あたしは今、ベッドに腰掛けてセーターを編んでいる。

元々はアイツにクリスマスプレゼントとしてあげようと思っていたのだけれども、実際に編んでみたらこれがまた大変で、延びに延びて結局未だに編んでいるというわけ。

仕方ないじゃない。こんなに難しいなんて知らなかったんだから。

唐突だけど、あたしは恋ってセーターと同じなんじゃないかと思う。

セーターは毛糸の玉から毛糸の端っこを見つけて、それを伸ばして丁寧に編んで次第に形にしていく。

それと同じ。

モヤモヤした気持ちの端っこには「好き」があって、それが少しずつ少しずつ大きくなって次第に形になっていく。

そしてどっちも最後は相手にあったものになる。相手にしかあわないものになる。

セーターなら着る人にぴったりの大きさのものに。着る人ぴったりの色に。

恋なら・・・言うのも恥ずかしいけれど「愛」に。

ほら、やっぱり一緒じゃない。

仕上げだってそうよ。

時間をかければかけるほどより良いものになっていくに決まってる。

べ、別に一ヶ月近く遅れたことの言い訳なんかじゃないんだからねっ!

もう。話が脱線しちゃったわね。

セーターと恋の違うところなんて、途中経過くらいじゃないかしら。

セーターは「大きくするもの」だけど、恋は「大きくなるもの」。

言い換えるなら、自分で大きくするものと、勝手に大きくなるもの。

でもこのセーターはその両方を兼ね備えている。

だって、毛糸一本一本にあたしの気持ちがこもっているから。

毛糸一本一本にアイツとの想い出を込めて編んだから

だからこのセーターは「想い」でできている。

いや、あたしの想いそのものと言っても過言ではないかもしれない。

「ふふっ。なんだかあたしらしくないわね。こんなこと考えちゃうなんて」

もう少し。後もう少しで完成。

ここからがふんばりどころよ、あたし。

かっちこっち

かっちこっち

かっちこっち

ボォーン、ボォーン、ボォーン、ボォーン、ボォーン

「・・・できたっ!」

ベッドから立ち上がって、そのセーターをもって広げてみる。

うん。なかなかいい仕上がりじゃない。ちょっと大きいかもしれないけど、男の子って少し大きいくらいがちょうど良いっていうしね。

それじゃ明日に備えてあたしも寝ようかな。

・・・ってもう朝じゃない!冬だからまだあたりは暗いけど、時計は五時を指していた。

あたしったら徹夜しちゃったみたいね。

まあ完成したからそこは自分に大目に見てあげることにするわ。

ナイスファイトよ、あたし。

でも一つ大問題が残ってるわね。

そう。アイツにこのセーターをどうやって渡すか。

ストレートに「あんたの為に作ったんだからね。大事にしなさい!」って渡すのが一番良いのだけど、なんか気に入らないし、恥ずかしい。

でも・・・やっぱり正々堂々正面切って言った方がいいのかな。

「何か良い方法ないかしらね」

そうしているうちに登校時間になって学校へ向かう。

いつもの席についてしばらくすると当の本人がやってきた。

「よう」

はぁ。あんたはなんでそんなのんきな顔してんのよ。

あんたのせいでこんなに悩んでるんだからね、あたしはっ!

「・・・おはよう」

一応返事を返してからぷいと窓の外を向く。やれやれ、という声が隣を通り過ぎてあたしの前の席に座る。

その背中を後ろから見て、やっぱり大きめに作って良かったと思った。

大きく作ったんじゃなくて、大きくなっちゃったんでしょ、とか言ったやつ。

出てきなさい。死刑だから。

その日の学校は、あたしが入学してから今までで一番長い一日だった。

勝負は放課後の部室。そしてあたしは今、その戦場で宿敵の登場を待っている。

難攻不落のフラグクラッシャーと呼ばれた男を一人待ち続ける。

みんなには、用事があるから今日はいつもより三十分くらい遅れてくるように言った。

なぜかみんなが訳知り顔をしていたような気がするのは何かの間違いよね?

もちろんアイツにも授業が終わり次第すぐに部室にくるように言ってある。

こつんこつんこつん・・・

遠くから足音が近づいてくる。

どくんどくんどくん・・・

あたしの心臓もおかしくなる。なにやってんのよ。あたしらしくないわね。

コンコン、とノックの音がする。

でも・・・

「入るぞ、ハルヒ」

ちゃんと受け取ってくれるかしら。あたしの『セーター』。

大丈夫よね、キョン・・・。

 

fin


|