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「あなたに告白して、涼宮さんの出方を見ようと思うの。好き……です」
なんだこれは。
俺は団長の命令を忠実に守り、校内を探索していた。
すると、朝倉に遭遇し、屋上に連れて行かれてこんなことを言われてしまった。
「いや、そんなこと言われてもな……。しかも涼宮の出方ってなんだよ、話が全然掴めないんだが」
朝倉は顔を赤らめて俯いていたが、そのまま答えた。
「……涼宮さんもキョンくんが好きなんだよ?あたしに『絶対にキョンは渡さないから!』って言ってきたもん」
やれやれ……。いつから俺はこんなにモテるキャラになったんだ?
朝倉に告られたとなると谷口もビックリだぜ。しかも涼宮にも好かれてるというおまけ付きだ。
まだ入学して半年も経ってないのに、変な部活を作らされ、かわいい女二人に好かれるとはな……。俺の平穏無事な生活はどこに行った?
「でさ、あの……キョンくん。そろそろ……返事を……「ちょっと待ちなさぁい!」
来てしまったか、これは修羅場確定だな……やれやれ。
「朝倉!あたしは宣戦布告したのにぬけがけなんてズルイんじゃない?」

「あら、涼宮さん。勝負って言うのは仕掛けられた瞬間から勝負よ?油断したほうが悪いと思うわ」
俺だけを取り残し、二人の壮絶な口げんかが始まった。
まったく困ったもんだ。今のうちにこの屋上から出ておくか……。
「逃げるなっ!」
「逃げないで!」
あ、あはははは……恐ぇよ、二人とも。
早く帰りたいし、部室にも三人を待たせてるだろうから口を挟んでおくとするか。
おい、二人とも。そこら辺でやめとけ。俺はケンカするような奴は嫌いだ。
二人はすぐさま口を止めて、同時にこっちを見た。なんだなんだ?
「け、ケンカなんかしてないわよ。ね、涼子?」
「も、もちろんよね、ハルヒ!ただ……ほら、お互い直したほうが良いところを言い合ってただけよ!」
なんてわざとらしい奴等だ。名前で呼び合えば良いってもんじゃないんだがな。
じゃあ、あれだ。これからも仲良くするために握手でもしとけ、ほら。
俺は二人の腕を掴み、握手するよう促すように近付けた。引きつった顔を見せながらも、二人は握手した。仲良き事は素晴らしきことかな。
……無理やり握手させといてなんだがな。
こうして、俺とハルヒは部室へ、朝倉は下校のため靴箱へと向かって行った。
部室に戻り、俺はいつもの席について『お疲れ様』と天使のような笑顔でお茶を渡してくれた朝比奈さんに礼を言い、お茶を飲もうとした時だった。
俺の横にいつもは座らないはずの奴がいる。
「みくるちゃん、あたしのお茶もこっちにお願いね!」
なんでお前がここに来るんだよ……。
「た、たまには別の席に座りたくなるわよ。……べ、別にあんたの隣りがよかったわけじゃないんだからね!」
やれやれ……、こいつの行動にニヤけてる奴がいるじゃねーか。

「おや、お二人はいつからそのような仲になられたので?僕達は邪魔になってるようなので先に帰りましょうか?」
ちょっと待て。そんな関係じゃ……、
「あら、ほんと?助かるわ~、ありがとう古泉くん、みくるちゃん、有希!」
何を勝手なこと言ってるんだ、こいつは。
あ、待てよ、古泉。うわっ、朝比奈さんまで……長門、お前もかよ……。
しょうがなく、ハルヒと部室で二人になることを決めた。まったく……なんだってんだよ。
俺がお茶を飲んでいると、メール着信がなった。
《今、長門さんに会ったの。あたしもあなた達の部室に行くね》
さっきの屋上よ、再び……か。
一応これは俺が望んだことになるのだろうか?あの日、朝倉に襲われた日。
俺は消えて行った朝倉を見て、長門に言った。
『一切の能力を消して、朝倉を普通の人間として生まれ変わらせてやれないか?』……と。
その結果、俺に本性を現す前の朝倉が一般人として復活したわけだ。
ほんとならトラウマになり、朝倉とも話したくなくなるのが普通だろう。
しかし、俺がハルヒに何故か惹かれたのと同様に、朝倉にも何故か惹かれていたのさ。
ドアがノックされる。ハルヒはふてくされた声で『どーぞ!』と返事をした。
「……っ!?なんであんたがここに来るのよ!」
「あたし……まだ、キョンくんから返事もらってないもん……」
あぁ、忘れてなかったのかよ。せっかくはぐらかしたと思ってたのに。
「キョ、キョンはあたしの物なんだからっ!」
とりあえず間違いは訂正しておくか。……その後がどんな展開になろうとも、な。
「おい、涼宮。俺はまだ誰の物でもない。ただ一つだけ言うとしたらな、お前が俺を好きだとしても、言葉にしない奴と付き合う気はさらさらないからな、俺は」

