ハルヒ「ねえ」

 

キョン「ん?」

 

ハルヒ「それで、古泉くんは何なの?」

 

キョン「なにって?」

 

ハルヒ「有希が宇宙人で、みくるちゃんは未来人なんでしょ。じゃあ古泉くんは? 異世界人?」

 

キョン「いや。超能力者だって言ってた」

 

ハルヒ「ふーん」

 

キョン「よかったな。お前の願望通り、お前は毎日毎日、非日常的な存在たちと一緒に遊んでたんだぞ。何か感想は?」

 

ハルヒ「ぜんぜんつまんない。まったく。どうして皆、先に言わないのよ。あんたも知ってたんなら、さっさと言いなさいよ」

 

キョン「ちゃんと進言したぜ。お前と俺の2人で不思議探索したときの喫茶店で。ハシにもボウにもかけなかったくせに、よく言うぜ」

 

ハルヒ「あんたの伝え方が悪かったんじゃない? まあ、どうだっていいけどね。いまさら」

 

 

 

キョン「………」

 

ハルヒ「………」

 

キョン「くらいな」

 

ハルヒ「くらいわね。夜みたい」

 

キョン「電気、つけるか?」

 

ハルヒ「いいよ。別に。節電」

 

キョン「節電か」

 

ハルヒ「節電よ」

 

 

 

ハルヒ「別にくらくても困らないでしょ?」

 

キョン「まあな」

 

 

 

 

ハルヒ「あなたは犬を飼っています」

 

キョン「いきなり、なに?」

 

ハルヒ「心理テスト」

 

キョン「あ、そう」

 

ハルヒ「けれど犬はあなたになついてくれません。あなたはどうにかなついてもらおうとします。どう行動するか、以下の4つのうちから選びなさい」

 

キョン「猫の問題だったら、イメージわいたんだが」

 

ハルヒ「1、エサをあげる。2、なでてあげる。3、一緒にあそぶ。4、一緒に散歩する」

 

キョン「難しい問題だな」

 

ハルヒ「心理テストなんだから。考え込んじゃダメよ。バカね。速攻でこたえなさい」

 

キョン「じゃあ、3番。一緒にあそぶ。俺の妹も、機嫌の悪い時は遊んでやれば気が晴れるんだ」

 

ハルヒ「それでは、結果の発表。なんとこのテストでは、あなたの精神年齢がわかります」

 

キョン「……イヤな予感がする」

 

ハルヒ「3番を選んだあなたの精神年齢は、40~50代なんだって」

 

キョン「不惑の年かよ」

 

ハルヒ「あんたいちいち神経が細かいし。口うるさいオッサンみたいでピッタリよね」

 

キョン「変な言い方するなよ。落ち着きがあっていいじゃないか」

 

ハルヒ「落ち着いてるだけじゃ、楽しい生活は送れないわよ。もっと何にでもチャレンジする気概をもたないと」

 

キョン「宇宙人や未来人や超能力者に囲まれて、厄介ごとにまきこまれて。これ以上なにをやれってんだ」

 

ハルヒ「あーあ。私もあんたの立ち位置がよかったな」

 

キョン「どう考えても無理があるだろ」

 

 

 

ハルヒ「あ。そうだ」

 

キョン「どうした?」

 

ハルヒ「冷蔵庫にプリン入れてたんだった。あったあった」

 

キョン「小腹がへったな。俺も何かもって来てたらよかったな」

 

ハルヒ「はい」

 

キョン「……え?」

 

ハルヒ「半分あげるわよ。いらないの?」

 

キョン「珍しいな。いつもなら、こっちが頼んでも 『自分で買って来い』 とか言って分けてくれなさそうなのに」

 

ハルヒ「何よ。ほしくないんなら………いいわよ。ほら、食べなさいよ」

 

キョン「ああ」

 

ハルヒ「………」

 

キョン「………」

 

ハルヒ「おいしい?」

 

キョン「ああ。うまい」

 

ハルヒ「よかった」

 

キョン「なあ、ハルヒ」

 

ハルヒ「なに?」

 

キョン「ありがと」

 

 

 

 

ハルヒ「ねえ。キョン」

 

キョン「どうした?」

 

ハルヒ「……そっち行っていい?」

 

キョン「ああ」

 

ハルヒ「お邪魔します」

 

キョン「………」

 

ハルヒ「どうしたの?」

 

キョン「変なこと言うなよ。なんかお前らしくない」

 

ハルヒ「そう? たまにはいいんじゃない?」

 

キョン「……そうかもな」

 

ハルヒ「そうよ」

 

 

 

 

ハルヒ「将来の夢とか、ある?」

 

キョン「別に。何も」」

 

ハルヒ「あるでしょ、一個くらい。よく考えてみなさいよ」

 

キョン「学校の授業で、ありもしない将来の希望を作文に書けと言われている気分だ」

 

ハルヒ「なによ。本当になにもないの?」

 

キョン「そうだな。強いて言うなら、正義の味方とかかな」

 

ハルヒ「バッカねえ。あんたが正義の味方になんかなれるわけないでしょ」

 

キョン「なんでだよ。いいじゃないか、夢があって」

 

