プリンというものを知っているだろうか?
「牛乳と砂糖を適量混ぜた卵液をカラメルソースとともに…「説明ありがとう、長門」
そのプリンのおいしさは世界レベルで周知の事実であり、俺も嫌いな方ではない。
ないのだが……量には限度ってものがあるだろう? ハルヒよ。


「つべこべ言ってないで早く食べなさい。」
そういいながらハルヒは俺を睨みつけながらかれこれ1時間も席を立たない。
いや、そうされてると非常に食べづらいのだが。量は別として。
いつもはボードゲーム競技場と化している机に、ポケットオセロすら置けないくらいのプリンの海が広がっている。

「あんたがさっさと当てればいいだけの話よ。ったく団長をこれだけ待たせるなんて死刑ね死刑。」」
そう 俺はこのプ大量のプリンの中からたった一つ、ハルヒの作ったものを当てなければいけないらしい。ちなみに当てる事ができなければ 「大死刑よ!!」らしい。

今日、うちのクラスは調理実習だった。プリンなんて冷やして固めるだけのもんを、わざわざ授業でやろうと考える家庭科教師には職務怠慢を感じるが、大好物が単位をしょってやってくるってんだからハルヒのはしゃぎようはなかった。
しかし、そんな普通の実習では満足しなかったらしく思いついたのがこのプリン攻めだったようだ。
ちなみにこれらは1人あたり2個の予定で作っていたものを、クラスの女子達から1つずつおすそわけ…もといぶんどってきたものである。
本当なら彼氏やら意中の相手とかに食べてもらいたかたろうに すまん。
残りの1つを半分こでもしながらイチャイチャ食べてくれ。


とにかくだ。だいたい実習で作ったもんなんか、塩と砂糖を間違えでもせんかぎりそんなに味の差はでない。まぁ さっきからカラメルが涙が出るほど苦かったり、妙にザラザラしてたりするものがあったが、
「そんな失敗するわけないじゃない。冷やして固めるだけなのに。」と主張するハルヒを見るとどうやらそれらではないことが伺える。


経費削減のために小さめの型で作られていたのが救いだった。
が、そろそろ胸焼けしてきた。それでも努力のかいあって敵陣は制服目前だ。

「っんが!!」「当たった!?」
口の中になんか固いもんが、って当たったってなんだよ。
あぁ 卵の殻か。これもお前のもんじゃないんだよな?
…何 慌ててんだ?
「べ べつに!殻くらいで騒がないでよ。 そうよ カルシウムもとれるしちょうどいいわよ!」
カルシウムを必要としてるのはお前の方だと思うがな。
勢いよく立ち上がったハルヒは、なぜか顔を赤らめながら着席した。


もくもくと食べ続けてラスト2個。
今まで「これか?」「違う!」「じゃぁ これだ」「適当に言ってるでしょ?」ってな応酬を繰り返してたのだから、この2つのうちのどちらかで決定だ。
「お前はどっちだと思う? ハルヒ」
「なっ!! そんなの自分で考えなさいよ! まぁいいわ 右よ右にしなさい!キョンなんて右がお似合いなのよ」
わけのわからん理屈で右の方を勧めるハルヒの忠告を逆手に取って、俺は左のプリンに手を伸ばした。


「むぐ!?」「っ!!」
また殻か? あぁカルシウムだったか。ここは従順に摂取しといたほうが身のためか?
ぐ 噛み切れん。なんだこれ。
混入された異物は、小さく折り畳まれた紙だった。
わけのわからんまま紙切れを広げ、ん?読みづらいが、何か書いてある…

と思ったのも束の間。
ハルヒは俺のネクタイを強引につかみ
鮮やかに唇を奪っていた。

数秒後わけのわからない俺と、これでもかってくらい顔を赤くしたハルヒは
ものも言わず椅子に座った。誰かこの状況を説明してくれ長門以外で。


「ったく 見つけるのが遅いのよ。あんたのせいでドキドキ…じゃなイライラするし!!」
完全にフリーズしていた俺にさっきの紙切れを見せながらぶつぶつ文句を言っている。
あぁ そういうことか。
普段 難解な行動ばかりするハルヒが書いたとは思えないストレートな文章が綴られていた。

この胸焼けはプリンのせいなのかハルヒのせいなのかはわからんが
今はとりあえず最後の1個になったプリンでも食べる事に専念しよう。
もちろん 半分こで、 な?




『見つけられたからご褒美にチュー!』



おしまいっ。


|