ハルヒはビックリした顔をしている。まさか俺にこんなことを言われるなんて思ってもいなかったのだろう。
「う……じゃ、じゃあ言うわ!キョンのことが好きっ!大好きっ!」
おいおい……これがあの涼宮ハルヒか?
谷口の言うような、次から次に男をフり、恋愛どころか他人にも興味を持たない涼宮ハルヒの影は一切なかった。
俺の目の前に立っているのは、勇気をふり絞って好きな男に告白する、一人の健気な少女の姿だ。
「キョンくん……ちゃんと返事しなきゃダメだよ?さっきみたいにうやむやにしたらあたし達怒るからね……」
もう一人の恋する少女、朝倉涼子が一歩前に出てきた。
もうこれはある意味夢のような状況だ。
考えてもみろよ。
頬を朱に染めた、二人の美少女が俺を取り合ってるんだぜ?間違いなく北高で最高の光景を俺は拝んでいるんだ。
……だけど、どっちか一人を選ばなきゃいけないんだよな。二人とも好きなんだよ、俺は。
「そんなの……簡単に選べねぇよ。俺は二人とも好きなんだよ……バカ野郎」
もう、この場を切り抜けるにはこれしかなかった。
ろくに考えないまま答えを出すと、絶対にどっちかが傷つく。それだけは絶対にしたくなかった。

「そ、そんなの……ダメに決まってるじゃない!はっきりしなさいよ!」
「そうだよ、キョンくん!あたし達は勇気をふり絞ったんだからあなたもそうしてよ!」
こいつら……俺の気持ちも知らないで……。なんかだんだんイラついてきたぞ。
いつの間にか、二人は俺の腕に一本ずつすがりつき、眉を潜めて俺を見上げていた。
『キョン!』『キョンくん!』二人の声が近くで聞こえる。……うるさい、うるさい、うるさい!
「離せっ!」
すがりつく二人を無理やりに引き剥がした。
「お前らな、俺がどんだけ悩んでると思ってんだ!二人とも傷つけたくないって思ってるのに、答えばっかり急がせやがって!」
俺ってこんなに感情を表せることが出来たんだな。新発見だ。
「どうしても答えが欲しいってんならくれてやる。……二人とも、もう俺に喋りかけるな。不愉快だ」
驚きに目を見開く二人に背を向け、俺は部室のドアに手を掛けた。
「ち、ちが……そんなつもりじゃ……」
ハルヒの動揺している声。
「……ごめんなさい。ねぇ、謝るから。何度でも謝るから、許して……」
朝倉の動揺している声。
二人の声を完全に無視して、ドアを開き、壊れるくらいに叩き付けて閉じた。
もったいない?二人がかわいそう?……知るか。
こんな、答えを強要されるのが恋愛だってんなら、もう二度と恋愛なんてしなくていい。うんざりだ。
俺の脳内に住む奴等と自問自答をしながら、一人きりで家へと帰っていった。
……あぁ、後味わりぃな。