ハルヒ「だってあんた、正義の味方っぽい顔じゃないもの。正義の味方はルックスも重要なのよ」

 

キョン「そういうものなのか?」

 

ハルヒ「そういうものよ。けっこうハードル高いんだから」

 

キョン「顔で将来の夢を否定されたのは初めてだ」

 

 

 

 

ハルヒ「あ、見て見て」

 

キョン「なにを……あ、陽がのぼってきた」

 

ハルヒ「朝日だわ。きれいね……」

 

キョン「……ああ」

 

ハルヒ「ねえ」

 

キョン「ん?」

 

ハルヒ「腕。くんでもいい?」

 

キョン「ああ」

 

 

 

 

ハルヒ「きれいな朝日」

 

キョン「そうだな。まぶしいくらいだ」

 

ハルヒ「ねえキョン、本当に世界ってほろんじゃうの?」

 

キョン「俺は知らん。でも、そうなんじゃね?」

 

ハルヒ「ふーん」

 

 

 

ハルヒ「もったいないと思わない?」

 

キョン「なにが? 賞味期限切れのアイスがか?」

 

ハルヒ「この世界」

 

キョン「まあな。俺としちゃ、それなりに愛着もあったし」

 

ハルヒ「………ごめん」

 

キョン「いいさ」

 

 

 

 

ハルヒ「………」

 

キョン「泣くなよ」

 

ハルヒ「だって」

 

キョン「だから。気にしてないって」

 

 

 

 

キョン「よかったよ。グッドタイミングで」

 

ハルヒ「………」

 

キョン「俺、あさって歯医者で親不知を抜歯する予定だったんだ。それが嫌で嫌で、すげぇ鬱だったんだ。お前のおかげで歯医者に行かずに済んだよ」

 

ハルヒ「なによそれ。ちゃんと歯医者には行っておきなさいよ。放っといたら他の歯の邪魔になるし、虫歯になったらすごい痛いのよ」

 

キョン「だって、嫌だろ。感覚的にさ。麻酔をブスブス打って、歯を砕きながら引き抜くんだぜ。考えただけで痛いじゃないか」

 

ハルヒ「そんなのパパッと行ってポンッと抜いてチャッチャと帰ってくれば問題ないわよ。男ってそういうところダメよね」

 

キョン「親不知の恐怖にさらされたら、誰だって鬱になるもんだ」

 

ハルヒ「私がポポン!と抜いてあげようか」

 

キョン「俺、初めてなんだ。優しくたのむ」

 

ハルヒ「あはは。ばーか」

 

 

 

キョン「あ、もうそろそろかな」

 

ハルヒ「そろそろみたね」

 

 

 

キョン「生まれ変わりって信じるか? 輪廻転生って、言うのかな」

 

ハルヒ「宇宙人や超能力者がいるんなら、あってもいいんじゃない? いえ、あってほしいわね。その方が面白そうだもの」

 

キョン「また長門や朝比奈さんや古泉に会いたいな。またSOS団で、街中を歩いてみたり野球したり合宿に行ったり」

 

ハルヒ「やろうと思ってたのに出来てない行事も、たくさんあるしね」

 

キョン「生まれ変わってもまた自分として生まれたいって思えることは、けっこう幸せなことだよな」

 

ハルヒ「そうね。なんだかんだで、私も自分の人生気にいってたわ。みんなのことも、もちろん大好きだった。この世界は、あんまり好きじゃなかったけど」

 

 

 

 

ハルヒ「みんな、怒ってるかな。勝手に世界をこわしちゃって」

 

キョン「かもな」

 

ハルヒ「有希やみくるちゃんや古泉くんたちに嫌われるのは、耐えられないかも」

 

キョン「心配するなよ。あいつらなら、笑ってゆるしてくれるって。苦笑いかもしれないけどな」

 

ハルヒ「そうかな……」

 

キョン「あいつらが怒ってたら、謝ればいいんだよ。ごめんって。俺も一緒に謝ってやるから。ごめん、こんなんなっちまった。って」

 

ハルヒ「じゃあついでに、私のぶんも謝っといて」

 

キョン「それじゃ意味ないだろ。やれやれ」

 

ハルヒ「そうよね」

 

キョン「そうさ」 

 

 

 

 

 

ハルヒ「あのさ」

 

キョン「なんだ?」

 

ハルヒ「また、会えるかな」

 

キョン「会えるだろう。きっと。俺たちSOS団の腐れ縁は伊達じゃないぜ」

 

ハルヒ「………そうね」

 

 

キョン「生まれ変わるつもりなら、ちゃんと俺に、お前だってわかるように生まれ変われよな」

 

ハルヒ「あんたこそ。ちゃんと私に分かるように生まれ変わりなさいよね。それで、私をみかけたら声をかけること!」

 

キョン「お前は俺が声かける前にどんどん一人で突っ走って行っちまいそうだが。努力はするよ」

 

 

 

ハルヒ「きっとよ! 私、まってるからね! あんたが来るの!」

 

キョン「ああ。わかってるさ」

 

 

ハルヒ「それじゃ!」

 

 

 

キョン「おお」

 

 

 

 


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