綿流し当日

「そろそろ出かけるか・・・」
時計の針が4時を指そうとしていた。集合時間は5時なんだがあいつらSOS団のメンバーには
そんなもん不要だ。俺が着く頃には全員が集合しているのだ。
お前ら集合時間無視かよ!
とにかく着替えてうちを出るとするか、
ピンポーン♪
「ん?誰だ?」
「はいは~い♪」どうやら妹が出てくれたようだ。
「・・・・」
「・・・・」
誰だ妹の友達か?
「キョン君~ハルにゃんだよ~!」
何!?うちにまで押しかけてきたのか!?ヤバい急がなきゃいかん!
・・・・
「!!」
「あんた遅いわよ!」
「キョン君こんにちは~♪」
「どうも」
SOS団全員集合だった、、、一人を抜かして・・・



「キョン君~!後であたしも行くからね~♪」
妹に見送られ家を出る俺たち。
ハルヒたちは浴衣を着ていた。朝比奈さんは黄色の金魚柄、ハルヒはハイビスカス柄だった。
うん。やはり祭には浴衣が一番だ!!
「お前ら、、うちまでくることないだろ!」
「あんたが遅いからよ!」
「でもキョン君の家って行ったことなかったからなんか新鮮でしたね♪」
朝比奈さんならいつでも大歓迎ですよ、むしろずっと・・・。
「まぁーたなんか変なこと考えてんのね、変態!!」
なぜこうも俺は表情から読まれるのだろうか。
「なぁ、長門は?」
「長門さんは神社で打ち合わせのようですよ。おそらく奉納演舞の最終調整でしょう」
そうだ、今日は祭の出店も楽しみだが、長門の演舞が一番の目的なのだ。
毎日練習をしていたようだ。聞いた話では餅をつくための杵を使っていたらしい。
あの細腕で杵を持つのはきついだろうに、、。


・・・・
「さぁー着いたわね!!まずは有希と合流しなくちゃね!」
「あっ!長門さんあそこにいますよ♪」
「みんな行くわよっ!」
長門の元へ向かう俺たち。
「おぉっ・・・」
おもわず口が開いてしまいそうだった。そこには巫女さんの衣装に包まれた長門が立っていた。
「(す、素晴らしい!!朝比奈さんのメイド衣装には劣るがそれでもいい勝負だ。)」
「長門さんすっごい似合ってますよ~~♪」
「うんっ!いいじゃないっ!似合ってるわよっ有希!」
「とてもお似合いですよ」
「あぁ、いい感じだ、長門!」
「・・・そう」
メンバーがそろった俺たちはさっそく祭を堪能することにした。
しかしいいねぇ浴衣を着た2人と巫女さんが1人最高の状況だ。
(古泉もいるがあえて触れないでおこう。そのほうが幸せを感じていられるからだ。)


「さぁ出店と言ったらやっぱりこれよね!!焼きそばに、たこ焼き!キョン、有希!早食い勝負よ!
よーいドンッ!」
「あってめぇ!フライングだぞ!!」
「ハフハフッ・・」
「あっつ!!舌が!ハフハフッ・・」
「(もぐもぐ・・・)」
「うわぁ~みなさんすごいですねぇ、、。うん♪おいしいです」
「やはり祭はこうでなくてはなりませんね(ニコニコ)」
「やった、いっちば~ん!!」
「・・・」
「・・!?ウッ!?ゴホッッ!み、水・・・」
「キョン君大丈夫ですかぁ~!?・・はい!水です!!」
「っフゥ~、、、ありがとうございます、朝比奈さん・・・」
「バッカねぇ~急いで食べるからよ!!」
「誰のせいだっ!誰の!!」
「さぁ次行きましょう!次!!」無視かてめぇ!!


