久しぶりの探索のない土曜日。俺は妹とミヨキチを連れて河原に来ている。
なんでも、理科の実験の為の石がどうとか、自然の粘土がどうとか言っていた。
んで「危ないからキョンくんもついて来て~!」だそうだ。
まぁ、確かにヒマ人だが。
そして、河原で何があったかというと…何もねぇ。
俺は、川に足をつけながら何やら石だの泥だのを取っている妹とミヨキチを見ながら、斜面に寝転がっていた。
今日は、見事に眠気を誘うポカポカ陽気。
俺はその陽気に身を委ね、そのまま目をつぶった。

しばらくたつと、不意に目が覚める。俺の側に立つ、二人の人間、逆光でよく見えねぇ。
「おやまっ!やっぱりキョンくんだねっ!!」
この声……鶴屋さん?
「近くから見ると、よく分かりますねぇ……遠くからだと、別人みたいです。」
こっちは朝比奈さんか?
雲で太陽が隠れて、二人の姿が見えた。
ロングスカートの似合う笑顔の眩しい女性と、中くらいの丈のスカートで童顔ながら大人っぽく微笑む女性が居た。買い物帰りのようだ。
二人とも綺麗だな……私服も新鮮でいい。だが、俺はまず言わなければならないことがある。

「朝比奈さん……パンツ、丸見えです。」
朝比奈さんはすぐに手でスカートを押さえてしゃがみこんだ。
「え、ふえぇっ!?や、やだっ!」
「あっはっはっは!!キョンくん、エッチだねぇっ!今日は何しに来たんだいっ?」
鶴屋さんも同じように俺の横に座りこんだ。
「妹とミヨキチの保護者役ですよ。ほら、あそこです。」
俺が指さすと、そこでは既に水かけ遊びに興じている二人がいた。
「まったくあいつら……。そうだ!朝比奈さんと鶴屋さん、どっちか理科系の科目得意じゃないですか?」
二人はキョトンとした顔で目を見合わせて、返事が返ってきた。
「理科系ならみくるの方が得意だねぇっ、それがどうしたんさっ?」
「実はですね、あいつらの石とか泥とかの採取が理科の実験がどうとかで手伝って欲しいんですよ。」
「あ、それならわたしが行って来ますっ!鶴屋さん、スカート長いですし……ね?」
鶴屋さんがパァッと明るい笑いを浮かべた。
「さすがっ!みくるはかわいくて優しい娘だっ!!もう、おね~さんキスしちゃうさっ!」
と言い、寝転がってる俺の真上で朝比奈さんにキスをした。

「んむっ……!?も、もうっ!わ、わ、わたし妹さん達の所に行って来ますっ!」
「あっひゃひゃひゃ!!みくるってば、か~わいい!こけないように気ぃつけなよっ!」
いや、なんか新しいものを見せて貰っちゃったね。
「ん~?キョンくんもしたかったかいっ!?みくるはあたしんだからダメさっ!」
と言って笑いかけてきた。
「あははは…。取りませんよ。」
俺は苦笑いするしかなかった。

俺と鶴屋さんはもう少し川に近い、平坦な場所に移動した。そこでも陽の光は気持ちよく、相変わらず眠気を誘ってきている。
「ふわぁ……、こんな天気だと眠くなりますよね。」
さっきも眠りかけた所で起きたからな。
「そっかい?……じゃ、さっきは眠ろうとしてたとこ起こしちゃったわけだ。ごめんねっ!」
鶴屋さんが謝るが顔は常に笑顔だ。この癒される満面の笑みが俺の眠気を加速度的に上げている。
耐え切れなくなり、俺が寝転ぼうと頭を降ろすと……柔らかい物に当たった。
「ん?………って、つ、鶴屋さんっ!?」
頭の下にあるのは鶴屋さんの太股、つまり膝枕状態だ。
鶴屋さんは長い髪を垂らして、上から俺を覗きこんだ。

「さっき起こしちゃったお詫びさっ!それとも、あたしの膝枕じゃ眠れないのかいっ?おね~さん、悲しいにょろ~。」
相変わらず、何処までが本気かわからない人だ。しかしこれはこれで心地良いので、そのまま寝ることにした。
「鶴屋さん、ありがとうございます。ふぁ……ついでに、妹達が終わったら……起こして…ください……。」
「んふふふ、おやすみさっ!キョンくんっ!」
俺はそこまで聞くと、意識を閉じた。


「キョ~ンくんっ!!起きなよっ!帰ろうよっ!!」
妹の声で目が覚めた。俺を取り囲むようにミヨキチ、妹、朝比奈さん、そして鶴屋さんの姿が見える。
まさか……ハーレム状態?馬鹿か、俺は。
「いんや~、キョンくんがめがっさ気持ちよく寝てたから、こっちまで気持ちよく過ごせたよっ!!」
「あ~、ごめんなさい。朝比奈さん、鶴屋さん、迷惑かけちゃいましたね。」
半分しか開かない目をこすりながら謝る。するとすぐさま鶴屋さんが返事をしてきた。

「いいっていいって!!あたし達も暇だったのさっ!それに……プププッ、ね!みくるっ!!」
鶴屋さんが朝比奈さんと顔を合わせる。朝比奈さんは顔を赤らめている。……何故だ?
それどころか、妹はニヤニヤ、ミヨキチは少し赤い。
何か俺の顔にイタズラ書きでもしたか?
「そいじゃっ、あたし達は帰るからっ!キョンくん達も気をつけて帰るにょろよっ!」
と言って、朝比奈さんと手を繋いで帰ってしまった。
まったく、不思議な人だ。


その後バスに乗りミヨキチと別れ、妹と家に帰ったわけだが……おかしい。
ほとんどの人間が俺の顔を見て笑っている。そんなにヒドい落書きでもされたのか?
場合によっちゃ、妹をくすぐり地獄に落とす必要があるな……。
帰宅後、すぐに洗面所に行き鏡を見る。……なんじゃこりゃ。
俺の左右の頬にキスマークが4つ。しかも、朝比奈さんにプレゼントしたあの薄いピンク色だ。
「……マジか?」
俺の足りない頭をフル回転させると、左側の二つの小さめのは妹とミヨキチ。
右側の二つは朝比奈さんと鶴屋さんだろう。
何故なら、全て大きさが違うからな。

そんな思考をしていると、メールの着信音が鳴った。開くと…鶴屋さんだ。
《気付いたかいっ?それがキョンくんからわたし達へのお礼で、わたし達からキョンくんへのお礼さっ!今日はめがっさ楽しめたさっ!また、学校で会おうねいっ!そいじゃっ!!》
やけに《!》の多い人だ。まあ、鶴屋さんらしいが。
俺が顔を洗い、部屋に戻ろうとするとまたメールが来た。
《そうそう、これ考えたのはあたしだからみくるを責めないでねっ!キョンくんは格好いいから手を出したくなったのさっ!!じゃねっ!》
まったく、出来たお人だ。
俺は、いろいろ考えていたが全ての思考を中止させ、この言葉を吐いた。
「やれやれ。」

終わり

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