『涼宮ハルヒのプリン騒動』
 ―2日目―
 
 
 
 くそっ、昨日は古泉のせいでえらい目にあったぜ。
 ま、まぁ二人でデートみたいな感じになって楽しくなかったことはないんだが。
 が、それとこれとは話が別だ。俺をハメた罰は受けてもらわないとな。
 
 授業が終わり、周りを見回すと、ハルヒの姿はすでになかった。
 もう部室に行ったのか?まぁいい。俺もとりあえず行くとするか。
 
 いつものようにおそらくはハルヒがすでにいるであろう部室のドアをノックすると、
「はぁぁい、どうぞぉ」
 可愛らしい朝比奈さんのボイスが部屋の中と俺の頭の中に響き渡ったが、部室にハルヒの姿はなかった。
「あれ?ハルヒまだ来てませんか?」
「え、まだ来てませんよぉ?」
 あいつ、一体どこ行ったんだ?また変なことやってんじゃないだろうな。
「ところで朝比奈さん、今日はメイド服じゃないんですね?」
「え、あ、えぇ、そうなんですよぉ」
 今日の朝比奈さんは何故だかメイド服ではなく、制服のままだった。
「着替えます?なら外に出てますけど」
「あ、いいんです。今日はこのままで」
 ん?どういうことだ?すぐ帰ったりでもするのか?
 
「ところでキョンくん、これ作ってきたんですけど、食べてもらえますかぁ?」
 そういって差し出されたのは、これまた可愛らしくデコレーションされた手作りプリンだった。
 って、まさか、朝比奈さんが俺のためにわざわざ作ってきてくれたってのか!?
 なんということだ。頂きますよ。もちろん頂きます。朝比奈さんありがとうございます!
「どうですかぁ?美味しいですか?」
「ええ、そりゃもう。めちゃめちゃ美味しいですよ!さすが朝比奈さんですね」
「え、あ、う、ああありがとうございますぅ。……えっと、……苦労して作ってきたかいがありま――」
 バタンッ!!
 今日も激しい音をたててドアが開かれる。だから優しく開けろっての。
 
「あら、みくるちゃん、もう来てたのね?……って!」
 ん?なんだ?どうしたハルヒよ。この朝比奈さんプリンが羨ましいのか?
「あんた!それあたしが作ってきたプリン、なに勝手に食べてんのよ!」
「え、これ!?朝比奈さんが作ってきてくれたんじゃ――」
「なに言ってんのよ!それは昨日あたしが、あ、あ……ために……作ってきたのに!!」
 なんだって?ちょっとよく聞き取れなかったんだが?何て言った?
「な、なんでもないわよ!それよりみくるちゃん?これどういうこと?」
「あ、えと、さぁ……?私が部屋に来たらキョンくんがプリンを美味しそうに食べてて」
 ってなんで!?朝比奈さん、そんな。嘘言わないでくださいよ。
「あんた、か、隠してたのに何でわかったのよ!……あ、えっと、……おいしかった?」
「あ、ああ。そりゃかなりうまかったぞ」
「……ひょっとして、あれも読んだ?」
「ん?あれ?って何のことだ?」
「あれれぇ?こんなところに何か落ちてますぅ」
 と、朝比奈さんがテーブルの下から紙の様な物を拾い上げる。
「ええっと、『キョンへ。いつもありがとう。いつもお世話になっているキョンのため――』」
「みくるちゃん!!!」
 
 ハルヒの凄まじい声が部室内に響き渡る。
 なんて音量だ。……鼓膜が破れそうだぜ。朝比奈さんなんか涙目になってるし。
「みくるちゃん、渡しなさい」
「キョンくんにです――」
「あたしにに決まってるでしょ!!」
 ハルヒの剣幕に圧されて、おどおどと紙を渡す。
「キョン……あんた、今の聞いた?」
「ん?ああ、でもほとんど聴こえなか――」
「全部忘れなさい!」
「まぁ、それは構わんが。……ハルヒ、プリンうまかったぜ。ありがとよ」
「べ、別にあんたのために作ったんじゃないわよ。……ほんとよ!」
 そうかい。なんかすごい照れてるように見えるんだが。
 
