『きっかけ』
 
いきなりだが、俺がハルヒと結婚することになったきっかけを話そうと思う。
 
受験も近い三年の秋のある金曜日のこと。
 
俺の下駄箱にはノートの切れ端が入っていた。
『放課後誰もいなくなったら、三年一組の教室に来て』
明らかに見覚えのある字で書いてあった。何であいつがこんな面倒なことを。
 
放課後
 
誰がいるかわかっていた俺はまったく驚くこともなかった。
「遅いわよ」
教壇の前で腕を組んで仁王立ちしている不機嫌な顔が話しかけてきた。
「さっさと入りなさい」
「何の用だ?」
「用があるっていうより、あんたに聞きたいことがあるの」
鋭い目が俺を見つめる。俺に聞くことがあるなんて珍しいこともあるもんだ。
「よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔した方がいい』って言うわよね。
あんたはどう思う?」
「よく言うかどうかは知らないが、言葉通りの意味だろうよ」
「じゃあ、たとえ話なんだけど、現状を維持するままではジリ貧になることは解ってるんだけど、
どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき。あんたならどうする?」
「なんだそりゃ、誰かの受け売りか?」
「とりあえず何でもいいから変えてみようと思うわよね?どうせ今のままでは何も変わらないんだし。」
俺の質問返しをいつも通り無視する。
「まあ、そういうこともあるかもしれん」
「でしょ?」
そう言うと徐に窓の窓の外に視線を移す。
「でもね、肝心の人間が鈍感だから、全然変化がないの。でも私は待ってられない。
だったら私の好きなようにしていいと思うわよね?だから・・・」
いつも好きなようにやってるだろうとは口が割けても言えない。
 
「結婚するわよ!!!」
 
「・・・・・・?」
「だから結婚するって言ってるのよ!バカキョン!」
「すまん。もう一度頼む。誰と誰が結婚するって?」
「あんたと私よ!」
俺は思わず言葉を失ったね。
「あんた私のこと嫌いなの?」
「いや、そんなことはないが・・・」
「だったら何よ?いち団員が団長の命令を拒否することは許されないわよ!」
「・・・落ち着け、ハルヒ。俺達はまだ高校生だ。
今すぐ結婚したところで、いろいろと難しい面もあるし、第一うちの親が許すはずもないし・・・」
そもそも俺とハルヒは付き合ってもいないのだ。
俺が学生結婚が大変であることを必死に説得したのがどうにか通じたのか、
「わかったわよ」
何とかハルヒは理解してくれたようだ。
 
そしてその翌々日。


 
ガチャ
 
「こんちはー!キョンの人生、いただきに来ました!」
日曜の早朝。下から聞こえてきたとんでもない声で俺は目が覚めた。
今の声は・・・ハルヒか。面倒なことになるのは間違いないので、部屋から出ないことにする。
 
「妹ちゃん。お父さんはどこ?」
「私だが。何の用だ?」
「用ならさっき言ったでしょ。いいからキョンをちょうだい」
「ダメダメ。私の老後のために、給料だけじゃ足りないからローンを組んでまで
学校に通わせているんだ。くれと言われてあげるほどウチは財政的に恵まれていない」
「いいじゃないの。一人くらい。こんなにかわいい妹ちゃんがいるんだし、また作ればいいじゃない」
「あのねえ・・・・・・ところで君は誰だね?」
「SOS団団長、涼宮ハルヒ。キョンは私の部下その1よ」
相変わらず俺は部下その1なのか。
「SOS団の名において命じます。四の五の言わずに1匹よこせ」
「キミが息子とどんな関係なのかは解らないけど、ダメなもんはダメだ。まだ自分たち高校生だろ」
よく言った。親父。
「そこまで言うのならこっちにも考えがあるわよ」
ん?この展開どこかで見たような。もしやハルヒ・・・待て!
 
・・・ご想像にお任せします

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最終更新:2020年10月14日 03:24