まあ楽しかったか楽しくなかったかと言われれば楽しかった文化祭も終わり、おれの嫌いな季節がやってきたわけだが、相変わらずこいつの口からは無駄話しかでてこないようで、

「おいキョン、この前の文化祭はろくな女がいなかったぜ。まったくこんな山の上の高校なんて撰ぶんじゃなかったな。」とか言ってやがる。

「だったら今からでも転校したらどうだ?まあお前の学力じゃいけるところを探すだけで3年間終わっちまうだろうがな。」

「はっ!!お前にだけは言われたくないね。あ~朝倉さんがいれば少なくとも毎日目の保養ができたのにな・・・そーいやどこに転校したんだっけ?」

あの微笑み殺人鬼のことはもうほとんど忘れかけてたのに嫌なことを思い出させやがってまったくこのアホ面が・・・

「さあ興味ないね」

「ああお前はもう涼宮に毒されてるんだったな。おれはお前と違ってまともな高校生活を送るからな・・さらば元親友!」

とか言って真顔で敬礼してやがる。まったくこのときは思いもしなかったね。人生で最大の選択がすぐそこにせまってるなんてさ。

とまあ谷口とこんな馬鹿話をしながらもうすっかり慣れた坂道を登り、校門をくぐって下駄箱を開け靴を突っ込むと「カサ」と聞きなれない音がした。下駄箱を開けて靴を突っ込むというのはもう頭で考えずに体が勝手に動くほどにありふれた日常で、そこに本日一つ目の非日常が投下されていた。

下駄箱の奥にはいかにも女子高生が使いそうな可愛い封筒が入っていてこれまた女子高生らしい可愛い字で『キョン君へ』と書いてあった。一緒にいる谷口に微塵も気が付かれることもなくいつもどうりの顔を装いいつもどうり席にバッグをおき何気ない顔でトイレに駆け込み封筒を開くとそこには一枚の手紙が入っていた。

『今日の放課後1-5の教室にきてください、待ってます』とだけ書いてあった。さっきアホの谷口の口からその名前を聞いたおかげで瞬間的におれの脳裏にあの微笑み殺人鬼の記憶が浮かんできた・・・

あの軍隊に採用されてそうな恐ろしげなナイフ、まともな空間じゃなくなった教室、伸びた手、そしてあのセリフ・・・

「いつかまた、私みたいな急進派がくるかもしれない。それまで涼宮さんとお幸せに。じゃあね」思い出しただけで寒気がするが、正直そんなに心配にはならない。なにか変なことが起こるなら長門が必要最低限より少ない言葉で教えてくれるだろうからな。まあ放課後、文芸部室で朝比奈さんのお茶を飲み古泉とゲームをして長門の読書姿を見た後にでもチラッと教室をのぞいてみるか。

とまあそんなことを考えながら教室に戻ると、席につくやいなや我が団長様が言い放った。

「今日放課後大森電気店にカメラ返してきてよね。これは団長命令だから!!」とかおれの手紙を見てさらにそれを邪魔しようとす

るかのようなことを怒ったような顔で言いやがる。

「何でまた今日なんだ?それに続編を作るとか言ってたのはどうなったんだ?」おれが迷惑と顔全面に出して言ってやる。

「昨日続編について考えてたのよ、そんで撮るのは春頃でイイかなって思ったの。で、春頃になったら新機種のカメラがでるでしょ?だからよ!そんな不満そうな顔したって団長命令は覆らないの!!」

なにがだからなのかまったく理解できないが、おれがこいつの思考回路を理解するなんて無理だととっくに悟っているので、

「なんでおれなんだ?古泉でもいいじゃないか」と負け惜しみ的なことを言うと、

「古泉君は副団長よ?あんたより階級が上なのよ!軍人でいったら将校と二等兵くらい差があるんだからね!覚えときなさい!」とか覚えといてもなんの意味もなさそうなことを言っている。

「長門は?」純粋にこいつの長門に対する評価が知りたかったので聞いてみた。

「あんた有希にこの寒い中一人で電車に乗ってカメラを返しに行けっての?そんな非情な奴とは思ってなかったわ!!」

まあそーは言ってないんだがね。それにおれに寒い中一人で電車に乗って行けっていうお前は非情じゃないのか?

