(※作者許可済み別人作、男二人なんでプロローグからは続いていません)


「暇だな」
「暇ですね」
「なあ、どうしてこの組み合わせなんだろうな」
「さあ? 理由は僕にも分かりかねます。しかし僕はこの組み合わせが一番平穏ではないか
と思っているんですよ。何せ涼宮さんが機嫌を悪くする理由が一切無いと言っても過言では
無い上、万一あなたが涼宮さんの、」
「お前は平穏かもしれんが俺はつまらん」
 休日に男二人なんて楽しいわけも無い。
 これで俺達に女友達が一切居ないとか言うのならまだ話は別だが、SOS団の俺達以外の面
子は皆女子、それも美少女揃いときている。
 まあ、女子達もお前に負けず劣らずの曲者揃いと言えば曲者揃いだけどさ。
「良いじゃないですか、つまらないかも知れませんが、少なくとも何らかの事件に巻き込ま
れる可能性は皆無と言っても差し支えないのですから」
「……俺はお前のその発想が嫌だ」
「そうは言われましても、人間、危機意識というものはですね、」
「おい古泉、あれって焼き芋カーだよな」
「焼き芋カーですね。ってあなた今人の話を、」
「食うか?」
「あなたの奢りでですか?」
「一日に二回も奢るか馬鹿」
 俺が自発的にそんなことをしたくなるのは朝比奈さんだけだ。
 ハルヒと長門は……、食欲魔人の二人に一日に複数回も奢ったら俺の財布が持たない気が
してならないな。
「良いじゃないですか、話を振ったのはあなたなんですから」
 うるさい奴だな。
 結論。
 結局二人でジャンケンをして負けた方が奢るってことになった。
 それぞれ自分の金で買うって発想が無い当たりが馬鹿だと思うね。
 そして古泉よ、お前勝負事はとことん弱いくせにこういう時だけは違うんだな。
 くそ、忌々しい。
「ごちそうになりますね」
「……何で一日に二度も男に奢らにゃならんのだ」
「僕は嬉しいですよ」
 お前の耳に嫌味は通じないのかよ。いや、大抵の嫌味は通じないみたいだけどさ。
 まあ、負けたからには約束通り奢るさ。
 ここで約束を反故にしたら男が廃る、というわけでも無いが、そういうことをするのはあ
んまり気分がいいものじゃないし、後で言いふらされる可能性も有るからな。
 古泉にちょっと冷たくしたせいで後から他方面からしっぺ返しを食らうなんてのは、正直
勘弁願いたい。
「おじさん、焼き芋三本」
「あいよ、あんた学生さんかい? 一人で三本も食うのかい?」
「連れが居る」
 俺は少し後ろで突っ立ったままになっているはずの古泉を振り返りもせずに手だけで指し示す。
「二人で三本? 半端だな?」
「俺が二つで連れが一つだよ」
 子供っぽいことは承知の上だが、俺が奢る側なんだからそのくらいのことはしたって良い
だろう。
 しかし、自分の方がたくさん持って見せつけてやるなんて、まさにに子供の発想だよな。
「ほー、向こうのでっかいあんちゃんの方が少食なのか」
 古泉が少食がどうかは知らんが、食欲に関してはSOS団の中じゃ下から数えた方が早いだ
ろう。男子高校生としては平均かそれ以下辺りなんじゃないか?
 そういや、体格はともかく食欲って意味じゃ朝比奈さんと似たり寄ったりくらいな印象し
かない気もするな。
 ……はて、そんな奴相手に焼き芋の数を見せつける意味なんて有るんだろうか?
「けど、育ち盛りはちゃんと食った方が良いぞ。ほら、二つおまけしてやる、600円で良い
か?」
 焼き芋屋のおっちゃんは、そう言ってひょいひょいと五本の芋を用意してくれた。
 育ち盛りも何も、古泉の体格をこれ以上大きくする必要は全く無いと思うし、俺だって一
応平均程度の身長はあるはずなんだが、おじさんにとってはその辺りのことはどうでもよく、
男子高校生なるものはすべからく成長期という認識なのだろう。
 俺は包まれた焼き芋を見つつ、おいおい、そんなに食えるかよ……。と思ったりもしたが、
包んで貰った後に反論するわけにも行かないので大人しくそれを買うことにした。
 まあ、5本で600円ならかなり安いしな。
