『ん…』
目が覚めると、昨日の嵐が嘘のように太陽光が照りつけていた。
これが台風一過ってヤツか??

それにしても 昨日はなんて恥ずかしいことをしてしまったんだろう。
ダサい告白コンテストなんてもんがあったら、ダントツ1位、ついでに永久シード権まで獲得できるな。
あのまま普通に寝ただけっていうのもどうなんだろう。いや 皆まで言うなわかってるから。
どうせヘタレだよ。

あれ? そういえばハルヒがいない。
一晩中ハルヒと繋いでいたせいか、筋肉が硬直して少ししびれている右手。今は 空を掴んでいる。
貸していた母親の服がキレイに畳まれていた。
なんだ もう 起きてたのか。
ちょっとくらい 起こしてくれても…
ふっと見ると ケータイの着信ランプが点滅していた。

『いい天気ね!まさに不思議探索日和ってもんだわ!』

………おい もしかして もう行ったのか??
現在8時20分。
集合時間は9時。
マジで起こしてくれよ!!

 

 

顔を洗ってそこらへんにあった服をテキトーな服を着込み階段を駆け下りる。
ガンバれば間に合うんじゃないのか?
間に合え!間に合え!!間に合えええ!!!!
まぁ 最下位は決定だろうから奢りはまぬがれないが。

『キョン君おはよ〜朝ご飯…』
悠長に食ってたら間に合わん!パスだ!
『あらーじゃあこのハルヒちゃん特性玉子焼きもいらないのね?』
くそっ なんてトラップだ!遅刻確定。


『遅い!罰金!!』
集合場所に着くといつもと変わらず怒鳴りあげるハルヒがいた。
驚くほど変わり映えのしないその態度に尊敬すら覚えるね。
『それにしても暑いわね〜台風一過ってヤツ?冷たい物がノドを通るにふさわしい状態だわ!』
はいはい アイスかなんかを献上すればよいのでしょうか 団長様。
『あのぅ〜それなら私のよく行くお茶屋さんが、かき氷とかあんみつを始めたんですけど、行ってみませんか?』
可愛く挙手する朝比奈さんの手をしっかと握り、
『でかしたわみくるちゃん!それこそ日本の夏よね!
風流と涼は常に同じくすべきなのよ!それにこんなに暑いんだもの!
かき氷大食い大会とかあるかもしれないわっ』
お前…風流の意味わかってんのか?
高気圧テンションのまま朝比奈さんを引っ張りズンズン前進していくハルヒと少し距離をとりながら、古泉が近づいてきた。

 

『いやぁ助かりましたよ。』
ムダにニコニコするな、暑苦しい。
俺はお前に礼を言われるようなことは何もしてないぞ?
『いえいえ、昨日はあなたのおかげで閉鎖空間が一つも発生しなかったんですからね。』
訳の分からんことを言うな。
『ご冗談でしょう?まぁ昨夜お二人に何があったかなんて聞くのは野暮なことでしょうから控えさせていただきますが。』
涼宮ハルヒにプライバシー無し。機関とやらの調査能力を今更疑っても仕方がないが。
『俺たちの関係がそんなに世界に影響するのか?見てみろ。ハルヒの態度なんて昨日以前と1ミクロンも変化してないぞ?』
『まさかお気づきになってませんでしたか?』
なににだ。
『実は紙一重だったんですよ。あなたの行動一つ一つに世界の行く末が握られていたといっても過言ではありません。
確かに閉鎖空間は発生しませんでした。
しかし、事態は最悪の方向へ向かっていたんですよ。そうですよね 長門さん。』
『昨日中降り続け、先ほど午前2時43分に止んだ暴風雨及び雷は、特定地域、その内2カ所のポイントを集中的に気象変化させていた。』
あまりにも抑揚の無い語り口で説明する長門の言葉は、一瞬では理解できなかった。
『昨日は快晴だったんですよ。少なくとも僕や長門さん、恐らく朝比奈さんの家の周りは。
今日は台風一過なんかじゃないんです。ここ何日か続く晴れの日となんら変わらない1日なんですよ。』
嘘だろう?だって昨日はあんなにどしゃぶりで…そうだ!父さん。電車が止まって帰って来れなかったんだよ。
『集中地域は2ヵ所。ポイントAあなたの家から半径1km。ポイントB環状線特定駅周辺。』
まさか…いや まさかな。

『そのまさかですよ。もう聞き飽きたかもしれませんが涼宮さんが望んだからです。』
『ちょっと待て!そんなことして何になるんだよ。』
『あなたの家へ行く理由を作り、一泊出来るように計らい、

自らの苦手なカミナリを呼び寄せてまで一緒にいることを望んだんですよ あなたとね。』
こういうときなんて言ったらいいんだろうな。誰か台詞を用意してくれ。
頭 痛ぇ…。
『それだけ重要なことだったんですよ。あなたを試して、自分すらも試していたんでしょう。
気象をいじるなんて滅多なことじゃありません。彼女は閉鎖空間の代わりにこの世界に直接干渉していたんです。
こうなったら、僕たちは一切手出しできませんからね。
神人を刈ることはできても、現実世界にいる涼宮さんを押さえつける術を機関は持ってません。
だから、あなたに賭けるしかなかったんですよ。』
『あなたは涼宮ハルヒに受け入れられた人間、同時にあなたが涼宮ハルヒを受け入れる必要があった。
条件が満たされなかった場合、空間自体を創り変えることは十分に予測されていた。』
じゃぁ 何か?もし俺が昨日ハルヒの機嫌を損ねていたらまたあの時みたいになんもない町に放り出されてたっていうのか?
『もう一度あなたが選ばれる可能性があったかどうかはわかりませんがね。
何にせよ非常事態は回避されました。世界は救われたんですよ。』
『観測が継続されることは統合思念体も望んでいた。』
結果オーライってか?だが これだけは言わせてもらおう。
世界のためじゃない。間違ってもお前のためじゃないぞ 古泉。
『心得てますよ。』
だからニヤニヤするな。

 

 

 

 

『ちょっとーあんた達なーにちんたらぽくぽく歩いてんのよ!!
お店の氷ぜぇぇぇんぶ溶けちゃっても知らないんだからね!!!!』
すでに数メートル先まで足を進めているハルヒ。と捕まったままの朝比奈さん。
まぶしいな。太陽もハルヒも。
その氷とやらは願いのうちにはいってないんだろうな?
お前の願いがそうやすやすと叶うなら、俺の願いの1つでも実現してもらっても罰は当たらないよな?

願わくば、ハルヒの笑顔が絶えないように。
誰かに願うことじゃないか。

もう 曇らせない。あの雨の日みたいには な。




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