「あんたはSOS団の雑用でしょ!?文句いうんじゃないわよ!!」いつからおれが雑用になったんだ?・・・ああ最初からか。

「長門とおれで行くのはだめなのか?」ちょーど聞きたいこともあるしな。するとどーいうわけかハルヒは一瞬驚いた顔をして、

「あんた有希と行きたいわけ?」と妙に静かに聞いてきた。

「ああ、ちょっと長門と話したいこともあるしな」と言うと

「あっそう・・・好きにすれば」と言ってそれっきりなにも言わず窓の外を眺めだした。まったくこいつは理解できんな。まあ仕方ない、長門とカメラを返しに行った後にでも教室にくればいいか。

とまあこの後はいつもどうりの授業を受けそして終業のチャイムが鳴った。

一章終了

1-6の教室に長門を探しに行くとどこにも姿はなく、あいつは教室で誰かと会話したりするのかね?とか考えながら部室にいきドアを開けると、そこにはダヴィンチが描いたら間違いなくルーブル美術館の目玉になるだろう下着姿があり、その愛くるしい目と目が合うと朝比奈さんはみるみる紅潮し、世界で一番柔らかいであろう唇の形が叫び声になる寸前でおれはドアを閉めた。まだ放課後になってから5分とたっていないし長門しかいないだろうと油断したおれが馬鹿だった。しかし鍵をかけない朝比奈さんも朝比奈さんだと自分に言い聞かせ、今の映像を海馬に刻み込んでいるとドアがゆっくりと開き「どうぞ・・・」というか細い声が聞こえてきた。

すいませんと必死に謝るおれに対しパーフェクトメイドルック朝比奈さんは、

「いいんです、こっちこそ鍵をかけないでごめんね」とまだ頬を染めながら言ってくれる。しかしおれが朝比奈さんのあられもない姿を見るのはこれで何度目だろうな。こんなことが学校に知れたら確実に朝比奈ファンの男どもに殺されるぜ。

「ホントにすいません、次からは絶対にノックしますから」

といいながら部室に入るとそこには宇宙製無口読書少女が座っていた。「長門、すまんがちょっと付き合ってくれんか?」おれがそーいうと長門はこっちを向いてどこに?とでも言いたげにクビを数ミクロン傾ける。

「カメラを返しに大森電気店に行ってこいって団長命令なんだ。付き合ってくれるか?」おれがそう言うと長門は黒真珠のような目を一回瞬いて

「付き合う」

と言った。「よしじゃあ行くか・・・そーいやカメラはどこにあるんだ?物が多すぎて分からんな」とおれが周りを眺めて言うと長門は音を立てずに戸棚からカメラを取り出した。まったく便利だねこいつは。今度うちで無くなったCDでも探してもらうか。

「じゃあ早いとこ行って来ようぜ」おれがカメラを受け取ってそう言うと長門は無言でコートを羽織って黙っておれを見つめる。

「じゃあ朝比奈さん行ってきますね。なるべく早く帰ってきますけど遅くなるようだったら連絡しますから先に帰ってください」

「あの・・・私は行かなくていいんですか?」

長門と朝比奈さんという両手に花状態も嬉しいがハルヒがなんて言うか分からんからな。

「朝比奈さんはハルヒのお守りでもしててください。」

「あっでも・・・はい・・・わかりました、行ってらっしゃい。あ、ちょっと待って・・・はいこれ、寒いから」

そう言ってハンガーに掛けてあったマフラーを巻いてくれた。

「行って来ます」そういって部室を出て坂を下りながら考える。

もしかして朝比奈さんはおれと一緒に行きたかったのか?いやいやいや、多分それはこのマフラーの芳香がおれにそんな妄想を抱かせてるんだな・・・そろそろ本題を思い出さなくては。バッグから今朝もらった手紙を取り出す。

