SOS団の5人で下校していたときのことだ。
俺達の先頭を行っていたハルヒが、帰り道にある電気屋の前で何故か立ち止まった。
「どうしたハルヒ?」
「別に、テレビがあったから。なんとなく」
サイズ違いのテレビが5台、外に見えるように展示してある。全て同じチャンネルに合ってるもんだから、見てたら目がチカチカしてくる。
「クイズ番組のようですね。以前見た記憶があります」
古泉がいつものようにニコニコ、いやニヤニヤしながら言った。そのくらい俺でも見れば分かる。以前見た記憶も無い。
「あ、これの答え3じゃない!?」
「え?これは2じゃぁ・・・」
「僕は・・・4かと思いますが」
ハルヒと朝比奈さんと古泉で勝手にクイズ大会を始めてしまった。・・・まぁなんとなくオチは読めるんだが。
『正解は・・・1番で~す!』
テレビの出演者が「え~」っと声をあげる。おっと、出演者だけじゃ無かった。
「え~?何で何で!?説明しなさいよ!」
言われなくてももう既にVTRが始まっている。というかテレビ向かって叫ぶな。かなり痛いぞ。
朝比奈さんはVTRを本当に感心したように見ている。というかテレビに向かって頷かないで下さい。かなり可愛いです。
「本気で答えたんですけどね」
そんなことを言いながら俺に向かって苦笑してくる。知るか、クイズに正解したら俺が誉めてやるとでも思ったのか?
「へぇー、こういうのって意外と解かんないもんねぇ・・・」
クイズって解かる解からないの問題だったっけ?そこは「意外と知らないもんねぇ」が正しい筈だ。どちらかというと。
『それでは次の問題です』
司会者がそう告げ問題文を読み上げた。出演者が「わかんな~い」と声をあげる。おっと出演者だけじゃなかった。
「何これ!解かんない!ちょっとキョン!答え何番?」
「知るか」
俺がそう言うのと同時。5台のテレビが一気にCMに突入した。
「あー悔しい!CM明けるまで待つわよ!答えが気になって眠れりゃしないわ!」
「・・・やれやれ」

俺はこのとき、まぁCMなんか1分程度だ。そう考えていた。
しかし今思えばハルヒの首根っこを掴んででもそこで帰るべきだったのかも知れない。どうしようも無い後悔だが。
多分それは、始まってから3番目のCMだったと思う。
『第30回全国高等学校クイズ選手権!全国の高校生諸君!この夏はクイズにでも興じてみないか!?』
まぁ確かそんな感じのCMだったと思う。
俺はそのときは、ただ早くCMが明けることを願っていただけだ。だが、何故かは解からないが、そのとき嫌な予感がしたのを覚えている。
「ちょっとキョン・・・今の何?」
「は?何がだ?」
「今のCMよ!高等学校クイズ選手権って何!?」
「ああ、高校生クイズのこ―――」
俺はここまで言って口をつぐんだ。まずい、この流れは非常にまずい!
「何それ!?高校生のクイズ大会!?そんなのがあったの!?」
まずハルヒがそれを知らなかったことに驚きだが、そんなことはどうでもいいんだ。
「なぁハルヒ・・・まさかとは思うが・・・」
「出るわよ!私達がこれに出て優勝するの!!」
「・・・」
もうダメだ。立っていられないかも知れない。
「なぁハルヒ・・・そういつも思いつきでものを言うのはいい加減に―――」
「私は帰ってどうやったら出場出来るのか調べて来るわ!じゃぁねっ!」
そう言うとハルヒはニコニコ笑顔のまま走り去る。つかクイズの答えはいいのか?

