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 元気よく部室から出て行こうとしたその時、勝手に扉が開いたと同時にある人物の姿が見える。
 ……こんなに早く見つかるとはな。
「朝比奈さん……!」
「あ、えっと……ああ。」
 朝比奈さんは一瞬困惑したが、なんとか理解したみたいなリアクションをとり、その後に馴染み深い声が聞こえてくる。
「どうしたんだ、みくる。」
 誰だ、朝比奈さんに馴れ馴れしく『みくる』なんて呼ぶ奴は!……と言うはずだったのだが、何を隠そう、その『奴』とはまさに『俺』だった。
 よく見ると背丈は今の俺より大きい。それを考えると朝比奈さんもどことなく成長した感じだ。
「過去の俺だよな。初めましてと言うべきか?」
「あ、ああ……。」
 違和感MAXの状況。『俺』と話す機会など又とあるか分からない。
 この朝比奈さん(朝比奈さん(中)と称しておこう)は俺達が追ってきた朝比奈さん(小)とは違うのか?
「ちょっとついてこい。」
 『俺』に言われるがまま部室を出たすぐの廊下で立ち話を始める。
「大ニュースだぞ、仰天して気絶するなよ?」
「そこまでの大ニュースなのか。」
「ああ、実はな……くくく。」
「気持ち悪いぞ、早く言えよ。」
「お前だってこの状況に立ったら勿体振るのも無理ないさ。なんせ俺なんだからな。」
「俺の頭が混乱する前に話せ。」
「冷たいな。まぁいいさ、実は…」
 
 ……仰天した。はいコメント終了。
 
「驚いただろ?」
「ああ、かなりな。」
「しかもどっちからだと思う?みくるからだぞ、信じられるか?」
「安心しろ、俺の言うことだから信じないわけない。」
 そう、『俺』と朝比奈さん(中)は付き合っているらしい。告白は朝比奈さん(中)からだという。だが本当に信じ難い話だなぁおい。
「だからか、さっき『みくる』って呼んでたのは。」
「羨ましいだろ?」
 未来の『俺』は随分と嫌味ったらしくなったものだ。なんかウザい。
 まぁどこまでの関係になったとか、そういう話は敢えて聞かないぞ、俺は。
「ところで、今は何年なんだ?」
「お前が長門と一緒にタイムスリップしてから……そうだな、丸一年ってところか。」
 『俺』が高校2年、朝比奈さん(中)が高校3年ってことか……? 何故朝比奈さん(小)はこんな近未来に来たんだ?
「確かこの時は過去のみくるを助けに来たんだっけ? まぁ過去のみくるの場所はすぐ分かるさ。」
「お前が言うからには、本当なんだろうな。」
「おうよ。」
「……ハッピーエンドで終える事ができる……んだろ?」
「禁則事項だ。」
「……ああ、そう。」
 『俺』とくだらない話をしている最中に、平坦なか細い声が俺達に呼びかけてきた。
「朝比奈みくるを探す、それが目的だったはず。」
「おお、1年前の長門か!ほんと変わってねえな。」
 『俺』は馴れ馴れしく長門の頭を軽く掴んでグシグシを髪を弄る。おい長門、少しは抵抗しろ!
「……探さないのならわたし一人で探す。」
「いや、勿論俺も探すさ。ただコイツに捕まっちまってな。」
 『俺』を指差す俺に、『俺』は不機嫌な顔を俺に向けてきた。
「朝比奈さん、過去のあなたはこの時何処に居たか……ってのは教えてもらえませんよね?」
「屋上です。」
 本当にすぐに居場所が分かった。どんどん難易度が落ちてきてる感が否めない。
「どうして屋上に? ま、まさか自殺を!?」
「自殺……というのも考えていたかもしれませんね。でも、キョンくんが止めてくれたから。それに……あの人達にもね。」
 明るい朗らかな笑顔でそう言ってくれた朝比奈さん(中)。この方と付き合っている『俺』が恨めしいように思えてきた。
「じゃあ行くか、長門!」
 長門はこくり、と肯定の仕草。
「頑張ってね♪」
 無敵になる魔法の呪文をかけられた俺にもう怖いものなどない。
 
 
 