「長門、この手紙からなんか宇宙的だったり未来的だったり超能力的だったり・・・まあなんか普通じゃないものを感じるか?」

そう言って長門に手紙を渡す。

「・・・・・」十秒くらい手紙を眺めてから

「感じない」と言った。

「そうか・・・」とするとこの手紙はいったいなんの目的でおれの下駄箱に入ってたんだ?女子高生の字で放課後待ってますなんてもう一つしか思い浮かばないんだが・・・いったい誰が・・・考えても谷口のアホの悪戯ぐらいしか思い浮かばんが前もそう思ったけど違ったしな・・・・やっぱりこれはラブレターか・・・?そんなことをボーっと考えているといつのまにか帰りの電車だった(帰りといっても学校に向かうんだが)そして学校まであと一駅のところで車内アナウンスが流れた。

『只今光陽園駅で信号トラブルが発生しましたためこの駅で停車いたします。大変ご迷惑をおかけしますが約30分ほどで復旧すると思われますのでご了承ください』

まったく何をしてるんだよJRさんよ。まあ30分とかどうせ長く見積もってるだろうから15分もしたら動き出すだろう・・・一応朝比奈さんに連絡いれとくか。すぐ教室に向かいたいしな。

「キョン君?どうしたの?」

「すいません電車が止まってましてね遅くなりそうなんで先に帰ってください」

「ええ!?事故でもあったんですか?キョン君大丈夫?怪我してない?」ここまで心配してくれるとありがたいね。

「いえ信号トラブルとかで、ええ怪我はありませんよおれも長門も」

「そうですか・・・よかった・・あちょっと涼み・・・」

「ちょっとキョン!!おっそいわよなにしてんの!?あと5秒で帰ってこないと死刑だからね!!!」

まったくなんでこうも反応が違うんだろうね。

「すまんなあと一時間くらいかかるそうだから先に帰っててくれじゃあな」

「ちょっとキョ・・・」

こいつと話してても埒があかないからな。まあ一時間遅れるって言っとけばあいつも帰るだろうしな・・・

一時間後

『只今復旧作業をしております。もうしばらくお待ちください大変ご迷惑おかけしております』

ふざけんなもうほんとに1時間たったじゃねーか。このままじゃ教室で待ってると思われる誰かさんも帰っちまう・・・ふと長門を見るといつもどうりの無表情・・・ああなんでこんなことに気付かなかったんだおれは・・・ここに万能無口少女がいるじゃないか。

「長門、信号トラブルとかいうの直せるか?」わかりきってるが一応聞いてみる。

「直せる」

こいつが直せないなんていったら今すぐ清水の舞台から飛び降りるね。

「じゃあ頼む」おれがそーいうと長門は少しだけ上を眺めた後いつものスーパー早口でなにか呟いた。

「直った」

一分後

『大変ご迷惑をお掛けしました。只今復旧いたしましたので発車致します』

「サンキューな長門」もっとはやく気付くべきだったな。

「いい」

もうすっかり暗くなっている通学路をおれは小走りで駆け上がり

やっと校門についた・・・

「じゃあおれはちょっと教室に用があるから先に帰っててくれ」

こんな時間に教室に何のようがあるの?とでもいいたげな視線を一瞬おれに投げかけ

「そう」と言って部室棟に向かう長門。もしかして長門なら今の一瞬で教室に誰がいるかわかったのかもな・・・

すっかりひと気の失せた学校は妙に気味が悪く、こんな時間まで教室で待っててくれる奴なんていないだろうと思いながら歩いてついに教室の前についた

[ガラッ]静かにドアを開けるとそこには月明かりを浴びた意外な人物が立っていた・・・

二章終わり

そこに立っていたのは・・・えーと・・・なんて名前だったっけな・・・?思い出した・・・

「阪中?」

そこにはクラスでそこそこ話したことのある品のいい感じの・・・まあ谷口ならAマイナーくらいといいそうなクラスメイトが立っていた。

「よかった・・・来てくれないかと思った・・・」

ちょっと涙声だ・・・こいつこんなに可愛かったか?