夜、二人から電話が何件もかかってきた。……こいつら、反省する気あるのか?
俺はマナーモードにして、鞄に押し込んで一つも取らなかった。

鞄から鳴る振動音が煩わしい。いっそのこと、電源を切るべきだったが今更立つのも面倒くさく、俺はそのまま目を瞑り、睡魔に意識を委ねた……。
いきなりのダイブで起こされた妹から、妙な言葉を聞いた。
「きれいなお姉ちゃん達が外に二人で立ってるよ!キョンくんの知り合い?」
その言葉に反応し、すぐにカーテンを開けて家の前を見た。
朝倉とハルヒが二人並んで立っていた。……どこで調べたんだよ、ハルヒならやりかねんが。
ふと、昨日の鳴り続けた携帯のことを思いだし、鞄から取り出した。
……着信38件、メール7件。全て朝倉とハルヒから。
嫌がらせか!と冗談のように頭で思いつつ、メールをチェックした。
《キョンくん、今日はごめんなさい。お願いだから許して……》
《電話に出てくれないね……。ごめんなさい、ほんとにごめんなさい……》
《もう遅いからこれで最後にします。お願い、嫌わないで……ごめんなさい》
朝倉からの三通のメール。それはひたすら俺に謝罪の言葉を繰り返していた。

《ねぇ、電話に出てよ。お願いだからさ……》
《声が聞きたいよ……反省してるから。ねぇ、お願い》
《あたし、やだよ。喋れなくなるなんて絶対に嫌。ちゃんと面と向かって謝るから、返事ください……》
《あたし、ウザいよね……。今日はこれで最後、明日……やっぱりいいや。言える言葉はこれだけだよね。ごめんなさい》
ハルヒからの4通のメール。朝倉と同じような感じだ。
二人が反省しているのはとてもわかった。だが、俺の気持ちを不愉快にさせられた怒りだけは消えなかった。
何故って?
そりゃあ、自分に恋愛が面白くないなんて考えさせられるようなことをされて易々と許せるやつはいないさ。
いたら連れて来い、カウンセリングしてもらうから。
しかし、どうしたものか。家を出たらあいつらに謝られ続けるだろう。
そんな状態で学校に行くと、妙な目で見られるのは間違いない。
じゃあ、選択肢は一つしかないか……。
自分の部屋を出て、台所仕事をする母親に向かって口を開いた。
「あ~、なんだ。ごめんけど今日休むから。ちょっといろいろ理由があってさ……」

母親は二つ返事で了承してくれ、学校に電話をかけてくれた。……ありがとう。
さて、次は……と。
「小学校に行くのはあの二人がいなくなってからにしてくれ。今度お菓子買ってやるからな」
あまり妹に迷惑をかけたくないからな。これまたお菓子に釣られてすぐに了承の返事がきた。
あとは時間を待つだけだ。ここから学校まではけっこうな時間がかかる。
あと5分も待てば、学校に向かうしかない時間がくる。
再び自分の部屋に戻り、携帯をいじり始めた。
メールがきてる?……またあいつらか。
《ねぇ、行かないの?遅刻しちゃうよ?》
これが朝倉から。
《早く降りてきてよ、今あんたの家の下にいるから。言わなきゃいけないことがたくさんあるのよ……》
これがハルヒから。
しかし、ここで休むなどと返事をすると、間違いなく上がり込んでくるだろう。
敢えて無視するべきだ、必然である解答だ。
しばらく窓から様子を伺っていた。
10分程経っただろうか、やっと二人は学校へ向かった。肩を落として、な……。
やっと落ち着けるな……。今日は母さんは出かけるって言ってたから一人か。
しょうがない、たまには親孝行で家事でもしてみるか……。
ピンポーンという、ありきたりの機械音が聞こえてきた。こんな朝から……回覧板でも回ってきたか?
小走りに玄関に走り、ドアを開けた。……やられたね。
そこには、ハルヒと朝倉が今にも泣きそうな顔で立っていた。

