忙しくも楽しかったSOS団の活動兼学校も卒業し、俺達の生活スペースは大学へと移った。

 大学でもSOS団は継続、されるわけもなく俺は地元の国立へ、古泉と朝比奈さんは同じ大学へ行ったらしい
 確か九州だっけな?
 長門はその万能ぶりに教師達からは某超難関国立大学への進学を熱心に奨められていたらしいが、結局高卒で就職した。

 で、我らが団長はというと
 「一人暮らしがしたいの!」
 と三年の春ごろにあの100wの笑顔で宣言し、卒業後は県外の中の上レベルの所へ進学した。
 ハルヒ曰く
 「そんなに勉強に熱心になる気はさらさらないわよ。あたしは一人暮らしってのを楽しみたいだけなんだから!」
 だそうだ。
 全く、あいつならもっと上を目指せただろうに。向上心を持たない奴は大成せんぞ
 とそんな軽口は叩かない。
 何故なら俺が国立なんか大層な所に行けるようになったのはあいつのおかげなんだからな
 「団員の不手際を改善するのは団長の責任よ!」
 とか言って秋頃から休みの日は一日中俺の勉強をみてくれたっけ。
 まぁ間違える毎にべしべしとメガホンで叩かれたのはいい思い出、だな

 

 冬のある日、一度イライラしている時にそれに対して八つ当たりで怒ったら
 「うぅっ…なによ、こっちは本気であんたの心配してやってんのに…」
 って言って泣いてそのまま部屋を出て行ったんだよな。

 その時は焦ったよ。焦ったっていうかまず自分に対しての自己嫌悪が半端じゃなかった
 教えてくれているハルヒに対してあの態度はないだろ、とか、このままじゃ俺の家庭教師が、とかこの後に及んであほな言い訳を頭ん中で並べてたんだ

 んでその時にハルヒが忘れてった鞄が目に入って気が動転してた俺はその中をしっちゃかめっちゃか見てしまったんだ

 散乱する参考書やら資料やらの中で一枚のルーズリーフを見つけた。
 『キョンの勉強予定表』と題してあるそれには俺の受験日までの日程がびっしりと書いてあった。
 その時思った。あいつはどんな気持ちでこれを書いてくれたんだろうって

 そう思うと視界がぼやけてルーズリーフに小さな染みが広がるのが分かった。
 ああ、せっかくハルヒが作ってくれたのに濡らしちゃいけない、って思ってんのにそれでも俺はせきを切ったように出てきた涙を止める事は出来なかった。

 人間の涙ってのはこんなに出るもんなんだなって顔を洗いながらそう思った


 ハルヒに会いたい。
 俺は謝る事よりもただ、今あいつの顔がみたいという衝動に駆られていた。
 無料の家庭教師でも団長でもなく涼宮ハルヒの顔が見たくてしょうがなかった。

 軽めのコートと手袋とマフラーを引っ掴んで外に出ると空には冬の星座達がきらびやかに配置されており、辺りは真っ暗だった。

 とりあえず携帯でハルヒの番号を鳴らしても家の中から一昔前に流行ったロックテイストのノリのいい曲が聞こえてくるばかり。

 

 とりあえずチャリを飛ばしてハルヒの家に向かった。
 多分あいつの事だから家には帰ってないだろうと思いつつも
 内心は、早く会いたい!あって言えなかった事とか言いたい事を全部言いたい!とか思って気が気じゃなかった
 結局ハルヒの家に行ってもハルヒの母さんの、
 「まだ帰ってないわよ」という一言で無駄足に終わった。
 正直こんな時間に娘をどうしたんだ?と問い詰められると覚悟していたが、事情を説明すると
 「あの娘は素直じゃないからねぇ」
 と苦笑いしながら背中を押してくれた。その後もハルヒの家の近くの公園とかコンビニとか、長門宅等を尋ねたりしたんだが結局ハルヒはどこにもいなかった。

 長門宅を尋ねた際に場所を聞く事も出来たが、こればかりは俺一人の問題なのでそれは止めといた。

 やっと俺がハルヒを見つけたのは9時を過ぎた頃だった。
 驚くべき事にハルヒは俺の家の近くの公園に居た。
 まったくもって盲点だった。
 ブランコに乗って俯いているハルヒは俺が自転車を止める音を聞くのと同時にパッと顔を上げた。

 ハルヒの顔は遠くからでも分かるぐらい赤く腫れぼったくなっていた。
 俺は歩いてハルヒに近付きながらまず何を言おうかとずっと頭の中で混乱していた。
 自転車をこぎながらもずっと考えていた言葉が出ずに、泣きはらしたであろうハルヒが近くなってくるにつれてもう何も考えられなくなって、

 そのままハルヒを抱きしめた。
 ハルヒも何も言わずに抱き返してくれた。

 俺が小声で
 「ごめん」と言うとハルヒも小声で
 「いいよ」と言ってくれた。

 その後の事は別段振り返る程の事じゃない。
 俺達はお互いの赤い顔をからかいながらコンビニに行ってお菓子やらお酒やらハルヒが考案した
 「仲直りパーティー!inキョンの家」
 の準備をして家に帰った。

 部屋に着いた時にハルヒの荷物がめちゃくちゃにされていたのは少し怒られたが、涙でカピカピになったルーズリーフを見ると大笑いしてくれた。

 その日は勉強はせずにそのまま二人で夜通し騒いだ。
 次の日は二日酔い+親、妹からの騒音公害の苦情+ハルヒの両親への説明で骨が折れたが、それも今となってはいい思い出だ。


 さて
 俺はアパートで高校時代の思い出の品を整理しながら思い出に浸るのもいいが、彼女を迎える準備をしなければ、と部屋の掃除のピッチを上げた。

 俺には大学に入ってから彼女が出来た。
 県外にいるからたまにしか会えないが、意地っ張りで素直じゃないけど明るくて俺をいつも笑わせてくれる自慢のハルヒだ。

 

 おっと口が滑ったな

 

 さぁ掃除も終わった事だし、たまには駅まで向かえに行ってやるか
 ハルヒと過ごす三連休。

 どうか雨だけは降らないでくれ

 俺はアパートの階段を下りながらそんな事を切に願った。

 


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