朝、布団から抜け出そうとすると世界がぐるぐるしていた。
上下が逆になり、視界が揺れる。

………どうやらヒドい目眩と熱を併発させてしまったようだ。
ちなみに今日は土曜日で学校はないのだけどな…
せっかくの休日が丸一日潰れてしまうのはもったいない気がするな。
ぼんやりとした意識の中、親が俺の異変に気づいたのか、
車に乗せられて近くの内科に俺は運ばれた。
近くにあったものの初めて来た内科だ。
なかなか大きな建物に、それ相応の看板。そこにはこう書いてあった…

『由良内科』

ま、まさかな…俺は朦朧とする意識のなか、1人のクラスメイトの顔を思い浮かべていた。
俺って、予知能力者だったっけ…?いや、ただの妄言だ。気にしないでくれ。
院内にはいると俺が思い浮かべた顔と寸分の違いもない、少女が、そこにいた。

「あら?こんなところで会うなんて珍しいね」
「な、なんでお前がこんなところに?」
「あれ?言ってなかったっけ?うちの両親、医者なの」

まさに絶句。

「暇があるときはね、会計とか雑用とか色々手伝ってるんだ」

まさに子の鑑。

と、モノローグにも変な影響が出ている俺をよそにして、
その少女―由良は言った。

「とりあえず、名簿に名前書いてくれる?具合悪いから来たんでしょ?」

俺が動転のあまり忘れていた、当たり前の行動を促す由良。

「あ、あぁ…」

親は車で運んでくれただけで、この場にはいない。
まぁ病院まで運んでくれただけでもありがたいし、別に構わない。
当然俺が書かなきゃいけなくなる。
症状等をできるだけ細かく書いて問診表を由良に渡すと、

「君が病気になるとは想像もしなかったな」

控えめに笑いながら由良はそう言った。
なんだ?俺がバカだ、って言いたいのか?
確かにテストは赤点ラインすれすれを低空飛行しているが…他にもそんな奴いるだろ。
なんとなく小馬鹿にされた気分になり、不機嫌な気持ちで診察を待った。
診察中のことについては特に喋ることもなく、
由良の親父さんと思われるナイスミドルに点滴の刑に処せられたくらいだ。
今は白い天井とにらめっこしながら、腕から伸びているチューブ内を通る薬に身を委ねてるだけだ。
突然、仕切られたカーテンから人影が見えた。
人影はカーテンを開けてこう言った。

「なんとなく心配だったから様子を見に来たの」

俺の体を由良の優しさが包み込んだような気がした。

「しばらくここに居てもいいかな?」
「あ、あぁ…もちろんだ…」
「ふふっ、ありがと♪」

そう言って笑う由良が愛おしく思えた。
…………惚れたか?
まぁ、それも悪くないがな。

「点滴が終わるまで時間あるし、寝たら?寝たほうが楽になると思うよ」

確かに薬の副作用か、眠くなってきた…
重くなる瞼…俺が眠りの世界に入るのにそう時間はかからなかった。




………ギシギシ
……ギシギシ
…ギシギシ

謎の音で目を覚ます。

「おや、お目覚めですか?」
「!?」
「そんなに驚かないでくださいよ」
「お、お前は…古泉…な、なぜここに…」
「機関の力で、ですかね。…あぁ由良さん、でしたっけ。彼女なら昼休み中です。今はここには居ませんよ」
「で、お前は一体なにをしているんだ?」
「まだお気づきになりませんか?」
「????」
「ふふふ…マッガーレ!」
「アッー!?」
「あなたを… ほ っ て る ん で す よ ! 」
「アナルだけは!!アナルだけは!!」
「あなたはいけない子だ…ここはアナルスレだというのに、真面目な語り口」
「そして実はモノローグからキョンタンと思わせておいて、あなたは谷口君ですしね」
「WAWAWA…たまには主人公気分に浸りたくって…」
「いいえ…許されぬ大罪ですね…今日はキツめにいきますよ…ふんもっふぅ!!!」
「アッーーーーーーーーーー!!!!!」


由良内科―完―

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