「おはよう。」
「おはようキョン。」
いつもの朝、教室に入った俺は友人の国木田、谷口と朝の挨拶を交わした。
「なぁ、今日の放課後だけどな、ナンパ行こうぜ!」
「…谷口、朝っぱらからそれかよ、一昨日も行っただろうがよ…もういい加減にしようぜ?大体うまくいった事無いだろうが…。」
「馬鹿!失敗を恐れてどうなるってんだ!挑戦無くして成功は無しだ!」
…朝から拳を握りしめて力説している谷口…はぁ…。
こいつとは入学からの付き合いでちょくちょく放課後や休みの日にナンパに付き合わされている。
結果は…言うまでも無いだろう…。
「悪いが今日はゲーセンに行くと国木田と話がついているんだ。またの機会にしよう。」
「…チッ。」
谷口は不満気に舌打ちした後自分の席に戻った。
…北高に入学してそろそろ一年経とうとしている。
この一年特に大きな出来事も無く、放課後や休日は友人とゲーセンに行ったりナンパに行ったりと平凡な生活を送っている。
「おはよう。キョン君。」
「ああ、おはよう朝倉。」
…朝倉涼子、このクラスの中心的存在で谷口曰わく
"AAランクプラス"
の美少女だ。

文化祭や体育祭などでも素晴らしいリーダーシップを発揮し、大いに盛り上げてくれた。
「朝からなんか憂鬱そうね?」
憂鬱?まぁ~毎日妹に乱暴な起こされかたをされてあの坂を毎日登れば憂鬱にもなるさ。
「ふふふっ。」
朝倉は軽く笑った後席へと戻って行った。
「憂鬱ね…」
俺は憂鬱と聞いて後ろの席に座っている人物が頭に浮かんだ。
涼宮ハルヒ
入学後の自己紹介でとてつもなくインパクトのある言葉を吐いた女だ。
容姿、スタイル、そのどちらも極上と言っても良い美少女だが…性格が捻れまくっている。
何度か話し掛けて見たが
「うるさい。」
の一言で切り捨てられている。
俺だけで無く、クラスの誰が話しかけてもその調子だ。
もうみんなこいつとコミュニケーションを取る事を諦めている。
涼宮ハルヒは今も俺の後ろで頬杖を突き憂鬱そうな顔をして窓の外を眺めている。
「おはようみんな。」
担任の岡部が入って来た…そんなこんなで授業が始まった。
~一限目~
「…で、この場合はこの公式を使って…」
今日もいつもの通り授業は進んでいる…が…今日はなんか体調がおかしい…。
教師の言葉がまったく耳に入らない
別に夜更かしした訳じゃ無いんだがな。

俺がそんな事を考えていた時…それが来た…
―ー思い出せ!。
「…っ!」
…突如俺を幻聴と頭痛が襲った。
―ー気づけ!ここは偽物だ!
「…ん!」
…なんだ…これは…
「ううっ…」
ガタッ
俺は突如襲った幻聴と頭痛とめまいの為机から床に転げ落ちた…。
「きゃ!」
「おい!どうしたキョン!」
…意識が…薄れて…
…。
…。
…。

………気がつくと俺は保健室のベットに寝かされていた。
俺は起き上がり、
「…なんだったんだ…あの頭痛…めまい…幻聴は…。」
そう思った時だった。
――思い出せ!
「…っ!」
またか…何なんだよ…何を思い出せってんだ…。
――気づけ!
「…ん!」
…俺は保健室を抜け出し…どこかに歩いている?
俺は…どこに向かっているんだ…?
…。
…。
…。
俺は気がつくとある部屋の前に来ていた。
「…文芸部?」
文芸部…たしか部員0で来年入部者が居なければ廃部になるって話の?
「…。」
俺は誘われるように文芸部室へと入っていった…。
使われて居ない部屋…その部屋は埃臭く殺風景な物だった。
隅の方に本棚があり、机の上にかなり古いパソコンが置いてある…ただそれだけの部屋だった。

「…なんで俺はここに…んっ!!。」
…今までで一番強烈な奴が来た…ん?…今度は幻覚…か!?
俺の目の前に…
"俺"
が立っていた…
―いつまで呆けてんだ俺!いい加減目を覚ませ!覚えてるだろあの日々を?絶対忘れられる訳ねぇだろが!
「…あの…日々…?」
その瞬間頭に何かが駆け抜けた…。
「…SOS団…宇宙人…未来人…超能力者…涼宮ハルヒ…。」
…そうだ…。
「俺は…思い出した。」
そう、俺は完全に思い出した…くそっ!どうなってんだ一体…。
まて、落ち着け俺!俺は普通の奴よりもこの様な事態には耐性がある…そうだ、OK。
まずは整理してみよう。
…まず間違い無くここは改変された世界だ。

ハルヒは…居る。SOS団は結成していないが間違い無く居る。
古泉は…居る。この世界でも同じ様に転校してきている。間違い無い。
朝比奈さんは…居る。谷口が騒いでいた。間違い無い。
長門は…居ない!?…この世界での長門を認識した事は無い!…文芸部も部員0だ…間違い無い。
「…ハルヒも居る…朝比奈さんも古泉も…長門だけが…居ない。」
…何故長門だけが居ないのだろうか?
それにこの事態を引き起こしたのた誰だ?
ハルヒか?それともまた長門か?
…そうだ!きっと長門は何かヒントを残しているはずだ!
俺は本棚へ向かい例の本を探した。
「頼むぜ………あ!」
俺は本をめくりそれを見つけた。
【パソコンの電源を2秒押し離す。それを三回】

例の栞にはそう書かれていた。
俺は直ぐにパソコンに向かい書いてある行動をとった。
ピッ
パソコンは旧型とは思えないスピードで起動し…それが画面に映し出された…。

YUKI.N>…もしもあなたが思い出した時の為にこのメッセージを残す。
「…ああ、思い出したさ。」
YUKI.N>ここは改変された世界。でも涼宮ハルヒは同じ様に力を持ち、古泉一樹、朝比奈みくるも同じく力を持っている。
この事態を起こしたのは情報統合思念体。
…長門のメッセージ。
つまり情報統合思念体内部で大きな動きがあり急進派が力を持ってしまった。
ハルヒの起こす情報爆発を効率良く引き起こすのにSOS団は邪魔な存在と認識され、俺たちがSOS団を結成していない世界に改変した。
そして長門は消去され代わりに朝倉涼子が配置された。
…くそったれが!
YUKI.N>これは仕方の無い事。
それと、涼宮ハルヒに関わらない事を推奨する。
あなたと涼宮ハルヒが接触すると朝倉涼子が同じく行動を起こす確率が高い。
危険。
あなたはこの世界で生きて。
楽しかったありがとう。

「ふざけんなよ!」
YUKI.N>…心残りは…もう一度あなたと図書館へ行きたかった。
「いや、行くぞ!一度と言わず何度でもな!」
YUKI.N>それと…もう一度あなたに私の肉じゃがを食べさせてあげたかった。」
「…すまん。それだけは勘弁だ。」
YUKI.N>…さようなら
…。
…。
このメッセージが表示されるのは一度きりである。
エンターキーを押し消去を。
…。
…。
…。
「…ふざけるなよ。こんなので納得できるかよ!これで終わりだなんて!」
末尾でカーソルが点滅している…あの時と同じか…。
違うのは…あの時はこれを押したら改変世界から抜け出せたが今回は…終わりだ。
「くそっ!」
俺は近くの椅子を蹴飛ばした。
「長門…お前はそれで良いのかよ…」
…。
…。
………!?
待てよ。何故エンターキーを押さないといけないんだ?
別に自動で消去してもかまわないだろ?

