俺は今、SOS団の本部である文芸部室に向かっているところだ。外は雨、こんな日は閉鎖空間を思い出す。いつもと変わらないであろう長門でも見て心を落ち着けるとしよう。
 
部室前に到着した俺はいつものように扉を叩く。
「…………」
返事は無い。朝比奈さんの可愛らしい声が聴けなかった事を少し残念に思いながら扉を開いくといつものように長門が本を読んでいた。
 
「よう、今日は雨だな。」
長門はこちらを一瞥して軽く会釈した。声は聞かせてくれないのか?少し寂しいぞ。まぁ、いつもの事だが。
「長門、お茶飲むか?」
「…飲む」
長門の声が聞けたところで、俺は2人分のお茶を淹れた。
「ありがとう」
その一つを長門の前に置いてやると長門は本を見つめながら礼を言った。
 
それから俺はする事も無いので長門を見つめる事にした。しかし長門は俺の視線には気付かない。いや、気付いてて無視してるのかも知れないが…気付いてないに違いない!きっとそうだ、そう思う事にしよう。
 
こうして長門を見つめていると、長門によって世界を改変された時の彼女を思い出す。彼女は俺が見つめてやると動揺してすぐに顔を赤らめていた。とても可愛いかったな。ぜひこちらの長門にも照れて頂きたい。
顔を真っ赤にして困っていた長門を思い出しているともう一度見たくなってしまった。ハルヒがどこからかガメてきたデジカメもある事だしな。撮ることができたら永久保存版に決定だ。
しかしが見つめられたところで長門が照れるはずがない。きっと長門を赤面させる事ができる野郎など世界中探したっていないはずだ。残念だがあきらめよう。
 
「ところで他のみんなはどうしたんだ?」
「涼宮ハルヒは職員室に呼び出されている。古泉一樹からは何も聞いていない。朝比奈みくるは友人と勉強するので遅れると言っていた」
「そうか。お前と2人きりだな」
「そう」
軽く流されてしまった。もう少しかまってくれてもいいじゃないか?お兄さん寂しいぞ。
 
俺は大きく息を吐いて外を眺めた。窓の外は雨が降り続いていて、止む気配はない。
すると小さく雷の音が聞こえ始めた。
「………」
長門は突然顔をあげた。
「どうしたんだ?」
「…なにも」
そういうと再び本を読みはじめる。もしかして雷が怖いのか?…んなはずないか。
 
ゴロゴロ…
 
雷の音が少し強くなった。
「…………」
長門が慌てて立ち上がり、俺の隣に座った。
「何かあったのか?」
「なにも、ない」
そう言って再び本を読みはじめるが、どこか落ち着かないのか、ページはあまり進んでいないようだった。まさか長門の苦手なものは雷だったとはな、驚きだ。
長門の人間らしい一面を発見して気分を良くしているその時だった。
 
ズドォーーーーン!!!ガラガラガラガラ!!
 
凄まじい音が聞こえきた。その音にも驚いたのだが、それ以上に驚く事態が起こっていた。
さっきまで俺の隣で本を読んでいたはずの長門が本を放り投げて俺にしがみついていた!
「な、長門!?どうした!?」
長門は俺の質問には答えずに小さく震えている。もっと頑張れ、雷。
震えている長門はとても可愛いかった。思わず抱き締めたくなる。
しかしいつまでもこのままでいるわけにもいかない。
とりあえず立ち上がり、長門の肩に手を置いてゆっくりと離す。
「どうした?雷が怖いのか?」
「…少し」
長門のは動揺を隠そうとしていたが、体は震えていたし、琥珀色をした瞳からも不安の色がうかがえる。この顔を撮っておくとしよう。
 
ズドォーーーーン!!!!ガラガラガラガラ!!
 
目でカメラを探していると先ほどよりも激しい音が聞こえた。近くに落ちたのではないか?
「きゃ…!」
長門は小鳥のような小さい悲鳴をあげて俺の胸にしがみついてきた。ビデオカメラ!今すぐビデオカメラを!!
しかし冗談を言ってはいられない。長門が俺にしがみついているとあっちゃあ大事件だ。
「お、おい…大丈夫か?そんな怖がる事ないんじゃないか?」
「…大丈夫…少しだけ、このままで…」
 
長門は俺のシャツを硬く握り締めて震えている。正直…たまりません!
 
しばらくすると長門は声をあげずに涙を流しはじめたようだった。シャツが少し濡れてきた。そんなに怖かったのか?にやけている場合ではない。
 
「大丈夫か?」
長門の頭を撫でながら訊いた。
「………」
長門から返事はない。本当に怯えているようだ。長門がここまで怯えるとは…なにかトラウマでもあるのだろうか?
しかし、いつも助けてもらっている長門を放って置くわけにはいかない。今度は俺が助けてやる番だ。
抱き締めてやろう。今の俺にできる事はそれくらいしかないからな。少しでも長門の不安を取り除けたら…
 
「安心しろ。俺が傍に居てやる。止むまで一緒に居てやるから」
そう言ってやると長門の震えが止まったような気がした。
「心臓の音。あたたかい…とても落ち着く」
「そうか…」
長門の声からはもう恐怖の色はない。とても幸せそうな優しい声をしていた。
俺が長門の力になれたのは嬉しかった。お前のためならなんでもしてやりたいと思う。
「ずっとこうして居られたら…」
「俺もそう思うよ」
「ありがとう…幸せ」
長門の体温が上がった気がする。とても温かい。きっと顔を真っ赤にしているに違いない。確認できないのが少し惜しい。
 
雷は鳴り続けている。
俺達が幸せを感じていたその時、文芸部室のドアがものすごい勢いで開かれた。
雷は俺達に何かを告げるように大きく鳴り響いた…
 
終わり


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