「高校生クイズですか・・・楽しそうですね」
「・・・本気で行ってるのか?疲れるだけだろ」
「それはこの大会に真面目に出場しようとしている人に失礼ですよ。それに嘘ではありません、本心です」
俺が疲れるのはだな・・・この次お前が言おうとしていることも関係あるんだよ。
「あと、解かっていると思うので簡潔に言いますが、負けてはいけませんよ?」
クイズ大会での敗退のことに「負ける」という動詞をあてるのは正しいのかね。
「貴方は前回のコンピューター研究部との対決のときのように、涼宮さんが負けても閉鎖空間を発生させない、と考えるかも知れませんが今回はちょっと条件が違います」
「何処がだ」
「このクイズ大会はテレビに放送されると言うことですよ。つまり敗北感も通常の何倍にも。それはそれは涼宮さんのご機嫌取りが大変になるでしょうね」
「予選で負けてしまえばいいじゃないか」
「予選というものを涼宮さんはあまり重要視しない筈です。つまり勝って当然だと、そう考えるんです。そこで負けたら・・・」
ああ、もう聞きたくない。
「まぁまだ時間はたっぷりある筈です。作戦はじっくり練りましょう」
「・・・ああ、そうだな」
俺は額に手を当てながら言う。もうどうでもいい。

「帰りましょう」
俺は、何故かずっと仲良くテレビに見入っていた長門と朝比奈さんに言った。

「参加出来るのは3人よ!私は決定だからあとの二人は民主的に話し合って決めなさい!」
団長席の前で声高らかに喋っているのは誰かというと言うまでも無い、涼宮ハルヒである。
この団長様、昨日ダチョウの如く走って家に帰り、なんともう昨日のうちに参加登録をすませたらしい。
ちなみに登録は代表者一人で出来るんだそうだ。
「すみません。僕は予選の日用事があって参加出来ないんです。僕は応援に徹しますよ」
その用事というのは多分機関の仕事のことだろう。つまりどっちにしろハルヒの近くに居るってことだな。
「そうなの?じゃぁあとの二人はくじ引きで決めましょう」
さっきは話し合いとか言っといて・・・。
ハルヒはホワイトボードに『キョン』『ユキ』『みくる』と書き、あみだくじを作り始めた。
古泉が俺に目配せをしてくる。今日は珍しくその意味が解かる。
「じゃぁキョンと有希とみくるちゃん、適当に線を引いていいわよ」
そう言われて俺は席をたったが、俺が何本線を引いても無駄なことは解かっている。どうせハルヒの望んだ通りになるのだ。
「もういい?じゃぁ参加はこことここね。じゃぁ行くわよ」
ハルヒが線をなぞりだしたが、俺はもうどうなるかハッキリ解かっている。

朝比奈さんはクイズとかは苦手そうだからなぁ。

「第15問、どんな緊急時であっても、救急車にも消防車にも制限速度はある。○か×か」
「・・・×」
「正解は○。緊急車両は高速道路で100キロ、一般道路では80キロまでスピードが出せると規定されいる」
ハルヒは淡々述べたあと、ため息をついた。
「あんた、確立50%の○×クイズでよくそんなに間違えられるわね。逆にすごいわ」
悪かったな。6問しか当たらなくて。
「そんなんで本当に大丈夫なの?○×は一問間違えたら終わりなのよ?」
ああ、解かってる。だがその心配は無いだろう。
「じゃぁ、次は有希ね。第一問、かたつむりは貝の仲間である」
「・・・○」
「しゃちほこは火よけのお守りである」
「○」
「50円玉と100円玉、ふちのギザギザが多いのは50円玉である」
「×」
つまりこう言う訳さ。
長門はハルヒが矢継ぎ早に出してくる○×クイズに、「○、×、○、×」と機械のように答えている。当然全問正解だろう。
「すごい有希!全問正解!キョンも見習いなさい!」
見習うというか、長門だけ解かってくれれば問題無いんじゃないか?
「と言うかお前も何か答えろよ。第一問、イカの―――」
「もう○×は終わり!よく考えたら予選なんかの練習する方が間違ってるわ」
無視か。と言うかクイズの練習って何だ。最近微妙にハルヒの日本語がおかしい気がする。