…もしかして…。
俺はパソコンに戻り画面を再び見た。
「あの時は別のボタンを押したら終わりだった…今回は?」
俺は祈りを込めて…NOの意味でNボタンを押した。
カチ
…。
…。
…。
YUKI.N>プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・今日。
…。
…。
…。
「…そうだよな…お前だってこのまま消えたくないんだな…任せろ!必ずあの日常を俺が取り戻してやる!」
…。
…。
…鍵か…前回と同じで良いんだよな。
今何時だ?後5分で昼休みか…。
俺はまず古泉の所に向かった。
…。
…。

~9組~
「すまない、古泉一樹を呼んでもらえないか?」
俺は適当に教室から出て来た奴にそう言った。
ほどなくして古泉が来た。
「僕に何か様ですか?」
古泉はこの世界でも変わらない0円スマイルでそう言った。
…あの時と同じで行くか。
俺は声を抑え切り出した。
「突然で悪いが…『機関』という組織に思い当たることはないか?」
「キカン…ですか?どういう字をあてるのでしょう」
…おんなじ反応しやがった。
でも俺は長門のメッセージで知っている。
「お前がここに居る目的は涼宮ハルヒの監視。そして閉鎖空間が現れた時お前はそこで暴れる『神人』を狩る超能力者だ。…違うか?」
すると古泉は俺の手を引き人気の無い場所へ連れて行った。
「あなた…何者ですか?」
古泉は笑みを消し俺にそう詰め寄った。
「…そうだな。今のお前からみたら"異世界人"って所だな。」
「…異世界人?」
「…詳しく話をしたい。放課後、文芸部室まで来てくれないか?」
「……分かりました。」
…古泉は戸惑いと警戒の目を向けながらも了承した。
…さて、次は。
…。
…。

~2年のクラス~
「すいません。朝比奈みくるさんを呼んでいただけませんか?」
俺は朝比奈さんのクラスから出て来た女子生徒にそう言った。
「…ふ~ん。あの子も人気者ねぇ…わかったわ。玉砕しても泣かないようにね。」
…なにやら勘違いしているみたいだが…まぁ良い。
ほどなくして朝比奈さんがやって来た。
みくる「あの~何でしょうか?」
ああ…この世界でも朝比奈さんの美しさは変わらない…早くまたあのお茶を飲める様にせねば!
…おっと!本題本題。
「すいません…ここではちょっと…。」
周りからの好奇の視線が痛い…俺は会話が誰にも聞こえ無い位置まで朝比奈さんを連れて行った。
「突然ですが…あなた未来人ですね?」
単刀直入に俺は言った。
「ななな何をいいい言ってるんですか!そそそんな訳無いじゃないですか!」
…古泉と違い非常にわかりやすい。
「三年前…いや、もうすぐ四年前か。大きな時間振動が検出され、その中心に涼宮ハルヒが居た。
あなたがこの時代に来た目的は涼宮ハルヒを監視する為…違いますか?」
「…あなたは…いったい…。」
「詳しい話をしたいので放課後文芸部室に来ていただけませんか?」
「……はい。」
朝比奈さんもOKだ。
最後はハルヒ…こいつは放課後だな…。
俺は教室に向かった。

~教室~
「キョン!?もう平気なの?」
「びっくりしたぜ。急に倒れるからな。」
国木田と谷口だ。
「ああ、大丈夫だ。すまんな心配かけて。」
「キョン君大丈夫?病院行かなくて平気?」
「ああ朝倉、平気だ。単なる寝不足だからな。」
「寝不足?」
「ちょっと夜更かししすぎたみたいだ。そのせいでめまいがな。
今まで保健室で寝てたからもう大丈夫だ。」
俺はニカッっと笑った。
「…呆れた。どうせゲームでもしてたんでしょ?体調管理はちゃんとしないとね!」
「へいへい…」
朝倉は自分の席に戻って行った。
……怪しまれなかっただろうか。
俺は背中が汗で濡れている事に気づいた。
このまま最後の授業を受け…放課後になった。

さて、朝倉に見つからないようにハルヒを捕まえなければ…
俺はげた箱まで先回りしハルヒを待った。
「キョン、ゲーセンどうするんだ?」
谷口?…そうか、こいつらとゲーセン行く約束してたんだ。
「すまん。今日は帰って寝るわ。まだちょっとめまいがな…。」
「そうか、んなら俺は国木田と二人で行くわ。」
「ああ、すまんな。」
「その代わり明日はナンパ付き合えよ!」
「おう!」
…すまん。元の世界に戻ったら必ずその約束果たすからな。
…。
…来た。
どうしようか…前回と同じで行くか?
いや、朝倉に気づかれる恐れがある。時間も無いし…よし。
周りに人気が無くなった所で俺はハルヒに近づいた。
「世界を大いに盛り上げるジョンスミスをよろしく。」
俺はすれ違いざまハルヒにそう呟いた。
「な!?」
ハルヒは俺に振り向き
「…何であんたがその言葉を…」
驚愕の表情で呟き次の瞬間俺のネクタイを掴もうと手を伸ばした。
ヒョイ
…予想してたからよけるのは簡単だった。
すまんな、今目立つ訳にはいかないんだ。
「詳しい話をしたい。いまからちょっと付き合ってもらえるか?」

「ちょっと…!」
「今は黙ってろ…着いたら話す。」
ハルヒはしばらくの間の後無言で頷いた。
…。
…。
…。
…朝倉に気づかれなかっただろうか…。
ハルヒと文芸部室に向かう途中俺は考えていた。
例えば朝倉が長門だったとして…長門に悟られる事無く行動できるか?
…否。
…気づかれていると考えてよいだろう。
とにかく一刻も早く…。
…。
…。
…着いた。
「ここだ。」
俺はハルヒにそう告げた。
「あんたアタシの前に座っている人よね?…何者?」
「中に入ってからだ。」
俺達は文芸部室に入った。
中ではすでに古泉と朝比奈さんが来ていた。
二人は俺と一緒にハルヒが来た事に驚いているようだ。
…これで揃った。
前回と同じならこれで…

…。
ピッ
「…!?」
良し!
俺は直ぐパソコンに向かう。
「ちょっとあんた!何やってんのよ!話てくれるんじゃなかったの!?」
「すまんみんな、少し待っててくれ!」
みんなに謝罪しパソコンの画面を見た。
…。
…。
YUKI.N>…あなたは鍵を集めた。
これでプログラムが作動する。
でも私はこれを推奨しない。
あまりにも成功率が低すぎる…危険も大きい。
「…危険?」
YUKI.N>…それでもあなたはきっと…。
…このプログラムが起動するのは一度きりである。実行ののち、消去される。非実行が選択された場合は起動せずに消去される。
Ready?
…。
…。
答えは分かっているだろ、長門。
俺はお前を、SOS団を取り戻すと決めたんだ。
危険?上等だ!
俺は指を伸ばし、エンターキーを押し込んだ。
…。
…。
すると本棚が…横にスライドした!?

