信じられない、信じたくない…さっきの出来事を現実だと思いたくない。
あれは夢だった、俺の見ている夢だった、そう思いたかった。だが俺はちゃんと起きているし
もちろん気が狂ってるわけでもない。
じゃあ、あいつは、さっきまで俺の目の前にいたあいつは……何?
ハルヒと途中まで歩いてたはずなのに、その途中でハルヒは俺の知らない奴と入れ替わってしまった。
そう考えるしかなかった。
気づくとハルヒはとっくにどんどん歩いていって見えなくなってしまっていた。
次に気づいたときはうちの自室だった。そして今に至る…外は闇に包まれつつある、
じきに夜になろうというところだ。
部屋に篭ってそんなことを考えていると、突然部屋の扉が開いた。
「キョン君、電話だよ♪」
「お前、ノックくらいしろよ」
「えへへ☆」
いつになったら妹はマナーというものを覚えるのだろうか…なんて兄として言ってやりたいことは
山ほどあったが妹は俺に電話の子機を渡すとさっさと出て行った。廊下からバタバタと走る音が
聞こえた。恐らくシャミセンでも追いかけているのであろう。さて、電話の相手を待たせるわけには
いかないな。電話か。誰だろうか…
「はい、もしもし?お電話変わりました」
「もしもし、こちら興宮書房ですが…」
この声は…
「新川さんですか!?」
「申し訳ございません、ご家族の方に警察ということが知られると不愉快に感じるかと思いまして…
 ところでその後何かございましたか?」
この人になら何か聞けるかもしれんな……
「あの新川さん、ちょっと聞きたいことがあるんですが」
「なんでしょうか?」
「あの…」
言ってみたものの…ハルヒが突然変貌したなんてまともに聞いてくれるわけがない。ならばあれか。
「あの!…鬼隠しって…知ってますか?」
「鬼隠しですか…?確かその地域独特の言葉でして、俗に言う神隠しの意です。
 人がいきなり鬼にさらわれていなくなる、ですから鬼隠しというわけです」
「オニ…?あの、鬼って桃太郎とかに出てくるような鬼ですか?」
「厳密にいうと少し異なります。ここで言う鬼とは人食い鬼のことになります」
「人食い鬼…!?」
「その昔雛見沢は“鬼の住む里”と呼ばれていまして…何か気になることでもございましたか?」
「いや、今日のことなんですけど教室でハルヒ達が言ってたんです…次に鬼隠しに遭うのは自分だ、
 みたいな事を」
「ハルヒとは涼宮さんのことでしょうか?なぜ彼女がそのようなことをおっしゃったのでしょう?」
「俺が知りたいくらいです、でもハルヒは何かに怯えるような雰囲気でした」
「そうですか…他に何か話されてましたか?」
「えーっと…たしか…」


『・・・他にもいるんでしょうか・・・』
『まぁ、彼女が祟りにあったのかオニカクシにあったのかはわからないけど・・・』
『どちらにしてももう一人いるんですよね?』
『オヤシロさまならね・・・』


「…たしか…鬼隠しと祟りの二つが起きて二人が犠牲になるとか…」
「二人が犠牲に、ですか…?」
「はい、でもそんなわk」
「あながち間違いとも言えませんな」
「え…?」
「覚えておりますか?最初の事件のことを」
「工事現場のですか?」
「そうです、あの事件は犯人が今も逃走中と世間ではなっておりますが…どうでしょうか、
 その犯人が…鬼隠しにあったとしたら」
「!?」
「次の年もそうです。崖から落ちた夫婦のうち死体があがったのは夫だけです。妻のほうは未だに
見つかっておりません。その翌年の沼に入水自殺した神主夫婦の妻の死体も同様に発見されず…」
「じゃあ…次の年はどうなんですか!?近所の主婦が撲殺死体で見つかった事件、あのときは
誰が消えたって言うんですか!!」
「その年に消えたのは撲殺された主婦の姪です。たしかあなたと同じくらいの年齢です。
名前は朝倉涼子さん、あなた方と同じ学校に通っていた方でした」
「朝…倉?…朝倉!?」
朝倉涼子、推理ゲームの犯人のカードの中にあった名前…つまりそれはSOS団のメンバーだった
という証拠…SOS団のメンバーだった奴が…同じ学校に通うクラスメイトが…消えた?
「そん、な…」
「やはり、この連続殺人には必ず鬼隠しと祟りの二つが起こるようです」
そのとき、階段からドタドタと誰かが上ってきた。
「新川さん、すいません。誰かが来たようなので今日のところは以上で…」
「わかりました、それでは…」
下から上ってきたのは、案の定…
「キョン君、入るよぉ?」
「もう入ってるじゃねぇか」
「あれぇ?」
「なんだよ、キョロキョロと。探しもんか?シャミセンなら来てないぞ」
「キョン君、ハルにゃんは?」
「は?」
ハルヒ?なんでハルヒが来るんだよ。
「来てねぇよ、っていうかこんな時間にあいつがくるわけねぇだろ」
「来たよぉ!玄関のチャイムが鳴ったから扉を開けたの、そしたらハルにゃんだったの。
 キョン君に用事があるっていってたからどうぞ☆って言ってキョン君の部屋に向かって行ったよぉ」
「え………?」
「わたしも後で行くね?って言ったのにハルにゃん先に帰っちゃったのかぁ…」
な、何を言ってんだ、こいつは…ハルヒ?え?
「なぁ…あいつが来たの何時頃かわかるか?」
「んーとね、わたしがお風呂に入ろうとしてたときで、さっきお風呂から出たから
 んー…40分以上前かな?」
40分以上前、ほぼ1時間近く…。その1時間近く前にこいつがハルヒを出迎えて、こいつが来る前に
帰っていった?だけど俺の部屋に来てない。じゃあハルヒは…どこにいたんだ?
もし…本当にあいつが来ていたとしたら…2階に上がってきたとしたら…あいつがいる場所は
俺の部屋の前、扉を挟んだ廊下にいることしかできない…。
つまり、、、あいつは、、、ハルヒは、、、俺が電話で話している間、、、

扉1枚向こう側にいて、ずっと立っていた…?

恐怖でビクッと体が震えた。この部屋の扉は特別ぶ厚いわけではない。だから、あいつは…
俺と新川さん会話を聞いていた??
どうしてそんなことをする必要があるっていうんだ!?あいつの性格なら問答無用で俺の部屋に
入ってくるはすだろ!?俺の部屋の前で立っている理由なんかないはずだろうがッ!!


なんだっていうんだ!!あの時からだ!!綿流しの後からずっと変なことばかりだ。
オヤシロさまの祟り、行方不明になる人たち、俺に何かを隠す友人たち…そして…
ハルヒの変貌…

何が起きているんだこの村に。何かが狂っている。
もし…もしも本当に村人全員が犯罪に関与しているとしたら、、、祟りの名の下、殺人を行い、、、
鬼隠しと称して行方不明者を出しているなら…狂っているのは…
狂っているのは…この、村。

『その昔雛見沢は“鬼の住む里”と呼ばれていまして…』


…この村には何かが隠されている…俺の知らない何かが…

それを暴いたとき……俺は……どうなる…?

想像したくない考えが頭に浮かんだ。外はもうすでに…闇が広がっていた…


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