「じゃぁあとの時間は・・・これ読んでて」
は?これって・・・これか?
「それ、どう見ても広辞苑なんだが。俺の目がおかしくなったのか?」
「どう見ても広辞苑よ。あんたは基本がなってないんだからこれ読んで基礎を磨きなさい」
俺はハルヒが差し出した広辞苑を両手で受け取り、その重さに改めて感心する。
「じゃぁ有希はこれ。『超難問クイズ100』全部正解したら帰っていいわ」
長門がコクリと頷くのを見てから、俺は広辞苑の一ページ目を開く。
「あ、キョン。あんたもそれ全部読み終わるまで帰っちゃダメよ」


死にたくなった。


それで今どうなっているかというと。
「ねぇキョン・・・今何?」
「おたまじゃくし・・・」
早々に100問クイズを終わらせてしまった長門は、少々意外にもそのまま帰ってしまい、今は部室でハルヒと二人きりになっている。
つまり俺達は広辞苑を『あ』から『お』まで読める時間ぐらい一緒に居るわけだ。だから何というわけでも無いが。
「ねぇキョン、ちゃんと読んでる?」
「大分真面目だ」
お陰でけっこう知識がついた気がするぜ。あ行関係ばっかりだけどな。
「あとどのくらいで終わる?」
あ行に2時間ぐらいかけてるからな。大体それ掛ける9ってとこか?
「あと18時間ぐらいかな」
俺はこう言えば確実にハルヒが「もう帰ろう」と言うと思っていた。そう言わないとおかしい。
しかし、ハルヒの答えは、俺の予想に沿ってはくれなかった。
「そう。がんばってね」
はい?なんだって?
「ハルヒ・・・今はもう夜の7時だ。いまから18時間経つと明日の・・・一時ぐらいか。そうなる」
「じゃぁ今日は泊まりましょう。明日休みだし」
ん?お前そんなにバカだったっけ?と言うか突然どうしたんだ?
「な、なーんて冗談よ!そんなに待てるわけ無いでしょ!今日は帰るわよ!」
当たり前だ。
「あ、あんたが良いならいいのよ?別に」
だから、一体どうしたんだ?
「帰ろう。俺は朝までコースはごめんだ」
「そう・・・じゃぁ帰りましょう」
そうして俺達は二人で肩を並べて帰ったわけだが、その時のハルヒは何かこう・・・変だった。

今思えば、その事とあの時とは共通点があった。俺はそのとき気付いておくべきだったのかも知れないな。

その夜、俺は部活の疲れと言えば聞こえの良い、ただ延々と広辞苑を読んで出来ただけの疲れで、
俺は帰宅直後すぐベッドにダイブしたい気に駆られた。
「キョンく~ん、もう寝ちゃうのぉ?晩ご飯はぁ?」
妹が当然の如くノックもせずに入ってきて言う。変なことしてたらどうするんだ。
というかこの妹が『ノック』という単語を知っているかも怪しい。今度広辞苑を読ませてやろう。
「面倒だな・・・」
「お風呂はぁ?汚いよぉ?」
「ああ・・・」
まぁ風呂ぐらいは入った方がいいかもな。その方が部活の疲れも取れるというものだ。
「じゃぁ入る」
「じゃぁ晩ご飯もいるね。お母さんに言っとくぅ」
そう言うとさっさと部屋から出て行ってしまう。全くマイペースな限りだ。
将来はハルヒか鶴屋さんのような人になるんじゃないか?後者になる事を祈るばかりだ。
そんなこんなで俺がベッドに入ったのは結局10時のことだ。

