三毛猫の色は茶、白、黒の三色だ。
猫の毛色を決定している遺伝子のうち、白と黒を決定する遺伝子は常染色体(性染色体以外の染色体)にあるが、茶色だけは違う。
茶色を決定する遺伝子はX染色体にあるのだ。
二つのX染色体のうちどちらか一方が、受精卵から成体になるまでの過程で不活性化することによって、毛色が茶色の部分と他の色になる部分が分かれる。
だから三毛猫は普通はX染色体を二つ持っているメスなのだが、染色体異常(クラインフェルター症候群)のオスもX染色体が二つあるので、毛色が茶色になる。
オスの三毛猫の出生率は3万分の1とされていて、ペットショップでは100万円前後はする。
希少価値が高いためか、福を呼ぶともされていて、船に乗せれば沈まないという言い伝えがある。

 


うちのシャミセンも福を呼んでくれた。

 

 


五日目

午前六時十二分。自分の部屋のベッドの上にて。

 


土曜日なのに、やけに早く目が覚めてしまった。
家族は俺意外全員睡眠中。
俺の枕元でシャミセンが丸まっている。
こいつ寝ないで何やってんだ?


そういえば今日は探索か。

 

 

……財布の中身がそろそろやばいな。

 

 

「あ~~……金がその辺に落ちてたらいいのに……」
無意味に呟く俺。
ふみゃ~と鳴くシャミセン。
どこかで聞こえる、小銭の落ちた音。

 

 

 

 


ん? 小銭?
体を起こしてみると、机の上には数枚の五百円玉が転がっていた。
誰が置いたんだ?
この部屋には俺とシャミセンしか居ないはずだ。
まさか金が欲しいと願ったからか?
いや、神はもう俺じゃない。
じゃあ、誰だ?
ふみゃあ~とシャミセンが再び鳴いた。いや、そんなことどうでもいい。
一体誰が金を置いていったんだ?
机の上を見ていると、今度は上のほうからフワリフワリと野口英世が書かれたお札が一枚降ってきた。

 

 

 

……なんだこれ。

 

 

 

朝比奈さんは一体誰を神にしたんだ?

 

 

 

 

 

【人間以外で人間並みの知能を持っていて、夢を追い求めようともせず、幸福を欲しがったら誰かがそれを止めるという者】

 

 

 

 

 

いつのことだったか、国木田がこう言っていた。
『この猫っておとなしいよね。躾がちゃんとされてるのかな』
【幸福を欲しがったら誰かがそれを止めるという者】
つまり……
【躾された者】

 

 

 

 

 

 

「ふみゃあ~」

 

 

 

 

今日はシャミセンがよく鳴くな……

 

 

 

 

 


……まさか……な。

 

 

 

 


-fin-

 

 

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最終更新:2020年06月29日 18:41