その後、リンゴ飴、バナナチョコ、綿飴などなど多くの出店を回った俺たち。
そこでハルヒが提案してきた。
「ねぇ、みんな?射的でもやらない?」
「とても良い考えかと」
「取れるでしょうかぁ・・・?」
「おいハルヒ!?まさか射的で勝負するつもりじゃないだろうなぁ?」
「あったりまえでしょ!!私たちはSOS団なのよっ!そんな質問は愚問よっ!!」
やはりか・・・。ということは罰ゲームもあるのか。ハァ・・・。
カシャッ
カメラのシャッター音だった。
「やぁ、みんな元気そうだね」
「裕さん!やっぱり今年も写真を撮りにきたのねっ!いい加減になんか賞でもとってどっかに
雇われなさいよっ!」
「ハハッ、ハルヒちゃんは相変わらずきついなぁ。」
「お久しぶりですね、裕さん」
「ほんとですねぇ~いい写真は撮れましたかぁ?」
「・・・」
「やぁ古泉君に、みくるちゃん、有希ちゃん久しぶりだね」



裕さんだった。俺が最後に会ったのはあのゴミ捨て場でのことだった。
未だに鮮明に残っている。思えばあそこで裕さんに会わなければ俺はあんな嫌な気分には
ならなかっただろう。
それにしてもみんな裕さんのことを知っているのか?そういえば雛見沢には何回か来るって
言ってたな。
「やぁ、キョン君、久しぶりだね」
「あぁ、どうも・・」
俺はちょっと遠慮がちに言った。やはりこの人をあまり信用したくなかったからだ。
しかし、みんなとの親しげな様子を見るととても悪い人には見えない。
少しは信頼してもいいかも・・・。
「裕さんも一緒に射的やりませんかぁ?」
「いいわね!いいでしょ裕さん?」
「それならば準団員の席を渡すというのはいかがでしょうか?副団長の僕からも推薦しますよ」
「そうねぇ・・・よしっ団長としてここに命ずるわ!多丸裕さんをSOS団準団員に任命しますっ!」
「えっ?なんだいそのSOS団って言うのは?」
やはり聞くよな、俺だって理解できなかったんだから。


「我がSOS団は宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことを目的としているのよ!」
「つまり涼宮さんがおっしゃりたいのはみんなで村を探検したり、ゲームをしようということ
 なのですよ」
俺の時と同様古泉の説明によって裕さんも理解できたようだった。
「ゲームか・・・いいねおもしろそうだ!よし僕も入団させてもらうよ」
「ようしっ!みんないくわよっ!!!」
「「おおっーーー!」」
・・・・
「おっじさーん!!6人ね!!」
「はいっ!まいどぉっ!おぉハルヒちゃん、ずいぶん団体で来たねぇ!」
「みんないい腕してるわよっ!おじさん、今日の目玉は?」
「おっ、よくぞ聞いてくれた!今日の当たりはこれだぁっ!!」
と、射的屋のおっさんが指したのは、これまたでかいクマのぬいぐるみだった。


「わぁっ!かわいいですねぇ!あたしあのクマさんをねらいますぅっ!!」
クマのぬいぐるみを持つ少女、いいねぇ・・・いかんっ、よだれが!
「ずいぶん奮発したわねぇ!あれ取られたら赤字なんじゃないのぉ??」
「ははっ、そんな簡単に取られてたまるかっての!さぁ!誰からだい?」
「そうねぇ、誰からいく?あっ、ちなみに勝負だけど、今回は量より質でいくからねっ!!」
今回も厳しい戦いになりそうだ。
「あっ、あたし良いですかぁ?」なんと予想外にも朝比奈さんが手を挙げた。
「よしっ!よく言ったみくるちゃん!嫌って言うほど取ってきなさぁ~い!!」
「朝比奈さん、がんばってくださいね!!」
「がんばりますっ!!」
さて、何を狙うのが無難だろうか。量より質重視なのでやはり一番を狙うにはあのデカいクマだろう。
しかし、コルク弾3発じゃなんともキツいものがある。