で、起きたのが何時かは・・・解からない。

「ちょっ・・・ン!起・・・さい!」
「んあぁ・・・?」
「キョン!起きなさい!」
「うお!?」
俺は誰かに大きく体を揺さぶられ、跳ね起きることを余儀なくされる。
「なんだよ母ちゃん。今日は日曜だろ?まったくおっちょ――――」
「何わけ解かんないこと言ってるの!バカキョン!」
俺が起きぬけに突然思いついたモノマネを阻止するのは誰かな?多分他でも無い、奴だろう。
「誰だお前は」
「誰って、私よ!涼宮ハルヒよ!忘れたの!?」
忘れるわけが無い。この小説では記憶喪失ネタは扱ってないからな。
「ああ、なんとなく思い出した。で、ここは何処だ?」
俺はもう起きた場所がベッド意外のところでも、あまり驚かなくなるとこまで来ていた。
「解かんない。起きたら突然ここに居たの」
俺はここが何処なのか知ろうと、周りを見回す。
野球場だ。キレイな緑の草が一面に生えている。

何のことは無い。ここは神宮球場だ。

どうやらまた俺はハルヒと何処かに飛ばされたらしいな。だが灰色では無い。閉鎖空間にもいろいろあるのか?
前回と違うところは他にもいくつかある。
まず人が居る。それもかなりたくさん。まさか、俺達がここで野球の試合を行わないといけないんじゃないだろうな?
そして、そのたくさんの人の中には、見覚えのある奴も居た。
「長門!」
ハルヒの隣に、長門が立っていた。
「あれ?有希、あんたも居たの?」
ハルヒの問いかけに、長門は短く答えた。
「・・・高校生クイズ」
長門の言ってる意味が一瞬、よく俺には解からなかった。だが、ハルヒにはそれだけで充分だったようだ。
「あ!そうだ!私達、いつの間にか高校生クイズの本戦開場に居たんだわ!思い出した!」
思い出したってのは嘘だろ。というか高校生クイズの本戦開場って神宮球場で良いんだっけ?
「あ!みくるちゃん!古泉君!」
ハルヒが何処かに手を振りながら言う。その方から、またもや見覚えのある奴と人が歩いてきた。
「こんにちは涼宮さん。応援に来ました」
「が、頑張って下さい!す、すす涼宮さん!」
「ありがとう!二人とも」
3人で雑談を初めてしまったので。俺は長門と、もっと重要なことを話すことにする。
「お前は、本物の長門か?」
「私が単なる涼宮ハルヒの夢の登場人物で無いという意味では、本物」
「夢?これはハルヒの夢なのか?」
「そう。前回とは状況が異なる」
「で、今回もこれはハルヒのせいなのか?」
「違う」
俺の問いに、長門は一呼吸置いて言った。
「今回は、情報統合思念体の所為」

「お前の親玉が?何故?」
「統合思念体は、テレビと呼ばれる情報受信端末を通して涼宮ハルヒの映像が広く視覚化されることを恐れた」
「何故だ」
「涼宮ハルヒに興味を持つ組織が増えると面倒」
「なるほど・・・」
敵は増やしたく無いってことか?良く解からんが。
「あそこに居る古泉と朝比奈さんも本物でいいんだな?」
コクリと頷く長門。
「で、お前の親玉は何を俺達にやらそうとしてるんだ?」
三秒間程の沈黙。
そのあと、長門が静かに告げる。
「高校生クイズ」
・・・随分お茶目になったんだな、その情報統合思念体とやらは。
「統合思念体は涼宮ハルヒが興味を持つ以上はそれを観察するべきだと考えた。しかし、先に言ったような問題もあり、その実現はあまり好ましくないことになる。よって涼宮ハルヒの夢として、それを実現させ観察することを考えた」
要するに、実際にやらせるのは危ないから夢でやらせようって事ね。
「涼宮ハルヒは、この夢が終われば現実のそれに出場する気は無くなるものと考えられている」
長門がそう言うからにはそうなんだろう。それは俺にとっても非常に嬉しい限り。実際テレビに出ることなんか面倒でたまらない。広辞苑ももう読みたくない。
俺が次なる質問を長門にしようと思ったそのとき、長門が静かに言った。
「始まる」
「は?」
『第30回!全国高等学校クイズ選手権!』
どでかいアナウンスが、球場に響いた。