「ああすまん・・・電気屋に行ったんだが帰りの電車が1時間止まってな」

ものすごく緊張してきた・・これなら谷口に

「引っかかりやがったな・・はっはっは」

とか言われるほうがずっといい気がするぜ・・・

「ごめんね・・わざわざ戻ってきてくれたの?」

「・・・ああ」

こんなことしか言えない自分が恥ずかしい・・・これはまじで告白ってやつなのか?助けてくれフロイト先生!!

「あの・・・キョン君は涼宮さんと・・・付き合ってたりするの?」

「いや、全然そんなんじゃなくてむしろ迷惑してるくらいってゆーか・・・」

自分でも何言ってるか訳わかんなくなってきたぜ・・・

「じゃあ・・・私とか・・・・だめかな?」

あーまじでどうするおれどうするおれどうするおれ・・・

「えっと・・・あの・・・」

その時どこの学園ラブコメだよってことが起きた・・・・

[ガタンッ!!]ドアが開いた・・・それはいつも部室で聞いている音と似ていた・・・

「ちょっとキョン!!!待っててやったのになにしてん・・・あれ?阪中さんじゃん・・なにしてんの?」

ハルヒの目がおれと阪中の間を3往復した後ハルヒはなぜか寂しそうな声で言った

「なんで黙ってんのよ・・・聞いてるの?キョン・・・」

ハルヒの予想外の反応におれが声を出せないでいると阪中は

「返事はまた今度でいいから・・・バイバイ」

 と言って走って教室を出て行ってしまった・・・

おれが何も言えずに突っ立ってると、

「いつまでボーっとしてんの?帰るわよ」

ハルヒがいつもどうりの声で言った・・・

正直そのあとどんな会話をしてどうやって家に帰ったかまったく記憶に無いが気付いたら妹がおれの上で飛び跳ねていた・・・

第三章終わり

 こんなに学校に行きづらいのは始めてだね。ずっとシャミセンの寝顔を眺めていたいが、母親からだされたおれを起こして朝飯を食わせるという任務を楽しげに実行する妹にたたき起こされ、しかたなく朝飯を詰め込み、自転車に飛び乗った。なんで時間てのは早くしろと思うと全然進まないのに進むなと思うとアホみたいに加速するんだろうね。時間の神様なんてのがいるとしたらものすごいへそ曲がりなんだろうな。てなわけでおれは気付いたら校門をくぐっていた。谷口の馬鹿話もまったく耳に入ってこなかったね。

 [カサ]いつのまにかおれは下駄箱に靴を突っ込んでいたらしく昨日聞いた音をまた聞いた。

 「どうした?キョン、不幸の手紙でも入ってたか?」

これが幸せの手紙か不幸の手紙かなんて閻魔様にだって分からんだろーよ。

 「ああなんでもない」

そういっておれは下駄箱を閉めた。仕方ない教室に行ってからまた取りにくるかな。

 教室に行くとおれの後ろの席はまだ空いていた。

 「おはよう」

 びっくりして振り返ると阪中がちょっと恥ずかしそうな笑顔で立っていた。まじで惚れそうだ・・・

 「ああおはよう」

谷口がなにやら妙な視線を送ってくるがおれは無視してバッグをお

き下駄箱に戻り手紙を取り出した。

 「おはよう」

今度は心臓が飛び出しそうになったね。そこには100ワットの笑顔だがどこか無理したような感じのハルヒが立っていた。目の下にクマができているのは見ないフリ。

 「おはよう」

どこの大根役者だよってくらい固い挨拶だなおれ。

 「おれトイレ行ってくるわ」

逃げたんじゃなくて手紙を見るためだと自分に言い聞かせておれは立ち去る。ハルヒはなにも言わずに教室に向かっている。

二日連続でトイレの個室に篭るなんて便秘じゃあるまいしとか力ない冗談を心の中で言いながら個室に入り封筒を開く

『私のアドレスと電話番号です、教室で話すのはちょっと恥ずかしいからメールくれたら嬉しいな』と書いてあり下に

rousseau-is-lovely-the-younger-brother@docomo.ne.jp

080-6744-43XXと書いてあった。直接言うんじゃなくてこう手紙で書いてくるとこなんか凄い可愛いな・・・

[キーンコーンカーンコーン]