「よぉしっ、いきますっ!」
がんばれ!朝比奈さん!!心の中で祈る俺だった。
「ていっ!」
カスッ
「う~ん、えいっ!」
ポヨン
「最後の一発ぅ・・・いっけぇ~!」
シュパッ!
おぉ、朝比奈さんの気持ちが弾の乗った!!
しかし・・・
ポヨン
「・・・ふぇ~ん、、当たったのにぃ、、クマしゃん・・・」
「うぅーん、お嬢ちゃんよく頑張ったね!ほんとはダメなんだけどこいつはおまけだっ!努力賞ってことで!」
とおっさんがあげたのはキャラメルだった。
「えっ・・?うわぁ、ありがとうございまぁす!クマさんは残念ですけどうれしいですぅ♪」
「良かったですね、朝比奈さん」
「はいっ♪」


「さぁ、次は誰いく?古泉君次どう?」
「それではいかせていただきましょう、さて何を狙いますかね、、、」
「古泉君っしっかりねっ!!」
古泉、お前はそんなにがんばらなくていいぞ、俺が罰ゲームになる可能性が低くなるからな。
「うーん、やはり狙うはクマですかね・・・」
ポヨン
「おやおや、やはりコルク弾では厳しいようですね、ここは無難にこちらを狙うべきですかね・・・」
パンッ!
パンッ!
古泉が2発打ち込むと、
パタン
「はいっ!キャンデー1個ね!!兄ちゃん、男はやっぱり大物狙いじゃないのかい?」
「ハハハ、僕には到底無理ですよ」
古泉め、地味に取ってきやがった、最下位は避けようとしているのが見え見えだ。こいつはやばいぜ。
「さぁて、そろそろあたしの番ね!」
そう言うとハルヒは銃を持って品定めをしているようだった。
「うぅーん・・・難しいところね・・・」
そのときハルヒがチラッとクマのぬいぐるみを見たような気がした。
「やっぱり勝ちを狙うんだったらこれね!!」
パンッ! パタン
パンッ! パタン
パンッ! パタン
「「おおぉー!!」」
見事な腕前だ、やはり団長を名乗るだけあってあなどれんな。他の客からも歓声が上がるほどだ。
「お見事っ!!ハルヒちゃん、3発命中とはやるねぇ!」
「へっへーん!SOS団団長の名は伊達じゃないのよっ!さぁ次は誰っ!?」



そろそろ俺が行こうかと思ったとき、
「キョン君キョン君・・・」ぼそぼそと小声で呼ぶ裕さんだった。
「・・・なんですか?」
「2人で協力してあのクマを落とさないかい?」
「えっ?」
「作戦があるんだ・・・いいかい?・・・こうやって・・・次に・・・わかったかい?」
「うまくいきますかねぇ?」
「もちろん!君の腕ならいけるさ!それじゃ僕が先に行くよ、準備しておくんだよ」
「はい!」
手はずはこうだった。まずあのクマは1人で打ち落とすのには無理がある。そこで最初に裕さんが
いき3発打つとすぐに俺と交代する。そして俺が打ち落とすという作戦だった・・・
「さぁていくよ!おじさん!銃もう一丁準備しといてっ!!よしっ・・・」


緊張の一瞬だ。
パンッ! ポヨン!
パンッ! グラッ!
おぉ!クマが揺れている!!
「キョン君!良いかい!?最後の一発いくよ!!」
パンッ! グラッ!
「はいッ!!いきます!」
「えっ!?キョン!?」
何がなんだかわからずとまどうハルヒを後ろに俺は素早く前に出て裕さんと交代した。
落ち着けっ、このチャンスを大事にするんだ・・・照準を合わし、
「いけっ!」