本棚の有った所に…
…なるほど。そうか。
弾は三発…良いんだな長門。
「ちょっと!人を呼びつけといてさっきから何やってんのよ!!」
すまない、またせたな。
俺はそれを三人に向けた。
「なっ!?」
「ふぇ!?」
「な…何のつもりよあんた…。」
…俺は三人に銃を向けている。
「悪い。話すよりこれが手っ取り早いんだ。」
短針銃。以前も使った銃だ。
これでみんなの記憶を取り戻す。
…まずは…俺は特に考えもなく朝比奈さんに発射した。
針は朝比奈さんの首筋に命中した。
「はぅ…」
朝比奈さんはその場に倒れこんだ。
…すいません。でもすぐにわかりますから。
等と呑気に考えていた時だった。
ゲシッ!
「…え?」
気づくと腕を蹴り上げられ、銃が弾き飛ばされていた。
次の瞬間強い衝撃が俺の顔を襲った。
…俺…殴られ…

俺は古泉に銃を弾き飛ばされ殴られた後、そのまま古泉に押さえつけられていた。
「涼宮さん!彼女を!」
「わ…分かったわ!」
…俺って本当に馬鹿だ…何やってんだ本当に…。
銃を向けられ撃たれるってなったらそりゃ反撃するわな…俺だってそうするさ…。
「大丈夫!生きてるわ。眠っているみたい。」
「そうですか、良かった…さて。」
古泉は俺に向かって言った。
「あなた何をしているか分かっているのですか!?」
…古泉…お前いつも笑っていて気持ち悪い…って思っていたが…うん、やっぱりお前は笑顔が一番似合うぞ!
そんな怖い顔するなよ…。
「待て!話を聞け!」
「あなたが何者で何を企んでいるかはのちに機関の方でゆっくりと聞かせていただきます。」
…ヤベ…絞められている…このままだと落ちる…。
古泉は俺を気絶させようとしている様だ…この力…こいつこんなに強かったのか…。

その時
「…ん。」
「大丈夫!?しっかりして!」
朝比奈さんが目覚めた!?
朝比奈さんは目を開け暫くボーっとした後、ハルヒ、古泉、俺…と見た。
「…朝…比奈…さん…。」
俺は朝比奈さんに手を伸ばした
…ヤバい…意識が…
朝比奈さんは立ち上がり、
「古泉くん!ごめんなさい!」
そう言って古泉にタックルを喰らわした。
「えっ!?」
古泉は予想外の攻撃に対応しきれなかったらしく俺を離し朝比奈さんと一緒に転んだ。
「ゲホッ!ゲホッ!…はぁ…はぁ…。」
「キョンくん!今よ!」
ああ…朝比奈さん。
俺の朝比奈さんだ!
俺は直ぐに銃に飛びつく。
しかし古泉も直ぐに立ち直って銃に飛びついた。
…。
…。
…。
すまん。俺が早かったな。
「うっ!」
針は古泉の額に命中した。
そのまま俺の上に倒れ込む…重い。
「キョンくん!」

俺は古泉の下から抜け出し最後の一人に銃を向ける。
「これは一体どういう事なんですか?」
「朝比奈さん、話は後で。」
「…何よ…一体なんなのよ…」
ハルヒは床にへたり込んで怯えている…白か…。
「キョンくん…どこ見てるの…」
すいません。男の習性なんです。
「ハルヒ…すまない。すぐにお前にも分かるから。」
俺は引き金を引いた。
針はハルヒの太ももに命中…ハルヒも床に倒れ込んだ。
…やれやれ、やっと全員か…。
しかし油断した…危なかった。
最初に古泉を撃っとくべきだったな。
俺が反省している所で朝比奈さんの声が…
「…キョンくん、古泉くんが。」
「…ん。」
「起きたか古泉。」
古泉がノロノロと起き上がった。

「こ…これは…一体…。」
記憶が混乱しているようだ。
そりゃそうだ、記憶が戻ったとは言えしっかりこの世界の記憶もあるからな。
「まずは落ち着け。……それじゃ説明するぞ。」
俺は長門がメッセージで残した事を全て二人に伝えた。
…。
…。
…。
「なるほど、そういう事ですか…。」
「まさか…また世界が改変されていたなんて…。」
…とりあえず俺は仲間を取り戻した。
そしてこれからは…。
「そして、これからあなたは何をしようとしているのですか?」
「ああ…ハルヒに全てを伝えハルヒの力で全てを元に戻すつもりだ。」
俺は二人に伝えた。
…暫く沈黙が続く。
…まぁ、そうだろうな。古泉にしても朝比奈さんにしてもハルヒが自分の力に気づく事を望んでいない。
古泉が口を開いた。
「……分かりました。それしか長門さんを取り戻す方法は無い様ですしね。」
「…いいのか?」
正直驚いた。朝比奈さんはともかく古泉だけは絶対反対すると思っていたからだ。

「…雪山の約束もありますしね…それにあなたを殴ってしまった。いくら記憶が無かったとは言え…申し訳ない事を。」
「気にするな。当然の行動だ。」
「そう言っていただくとホッとします。
…それにですね。この世界での僕は予定通り直接涼宮さんに接触する事無く、ただ監視しているだけなんですよ…実につまらない日々です。」
「私も同じです。」
朝比奈さん?
「…無くなって初めて気づく物なんですね…。」
「そうです。僕は今回は機関としてでは無く、SOS団副団長としてSOS団を取り戻すために動かせていただきます。
もちろん長門も含めてです。」
古泉はいつもの笑顔を浮かべて言った。
「…古泉。」
「そうです!五人揃ってSOS団ですからね!」
「…朝比奈さん。」
最高だ。俺は一人じゃない!
「…ん。」
「涼宮さん!」
「起きたかハルヒ。」
「…キョン…あれ…何…これ…」

「落ち着け…これから全てを話してやる。」
…。
…。
そして俺達は今の状況、正体、力、全てをハルヒに教えた。
最初は信じなかったハルヒも俺がジョンスミスだったという所で俺達が冗談を言っているのでは無いと気づいたようだ。
ハルヒ「…まさに灯台下暗しってやつねね…。」
そうだろう、そうだろう。
ハルヒの待ち望んでいた宇宙人、未来人、超能力者がこんな近くに居たのだからな。
「…それで、どうやったら有希を取り戻せる訳?」
古泉が言った。
「現状では…涼宮さん。あなたの力に頼るしかありません。先ほど話した通り、あなたには神の如き力があります。」
しかしハルヒの反応は…
「…ん~、そこの所がイマイチ実感湧かないのよねぇ~。」
実感湧かないって…俺達がお前の力にどれだけ振り回されたと思っているんだ?

