「ですから……その……付き合って欲しいんですっ!」
超能力者2号、橘京子を目前に俺は固まってしまった。なんだこれ。
佐々木から呼び出されてやれやれと思い、ここに来たらこいつ、橘京子が居た。
それで佐々木に嘘を吐かせて呼び出させて、冒頭のセリフを言われたわけだ。
まぁ……俺が言える言葉は一つだな。
「なぜだ?」
橘は口をポカンと開け、少しずつ眉をひそめていった。そして目を瞑り……。
「んん……もうっ! 女の子にそんなこと言わせないでっ!」
どうでもいいが、喫茶店でその大声は『女の子』として恥ずかしくないのか?
「あ……」
橘は顔を朱に染めて俯いた。
こいつは朝比奈さんをさらったり、どちらかと言うと俺とは敵対する立場だ。
それが何故付合えと? ……わかった、政略的な物だな?
「違いますよ……もうっ……」
俯いたまま力無く返事する橘。女のこういう仕草に男はクラッと来る。
「わたしはただ……何回か会ううちにあなたが好きになって……。そんなつもり無かったのにドキドキして……」
まさにただの高校生女子。それもとびっきり純粋な。
「だから、わたしのやるべきことが始まる前にあなたに伝えたくて……。もういいでしょ? 返事をください……」
任務関係無し。一個人としてなら俺もきちんと答えてやろう。
「しょうがないな。付き合ってやる」
「え?」
「付き合ってやるって言ってるんだ。さっさと喫茶店を出て映画でも行くぞ」
「え? え? あ、はい……」
俺は勘定を済ませ外に出ると橘の手を握った。
「あ……えっと……」
「緊張してんのか? 手が震えてるし汗かいてるぞ」
「んん……もうっ! 女の子にそんなこと言わないでくださいっ!」
怒っているのか嬉しいのかハッキリして欲しいな。
「怒ってるに決まってるじゃないですかっ!」
じゃあなんなんだよ、その笑顔は。
「これは……怒り笑い? ……みたいな」
「バーカ」と頭を小突き、俺は橘の手を引いた。俺だって一般高校生だ。
たまには彼女を作って遊んだりしてもいいだろう?
そんなことを思った、日曜日の熱い陽射しの下だった。
おわり