パンッ!
1発目がすでにグラグラ揺れているクマの頭部に当たる。
「「おおっ!大きく揺れている!!」」
そんな観客の声も聞こえずに俺は次に集中する。
「当たれっ!」
パンッ!
2発目が当たり先ほどよりも大きく揺れる。
「すごいですぅ!もしかしたら落ちるかもしれませんね!」
「キョン!!絶対に取るのよ!!」
3発目を打ち込もうとする、
(まだだ・・・タイミングを狙えッ・・・大きく後ろに揺れたときに・・・)
「ここだぁ!」
パンッ!
3発目が放たれ固唾をのむ俺。
ドクンドクンドクン・・・・
ボヨン
当たった!!落ちろ、落ちろ・・・
「落ちろ!」おもわず叫んでしまった。
グラッ、グラッ・・・

バタンッ!!!!

「「「ウォーーーーーー!!!!!!!」」」


や、やった・・・
「やった!落としたぞ!!」
「すごいですぅ!やりましたねキョン君!」
「よくやったわキョン!!それでこそSOS団の団員よッ!!!」
「全くあなたにはかないませんね」
「よくやったね!キョン君!」
「裕さんのおかげですよ!!裕さんが先にやってくれたからです!」
「いやぁ、まさか取られるとは思わなかったぜ、これで赤字かなハハハ!
 でもいいもん見せてもらったぜ兄ちゃん!ほい、戦利品だ!!」
おっさんから賞品を受け取ると改めてこのクマの大きさに驚く、よくこんなもの落としたな。
「裕さん、これ・・・」
「キョン君、君が落としたんだ!これは君の物だよ」
「あ、ありがとうございます・・・」
とは言ったものの俺は勝負のために取ったのであって本当に欲しかったわけではない。


さて、これをどうするべきかな。
「うわぁ♪やっぱりかわいいですねぇ♪」
「ほんと!かわいすぎてキョンなんかには似合わないわね!」
「まさかとは思いますがあなたの部屋に飾るのですか?」
んなわけねぇだろ!!俺はそんな少女趣味じゃねぇ!!
妹にでもやろうかな・・・
ん?なんだハルヒがチラチラ見てるな。まさかあいつ、クマが欲しいのか!?
・・・う~ん、まぁここに越してきたときから世話になってるしな。団長様の機嫌を取っておくのも
悪くないかもしれん。
「おいハルヒ!」
「何よ・・・」
「その、あれだよ、、えーと、これお前にやるよ・・・」
「えっ!?あたしに?」
呆気にとられた顔が一気に喜びで一杯にする。
「あぁ、なんがかんだ言ってお前にはそれなりに世話になってるしな。まぁお礼って奴だ」
「そ、そうよね!あんたは団員なんだもの!団長には優しくするべきよねっ!うん、良い心がけよキョン!」
なんてごまかしてるが本当にうれしそうに笑っている。こいつにあげて正解だったかな・・・



「良かったですね涼宮さん?キョン君からもらえて、ふふふ♪」
「な!何言ってんのよみくるちゃん!!??こんなバカキョンからもらったって何ともないわよ!!」
「ふふふ♪そうですね、うふふふ♪」
「全く・・・」
「うらやましいですね涼宮さんが」
「気持ち悪い奴だ、お前も欲しかったのか?」
「いえいえ、そういうわけではなく・・・まぁあえて言わないでおきましょう」
ニヤニヤ笑いやがって、殴るぞ?
「あれ?長門さんはぁ?」
「あぁ有希はそろそろ準備だからって先に行ったわ」
ドーン!
太鼓の音だ。何かの合図か?
「あ!大変、演舞が始まっちゃうわ!みんな急ぎましょう!!キョン、ボサッとしてないで行くわよ!」
俺の腕を引っ張りながらハルヒが言った。おいおいそんなに急ぐことないだろ。
「(ボソボソ)あ・・・う」
「あ?なんか言ったか?」
「何も言ってないわよ!!さっさと走りなさい!」
うそだった。俺の耳にはちゃんと聞こえていた。ハルヒが小さな声で『ありがとう』と言うのを。


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