最後の聖戦が終わり、競技場には私達だけが残りました。
 
「負け、たな……」
「ええ、ものの見事に……」
「すいません皆さん、私のせいで……」
「『トゥモロー』のせいではありません、我々は『トゥモロー』にここまでついてきたことに
 後悔はしていませぬ。」
 
謝る私を励ましてくれる『スネーク』。『キラー』と『ジャッカル』も頷いてくれます。
ありがとう……皆さん。
 
「それでこれからについてですが、私に1つ考えがあります。」
「考えって?」
「涼宮さんが言っていた案……試してみてもいいんじゃないかなって。」
「本気ですか!?『トゥモロー!』」
「もちろんすぐ付き合うとかじゃありませんよ。
 でも今日、二人きりで帰るぐらいはやってみてもいいと思います。」
 
私の言葉に頷く3人。でも『キラー』が意見します。
 
「でもどういう組み合わせにするの?私『スネーク』がいいわ。ていうか『ジャッカル』はイヤ。」
「ちょ、おま」
「私だって『ジャッカル』君はイヤですよ。だから公平に、くじ引きです。」
「たらりーん!!」
 
『ジャッカル』が何か絶叫してますが気にしません。
私はつまようじを2本出しました。片方には、先端に赤い印がついています。
 
「赤い印が当たりで、無い方がハズレです。いいですね?」
「いいわ。」
「ちょっと待てよ。どっちがどっちだか決めなくていいのか?」
 
『ジャッカル』君がそう指摘します。でもそんなの決まってるじゃないですか。
 
「もちろん『ジャッカル』がハズレに決まってるじゃない。」
「たらりらりーらー!!」
  
また叫んでいます。うるさいですね。
そして『スネーク』につまようじを持ってもらい、二人同時に……引きます!
 
私のつまようじは……印あり!
 
「ウソでしょ~!?」
 
今度は『キラー』が絶叫しました。私はほっとしています。良かったぁ。
 
「ああもう!ハズレで我慢してあげるからさっさと来なさい!」
「お、俺だって『トゥモロー』の方が良かったっつーの!」
「黙りなさいハズレの分際で!帰るわよ!」
 
喧嘩しながら二人は去っていきました。『キラー』、殺人はダメですからね?
『ジャッカル』君の生存を祈りつつ、私は残った『スネーク』に話しかけます。
 
「じゃあ、私達も帰りましょう。」
 
ところが、『スネーク』は優れない表情をしています。どうかしたのでしょうか?
 
「本当に、私などと一緒に帰ってよろしいですか?」
「何言ってるんですかぁ。いいに決まってますよぉ。」
「しかし私はこの通り老いていますし、外見も良いとは言えません……」
 
う~ん、わたしはそんなことないと思いますけど……
 
「『スネーク』、あなたは自分が思ってるよりずっとカッコいいと思いますよ。
 外見だけじゃなく、人間的にも。」
「しかし……」
「だからもっと自信を持ってください!」
「……ありがとうございます。おかげで、決心がつきました。」
 
決心……?
 
「実は私には、秘めたる想いをよせる人が居たのです。」
 
なななななんと急展開!それってもしかして……私!?
まさかの新川×みくるエンド!?新境地干拓しちゃいますか!?
 
「機関の同僚なのですが……」
 
はい妄想終了。分かってましたよ。すごーく分かってました。
 
「今までふさわしく無いと思い、ずっと秘めてきたのですが……
 決心がつきました。断られると思いますが、想いを伝えたいと想います!!」
 
私は「しっと団」のリーダーです。でも、今は彼を応援したいという気持ちでいっぱいです。
今まで自分に自信が持てずにいた彼。幸せになってほしいと思うのは自然なことでしょう?
 
「頑張ってください!結果、メールで教えてくださいね?」
「分かりました。では早速行って参りますので、失礼します。」
 
『スネーク』は立ち去りました。頑張ってくださいね……
 
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日曜日を飛ばして月曜日になりました。
え?日曜日何してたかって?家でゴロゴロしてましたが何か問題でも?
どうせキョン君や古泉君のカップルはデートとかしてたんでしょうけども!
テレビ見ながらせんべいをバリボリ食ってました。
昨日の私の恋人はせんべいです。せんべいうめぇwwwwwwwwww
 
そして月曜日の朝、私の携帯に一件のメッセージが入っていました。『スネーク』からです。
告白したのでしょうか。読んでみます。
 
『土曜日はありがとうございました。あなたのおかげで1歩踏み出す勇気を持てました。』
 
いえいえそんな……
 
『私はあの後想い人に告白しました。結果……』
 
ドキドキ……
 
『了承を頂けました!ありがとうございます。』
 
やった!おめでとう『スネーク』!
相手は誰でしょう。同じ年配の方でしょうか。
 
『相手は貴方もご存知かと思われます。森園生さんです。』
 
な、なんだってー!?めっちゃ若いじゃないですか!!
一気に勝ち組に駆け上りましたね……
 
そんな、うれしいけれどちょっと悔しい微妙な気分で登校した私でしたが、
下駄箱の中に手紙が入ってました。
ま、まさかラブレター!?ついに私にも春が!!
国木田君とかコンピ研部長とかまだまだ男キャラは余ってますしね!さあ誰だ!どんと来い!
 