「あ!始まり?始まりでしょ?始まりなんでしょ?」
ハルヒが俺と長門の方に走り寄ってくる。夢だってのに興奮しすぎだ。あ、コイツは知らないのか。
「朝比奈さんと古泉は?」
「観客席に行ったわ。ねぇ!それよりクイズはいつ出るの?ねぇいつ~?」
うるさいな。今司会者がごちゃごちゃ喋ってるじゃないか。長門のお父様の細かい演出をもっと味わえよ。
『では!選手の方はこちらに移動して下さい!』
司会者が最後にそう言ったのだけは、ハルヒも聞き取ったらしい。
「あっちって、あ!あれね!すごい!早押しかしら!?」
ハルヒが指差す方向を見ると、クイズ番組でよくみる、早押しクイズというやつだろう、それ用のテーブルが5台置いてあった。

『高校生クイズ!遂に決勝戦!勝ち残ったのはこの5校です!』
いきなり決勝戦かよ!いくらなんでもハルヒも気付くだろ。
そう思いながら長門を見ると、俺にしか聞こえない程度の声で長門が言った。
「涼宮ハルヒにはこの空間限定で記憶補正を行った。違和感を感じることは無い」
それは多分さっき「あ!そうだ!」とか言ってたときにやったんだろうな。
『それでは、決勝に残った5校の生徒にインタビューして見ましょう』
司会者が高校名を挙げながら言った通り、生徒にインタビューを開始した。本当ならもの凄~く緊張するところなんだろうな。
その司会者は最後に俺達の高校名を言ったあと、ハルヒに向かってマイクを向けた。
『ズバリ、優勝出来ると思いますか?』
「当然ですよ!私達、北高SOS団には秘密兵器があるんです」
『ほう、それはなんでしょうか?』
「この子です!」
そう言ってハルヒは長門を前面に押し出す。
「我がSOS団のマスコットその1。長門有希です!この子はいつも本ばっかり読んでるから知識豊富で、それに何でもこなせる万能選手なんです!」
『へぇ、その子が・・・。それで、さっきから言っているSOS団とはなんですか?』
「私達のことです。あ、そうだ、私達SOS団のメンバーは不思議なことを広く募集していまーす!何かあったら連絡よろしく!」
カメラに向かって喋ってるつもりなんだろうが、お前の言ってることは放送されることは無さそうだぞ。
『は、はぁ・・・何やらとっても元気な北高SOS団の3人でした!』
元気なのは一人だけだけどな。
そのあと司会者は、早押しクイズの説明を簡単にした。10問正解すればどうやら優勝らしい。
『それでは早速第一門行ってみましょう!』
はいはい、待ってましたよ。
『第一門、美術用語のバロックの語源はゆがんだ何?』

すまん、言ってることが分からん。難しすぎるぜお父様。
さっきまでで既に10問クイズが出された。我が北高の正解数は2問。回答者はいずれもハルヒ。
このクイズは解答を間違えると、一回休まなければいけないという『本物』のルールを採用しているのだが、ハルヒが毎回ボタンを押すため、俺達はもう4回休んでいる。休みすぎはよくないな。
まぁそんなことはどうでも良いんだ。このクイズバトルに勝たないと死ぬわけでも世界が消えるわけでも無いんだ。テレビじゃ無いから恥をかくことも無い。
それでまぁ普通にクイズを楽しんでみようと、思ってみたりするのだが、もうとにかくさっぱり解からない。
『次の方程式を満たすxの値を答えよ。-5x + 12 = -23』
『次の□に適切な漢字一字を入れ、四字熟語を完成せよ。【 □為転変 】』
『徳川第3代将軍家光の乳母、春日局の父の名前は?』
『塩酸に亜鉛を加えるとどのような気体ができるか?』
『「痛みに耐えよく頑張った。感動した。おめでとう。」といったのは小泉首相ですが、このとき優勝した力士は誰?』
知らん。とにかく知らん。
こんなの実際に解かるやつ居るんだろうか。他の高校の奴等はそれなりに正解してるがこいつらは情報統合思念体が作ったもんだからな。
「そこに居る擬似有機生命体は、実在の高校生クイズに出場するそれのレベルに合わせている」
長門がご丁寧に説明してくれた。あ、そうなのとしか言い様が無い。