おっとやばい遅刻になっちまうぜ、と走って教室にいくと担任岡部が歩いていた。

「おーい早くしろ」

まあ岡部教諭がきたおかげでおれはハルヒと気まずい時間を過ごさなくてすんだわけだからナイスハンドボール馬鹿。

ホームルームが終わりハルヒに話し掛けられる前に阪中にメールでも送ってみるかとケータイを開くと

おいキョン、さっきのあれはなんだよ?」

谷口がアホ面下げてやってきた。

「なんだよさっきのって」無駄だと分かっているが一応とぼける。

「ああん?からかってんのか?おれ的美的ランクAマイナーな阪中におはようとか言われてニヤけてたじゃねえか」

やっぱりAマイナーか、てゆうかハルヒが後ろにいるんだからそんな話するんじゃねーよこのアホ。いや別にハルヒに聞かれても別にいいんだけど別にまあ気にしてるとかじゃなくて・・・

「なにぶつぶついってやがんだ?この野郎お前は涼宮の下僕その1じゃなかったのか?」

[ガタンッ]

ハルヒが席を立ってどっかへいっちまった。

「お前に話すことは何も無い!・・お前もだ国木田」

いつのまにか谷口の隣で聞き耳を立てていた優等生面にも言ってやる

「阪中さんとなにかあったの?キョンはてっきり涼宮さんが好きだと思ってたんだけどなぁ」

まったくおれの男友達にはろくなのがいねえな・・・

「ろくでもねえのはお前だキョン、おれ的美的Aマイナーな長門は押し倒すわ毎日朝比奈のメイド姿を見てしかもお茶まで煎れてもらってるわ」

前者はただの見間違いだし後者はただの僻みだろ。

「なんだとこの野郎、お前はいつからそんな奴になり下がっちまったんだ?それにべつにおれはひがんでるわけじゃ・・・」

始業の鐘がなって教師が入ってきた。

谷口は「フンッ」とか言ってるし国木田は微笑・・・それはお前の役目じゃないぜ国木田。ハルヒは授業が始まって5分くらいしてから教室に入ってきた。

「すいませんトイレ行ってました」

というハルヒの声はいつもと変わらない感じだった。席について窓の外を眺めている・・・端から見たらいつもどうりなんだろうがおれには嵐の前の静けさに思えてならなかった・・・

四章終わり

そんなハルヒを見てるとなぜか阪中にメールを送る気になれずそのまま昼休みになった。

「おいキョンよぅ結局阪中とはどーなのよ」

しつこく同じことを聞いてくるのでおれが無言を貫いていると

 「まあいいじゃない、キョンにだって言いたくないことはあるさ」

国木田・・・いい奴だなお前

 「ハンッ!この野郎お前なんかもう友達じゃねー」

とか言ってるがまあこいつのことはほっとこう。今はどっか一人で静かに考え事ができる場所に行こう。屋上でも行くか・・・

 屋上に向かう途中今最も話したくない一人に話し掛けられた。

 「こんにちは」

いつ見てもこいつの微笑は様になりすぎててむかつくな。

 「なんか用か古泉」

まあこいつが言いそうなことなんか聞くまでも無いが一応話すキッカケをやるのが礼儀だろう。

 「ここじゃなんなのでどこか静かなところに行きましょうか」

 ああ丁度屋上にいくところだよ。

 「それは丁度いいですね、では」

一人で考え事をしたかったがまあ仕方ない、そのうちこいつが来るだろうと思ってたとこさ。

 [ギイィ]