『キラー』
 
はい、妄想終了。分かってましたよ。凄まじく分かってました。
一体なんでしょうか?
 
『お話したいことがあるので、放課後1年5組の教室に来てください。』
 
ま、まさかナイフで……なんてことは無いですよね。
そんなことしたら長門さんに消されるというのは本人が1番わかってるはずです。
しかしどんな用事でしょうか……?
考えてみましたが、まったく思いつかないまま放課後を迎えました。
しかし教室の扉を開けた瞬間、私は理解したのです。
何故なら……すぐ隣に『ジャッカル』君もいましたからね。そーいうことですか……
 
「私達……付き合うことになったの。」
 
ほーらね。
 
「一昨日帰り道、最初はいがみあってたけどそのうち息投合してさ。
 日曜日もデートしてみて、お互い付き合ってみようってことに……」
 
照れながら話す『ジャッカル』君。私は少しだけイジワルな返答をしました。
 
「そうですか。二人にとって、もう「しっと団」や私はどうでもいい存在なのですね……」
「「そんなことない!」」
 
二人が叫びました。少し、びっくりです。
 
「私が今ここにいられるのは『トゥモロー』のおかげよ!感謝しても感謝しきれないわ。
 今まで言う機会無かったけど……ここに呼んでくれて本当に……ありがとう。」
「俺だって!みんな凄いヤツらが集まってる中で俺も仲間に入れてくれた!
 この数ヶ月、すっげえ楽しかったんだ!本当だ『トゥモロー』!」
 
私への想いをぶつけてくれる二人。胸が熱くなります。でも……
 
「その名前で呼ばないでください。」
「え……?」
「『トゥモロー』……?」
「それを使わないでくださいと言っているんです。」
 
これは、しなくてはいけないこと。1つのけじめなんです。
 
「あなた達はもう「しっと」する必要が無くなりました。
 今後私を『トゥモロー』を呼ぶことは許さないし、『キラー』『ジャッカル』のコードネームも剥奪します。
 ……あなた達を、「しっと団」から除名処分とします。」
「……はい。」
「……わかったわ。」
 
辛そうに俯く二人。私は続けます。
 
「……『トゥモロー』は「しっと団」のリーダー。全てのカップルを憎む存在。
 だから貴方達をお祝いすることは出来ません。」
 
そう、それが『トゥモロー』。半年かけて作り上げた、もう一人の私。
でも……この二人は、ずっと私についてきてくれた。大事な仲間でした。
そして二人もずっと恋人がいないことで苦しんでいた。ようやく、幸せをつかめたんです。
 
「だから私は……」
 
憎めるわけ、ないじゃないですか。
 
「朝比奈みくるとして、貴方達を祝福します。おめでとう、谷口くん、朝倉さん。」
 
これが私の気持ちです。嘘偽りはありません。
谷口くん、朝倉さんを幸せにしてくださいね。泣かせたら許しませんよ?
あ、でも……泣かされるのは谷口くんの方かもしれませんね。
 
「ありがとう。『トゥモ』……朝比奈さん。」
「私、あなたと過ごした数ヶ月、忘れないわ!」
 
二人は私に深いおじぎをして、去っていきました。
はぁ……一人になってしまいました。でも何故か、晴やかな気分です。
私はクリスマスの時、未来の私が言っていたことを思い出しました。
 
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「でもね?何も恋人を作るだけが人生じゃないと思うの。
 一人身は一人身で楽しいものよ?好きなことできるし、お金だって溜まるしね。
 なんというかもうこのまま一生独身でも別にいいかなって思えるようになって
 開き直りの境地というか、悟りを開くというか」
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今なら分かる気がします。心が穏やかです。まるでそう、悟りを開いたかのような。
もうカップルを憎むなんてことはしません。
人は人、私は私。一人身、結構じゃないですか。私は一人身でも人生、楽しんでみせますよ。
だからもう、涼宮さんとキョン君、長門さんと古泉君のことも祝福できる気がします。心から。
 
私は窓から空を見上げました。ハレ晴れとした春の空。まるで私の心を表しているかのよう。
空に向かって、私は高らかに叫びました。
 
「一人身万歳!!」
 
涼宮ハルヒの奮闘 ~しっと団の野望~
 


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