「それより、あたしのプリン勝手に食べたんだから今日もプリンおごってもらうわよ」
「はいはい、わかってるよ。それじゃ朝比奈さん、あとお願いしますね」
「はぁい、楽しんできてくださいね」
 そうして昨日と同じようにケーキ屋へと向かう。
 後ろで「うまくいきましたぁ」と微かに聴こえた気がするが気のせいだろう。
 
 
◇◇◇◇◇
 
 
『涼宮ハルヒのプリン騒動』
 ―2日目(裏)―
 
 
 
「ど、どうでしたかぁ……?」
「少し危ないところもありましたが、まぁ問題はなかったと思いますよ。ご苦労さまでした」
「……グッジョブ」
「ふぇぇ、とりあえず無事に終わってよかったです。疲れましたぁ」
「おっと、お二人がお店に入ってきましたよ?」
 
『あんた、早く来なさいよ!』
『わかってるっての。そんなに引っ張るなよ……』
『今日はどれにしよっかな……。あんたはどれにするの?』
『お、今日は食べていいんだな。……じゃあ俺は、これかな?』
『ふーん、あたしもそれもいいかな、と思ってたのよね。じゃああたしはこっちのにするわ』
『じゃあ持ってくから席とっといてくれ』
『わかったわ』
「……ちょっとなれてきたみたいな感じですねぇ」
「そうですね。これじゃあ見ててドキドキがありませんね」
「……山場はこれから」
「ほほう、これから盛り上がってくるってことですか?それは楽しみです」
「あ、また二人が話し始めたみたいですよぉ」
 
『これもおいしいわね。そっちはどう?』
『ああ、これもうまいぞ。それにしてもこの値段でこれとはたいしたものだな』
『そうね。近頃はこんな良心的なお店あんまりないもんね。……あ、それちょっとちょうだい』
 
『ん、ほらよ。何かおかしいよな。こんな店ならもうちょっと話題になってもいいのにな』
『できたばっかだからじゃない?こんな穴場を見つけてきた古泉くんはさすがね』
『古泉か。……まさか機関?……ありえるな』
「ばれた」
「ばれましたねぇ」
「まぁしょうがないですよ。それにばれてもたいして問題ありませんしね」
『何?変な顔して?古泉くんのこと褒めたから嫉妬してるの?』
『そんなわけあるか。……それ返してくれよ』
『いいじゃない。あんたこのあたしの作ったプリン食べたんだから。おいしかったでしょ?』
『ああ、すごくうまかったぜ。ここのプリンよりも遥かにうまかった』
『べ、別にあんたのために作ってきてあげたわけじゃないのよ。……そんなにおいしかった?』
『ああ、凄まじくうまかった。できればまた食べたいものだ』
『そ、そう。……じゃあ次は、あんたのために作ってきてあげるわ』
『まじか!?じゃあ楽しみに待ってるよ』
 
「……普通にラブラブみたいになっちゃいましたねぇ」
「……面白くない」
「同感です。これは少し邪魔をしないといけませんね」
「次の手を打つべき」
「……二人とも当初の目的ちゃんとわかってますよね?よね?」
「当初から目的は二人で遊ぶこと」
「そうですよ。何もおかしいところなどありません」「そ、そうですね。おかしいのは二人の頭の中みたいですぅ」
「とりあえずこのままくっつくという最悪な事態を避けなければなりません」
「そのとおり」
「最悪かどうかはわからないですけど、確かにこのままじゃちょっとおもしろくないですよねぇ」
「長門さん。今からこの空気を全てぶち壊しにする手はありませんか?」
「ぶち壊しって、ちょっと古泉くん?」
「ないことはない。ただし推奨はしない」
「と、言いますと?」
「これからの計画もぶち壊しになる危険性がある」
「それはまずいですね。色々と。……仕方ないです。明日に任せましょう」
「あ、そういえば明日ってどういう予定なんですかぁ?」
「それが最善だと思われる」
「それにしても今日は完敗ですね。口惜しいかぎりです」
「あ、あれ?やっぱり私の疑問はスルーなんですねぇ……」
「仕方ない」
「そうですね。それじゃあ今日はここで解散にしましょうか」
「また明日」
「え、あ、あれ?もう帰るんですかぁ?そ、それじゃあまた明日」
 
 
プリン騒動2日目 ―完―
 


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