 ――屋上。目の前に広がった光景は、俺に何の緊張感を持たせなかった……。所謂拍子抜けというやつだな、うん。
「やっぱり背とか縮んだんじゃない?それに胸も。」
「え、えっと……あの……」
 朝比奈さん(小)は1年後のハルヒと遭遇したようで、少し縮んだ朝比奈さん(小)に興味津々なハルヒに質問攻撃を受けている。
「そんなんじゃキョンをがっかりさせるんじゃない? あいつ変態だし、胸が小さくなっちゃったら…」
「誰が変態だ。」
 1年経ってもやはりコイツはコイツということか……。性格はまるで変わっていない。
「あら、キョンじゃない。ん……あんたもなんか縮んでない?」
「気のせいだ、そんなことよりそろそろ朝比奈さんを開放してやれ。」
「朝比奈さん…? あんた、付き合い始めてから『みくる』って呼んでたじゃない。」
 まずい、失言……!
「たまにはと思って……だな。」
「つ、付き合い始めて……? 何の事ですかぁ……!?」
 朝比奈さんが頬に朱を秘めて聞いてくる。なかなか困った状況になったぞ…?
「何の事って……なに、あんたらもうボケてきたわけ? って、ちょっ、引っ張らないでよ!」
 ハルヒに目をやると長門がハルヒの腕の裾を引っ張って屋上から引きずり出していく。さすが長門というべきか。
「有希っ? なにっ、え……こらぁっ!」
 音量が小さくなっていくあいつの声にバタンという扉の音がとどめを指した。風の音が透き通ってはっきりと聞こえる屋上。朝比奈さんを引き止めるチャンスはここしかない。
 
「朝比奈さん……あなたは自分は必要とされてなんかいない、と話しましたよね。」
「え、ええ。」
「俺は長門の力を借りてここまで来たんです。長門はあなたのことを心配と言っていましたよ。」
「えっと……?」
 なんか朝比奈さんの反応がおかしいぞ? だが俺は話を続ける。
「ハルヒや古泉だってそうです。さっきのも見たでしょう、ハルヒも朝比奈さんの事が気になってしょうがないんですよ。」
「あの……」
「処罰なら俺がなんとかします。なんとかしてみせましょう。もし死刑とかなんだったら暴れてやる…とか言ってね。」
 これは前に長門の親玉に対して使った手段だが、こっちの場合でも使えるだろう。
「あの……わたしは死刑になんかなりませんよ?」
「え?」
「わたしもそう思ってたんですが……逆に感謝されちゃいましたよっ。」
 くすくすと笑いながら話す天使の話がよく俺には理解できなかった。
「涼宮さんが選んだあなたを助けた、と讃えられました。」
 って事はなんだ……!? もしかして…朝比奈さん(大)の説明は全部……
 
「わたしが居た未来へ行って来て、帰りついでにこの時間平面に寄り道したんです。さあ、帰りましょうか。」
 全休符程の間をあけて、俺は「はい」と答えた。鈍感と言われる俺にもようやく分かった。この目論見は誰の仕業だったのかをな……。
 ハルヒに気付かれない内に長門を連れて過去に帰った。真っ先に喋る相手は決めてあるさ。
 
 
 
 ――誰も居なくなっている放課後。長門と朝比奈さんが家に帰ってった後も、俺は一人である人を待っていた。
「やっぱり…怒ってる?」
 現れたのは朝比奈さん(大)。いや、怒ってはいないと思うけど……
「あの話は、演技だったんですね、全て。」
「ごめんなさい、でも楽しめたでしょう?」
「度が過ぎてますよ。」
「あはは。いつも大変そうだったからたまには楽しませてあげようと……」
「本気で……心配してたんですからね。」
「……ありがとう、キョンくん。」
 心の片隅にあった怒りなどすぐに抹消された。この人の笑顔は反則過ぎると思うんだが、この笑顔は自衛隊の武器にはならないだろうか。本気で検討できる機会があったら是非提案するんだが。
「……そうだ、俺達その後付き合い始めたんですよね?」
「う、うん?」
「どこまでの関係になったんですか? 俺達。」
 ふふふ、と小さく笑った後に朝比奈さん(大)は俺に近づいてそっと耳打ちする様にこう言った。
 
 
 
 
「禁則事項です♪」…ってね。
 
 
                                     ~Fin~
 

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