「ハルヒ!間違いなくお前にはとんでもない力があるんだ!だから…。」
…ここで俺の言葉を遮り女の声が響いた…。
「そこまでよ!」
俺達は一斉に振り向いた…そこには…。
「朝倉…涼子…。」
部室の入り口に朝倉涼子が立っていた。
「…長門さんにも困ったものね。こんな小細工をしていたなんて…。」
朝倉は「フン」と笑った後部屋に入って来た。
…。
…。
やはり気づかれていたか…。
「朝倉…長門はどうなっているんだ!」
朝倉は笑顔で言った。
「長門さん?ああ、とっくに消去されているわよ。」
なんだと…。
「何ふざけた事言っているのよ!有希を返しなさい!」
「…笑えない冗談ですね。」
「…なんて…事を…。」
「朝倉ぁ!」
みんな怒りに震えている。
「…なぁ~んちゃって。」
「…え!?」
「嘘よ嘘。そんなに怖い顔しないで。長門さんはちゃんと居るわよ…ほら。」
朝倉はそう言って首にぶら下げたペンダントを見せた。
………あ!?
朝倉の首に掛けられているペンダントにたしかに長門が…居た。

「長門!」
「有希!」
「長門さん!」
「長門さん!」
長門はペンダントの中で悲しそうな目を俺達に向けていた。
「消去する訳無いでしょ?だって長門さん一度私を消したのよ?…そんな簡単に楽にしてあげる訳無いじゃない。」
「…長門を返せ!朝倉!」
「嫌よ。長門さんは今から罰を受けないといけないの…大事なお友達が目の前で殺されるのを見る…って罰をね。」
…やっぱりこいつの目的は…
「…記憶戻らなかったら良かったのにね。こうなった以上前回出来なかった事をやらせてもらうわ。」
…やばい…やばすぎる…。

「キョン君を殺して涼宮ハルヒの情報爆発を観測する…いや、あなた達三人を殺して。」
「!?」
俺達三人…俺と朝比奈さんと古泉か!
「朝倉!…お前の目的は俺だけだろ!この二人は関係無いはずだ!」
朝倉は笑いながら言った。
「状況が前と変わったのよ。あの時はそれほどその二人と涼宮ハルヒは近い関係に無かった。でも今は強い信頼で結ばれている…そう言う事よ。」
なおも朝倉は続ける。

「これから一人一人別の場所にご招待するわ…そして最後に涼宮さんを…切り刻まれたあなた達を見た涼宮さんはどんな情報爆発を見せてくれるかしら…フフフ。」
こ…こいつ…
「朝倉!お前!」
朝倉はナイフを構え。
「知ってた?神様って非情なのよ。…神様って言っても情報統合思念体なんだけどね。
…やっぱり最初はキョン君からね。さあ行きましょうか。」
朝倉はゆっくりと俺に手を伸ばした。
「――!?」
その時誰かが俺の前に出た…古泉!?
古泉は俺に笑顔を向けたまま…その場から消えた…。
…。
…。
…。
…。


~閉鎖空間~
…。
…。
…みんなが消えた!?
…いや、僕が消えたと言った方が良いのでしょうね…。
僕と…
「順番は守らないとダメよ。そんなに死に急ぎたいの?」
…この朝倉涼子と。…。
「…長門さんが居ない今、あなたに対抗できるのは僕だけなものでしてね…。」
「へぇ~、もしかして勝てる気でいるの?」
「僕に…いや、俺に出来ないとでも思ったか!」
…ここではかしこまる必要は無いだろう。
俺は両手に力を込めた…大丈夫…力は使える。
「フフフ…怖い顔ね…あなたニヤケ顔してるよりもこっちの方が素敵よ。」
…しかし半分以下か…自分を光の玉に変える事はやはり出来ないみたいだ。
「でも残念ね…すぐお別れだなんてね。」
朝倉涼子はナイフを構えた。
「ああ、すぐにお別れだ。お前が俺に殺されてな。」
…勝率は…一割以下だ…絶望的な数字だな…だがやるしか無い。
俺の死〓みんなの死だ。
「口だけは達者ね…じゃあ…死んで!」
朝倉涼子は突進して来た。
俺も両手から光を出し死神へと向かった。
「おおおおおお!!」
…。
…。
…。
…。

~部室~
「古泉君と朝倉涼子はどこに消えたの!?」
「おそらく古泉は俺の代わりに朝倉と閉鎖空間に行ったんだろう。
…長門が居ない今、朝倉に対抗出来るのは自分だけだと思ってな…。」
…くっ…古泉…
「…古泉くん…帰って来ますよね…?」
…朝比奈さんは目に涙を溜めて言った。
「当然よ!なんてったって彼はうちの副団長よ!…絶対帰ってくる。」
…古泉…絶対帰ってこいよ!!
…。
…。
…。
…。

~再び閉鎖空間~
…。
…。
…。
「ぐっ!」
俺は壁に叩きつけられた。
「結構頑張るわね。でも後がつかえているのよ。そろそろ死んでくれない?」
どれくらい時間がたっただろうか。
…おそらく20分ぐらいだろうが俺には1時間にも2時間にも感じられていた。
「…化け物が。」
全身血だらけだ。体のあちこちに裂傷を負っている。
…背中の傷が一番深いか…。
朝倉は強い。何よりも素早く攻撃が当たらない。
いや、当たりはする。当たればその部分が消し飛ぶ。
だがすぐに再生しやがる。くそっ!
それに…首に掛けられたネックレス…あの中には長門さんがいる…
下手に攻撃したら長門さんまで…。
「ほ~ら!」
朝倉はナイフを振るって…!?
朝倉のナイフは俺の首筋を掠めた。
「あら、惜しかったわ~。」
後数ミリで頸動脈が斬り裂かれていた…。

俺は右手の光を朝倉に投げる。
しかし朝倉は素早くよけ…足に命中した。
しかしすぐに再生される。
「…結構痛いのよ。これ…そろそろ本気で終わらせるわ。」朝倉は突進してきた…刺突か!?
「ぐっ!」
俺はわずかに身を交わし心臓への攻撃は避けたが朝倉のナイフは俺の左肩を貫いていた。
…激痛が走る中俺は目の前のペンダントに右手を伸ばした。
ブチッ
良し!取った!
しかしその瞬間さらなる激痛が俺を襲った。
朝倉はナイフを俺の太ももに突き刺さしていた。
「ぐおっ!」
朝倉は俺から飛び退き言った。
「馬鹿ね。ペンダントを奪うのでは無くそのままその光で攻撃したら勝てたのに…長門さんが気になったのかしら?」
…ペンダントは奪い取ったが左手と足を封じられた…絶望的だ…。
「これで終わりね。」
朝倉は俺にとどめを刺す為突進してきた。
…駄目だ…動けない…みんなごめん。
朝倉のナイフが迫る。
…朝倉の動きがゆっくりに見える…これがドーパミン効果ってやつか…。
この軌道…右目から入ってそのまま脳にか…即死だな…。
そしてナイフが俺を貫いた。
…。
…。
…。