「ほらよ」
「……あなた一人で四本も食べるんですか?」
「多分二本が限界だな」
 おじさんが渡してくれた焼き芋は、どれも思っていたよりでかかった。
「僕は一本半が精々ですよ?」
 お前本当に体格の割に食わないよな。
 まさかお前、ハルヒか長門辺りからエネルギー供給を受けて動いているんじゃなかろうな?
 いやいやいやまさかそんなわけは……、無いよなあ。
「……」
「……」
 凄いな、俺と古泉の間で三点リーダ合戦なんて!
 いや、そんなことに感心している場合じゃないんだが、無いんだが……、さて、どうする
かね。
 どうするも何も、食べないと話にならないわけだが、俺達はハルヒでも長門でも鶴屋さん
でも無いので、この量を二人で消費しきるのにはちょっと無理があるような気がしないでも
無い。
 まあ食えないことは無いと思うんだが、今日はこの後全員で長門の家で夕食をご馳走にな
るっていう予定があるんだよな。
「でも、何で五本も、」
「おじさんがおまけしてくれたんだよ」
 見せびらかしの件については伏せておこう。
 言ったら多分馬鹿にされるからな。
「ああ、なるほど」
「とりあえず食え、ありがたく食え、俺の奢りなんだ」
「ええ、ありがたくいただきますよ」
 そう言って古泉は、ちまちまと焼き芋の皮を剥き始めた。
 ……遅い。
 皮を向く速度自体が遅いわけじゃないが、剥いたり食べたりの繰り返しの、食べたり、の
部分が遅い。
 焼き芋がまだ熱いからってのも有るだろうが、それだけが理由でも無いだろう。
「お前少食だよなあ」
「そうですか、普通だと思いますよ?」
「いや、少食な方だって……。つーか、ここに長門かハルヒがいて欲しい所だよな。鶴屋さ
んでも良いけどさ」
「それは同感かも知れませんね」
「お前、二本目いけるか?」
「一本半が限界ですってば」
 現時点で古泉が漸く一本目の半分まで食べた辺り、俺が二本目を数口齧った辺りだ。言っ
ておくが俺の速度が平均であって、古泉が遅いのである。
 しかし、焼き芋は美味いが、道のりは遠い。
 まあ、美味いから苦行ってほどじゃ無いが……、しかし古泉の奴、ただの焼き芋だっての
に、やたら丁寧な手付きで食べているよな。
 でも、焼き芋にそれは不釣合いじゃないか?
「お前さあ、何か、栗鼠みたいだよな」
「……は?」
「いや、ちまちま食っているからさ。ま、こんな図体のでかい栗鼠は居ないけどさ」
「は、はあ……。けほっ、やめてくださいよ……」
 思わず俺が軽く背中を叩いてやったら、古泉はむせ返った挙句抗議してきた。
 あー、こいつ、こういう時は意外とストレートな反応なんだな。
「良いから食え、ありがたく食え」
「……分かってますよ」
 抗議を受け流しつつ言ってやったら、古泉はちょっとむくれた顔で言い返してきた。
 こいつ、本当に俺の奢りだってこと分かっているのかね?
 まあ、奢りだからと言って食欲が増大するってものでも無いだろうが。
 しかし本当にちまちま食うよなあ。もうちょっと時と場合を……、と言っておきたかった
が、やめておくことにした。
 言っても無駄だろうし、そんな風にからかっている暇があったら、今はとりあえず一口で
も食べ進まないと話にならないからな。


 結局俺達は、古泉が最初に言った通り一本半、残りを俺が食べるという形で焼き芋という
課題を何とか消化しきった。けど何で俺が自分より図体のでかい男の二倍以上も食べる羽目
になるんだよ……、何か間違ってないか?
 それとも何か、朝比奈さんを除いたメンバーにはSOS団には体格と食欲が反比例する法則
でも有るのか?
 ……まあ、焼き芋が美味かったのが救いといえば救いだけどさ。


 結局焼き芋を食うだけで午後のかなりの時間を消費した俺達は、長門の料理をどうやって
消費するかという新たなる課題を抱えつつ帰路ならぬ駅までの道のりを歩いていた。


 fin


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