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 季節は巡り、いま俺達は高校2年を絶賛満喫中である。もちろんその間にもいろいろな事件、イベント、喜緑さんの正体やら様々な経験を経て今に至るわけだが、その点について語っていてはいつになっても終わらないので、今回は、SOS団発行の文芸誌、二冊目を発刊することになったことについてだけ触れさせてもらう。
詳細はそれこそ長くなるから割愛させてくれ。スマン。恨むなら古泉を恨んでくれ。

 前回と同様、原稿に関しては各々にジャンルが呈示され、とりあえず全員無事に提出された。
 古泉はシュール短編、長門はライトノベル系、朝比奈さんはホラーとなってしまった。
 いずれ機会があったら皆さんの目に留まることもあるだろう。
 鶴屋さんの爆笑コメディに関しては言うまでもない。あれ単行本化されないかとひそかに期待している向きもある。
 何を隠そう俺もその一人だ。

 そして俺に託されたのは、又恋愛小説だった。もうほんと、好きにしてくれよ。

 今回以前と違ったのは、校了前に原稿を読み合わせする、と編集長が厳命したことである。
「ちょっとキョン!何なのよ今回の原稿!」
 やれやれ。やっぱり来たよ、鬼編集長の読み合わせ校正責め。
「表現に関しては各々の文体ってのがあるから大目に見るとして、こことここ!
これ誤字!JIS第一水準よ!ほんとに中学卒業したの?あと句読点の扱いもひどすぎるわよ!? 」

 いやいや編集長、俺長文を書いたことなんかただの一度しかない訳で、 しかもありゃドキュメンタリーと言うかエッセイと言うか、ともかく創作は初めてなわけでね。
 あなた様が今回は創作恋愛を書けって仰るから、足りない頭をフル回転してだな、何とか形にしたわけでな。
 前回の失敗を反省材料にして、自分以外を主人公にしてみようとしたんだが、これが上手く言ってないんだな。
 遠ざけようとすればするほど、自分の感覚を暴露するようになってくる、というのが正しいのかね。
 後で読み返したら自分でも恥ずかしくてタンクローリーの下敷きになって死ねた方がまだましに思える事だってきっとあるだろうよ。
 まあ、正直死ぬ思いをするのはもう充分ではあるのだが。

 というか書いた瞬間は自分では自信満々に書いたつもりだったのに、なんでこんなに間違ってるんだ。
 今すぐ部室の床に穴を空けて飛び込みたい気分だ。

「それにしたって…」

「…ともかく今回のは俺が悪かった。きちんと直してくるから許してくれ、
いや、締切を延ばしていただけませんか?編集長。」

「…。」
 鬼編集長はなぜか急に俺から目を逸らすと、窓の方に歩みより、何もない青空に向かって語りかけるように、こう仰った。
「ま、まあ、内容はそんなに悪くないような気もしないでもないって言うか、
そもそもこれ書きかけなんでしょ。無理やり終わらせたように見せかけてるけど、
あ、あたしにはわかるんだからね。どうせなら最後までちゃんと完結させてから
見せなさいよ!…続きが気になるじゃない…」

 え、最後なんつった?よく聞こえなかったんだが。

「あ、いや、その、…ともかくこんなんじゃダメなの!もっと私を満足させるようなものを書いてきなさいっ!
…あなたなら書けるはずなんだから…」

 ? どうもさっきから語尾が良く聞こえない。ともかく今回の俺の作品はお気に召さなかったようだ。
大体細部ばっかりで、内容については触れてもくれないもんな。

「だ、だからさっき内容については悪くない…ような気がしないでもない…って言ったでしょ!ともかく
最後まで読まなきゃ感想だって言えないわよ!」

 そうか。それは俺が悪かったな。今度は、きちんと完成してから、ご閲覧いただくことにしよう。
「…それで、締切は延ばしていただけるんでしょうか、ご慈悲深い編集長様?」

 ここに至ってやっとハルヒはこちらを振り向き、哀れな素人作者に絶望的な宣告を下した。

 「なによその卑下した言い草は。スケジュール的にはもう校了してなきゃならないのよ?
…明日。明日までに、完成させてきなさいよね。もちろん推敲は済ませてきなさいよ。
今度間違いを見つけたら、死刑なんだから!」

 もしかして早くお前が読みたいんじゃないのか、とは言わないことにしたよ。

 その代わり俺はいつものように言うのさ。


 やれやれ、と。


終わり
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