「…往生際が悪いわね。」
朝倉のナイフは俺の右の手の平を貫いていた。
俺は…まだ死ねない…。
俺はそのまま右手で朝倉の腕を掴み…
朝倉は俺が何をしようとしたのか分かったのか必死に飛び退こうとしたが…
「遅い!!」
左手から放たれた0距離攻撃…朝倉の体は赤い光に包まれ…消滅した。
…。
…。
…。
手の平に刺さったままのナイフが静かに崩れて行く。
俺は静かに言った。
「俺の勝ちだ…。」…。
…。
…。
閉鎖空間が崩れ始める。
俺は…僕は長門さんの入ったペンダントを見た。
長門さんが僕を心配そうな顔で見つめている。
「…さぁ…一緒に帰りましょう。」
そして空間が割れた。

…。
…。
…。
~部室~
突如俺達の前に血だらけになった古泉が現れた。
「古泉!」
「古泉君!」
「古泉くん!」
古泉は俺たちの顔をしばらく眺めた後こう告げた。
「……朝倉涼子は倒しました。」
古泉は静かに言ったがけして楽な闘いでは無かったのを全身に刻まれた傷が物語っていた。
「…酷い怪我…」
「…ふぇ…こ、古泉くん…だ、大丈夫ですか…?」
ハルヒと朝比奈さんは古泉を介抱している。
しかし大丈夫な訳が無い…今もかなりの出血が確認できる。
「古泉…よく頑張った…。」
「はは…これであなたを殴ったのは帳消しになりましたかね?」
笑みを浮かべ奴はそう言う。
「…馬鹿野郎。」
帳消しどころでは無い。
俺はいくらお前に釣りを渡せばよいんだ?
「…これを。」
古泉はそう言って俺にペンダントを差し出した。

「これは…長門!?」
ペンダントの中で長門は俺に何かを訴えているようだ…何?…開ければ良いのか?
よく見るとペンダントの上部に小さいキャップが付いている。
俺は迷わずキャップを開けた。
するとペンダントから光が飛び出し、その粒子が俺達の前に人間の形を作り出した。
「有希!」
「長門さん!」
「…長門…さん」
……長門。
俺達の目の前に長門が立っていた。
「……。」
長門はしばらく俺達の顔を見た後
「…古泉…一樹…。」
そう呟き古泉の所へと駆けて行った。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…。」
何度も古泉に謝罪の言葉を呟いていた。
古泉は頭を振り
「長門さん、良かった…。」
と呟いた。
「長門、古泉の傷を治せないか?」
俺は長門にそう言ったが長門の答えは
「…無理。」
頭を振ってそう答えた。
「…情報統合思念体との接続が切れている…今の私には何の力も無い…。」

…よく考えたらそうだ。今回の敵こそ情報統合思念体だったんだ…。
くそ!まだ出血が続いている…このままだと命に関わるぞ…。
「…救急車を。」
朝比奈さん!?
…そうだよ。救急車だよ。頭が回らなかった。
「俺が呼んでくる!」
俺はそう言って部室の出口に向かおうとした…が!
…。
…。
…。
「な…。」
俺は絶句した…なぜならそこに
朝倉涼子が立っていたからだ。

「もう良いかしら?」
「お…お前…。」
朝倉はそのまま部室に入って来た。
「…不死身か…?」
古泉が驚愕の表情で呟いた。
そりゃそうだろう。
必死になって倒した敵が無傷で現れたのだから…。
朝倉は笑顔で言った。
「あら、古泉君、勘違いしないで。さっきのはあなたの勝ちよ。
さっきの私は完全に消滅したわ。」
「…どういう事ですか…。」
「こういう事よ。」
「……!?」
…悪夢としか言いようが無いだろう。
さらにもう一人朝倉が俺達の前に現れた…。
「たとえ今の私達を倒しても無駄よ。」
「また新しい私が現れるからね。」
…。
…。
…情報統合思念体の力でたとえ何回倒されようとも復活し続ける…朝倉はそう告げた。

「最後に長門さんに会えたから悔いはないわよね?」
「じゃ、そろそろ死んで。」
2人の朝倉がナイフを持ち近づいて来る。
…その時1人の少女が動いた。
「させない。」
…長門…。
長門が両手を広げ俺達を守るように朝倉の前に立ちふさがった。
「あら、長門さん。今やただのひ弱な女の子に成り下がったあなたが何をするつもり?」
朝倉が見下した目でそう言った。
「やらせない。」
しかし長門は一歩も退かず同じ言葉を口にした。
…俺は普通の人間。
朝比奈さんは未来人だが戦う力は持ってない。
古泉はすでに瀕死の状態。
長門はいまや何の力も無い少女になっている。
ハルヒはうつむいて何か呟いている
…無理もない。いくらハルヒとはいえ実質は普通の世界で生きてきた女子高生だ。
いきなりこの様な場面に叩き出されたら壊れるのも無理は無い…。
すなわち…絶体絶命って事だ。

その時だった。
…。
…。
ポッポ~♪ポッポ~♪
ーー!?
なんだ!?
俺はその奇妙な音の鳴る方を見た。
…。
…。
……なんだ。鳩時計か…。
部室に掛けられている鳩時計が六時を知らせていた。
…。
…。
ポッポ~♪ポッポ~♪ポッポ~♪ポッポ~♪
…こっちは絶体絶命だってのに呑気に鳴いてやがる………って…え!?
…鳩時計?
んな馬鹿な…少なくとも俺の記憶の中でこの部室に鳩時計が飾られた事は無い。
なぜだ?
俺がそう考えていた時
…。
…。
「…なるほどね。」
…。
…。
その声の主は不敵な笑みを浮かべてそう呟いた。
「さて、今度はみんな一緒に招待してあげるわ。広い所にね。」

朝倉はそう言って指を鳴らした。

…。
…。
…。
~閉鎖空間校庭~
周りの風景が変わり俺達はいつの間にか校庭に立っていた。
「みんなまとめて殺してあげる。」
朝倉かそう言いながら再び指を鳴らすと……うわぁ……。
俺達の目の前に百人近い朝倉涼子が現れた。
「痛みを感じる暇も無いかもね…じゃ、行くわよ。」

百人の朝倉がナイフを構え俺達に飛びかかろうとしたその時。
「待ちなさい!」
その声の主、先程
「なるほど」
と呟いたハルヒが不敵な笑みを浮かべたまま朝倉にそう言った。
「何…涼宮さん?大丈夫よ、あなたは殺さないから。
あなたの役割は切り刻まれたお友達を見て情報爆発を起こす事よ。安心して。」
…何が安心だ。
「アタシはただ待てと言ってるの。」
ハルヒ?
「…そうね。お別れの時間くらい与えてあげても良いわ…。10分よ。」
「それだけあれば十分よ。」
ハルヒはそう言って俺達の方を向いた。

