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遅刻ぎりぎりで門をくぐった俺は、玄関で靴を履き替え駆け出した。
しかし、靴箱に例の朝比奈さん(大)からの指示文書が入ってなくてよかったなと思う。
読む時間など、今の俺には皆無だからだ。いや、もしかしたら時間など忘れて読んでしまうかもしれんが。

人影も無く、教室からの談笑が聞こえるのみの物寂しい廊下を駆け抜け、一路教室を目指す。
なんてことはない。すぐに到着してしまった。
戸をガラガラーっと開けると、岡部教諭が来たのかと勘違いした奴の目線がこちらに向かってきたが、すぐに元に戻った。
こういうのって気まずいよなー・・・となんとなく思いつつ、ぽっかり空いている俺の定位置に腰掛けた。
と同時に、後ろから奴の声がする。そいつは頬杖をつきながら外を見つめ、横目でこちらを見ながら、

「遅かったわね。あんたが遅刻なんて珍しいじゃない」 

と話かけてきた。まぁ分かるとは思うが、涼宮ハルヒだ。
態度でも分かるが、声のトーンが少し低いからして、あまり機嫌は良くないらしい。

「寝坊しちまったんだよ。高校入学以来初だ」

わざわざ振り向いて言葉を返してやったというのに、ハルヒはちっともこちらを向こうとしない。

「どうした、ハルヒ。窓の外に怪しい人物でも発見したのか?」

「別に。ただ、あのあたりであんたがニヤケ面のまま歩いてきてたな・・・って思っただけ」

・・・ちょっとまて。俺はそんな顔してたのか?全く自覚が無いが。

「自覚してないわけ?ま、みくるちゃんの新コスプレを考えてたときほどじゃないけどね」

バニー、メイドと来たら・・・っていろいろと考えてたんだよな。
結局その後初めて着たコスプレは何だったかな・・・凄く似合ってたんだが・・・えーと・・・、

「・・・・ニヤケ面」

「お前が朝比奈さんの話を出すからだろうが」

朝比奈さんの姿を思い浮かべて微笑むことのない男子など、この世にはいないと思うぞ。ホモ以外でな。

「まぁいいわ。それより、あんたと一緒にいたのって昨日部室に来てた子じゃないの?」 

 

あぁ。お前の話を(唯一)熱心に聞いてた子だよ。

「やる気があるのは結構なことだけど、なんとなく不思議さが足りない気がするのよね・・・」

「俺は不思議でもなんでもないだろうが」

不思議的存在でないのは俺だけだ。SOS団の構成員の中で唯一の普遍的存在が俺なんだよ。

「あんたは雑用係なんだから関係ないのよ。不思議を見つける手助けをする役目なの。それよりね」

それより?

「・・・あんまり団と関係の無い子とそーゆー誤解されるような行動をするのは慎みなさい」

いきなり何だよ。恋愛感情やらその辺のことにはことさら無関心なのがお前じゃないか。

「別に、あんたが誰と付き合おうとあたしの知ったことじゃないけどね」
「そういう行動ばっかりしてると、SOS団がただのお遊びサークルだっていう風に誤解されるのよ」

実際、そのとおりだと思うんだがな。SOS団もお遊びサークルのようなものだ。
いまだにSOS団の活動で不思議を(ハルヒが)目の当たりにしたことなんて皆無だし、
夏休みに孤島に合宿に出かけたり、夏祭りに行ったり、プール行ったり、
冬休みに雪山で遭難しかけたり(これは事故のようなものだが)、春に花見したりっていうのはそういうサークルのやることだ。
イベント好きという点ではSOS団団長も、お遊びサークルの長も一緒らしいな。
目的がそもそも違うが。

「ま、そういうことだから。あんまりいろんなところでニヤケ面晒すんじゃないわよ」

 

「ニヤケ面は余計だ。第一、俺にそんな下心はだな・・・」

俺が不機嫌そうな声で言った時にやっとハルヒはこちらを見据え、

「いいから。とりあえずそういうのは無しよ。いいわね?」

反論などできん。したらハルヒの怒号が教室中に響きわたることだろう。このエロキョン!!とかな。
そんなことを言われたら、この教室に居づらくなる。

しかし、ハルヒがこのような反応を見せたのは意外としか言いようがなかった。
いままで、男女関係に対する興味など皆無だったあいつが、団がどうのと言いながらも口を挟んできたことがだ。
俺と渡が特別何かをしたわけでもないのに。
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疑念の尽きないまま授業を受け、そうするうちにお昼時となった。
いつもどおり、国木田と谷口と一緒に食べる。
始めはいつもどおりのたわいも無い雑談だったのだが、途中でアホの谷口が余計なことを口走った。

「ところでよー、キョン。朝のあれは何だったんだ?」

箸の先をやや俺側に向けながらそう言いやがった。 

「さぁな。(モグモグ)・・・俺にもわからん。いつもは『恋愛感情なんて精神病の一種よ』とかいうやつなんだが」

やけに塩辛い焼き鮭を頬張りながら答える。

「あいつらしいな、その言葉は。んで、キョン」

気持ち悪いくらいにニヤケた面をした谷口は、

「俺にはなんとなく読めるぜぇ、あいつの考えてることがな」

自分でニヤケている時には自覚がないが、他人のニヤケ面というのはここまで不快なものなのであろうか。

「もっとも、あいつの思考回路が一般的な女子高校生と同じものだったらの話だけどな」

ハルヒの精神分析は古泉の得意分野だ。
その古泉曰く、あいつの思考回路は実のところまともらしい。
真実はプロである古泉の口から聞くことにして、冗談半分で谷口の仮説も聞いておくことにするか。
ハルヒが教室内にいないことを確認し(今日は学食だな)、谷口に命令する。 

 

「言ってみろ」

焼き鮭を全て飲み込んだ後で本当に良かった。
そうでなければ噴き出していだろうからな。
・・・谷口の出した回答は、それだけの意外性と破壊力を持っていた。



「簡単なことだ、涼宮はお前が他の女とイチャついてたら面白くないんだ。要するに・・・キョン。あいつは、」


―――あいつは?



「お前のことが好きなんだよ」

 

 

 

 

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