退屈の解消方法
退屈だ。
いきなりこんなことを言われても訳が分からないだろうから、経緯を説明しよう。
「テスト前の三連休は団活は休みにするわ。特にキョン! あんた、成績がやばいんだから、しっかり勉強しなさい!」という団長様のありがたきお言葉によって、年中無休が常であったSOS団の活動が休みになった。
だからといって、この俺が勉強する気になれるわけもなく、だらだらとテレビゲームなどに興じてみたがすぐに飽きた。
というわけで、三連休の初日の午前中において、早くも退屈で退屈で仕方がない状態となったのだ。
とにかく、退屈だ。
早急に何とかしないと気が狂いそうである。
俺は、その方法を御教示願うため、携帯電話を取り出した。
まずは、朝比奈さん。
「退屈を紛らわす方法ですかぁ?」
「ええ、そうです」
「そうですねぇ。飽きない趣味を一つもつといいと思います」
「はぁ。飽きない趣味ですか」
「はい」
「分かりました。ありがとうございます」
電話を切る。
趣味か……。
無趣味な俺には、到底思い浮かばない。
駄目だ。
次は、長門。
「それは一種の禁断症状」
長門は唐突にそんなことを言い出した。
それだけじゃ、何のことやらさっぱり分からん。俺の頭でも理解できるように説明してくれ。
「あなたは、涼宮ハルヒの行動に付き合うことが習慣化している。それを断たれると、禁断症状が出る。あなたのいう「退屈」という感情は、その禁断症状の一種」
まるで、俺が何かの中毒患者みたいな言い草だな。
「即効性がある禁断症状の解消方法は、涼宮ハルヒと早急に接触すること」
ちょっと待て、せっかくハルヒに振り回されることがない三日間が与えられたんだ。それを自ら無駄にするようなことはしたくない。
「ああ、よく分からんが、それだけは回避したい。別の方法を考えてみる。いきなり電話して悪かったな」
「いい」
次は、古泉だ。
「それはもう不治の病といってもよろしいのではないでしょうか」
長門といい、こいつといい、俺を病人扱いする気か。
「そりゃ、どういう意味だ?」
「古来より、恋の病は不治の病と申しますから。とにかく、涼宮さんに早急にお会いして、その想いを打ち明けられてはいかがですか」
駄目だ。話が銀河系の彼方にぶっ飛んでる。
会話が成り立ちそうにないので、俺は即座に電話を切った。
残るは……いや、それだけは避けたいのだが……。
俺は、しばし逡巡したあと、ハルヒに電話をかけた。
「あんた、馬鹿ぁ?」
事情を説明すると、速攻で罵倒が返ってきた。予想どおりの反応だ。
「こんな電話してる暇があったらさっさと勉強しなさい!」
それができんから困っているわけだが。
「ああ、もう! これからあんたんち行くから首を洗って待ってなさい! 三日間泊り込みでみっちり教えてやるわ!」
ハルヒは、そう叫ぶと、電話を切った。
ああ、俺は馬鹿だな。
こうなることは分かりきっていたのに。
三日間、退屈が消滅する代わりに地獄がやってくるだろう。
結局のところ、俺の退屈を紛らわしてくれるのはハルヒだという事実は、認めなければならないのだろうな。
まったく、やれやれだ。