…なんだハルヒ、本当に別れの挨拶をする訳じゃないだろうな?
「古泉君」
「はい?」
「あなた超能力者だったわね?
だったら手から炎を出したり傷を癒せたり瞬間移動できたりするわよね?」
古泉は表情を落とし。
「いえ…残念ながら…。」
そう呟いた。
残念ながら古泉にその様な力は無い。
こいつの力は限定された空間でしか使えない。
たしか最初に説明したはずだが?
「いいえ、使えるの!」
「え?」
何を言ってるんだ?
「アタシがそう決めたんだから使えるの。そういう事なんでしょ?」
ー!?
そうか…そういう事か!
古泉はしばらくポカーンとした後…。
「…そうです…そうなんです!今、涼宮さんの言った能力、全部使えます!」
にっこりと笑いそう答えた。
「そう、ならちゃっちゃと自分の傷を直しちゃいなさい!」
「はい!」

…さっきの鳩時計もハルヒの仕業か。
それで自分の力に…
「みくるちゃん!」
「は…はい!」
「あなた未来人だったわよね?」
「はい…一応…。」
「ならあなたのポケットは四次元ポケットね。隠したって無駄よ!アタシには分かってるんだから!
早く未来の凄い武器でも出しなさい。」
朝比奈さんはド○えもんか!
「え!?…え!?…」
「朝比奈さん!」
…。
…。
…。
「……あ…そういう事…そう、そうです!
凄い武器出しちゃいますよ!!」
朝比奈さんはようやく気づき元気にそう答えた。

「有希!」
「……。」
長門は振り返りわずかに首を傾けた。
「あなた宇宙人だったわよね?」
「…正確に言うと対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。」
「そんなのどっちでも良いのよ!んで今はその能力が使えないと?」
「そう。」
長門は顔を落とし答えた。しかしハルヒは笑顔で言った。
「残念だけどそれは勘違いよ。あなたは自分の能力を全部使えるの、自分の意志で!
アタシが今決めた!」
長門はその言葉にしばらく目を見開いた後
「コクン。」
大きく頷いた。

「キョン!」
俺?…俺はハルヒを見た。
「あんたは普通の人間なんだからみくるちゃんからなんか武器を貸してもらいなさい。」
「ああ。」
良かった。変な能力者にされないで本当に良かった。
「朝比奈さん。」
俺は朝比奈さんに話しかける。
「は、はい!……ふ、ふぇ…す、凄いの出ちゃった…。」
巨大なライフルらしき物を持ちそう言った。
それ本当にその小さなポケットから出たんですか…。
「これはどんな武器なんですか?」
「これは…その…禁則事項です。」
…分かりません!
俺と朝比奈さんが困っていると…。
「禁則事項禁止!」
ハルヒ?

朝比奈さんはしばらく沈黙した後頷き
「対ヒューマノイド・インターフェース用ライフル。
これは命中した相手の情報連結を解除出来る特殊武器です。
あ!ちなみに長門さんに当たっても大丈夫な用に作られてますから…。」
俺はライフルを受け取り
「…またずいぶん都合の良い武器が有りましたね。」
「ええ…まぁ涼宮さんですから…。」
なるほど、何でも有りか。
…ん?…古泉!?
瀕死状態だった古泉がいつの間にかいつもの笑顔で立っている。
「お前大丈夫なのか?」
「ええ、傷は癒やしました。涼宮さんに新たに頂いた力で。
…この戦い、いけますよ。」
ああ、いける。
俺は頷き次は長門に声をかけた。

「長門、どうだ?」
「涼宮ハルヒの力により私は全機能が復帰した。
今の私は全ての機能を情報統合思念体の許可無く使用する事が出来る。」
長門完全復活だ。
「私はこれよりジェノサイドモードを発動する。
これは戦闘モードの中の最終モード。
本来なら絶対許可は下りない。しかし今の私は情報統合思念体の許可は必要ない…様するに…」
長門の全身から凄まじいプレッシャーがにじみ出ていた。
「私は非常に怒っている。」
頼もしいぜ。
次に朝比奈さんに話しかけた。
「朝比奈さん、大丈夫ですか?」
「はい!オートターゲット機能がついていますから下手くそな私でも大丈夫です!」
朝比奈さんは銃を持ちそう答えた。
「キョンくんは大丈夫ですか?」
「俺ですか?…ええ。」
俺は笑顔で言った。
「この世界での連日のゲーセン通いは伊達では無いですから!」

…。
…。
「みんな、準備は良いわね!」
「ええ。」
「ジェノサイドモード発動完了。」
「は、はい!」
「おう。」
ハルヒは朝倉に向き直り。
「待たせたわね。」
「もう良いのかしら?」
ハルヒは不敵な笑みを浮かべ言った。
「さあ!どっからでもかかって来なさい!!」
こうして戦いが始まった。
…。
…。
…。
あそこで一度に3人の朝倉を焼き払ったのは、今やどこに出しても恥ずかしくないサイキックソルジャーになった古泉だ。
瞬間移動をしながら手から炎を出し戦っている。
…お前は草○京か!
そして戦闘開始から凄まじい勢いで朝倉を倒し続けているのは、"ジェノサイドモード"とか言う物騒な名前のを発動した長門だ。
よほど鬱憤が溜まっていたのか
「俺達必要ないんじゃないか?」
ってくらいの勢いで凄まじい勢いだ。


この2人が前衛部隊として戦っている後ろで俺と朝比奈さんは2人が討ちもらした朝倉を射撃している。
朝比奈さんは
「ふぇ…ふぇ…」
と言いながらもオートターゲット機能のおかげか確実に射撃を命中させている。
俺は連日のゲーセン通いで培った腕で射撃を続けている。
…谷口、国木田、ありがとう。
そして我らが団長、涼宮ハルヒは
「アタシが戦うまでも無いわ。」
とでも言いたげな感じで腕組みをし、笑みを浮かべ俺の後ろに立っていた。
…。
…。
そんなこんなでいつしか敵は朝倉1人残すだけとなった。
…。
…。

「朝倉、もうお前だけだぞ。」
俺は朝倉にそう言った。
…まぁ全部朝倉だった訳だが。
しかし朝倉は余裕の笑みを崩さない。
「あら、もう勝った気でいるの?」
朝倉は再び指を鳴らした。
…。
…。
--な!?
突如俺達の前に巨大な影が現れた。
…なんだこいつは。
その影は手にした棍棒らしき物でなぎ払いをしてきた…
「な!?」
「ひゃ!?」
その軌道上に居るのは俺と朝比奈さん!
俺達に棍棒が迫る。
避けられるタイミングじゃ無い…。
俺は朝比奈さんを庇うようにして抱きついた。
…。
…。
クラッ…
…。
…。
俺を襲ったのは衝撃では無く、強烈な立ちくらみだった……あれ?この感覚は…。
俺が目を開けると…
まるで棍棒が俺達をすり抜けたかのように通りすぎていた。

「2秒だけ…。」
「え?」
朝比奈さん?
「2秒だけ飛べました。」
そうか、時間移動。
朝比奈さんは俺達に棍棒が当たる瞬間2秒未来へ時間移動をしたのか。
朝倉、やっぱりお前は長門よりも下だ。
長門は完璧に時間移動を封じたぞ!
…しかし…この巨大な奴は一体…。
--!?
さらに4体の巨大な影が現れやがった…合計5体…。
「長門、あれは一体何なんだ?」
長門は静かに答えた。
「…ミノタウロス…。」
ミノタウロス!?
「…あれが?」
確かに良く見るとそれの顔は牛の形をしていた…神話で有名なあのミノタウロスだ。
「ミノタウロス…××星に生息する巨大生物。性格は凶暴。
…その肉は美味。」
…最後の一文が気になったが…まぁ良い。
とにかく倒せば良いんだろ!
俺はミノタウロスに射撃した……効かない?
次に古泉が炎を、光の玉を連続して放ったが…同じく効果が無い。

