「横いいかいっ」
と風呂に入ってきた鶴屋さんは、俺と一緒に夜の星空を見上げている。
星がよく見える。今夜ハ晴天ナリ。ってやつか。
時折聞こえてくる、風の音。なびく木の葉のささやき。
もうすぐ、春がやって来るんだな。
心地よい湯船に揺られ、いつしか極楽へといざなう。
「「あ~、極楽極楽」」
って鶴屋さんも、同じこと考えてたんすか。
ニカッと笑う笑顔も、気分を和やかにする。

「ところでさっ」
鶴屋さんが話しかけてきた。
「はいはい、なんでしょうか」
風呂につかって、友人とのふれあいもまた楽しみの一つ。
「わたし・・・強い女だとおもう?」
ふむ、鶴屋さんが強いとな?
意外なご相談ではあるが、それほど心配することもないでしょう。
「強いというか・・・パワフルですよね。」
「あれれ、おんなじ意味じゃないかっ?」
まあそうなんですけどね。ただ・・・
「パワフルはパワフルでも・・・マッチョではないんですよね」                           さっと身を隠さないでください。そっちじゃありませんから。
「じゃあ・・・どうなのさっ」
「たとえば、ハルヒが結婚するとしましょう。
ええ、はい、仮定です。そんな顔しないでください。
どんな主婦になると思いますか?」
「きっと鬼嫁になっているにょろっ。
ハルにゃんの旦那さん、いつも奥さんのわがままを聞いて、とても幸せそうにょろっ」
いや、幸せかどうかはわかりませんが。
まあ、カカア天下は間違いないだろうな。
「それが、どうかしたにょろ?」
「それって、パワフルってよりかはマッチョですよね、イメージ的に。」
鶴屋さんは少し考えて、
「それってどういう意味さっ」
なにやら楽しそうに俺の話を聞いてくれている。いいよな、こういうのって。
「パワフルとマッチョな主婦ってのは、似ているようで似てないんです。」
「ほうほう、どういう風に?」
俺は深呼吸入れて、これは自分の勝手な想像ですけど、と前置きした。
「マッチョの主婦っていつも元気があって、常に旦那さんを振り回していますよね。
時には暴力を振るっちゃいますが。」
「うんうん、ハルにゃんがそんなことしているのが簡単に想像できるにょろ~」
「けど、旦那さんを愛しているのには変わりがないんです。
もし、旦那さんがとてもつらいことを経験して、鬱になっていたら、
奥さんはやさしく抱きしめると思うんですよ。                                  『大丈夫。あたしがいるから。 あんたは気にしないで自分の道を進みなさい』                  ってね。そして旦那さんが元気をとりもどした刹那、                                 抱きしめていた手を首にやってプロレスの技をかけると。」                                     「あっはっは~。本当にハルにゃん、してそうにょろ~」
まあ、俺の実体験なんですがね。あの時はマジで痛かった。
もう少し手加減してくれてもいいじゃないか、ハルヒ。
まあ、あんな優しい言葉は微塵も無かったがな。
「んでんで、パワフルの人はどうなのさっ」
「そのパワフルな人っていうのは、普段は物静かなんです。
旦那さんの愚痴話を聞くとか、要は亭主関白な夫婦ですね。」
「あれ、でもそれってパワフルじゃないにょろ~」
「ええ、まあそうなんですが、もし、今さっきのように、
旦那さんが思いつめていた時には、ビシッと言うんですよ。
『あなたがしっかりしなければ、私達家族は路頭に迷うことになるのですよ』と。」
鶴屋さんの目が涙ぐんでいるような気がした。
「と・・・いうことは・・・私って・・・」
「はい、あなたはそういう風な、強い人ですよ。鶴屋さん。」
突然鶴屋さんが大声で泣き出した。
あ・・・あれ~、な、なんで泣いていらっしゃるのですかね、つ、鶴屋さん。
ひょっとして俺の責任か?そんなに傷ついたことを言ったのか、俺は。
本日最大の汚点、女性を泣かす。
「あ、あの・・・ごめんなさい・・・」
「うっ・・・そんなんじゃ・・・うぐっ、なぐって・・・」
少なくとも「殴って」じゃあないですよね。「そんなんじゃなくって」か?
じゃあなんなんですか。
「そのっ・・・」
鶴屋さんが深呼吸一つ置いて、はっきりこう言った。
「ありがとう・・・」                                                                  ええとつまり?・・・嬉し涙というわけですか、鶴屋さん。
そんなに感激されなくても。というか、かなりこの風呂に入っていますよね。
「そろそろあがりましょう。のぼせちゃいますよ。」
鶴屋さんは、コクンとうなずいた。顔には、嬉しさ爆発な表情を浮かべていた。

まさかタオル一丁の鶴屋さんと一緒に出ることはできないので、
とりあえず俺から先にあがることにした。
ん、まてよ。着替えの部屋には、鶴屋さんの下着があるってことだよな?!
いや、そこまで力まなくてもいいだろ、俺。
と少しぐらいは期待して着替えの部屋に入ると、
まあなんと利儀なことか。俺の脱いだ服がすでに着替えの服に変わっているではないか。
まあこの様子だと、鶴屋さんの服も当然変えてあるだろうねえ。
・・・決して見たかったわけではない。

着替える服を見ても、やっぱすげえと思ってしまう。
ただの浴衣にしか見えないか、中はとてもとても暖かく、
なんだか幸せな気分になってしまう。お初ばかりだな。
浴衣をきて終始優雅な気分を満喫していると、ドアが開く音が聞こえた。
鶴屋さんか。
「あー、あっついにょろね~」
一応見ないようには努力したさ。けどな・・・その・・・なんとういか・・・
少しぐらいは隠したほうがいいですよ。・・・鏡で見てしまった。
そしてこっから俺の息子があー!・・・なんともなかった。
不思議だねえ。まあ、つまり俺は、鶴屋さんを受け入れてしまったということか。
(今日だけなんだよな、この関係・・・)
っておい俺。何考えてやがる。なんで残念がっているんだよ。






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