら四章後半を読むことを推奨する」
「人の話を聞けよっ!俺の立場がやばくなるって!」
「それでは・・・・・・どうぞ」
「・・・はぁ。もうどうでもいいや」
脱衣所に着いたとたん、朝倉(小)は我が妹のように一気にスポーンと服を脱ぐと体当たりをするかのように風呂場のドアを開けてその勢いのまま浴槽に飛び込んだ!
ばっしゃああぁぁぁぁああぁあんっ!!!
「こらぁ!風呂はちゃんと身体を流してから入りなさい!後入るときは静かに!」
それくらいのたしなみはもってくれい!俺は、脱ぎかけの服を一気に脱いで風呂場へと急いだ。
「ふあぁ・・・・」
中に入ると朝倉(小)は完全にリラックスモードに入っていた。
浴槽の縁に顎を乗せてたれている。たれぱんだか?
おーい、大丈夫か~?
コク。
熱すぎないか~?
コク。
父ちゃん先に身体洗ってるぞ~?
コク。
やれやれ。こりゃ駄目だ。今のコイツには何を言ってもコク、としか返さんだろう。
さっさと済まして俺も温まろう。
ゴシゴシゴシゴシゴシ。
頭から洗う。流石にこの歳になってシャンプーハットなど使いはせんがここだけの話、俺はどうしても頭を泡立てているときには目を開けることができない。
別に怖いとかそういうわけじゃないぞ。目を開けてるとシャンプーが目に入って痛いだろ?俺はアレが大の嫌いなのである。しかし、このことで俺はあるハプニングに襲われることとなるのだ。
そう、ちょうど俺が頭を思う存分泡立てて、いざ流そうとした時だ。ちなみに、このときはまだ目は閉じたまんまだ。
コンコン、と風呂場のドアをノックしてから開ける音がする。
もちろん今この家でそんなことするやつは長門しかいない。
「なんだ、長門」
「涼子の着替えを持ってきた。どこに置けばいい?」
「おう、それなら俺の着替えの横にでも置いといてくれ」
「分かった」
と言ってドアを閉める音が聞こえた。ここまでは。ここまではよかったんだ。
別に俺の裸を長門に見られたとかはどうでもいい。俺は長門に背を向けて座ってたし、第一何かのときのために腰にタオルを巻いていたから、いわゆる禁則事項はちゃんと隠されてたからな。
ジャーと頭の泡を洗い流して、いざ身体を洗おうとスポンジを取ろうとする。
が、いつものところに無いではないか。
あれ、と思って左右を確認する。見つからない。
おかしいぞ、と思ったその時だった。
「…お背中、流させていただきます」
の言葉と共に俺の背中にゴシゴシとした感覚が走る。
・・・うん。恥ずかしいけど気持ちいい・・・。ってそんな場合じゃなかった。
「お、おい長門ぉ?いいい、いくらなんでも服のまんまはマズイって」
と前を向いたまま言う。なぜかわからんが声が上ずるっ!
か、勘違いするなよ。別に服を脱げ、とかそういうことが言いたいんじゃなくてだな、遠まわしにさっさと出てけっていってるんだぞ。
バッと後ろを振り向く。それを凌ぐ勢いでババッと前に向き戻るっ!
そう、振り返った俺の目に映ったのは・・・・・
「な、ななな、なが、長門さん?」
「大丈夫。すでにもう服は脱いである」
そういう問題ではない!それにその、なんだ、その格好は!
「浴場では衣類は脱ぐもの」
だあああああああああああ!!!もう!だからってなあ!
「タオル一枚はマズイだろうがあああ!!!」
「何も無いほうがいい?」
いいさいいともそっちのほうが!だがな!俺は絶対そんなことは口にせんぞ!
「いいわけあるかぁぁぁ!!!」
いや、本当はいいんですが。ん、やっぱ駄目だ。きっと俺が壊れるからな。
「…………そう」
変な解釈しない!勝手に赤くならない!下向かない!
むしろ恥ずかしいのは俺のほうだ!
「………だめ?」
負けちゃだめだ負けちゃだめだ負けちゃだめだ・・・・っ!
何とか落ち着いてきたぞ、よしこのまま・・・。
ふうっ。
びくびくびくぅッ!
ととと吐息が耳にぃぃぃぃぃ!
いきなり耳に息を吹きかけるな!と言おうとして避けつつ横を向くと、まるで計算していたかのように目の前に長門の顔があった。そして・・・。
「だ…め……?あなた・・・?」
「・・・・・。」
もえたぜ・・・もえつきたぜ・・・真っ白にな・・・
漢字の当てはめはご自由に。自分の思ったとおりに入れればいいんじゃないか?