「無駄。」
長門?
「ミノタウロスに特殊な攻撃は通用しない。倒すには単純な力による攻撃しかない。」
「…長門。お前なら何とかできるよな?」
思い出したく無いがかつて長門はミノタウロスを調理し肉じゃがにした事がある。
しかし…。
「無理。」
…え?
「あの時倒したのは幼体。あれは成体…しかも5体…今の私でも無理。」
…。
…。
なんてこったい。
「形勢逆転ね。」
いつの間にかミノタウロスの肩に座っている朝倉がそう言った。
「くそっ!」
どうすれば良い…見ると古泉や朝比奈さんの顔にも焦りの表情が見える。

「おい!ハル…」
俺はハルヒに振り向き……え?
ハルヒの顔には焦りの表情は無く、先ほどまでと同じ笑みが浮かんだままだった。
ハルヒの視線…ハルヒは朝倉やミノタウロスを見ておらず、もっと後ろ……あ!?
「あ!?」
「ふぇ!?」
「……あ。」
ゆっくりとそれは現れた。
…なるほどな。
「…くっ…くっ…くっ…。」
思わず笑いがこみ上げる。
「…ふっ…ふっ…ふっ…。」
見ると古泉も笑っている。
「…何?恐怖で狂ったの?」
朝倉が怪訝な表情で俺達に言った。
「ははははははは」
俺と古泉の笑いがこだました。
「あなた達状況がわかっているの?私の命令一つであなた達死ぬのよ?」
状況がわかっているのかって?
命令一つ?
これ以上笑わせるなよ。

「これが笑わずにいられるかよ?
なぁ、古泉?」
「くっくっくっ…まぁ、僕としては複雑な気分でもあるんですけどね。」
そりゃそうだろうな。
「……。」
朝比奈さんは呆然としている。
そうか、朝比奈さんは見た事なかったな。
「長門、面白いだろ?」
長門は静かに言った。
「ええ。とてもユニーク。」
状況が1人分かっていない朝倉はイラついたような顔で
「なによ!なんなのよ!!」
と繰り返している。
「キョン。」
ハルヒ?
「教えてあげなさい。」
OK。
「朝倉。」
「何よ!」
「後ろを見てみろよ。」
「後ろ?
…………!?」
朝倉は後ろを振り向き…絶句した。

そりゃそうだろう。
後ろでさらに巨大な巨人が今にも自分を叩きつぶそうと拳を振り上げているんだからな。
「……な…な…な…。」
「…神人。」
古泉が静かに呟いた。
神人…ハルヒが自ら生み出した閉鎖空間で暴れさせていた巨人だ。

しかし今はハルヒの命令を待つかの様に拳を振り上げてたまま待機している。
「やりなさい。」
ハルヒの声が響く。
それと同時神人の拳が振り下ろされた。
「ひっ!」
朝倉は小さく言葉を発し、ミノタウロスの肩から飛び退いた。
次の瞬間5体のミノタウロスは完全に叩き潰された。
「…すげえ。」
俺は思わず呟いていた。

そして静かに神人は消えていった。
「…で、形勢逆転がどうしたって?朝倉涼子?」
ハルヒの言葉を聞いた朝倉は怒りの表情を浮かべ立ち上がった。
「調子にのってるんじゃないわよ!殺してやる!!」
朝倉は絶叫しナイフを俺達の頭上に投げた。
………!?
ナイフが何千いや、何万という数に分裂し俺達を囲んだ。
これが俺達に降り注いだらひとたまりもないだろう。
しかし俺は落ち着いていた。
何故かって?
ハルヒが笑顔のままだったからだ。

「ナイフの全方位攻撃よ!
手加減してあげてたのに図に乗って!……死になさい!」
朝倉の一言により何万ものナイフが俺達に降り注ぐ……事は無かった。
…。
…。
「な…なんで…。」
「馬鹿ねぇ。」
ハルヒは今日見せる最大級の笑顔で言った。
「そんなのアタシが許すとでも思ってるの!」
全てのナイフが音も無く消滅していく。
…ハルヒは…。
「すごい…涼宮さん…。」
「ええ、彼女は完全に…。」
そう、ハルヒは完全に自分の力を使いこなしていた。
「…覚醒。」
…長門?
「涼宮ハルヒは覚醒した。今の涼宮ハルヒに勝てる者はもはや存在しない。」
朝倉は狼狽していた…いや、恐慌していると言った方が良いだろう。
朝倉は一瞬逃げるような素振りを見せた後、石像の様に動かなくなった。

「あなたが動く事も許さない。」
「…あ…あ…。」
ハルヒはゆっくりと朝倉に近づく。
「…よくも…よくも好き勝手してくれたわね。」
笑顔だったハルヒの表情が徐々に怒りの表情に変わっていく。
「有希を閉じ込めたり…アタシ達の…SOS団の記憶を消したり…キョンを…みんなを殺そうとしたり…古泉君をあんな酷い目にあわせたり…。」
ハルヒを見ると…………泣いていた。
怒りの表情で体を震わせ涙を流していた。
「…アタシはあんたの存在を許さない。未来永劫ね。」
ハルヒの言葉に朝倉は…。
「…やめて…お願い…それだけは…それを言われたら…私は…。」
今さら何を言っているんだこいつは…。
「古泉、言ってやれ!」
古泉は頷き穏やかに言った。

「朝倉さん、知ってますか?
神様って非情なんですよ。
まぁ、神様とは言っても僕らの団長の事なんですけどね。」
古泉は朝倉に言われた事をそっくりそのまま返していた。
さらに古泉は続ける。
「あなた方は涼宮ハルヒを舐めていた。その結果彼女の逆鱗に触れる事となった。
残念ですが我らが団長は敵にはどこまでも非情になれる方なんですよ。」
古泉はニッコリと微笑んだ。
「アタシはあんたを絶対許さない!あんたが再び生まれる事も許さない。
消えなさい!朝倉涼子!永久に!!」
ハルヒがそれを言ったと同時に…朝倉涼子は…消滅した。
もう二度と朝倉が現れることは無いだろう。
ハルヒが言った以上絶対だ。
触らぬ神に祟り無し
この言葉をちゃんと理解していたら良かったのにな…朝倉。
そして空間が歪み…割れた。
…。
…。
…。