「単刀直入に言いましょう、昨日涼宮さんとなにがあったんですか?昨日の神人の暴れようはそれは凄まじかったですよ」

 「どうして神人が暴れたからっておれのせいなんだ?」

 「僕は涼宮さんの精神の専門家ですよ?」

 「ああそうかい・・・なんかあったけどそれがなんだよ・・・」

 「そういう駆け引きは僕と貴方の仲では必要ないでしょう?」

気持ち悪いことを真顔で言うなまったく。

 「で、なにがあったんですか?」

はぁ・・・仕方ない

 「ある女子に告白されてな・・・そこにハルヒが丁度鉢合わせになった。それだけだ、なんか文句あるか?」

 「フッ・・・そんな漫画みたいなことが実際にあるんですね」

少年エスパー戦隊に言われたくないね

 「まあ文句はありませんがあなたはどうするつもりですか?」

それを考えようとしてるところにおまえがきたんだよ。

 「考えて答えが出るんですか?下手したら世界の終わりにもなりかねない・・・あなたならわかっているはずですよ」

 「じゃああれか、おれは世界のために自由な恋愛の一つもできないわけか・・・そんな世界おれは認めないぞ」

 「それはあなたの出す答えによります。じゃあ警告はしましたよ。世界はあなたの選択次第で終わるかもしれません・・・よくお考えを・・・」

そう言って微笑みの貴公子みたいなニヤケ野郎は去っていった。

おれにどうしろってんだ・・・世界を背負うにはおれの双肩は狭いし経験が足りないぜ・・・そもそもなんでおれが阪中と付き合ったら世界が終わるんだ?それじゃまるで・・・・・いやいや古泉の思い過ごしじゃないのか?・・・・そうだ!!なんでこんなこと思いつかなかったんだ・・・

 「古泉!!!」

おれは走って古泉を追いかけた・・・どこいきやがったあのニヤケ面、あいつは確か9組だったな・・・いた・・窓際の席に座って物憂げに考え事をしてるような顔だ。

「おい古泉!!ちょっと来い!!」

ドア近くで古泉に見惚れていた女子数名がおれを非難するような目で見てきたがそれどころじゃないんだ。

 強引に古泉を連れてまた屋上に向かう。

 「どうしたんですか?もう結論が出たんですか?」

古泉がなんか言ってるがどうでもいい。

 [ガタンッ]

勢い良く屋上のドアを開ける

 「ハルヒにはなんでも願望を叶えられる能力があるんだろ?じゃあおれと阪中に付き合って欲しくないならそうなるはずだろ?」

 おれは息も切れ切れに言った。

 「相当混乱してるようですねあなたも・・・」

古泉は半ば諭すように言ってくる、なんだそりゃ?おれが言ってるのは正論だろう?

 「前にも言ったように涼宮さんには願望を叶える能力がありますが常識的思考も持ち合わせています。だから彼女はその矛盾に苦しんでいるんですよ」

 結局おれの選択次第ってことか・・・ふざけやがって・・・なぜか無性に腹が立ってきた。

「正直に言ってやろうか?あんな可愛い子に告白されて心がうごかない奴なんかいるかよ!おれだって普通の高校生らしい恋愛したいんだよ!!」

 いつのまにか怒鳴っていた。

 「そうですか・・・それがあなたの選択なら僕は何も言いませんよ・・・」

そう言って古泉は立ち去った・・・

 五章終了

そうだ、なんでおれがあんなやつに振り回されなきゃならないんだ・・・普通の高校生活を送ってもいいじゃないか・・・そもそもあいつの思いどうりに世界が回ってたまるか・・・おれは少しヤケになっていたと思う・・・教室に着き阪中を呼ぶ。

「阪中ちょっといいか?」

坂中の顔がみるみる紅潮していく。周りの女子が頑張れとかなんとか言ってるし谷口はぶすっとした顔で睨んでるがもう気にならない。阪中が黙ってついてくるのでおれはまた屋上に向かう。

 [ギィィ]

「すまんな返事が遅くなって・・・」

 「いいの・・・」

 おれはまっすぐに坂中の目を見て言った。

 「おれでよければ・・・・付き合ってくれ」

 「ありがとう・・・」

 阪中は泣き出してしまった・・・おれはどうしていいか分からずとりあえず阪中を抱きしめることしかできなかった・・・・

 五分ほど経ったろうか、ふと阪中が顔を上げて

 「これからよろしくね」

と言った。おれの選択は間違ってないと思う。少なくともこの泣き顔を見たら守ってやらなきゃと誰でも思うね。

 「とりあえずもうすぐ授業始まるから教室行くか・・・」

 「うん」

阪中と並んで教室に入る。おれの後ろの席はまだ空いている・・・

坂中が合流すると周りの女子はしきりに良かったねを連呼しているし谷口は微笑んでいるような拗ねているような微妙な表情でこっちに来ようとしたがハルヒが教室に入ってくるのを見て思いとどまったようだ。