とまあものの見事に陥落してしまった。いや、俺は悪くないぞ。こんなシチュエーションになったら漢なら誰だって断れんさ。漢ならな。もし断れる奴がいたなら俺が古泉を紹介してやるからそっち方面へいったほうがいいぞ。絶対に。
ゴシゴシゴシ。
少し放心状態気味でされるがままに背中を流される俺。近くに鏡が無いので分からんが、もしあったとしたらきっと今までに無いくらい真っ赤なんだろう。
いや、決して見たいものではないから無くてありがたい。
それに鏡なんてあったら後ろの長門まで見えてしまうではないか。
ただでさえカチンコチンになっているというのに、見たら最後、気を失うか理性を失うかのどちらかだろう。危ない危ない。
「煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散・・・・・」
苦行僧のような己との戦いは背中にお湯をかけるジャーという音によって終止符が打たれる。・・・・・やっと終わったか。長かった。本当に長かった。
「背中、終わったようだな。ありがとな、もういいから」
つっけんどんに言う。だってしかたないだろ。まともに顔が見れそうにない。
だというのにこいつは、
「まだ。まだ終わってない」
と言いやがる。
「何言ってるんだ?背中なら十分に洗えてるぞ?少なくとも自分でやるときの数十倍はきれいな気がする」
数十倍というのは褒めすぎではあるがいつもよりきれいなのは間違いない。それに褒めておけば納得して風呂場から出て行ってくれるかもしれん。
「前がまだ」
なんじゃそりゃあ!!!
長門さん、あなたは俺を殺す気ですか?
「いやそこはいいむしろやるなというよりさっき自分で洗った気がするうん洗った洗い終わったそれじゃあ俺は風呂に入るとするかなありがとよ」
と句読点が入る隙間も無いくらいの速さで長門の合いの手を封じて浴槽へと逃げ込んだ。
それと同時に、
「涼子」
と長門が隣でふにゃあとなっている朝倉(小)に声をかける。
「お父さんの身体の洗浄が終了した。次はあなたの番」
と言って涼子を浴槽から上がらせる。ふぅ。これで少しはゆっくりできるな・・・。
そう思って目を閉じる。
だが、浴槽から出たと思ったらすぐに入ってくる気配がした。
「おいおい。いくら風呂が気持ちいいからといってもな、ちゃんと身体くらい洗いなさい。その後でもっかい入ってもいいか・・・ら・・・?」
目を開け、横を向きながらそう言う。
だがそこにいたのは朝倉(小)ではなく長門であった。
「…狭い」
狭いじゃない!お前はどうしてここにいる!?涼子はどうした!?
「身体が冷えた」
だったら俺が上がる!といって立とうとすると、なんと身体が動かないではないか。
「な、ななな長門?」
じとー。
くそ、こいつ・・・!
こうなっては仕方がない。どうにかして隣の長門を意識しないようにしなければ。
じゃないと俺がどうにかなっちまう。というよりすでにどうにかなりかけている。
静まれ静まれ静まれ・・・・・
よ、よし・・・こういう時は違うことを考えるんだ。そういえば昨日、とある有名監督の山犬に育てられた姫とアカシシに乗った呪われた青年のアニメ映画がやっていたな。
確かタタラ場とか、アイヌっぽいのとか出てきたんだよな・・・。
あ、なんだか少し落ち着いてきたぞ。
「―――よ、お前にサンが救えるか!」
「―――シシ神よ!静まりたまえ!」
サン・・・SON・・・
静まりたまえ・・・・
や、やばい!なんかまた元に戻っちまった!
ピト
いや、むしろ前より酷い!?頑張れ俺の理性軍!落ち着け、俺!静まれ!頼む!静まってくれ!
・・・・・CAST OFF. STAND UP.
「おおおお、おれなんだかのぼせちまったみたいだからさきにあがるぞー!」
タオルで股間を庇うようにして浴槽から上がり、猛スピードで脱衣所へと逃げ込む。
漢には振り向いてはいけない時もあるのだ。
おいそこ、チキンとか言うな。自分自身が一番よくわかっているからな。
ん?なんだ?そんなことより風呂での長門の詳細だって?残念だったな、それはSランク級の禁則事項だ。
あの透き通るような白さにほんのり赤みに染まってる肌や唇とか、風呂の湯気で微妙に湿ったうなじとか、細い体を真っ白なタオルを巻いている姿とか、そのタオル越しの無いように見えて実は微妙にある胸・・・なんて誰にも言うわけないだろ。俺の心の宝物だ。
「はぁ・・・・・」
それにしても。
本当に疲れた・・・・・
~外伝FIN~