「なかなかないわねぇ」
「そうですねぇ……ないですねぇ……」
「……みくるちゃん?あんた本気で探してるの!?全然やる気が見られないわ」
「ふぇっ!?さ、探してますよぉ!」
「SOS団きっての萌えキャラであるみくるちゃんが頑張らないでどうするのよ!?
萌えと不思議と言ったら三親等くらいの血縁関係があると言っても過言ではないわ」
「えぇー?でも、何すればいいんですかぁ?」
「そうねぇ……とりあえず上半身裸になってラジオ体操とかしてみればいんじゃない!?」
「そ、そんなの無理ですー!」
「いいからいいから♪やらないで後悔するよりやって後悔したほうが今後の為にもなるわ」
「や、やめてくださーい!」
さて、そろそろ何か発言をしなければ俺の存在が忘れ去られる危険性大な上に、朝比奈さんが公衆の面前でうらやま……いや、恥ずかしい思いをする危険性も大なので、
この茶番劇に終止符を打つことにしよう。
「アホか」
俺はハルヒの首根っこを掴み、朝比奈さんを魔の手から救出した。
「何すんのよアホキョン!」
「お前こそ朝比奈さんに何しようとしてたんだよ」
「決まってるでしょ!?脱がせるのよ」
「脱がせるつったてなあ―――」
俺は久しぶりにハルヒに一般常識について語ってやった。
朝比奈さんはその間、ハルヒのせいでもみくちゃになってしまった洋服を整えつつ、
捨てられた子犬のような眼差しで俺とハルヒを見つめていた。
「ふん!分かったわよ」
どうやら、朝比奈さんの野外ストリップショーは回避できたようだ。
朝比奈さんも安堵の吐息を漏らしている。
「その代わりに、あんた何か代案出しなさいよね!あたしの提案を却下しといてヤリ逃げは許さないんだからね!」
もっともな意見を宣うハルヒだが、そもそもこいつが出した提案を提案と呼ぶことさえおこがましい。
どうせ出しても廃案になるだろうし、思い付きもしないものはどうしようもない。
俺は朝比奈さんに話をふってみることにした。
「うーん……何かありませんかね、朝比奈さん?」
「ふぇ!?あたしですか!?うーん……」
いきなり話をふられて戸惑う朝比奈さんであったが、律儀にもそのこぢんまりとした頭を斜めに傾けながらハルヒ出題俺転嫁の無理難題に取り組み始めた。
「うーん……えーと……」
俺とハルヒの視線は朝比奈さんに注がれている。
「うーん……えーと……あっ!」
そう言うと同時に、キョロキョロしていた朝比奈さんの視線はある一点で留まった。
俺とハルヒがその視線の先を望むと、それは焼き芋と書いてある幟を掲げた一台の軽トラだった。
「……もしかしてみくるちゃん、焼き芋食べたいの?」
「えっ?いや、そういうわけじゃ……」
ここでハルヒの顔に不気味な笑みが浮かぶ。
「あらそう。それじゃあ……あたし達だけでも食べちゃいましょうか。ねっ、キョン!?」
終始チラチラと俺にアイコンタクト送ってくるハルヒ。
相手が朝比奈さんでなければこの時点で失敗してしまいそうな作戦に俺は乗ることにした。
「……ああ、そうだな!俺も少し小腹がすいきたし、ちょっと買ってくるか」
「それじゃキョン!大きいの二本持ってきなさい!ほら、ダッシュダッシュ!」
「あ、あのぉ、えと、そのぉ……やっぱり」
「どうかしましたか、朝比奈さん?」
「えと、そのぉ……あぅぅ、なんでもないです……」
朝比奈さん、それは最早「自分の分も買ってこい」と叫んでいるようなもんですよ。
「ほらキョン!早く行かないと行っちゃうわよ!」
「ああ分かった分かった」
そうこぼしながら俺は焼き芋カーへと小走りで向かった。
「でかしたわキョン!それにしても本当にでかいわねぇ」
「アチチチッ!ほらよ、ハルヒ」
「あぁ……」
ハルヒ、俺、朝比奈さんの順での焼き芋に対する第一声。
「……うん!やっぱり秋と言ったら焼き芋よね!」
「ああそうだな。秋に食う焼き芋は格別だ」
「あ、あのぉ……涼宮さん」
「なあに、みくるちゃん?」
「そんなにたくさん食べきれないんじゃ……」
「安心してみくるちゃん!これくらいの量で泣きを見るあたしの胃袋じゃないわ!」
「……そ、そうですか……じゃあ、キョン君は……」
「へ?」
「あぁ……」
俺はなんと、この短時間で焼き芋一本を丸々平らげていた……ように見せた。
朝比奈さんが見ていない間に半分に折って紙袋に戻しておいたのだ。
「キョン君……それ……はふぅ」
空気が抜けるように朝比奈さんがよろめく。
「あ、朝比奈さん!?大丈夫ですか!?」
「ちょっとみくるちゃん!?どうしたの!?」
かろうじて朝比奈さんの肩を掴み、支えることに成功したが、
「あのぉ……朝比奈さん?大丈夫ですか?」
「……あぅぅ……すみませんでした……もう大丈夫です……」
よろめきながらも俺の支えを拝辞した朝比奈さんは、どうみても大丈夫ではない。
「……プッ!あははははっ!ダメ!我慢できない!」
キョトンとする朝比奈さんを後目に、ハルヒはバカみたいに大声で笑い始めた。
つられて俺も笑ってしまう。
「もういいわキョン!みくるちゃんに例のものをっ……くっ」
そう言ってまた笑い出すハルヒ。いくらなんでも笑い過ぎだろ。
「朝比奈さん、これ」
俺は朝比奈さん紙袋を渡す。
「え?これって……あぁ!」
紙袋の中身を見てびっくりやら嬉しいやら少し怒っている感じもする表情は、朝比奈さんらしいと言えば朝比奈さんらしかった。
「これ……あたしの分……ですかぁ?」
「いらないんだったらあたしが食べてあげr」
「だ、ダメです!あたしが食べます!」
「そう。でも、みくるちゃん?」
「な、なふでふか?」
「団長に嘘ついた罰は受けて貰うわよ?いいわね?」
「そ、そんなぁ……わかりました……ふぅ(でも焼き芋おいしいな)」
俺はそんなハルヒと朝比奈さんのやり取りを微笑ましく眺め、俺が全額負担した焼き芋代を憂いつつも、こういう子供じみた茶番劇もたまには悪くないなとしみじみと感じるのであった。
「そう言えばハルヒ?」
「何よ?」
「お前そんなに食ってふとらnうげ!」
「うるさいわね!余計なお世話よ!」
「……(やっぱり焼き芋おいしいな)」


Fin


焼いた芋‐Yuki.N×Mikuru.A へ


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