 「放課後に話がある」

 「そう」

会話はそれだけだった。

 放課後 

 「ついてきてくれ」

 ハルヒは無言でついてくる。

 「ちょっとこいつと話してくるから」

阪中はちょっと拗ねたような表情をしたがコックリ頷いた。ハルヒの表情はわからない、まあこいつのことだから怒ったような顔してるんだろうな。ハルヒは無言で屋上までついてきた。

[ギイィ]

この音を聞くのも今日何度目だろうね。

 「昨日からまともに会話らしい会話してないな」

 「そうね・・・」

 「昨日は良く眠れたか?」 

 「普通に・・・」 

おれはなにを言ってるんだ?こんなことを言うためにハルヒを呼んだんじゃないだろ・・・気まずい沈黙が続く・・・

 「なんの用?」

朝以来にハルヒの顔をちゃんと見た・・・目が赤いのはもう気のせいとは言えないな。

 「おれな・・・・阪中と付き合うことになったんだ・・・」

 「・・・・・SOS団は?」

ハルヒの泣きそうな顔なんて見るもんじゃないね・・・おれまで泣きそうになる。

 「SOS団にももう参加することはないと思う・・・・」

 「そう・・・・」

 「じゃあな・・・・」おれはなぜか溢れそうになる涙を堪えて歩き出した。

 [ギィィ]

おれが屋上から去ろうとした時後ろからハルヒが言った。

 「キョン・・・あたしキョンのこと好きだったよ・・・多分これからもずっと好き・・・」振り返るとハルヒの目からは一筋の涙がこぼれていた・・・

 

「キョ・・起き・・・」

もう少し寝かせてくれ・・・

 「キ・・君・起・・・-」

うるさいなまったく・・・・

 「キョン君起きてー」

ああまったくいつになったらおれの上で飛び跳ねるのをやめてくれるんだろうね、もう小学5年になるのに・・・まあやめたらやめたで寂しい気もするが。

 いつものように妹の攻撃でしぶしぶ起きるおれに妹は言った。

 「キョン君どうして泣いてるのー?」

 気付いたらおれの目からは大粒の涙がこぼれていた・・・そういえばなんかすごく悲しい夢を見ていた気がするな・・・・おれは学校の屋上にいた気がする・・・一緒にいたのは・・・誰だ?・・・思い出せない・・・

 「キョン君泣き虫だねーよしよし」

と言って妹が頭を撫でてくる。まあたかが夢だし真剣に考えたってしょうがないな。

 「ああなんでもない、ゴミが目にはいったんだろ」

 時計を見るといつもより五分も遅い。おれは飛び起きて朝飯をかっ込み、自転車に飛び乗った。自転車を停めていつものように声を掛ける

 「おはよう阪中」

 「キョン君おはよう。今日はちょっと遅いね。寝坊?」

 「ああちょっと変な夢を見てな」

 こんな感じでいつものように坂を登っていくと途中でアホな声が聞こえてくる。

 「まったく朝っぱらから見せつけやがって!!」

谷口がおれと阪中の横を全力疾走しながら負け惜しみのようなことを言って追い越していった。

 「ふふ、谷口君はいつも元気ね」

 「あいつはアホなだけだろ」

この坂道を阪中と歩くようになったのはいつからだっけな?そんなことを考えながら校門をくぐり1-7の教室に向かうと廊下で見覚えのある女子とすれ違った・・・

 「今の誰だっけ?」

 「涼宮さんを忘れたの?1-5組の有名人じゃない・・・学校で知らない人なんていないでしょう?・・・キョン君なんで泣いてるの?」

なぜか分からないがおれの目からは大量の涙がこぼれていた・・・・・

 

終わり


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