『では第11問!』
もう半分聞くが失せてるんだけどな。
『多面体において、頂点の数をV,面の数をF,辺の数をEとすると、V+F-E=2が成り立つ。このことを何と言う?』
ん?これは何か知ってるぞ?と、思った瞬間、俺はボタンを叩いていた。ハルヒが疑うような目で俺を見る。
「えーっと・・・何だっけな。あー、オイラーの・・・オイラーの多面体定理?』
『せ、正解!』
うろ覚えだが合ってて良かった。ていうか何処で聞いたんだっけこれ?
「なんであんたがオイラーなんか知ってるのよ?」
「んー・・・何処かで聞いた」
「・・・ねぇ、まさかあの時――――」
『第12問!』
ハルヒが何か言おうとしたが、その声は司会者の大きな声にかき消された。

そこからは説明するのもめんどくさい。
本当なら出されたクイズは書き出して、君達に答えてもらうのも悪くないのだが、それすらめんどくさい。
よく解からないが、多分現在40問目。うちの正解数は9問。いつのまにやらリーチだ。
もう俺はこの空間にすっかり飽きた。統合思念体もとっくにそうなんじゃ無いか?
長門は解からないが、そう感じていない人物が一人居るらしい。
「ちょっとキョン!やる気あるの!?あんたが答えたの一問だけじゃない!」
長門は一問も答えて無いけどな。
「あと一問で優勝なの!解かる!?優勝よ!!?」
ハルヒが一生懸命言うが、事情を知っている俺としてはとても痛々しい発言にしか聞こえない。
『既にリーチがかかっているのが3校!これが最後の問題になるのか!?』
是非最後の問題にしてくれよ。
『髪を後頭部の高い位置で一つにまとめ、垂らした髪型のことを何と言う?』
…嫌なこと思い出させてくれるぜ。ボタンを叩いたのは、本日(?)2回目だ。
『ハイ!SOS団!これが正解なら優勝です!答えをどうぞ』
司会者が俺達のことを高校名でなくSOS団と呼んでいることは、もはやどうでもいいことだ。
「えー・・・ポニーテール」
『正~解!!SOS団!優勝です!!』
なんか笑えて来るな・・・。で、俺はいつまでここにいればいいんだ?
「ちょっとキョン!何であんたがトリなのよ!?」
悪かったね。お前の夢なのに。
「ていうか、好きなの?ポニーテール」
「まぁまぁ」
「ふーん」
と、こんな会話はどうでも良い。

「長門、この夢はいつ終わるんだ?」
「涼宮ハルヒが望めば、今すぐ」
結局そこか。
「ハルヒ、満足したか?」
「まぁまぁ。ていうか授賞式とかかったるいわよね・・・優勝者の義務としてやってあげるけど」
ハルヒ、その必要は無さそうだ。
俺が長門の方を見ると、長門もコクンと頷いた。

次の瞬間、俺は自分のベッドで目が覚めた。


面倒だが一応後日談をしよう。
翌日ハルヒは、長門の親玉の目論見通り、高校生クイズへの参加を取り下げた。
一応聞く。
「何故だ?突然」
「あー、面倒くさくなっちゃった。何やるにも2回目は面倒になるもんね」
なるほど。俺は一回目の時点で面倒になってたが。
「あ、そういえばあんた。ポニーテール好きなんだっけ?」
「まぁまぁ好きだが。何故だ?」
まぁ『かなり』好きなんだけどな。
「いや、あんたがしつこく言ってくるもんだから。夢の中で」
「お前の中の俺は、随分ポニーテール萌えなんだな」

ハルヒの頭がどうなってたかは、言わなくてもいいよな?




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