~部室~
「終わりましたね。」
古泉が言った。
ああ、終わった。
後は世界を元に戻すだけだ。
「……ごめんなさい。」
ん?長門?
長門は続ける。
「今回の件は全て私の責任。ごめんなさい。」
お前の責任なんかじゃない。
それに今言う事はそれじゃない…。
「長門、違うだろ?今お前が言わないといけない事は一つだけだ。」
長門は目を見開きしばしの沈黙の後言った。
「……ただいま。」
「お帰り、長門。」
「お帰り、有希。」
「お帰りなさい。長門さん。」
俺、ハルヒ、朝比奈さん、古泉が同時に言った。
…本当にお帰り。長門。
「さて、んでどうすれば良いのかしら?」
ハルヒが俺に言った。
「そうだな、お前の力で元の世界に戻すんだ…いや、二度とふざけた真似できないように情報統合思念体存在を消した世界をな。」
「分かったわ。」
その時だ。

「待って。」
ん!?
…。
…。
その声の主は部室の入り口に立っていた。
「喜緑さん…。」
喜緑江美里…生徒会書記、その実体は長門や朝倉と同じ対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース…彼女が何故?
ハルヒが呟く。
「なるほど、朝倉涼子の次はあなたって訳ね。」
その言葉に喜緑さんは首を振り
「いいえ、あなた方と争うつもりはありません。
あなた方に今の情報統合思念体の事を伝えに来たの。」
…。
…。
喜緑さんの話しによると、今回の件は急進派によるクーデターみたいなものであったらしい。
そして現在は元の通りになった。
二度と急進派が表に出る事は無い。
つまり、情報統合思念体を消すのを止めてくれ…って言いたいらしい。
「それを信じる理由は無いな。」
俺はそう言った。
当然だ。また奴らが同じ事をしないという保証は無い。

「私も情報統合思念体を消さない事を推奨する。」
長門!?
長門は続ける。
「喜緑江美里の言っている事は事実。
情報統合思念体の消去による影響は甚大。」
長門の話しによると情報統合思念体が消えるとこの世に大きな不具合が発生し、メリットよりもデメリットの方がはるかに大きいと…。
しかしなぁ…。
「もしもまた同じ事があったらどうするんだ?」
俺の問いに長門は
「それは無い。涼宮ハルヒが許さないと言った以上絶対。だから心配ない。」
俺はハルヒを見た。
「…まぁ、有希が言うなら仕方ないわね。
喜緑さん、分かったわ。」
ハルヒがそう言うなら仕方ない。
「ありがとうございます。
…それじゃ長門さん、後はお願い。」
喜緑さんは去っていった。

…。
…。
「私が涼宮ハルヒの力を使い元の世界に戻す。」
長門?
「今日の事が無かった事になりあなた達が今日経験した記憶は消える。」
「記憶が…消える?」
「そう、私以外の記憶は消え、当たり前の1日が始まる。」
ハルヒが声をあげる。
「ちょっと待って!それってアタシはまた何も知らない状態に戻るって事?
自分の力、有希が宇宙人、みくるちゃんが未来人、古泉君が超能力者って事も全部?」
「そう。でもそれがあなたの望み。」
……なるほどな。
何でも自分の思い通りになる世界をハルヒが望むか?
…否。
そんな世界をハルヒが望む訳が無い。
ハルヒが望んでいるのはいつもの日々だ。
ハルヒが無茶な事を言い出して俺達が振り回される。
みんなで馬鹿な事をやり笑いあえる…いつもの日々。
「帰ろうぜ、あの日々に。」
俺はハルヒに言った。


「…そうね。帰りましょう。」
古泉と朝比奈さんも笑顔で頷いた。
「改変を開始する。」
長門がそう言うと周りの景色が歪み…真っ白な世界になった。
それと同時に俺達の体が光に包まれる。
「ところで、僕の力はどうなるんでしょうか?」
「古泉一樹、あなたの力は一時的に涼宮ハルヒにより与えられた力。記憶の消失と共に消える。」
「それは残念ですねぇ。」
古泉は残念そうな顔で呟いた。
「ああ、あと涼宮さん、なるべく閉鎖空間を生まないようにしてください。」
気持ちはわかるが今言っても忘れているから意味ないぞ。
「ふっ、それならあなた達アタシを退屈させないように頑張りなさい。」
ハルヒは笑顔でそう言った。
俺と古泉は肩をすくめ呟いた。
「やれやれ…。」
…。
…。
そして長門が口を開いた。
「みんな…ありがとう。」
そして全てが光に包まれる…。
…。
…。
…。

~キョンの部屋~
ガタン
「痛ってえええ。」
…どうやらまたベッドから落ちたらしい。
今何時だ?……2時か…。
……何か夢を見ていたみたいだが……思い出せない。
物凄く苦労した夢だったみたいだが…まぁ、そのうち思い出すだろう。
寝よう…。
…。
…。
…。
~教室~
「おはよう。」
「おはようキョン。」
いつもの朝、教室に入った俺は友人の国木田、谷口と朝の挨拶を交わした。
「ちょっと!キョン!聞いて!」
なんだハルヒ?朝っぱらからテンション高いな。
「昨日凄く面白い夢を見たのよ!」
夢?
「もしかしてまた俺と古泉がお前に飯おごらせようとして、お前が財布を忘れて古泉がロリコンからホモになったあれか?」
「違うわよ!」

「違うわよ!」
違うのか…古泉には悪いがあれは正直面白かった。
「どんな夢だ?」
「それがね!覚えて無いの!」
……は?
ハルヒは覚えて無いけど物凄く面白い夢だったと言っている。
なんだそりゃ…そう言えば俺もなんか夢を見たな…覚えて無いけど…かなり苦労した夢…まぁ良い。
「おはようみんな。」
担任の岡部が入って来た…そんなこんなでいつもの1日が始まった。
…。
…。
…。


~放課後の部室~
いつも通りみんな集まり、それぞれ思い思いの事をやっていた。
ハルヒは団長席でふんぞり返り、朝比奈さんはメイド服でみんなにお茶を配り、俺と古泉はカードゲームをし、長門はいつもの席でいつもの様に自動読者マシーンと化している。
途中でまたハルヒが夢の話しをしだした。
それぞれ昨日どんな夢を見たか?

ハルヒ「凄く楽しい夢だった。でも内容は覚えていない。」
俺「凄く苦労した夢だった。でも内容は覚えていない。」
古泉「凄く痛い夢だった。でも内容は覚えていない。」
朝比奈さん「凄くオロオロする夢だった。でも内容は覚えていない。」
みんなバラバラだ。
共通点は覚えていないって所か。
「有希?あなたは何か夢見た?」
長門は本から顔を上げコクンと頷いた。
長門も夢を見るのか?
「んでどんな夢?」
長門はしばらく考えた後
「凄く幸せな…嬉しい夢。」
と答えた。
「で、内容は?やっぱり覚えてないの?」
長門は首を振り言った。

「覚えている。」

「教えて。」
「……内緒。」

内緒か…まぁ幸せな夢だったら良いか
…っと思っていた時長門が急に立ち上がった。
そして…
「みんな……ありがとう。」
…。
…。
…なんで俺達は長門にお礼を言われているのだろうか?
皆を見てみるが皆困惑の表情を浮かべている。
でもそんな事はどうでも良い。
皆もそう思っているだろう。
だって…
長門が今、最高の笑顔で微笑んでいるのだからな…。
…。
…。
…。
…おしまい。


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