「やれやれ、なんの用だ?団長様と委員長様がお揃いで学校をサボってさ」
朝倉とハルヒは同時に俯いた。静かに肩を震わせている……泣いてんのか?
「そんな言い方……ひどいよ。あたし、反省してるんだよ?」
「昨日は……自分達のことばかり考え過ぎたわ。ごめん、キョン……許して」
二人並んで頬に涙を伝わせていた。なんか俺が悪者みたいじゃねーか。
俺のやるせない怒りは収まってはいないが、さすがに玄関で女を泣かせたままにする程鬼じゃない。
入れよ。上のドアが開いてる所が俺の部屋だからそこに行け。
そう伝え、俺は台所へ向かった。コーヒーに塩でも入れてだすか?……冗談だ。
普通のコーヒーを三つお盆に乗せて、俺の部屋へと向かった。
「ほら、飲んだら帰れよ」
自分でも思うが、今、俺は無理してこんな態度をしているようだ。
けっこう好きな女子を二人も自分の部屋に連れてきているんだぜ?普通ならもう笑顔が止まらないさ。
ただ、俺の安っぽいプライドがそれを抑えているんだろうな。

好きな奴から告られて、両方を傷つけたくないが、自分から不愉快だと言って突き放して傷つけたたというわけの分からん状態が、この宙吊り状態を作り出している。
「じゃあ、飲まない……」
「あたしも……」
大きく溜息をついた。こいつらはガキか?飲んだら帰れ、なら飲まないなら帰らなくていい。なんつー理屈だよ。
「あ~もう!わかったよ、昨日の答えは撤回だ。だから学校に行け、な?」
……二人は尚も動く気配を見せなかった。
「……おい、いい加減にしろ。いったい何しに来たんだよ、嫌がらせか?」
ようやく二人は顔を上げ、俺の顔をジッと見てきた。……だんだん近付いてくる。つーか近すぎる、離れろ。
「もう、あたしのこと嫌い?」
そう言葉を発したのは朝倉だった。
「はっきり言って。嫌いならもう付きまとわないから」
……いや、嫌いじゃないんだが。
「……ほんとに?」
あぁ、ほんとだ。神に誓ったっていい。
そう伝えると、朝倉は顔を下げ、元の位置に戻りコーヒーに口をつけた。
さて……と。
「お前はどこまで近付く気だ、バカ」
指三本分くらいの位置まで近付いてきたハルヒの頭を手で押さえ、軽く後ろに押しやった。
「あ、いや、あはははは……。今ならキス出来るかなって……」
やれやれ、なんて野郎だ。俺は数十センチ後退りした。
「お前は俺と付き合ってるわけでもないのに、なんでキスしようとするんだよ」
ハルヒは顔を真っ赤にして、コーヒーに口をつけた。……結局仲直りしちまったな。
まぁ、いいか。それより今からどうするべきか……こいつら学校には行かないのか?
「昨日はやり方を間違えちゃった。焦って返事を強要するなんてあたしらしくなかったね」

はぁ?朝倉はいきなり意味のわからない言葉を発した。隣りでハルヒが頷きながら言葉を継ぎ始めている。
「まったくその通りね。失策だったわ。……でもね、今日はたっぷりと時間がある」
おいおい……まさか……。
「返事、待ってるね?」
「答え貰うまでは絶対に帰ってやらないんだからっ!」
結局これに行き着くのかよ……。もういっそのこと二人ともこっぴどくフってやるか?
うん、それ無理。だって二人とも好きなんだもん。
俺は再び苦悩することになった……。


「なぁ……二人とも友達のままじゃ……「「ダメ」」
いつの間にか立場が入れ替わっていた。ハルヒとの立場に限って言えば元に戻っただけなんだが。
朝倉は俺の本を読みながら、ハルヒは俺の部屋を漁りながら返事を待っている。
かれこれ一時間、俺はまだ決めかねていた。
「やっぱ……「「ダメ」」
さっきからこの調子だ。俺が当たり障りない答えをしようすると、この二文字が飛んでくる。
……腹を括るしかないか。
朝倉はもう全てにおいて完璧だ。クラスで俺以外の奴相手に孤立していたハルヒを気にかけたのもこいつだ。
ハルヒは……なんだ、まぁ俺の学校生活には欠かせない存在になった。不思議な事件は全てこいつが持ってくるしな。
だからこそどっちかを選ぶなんて出来ないのだが……こいつらが望むならしょうがない。一人を選んでやろうじゃないか。
「本当に俺でいいんだな?二人とも後悔するなよ?」
朝倉もハルヒも動作を中断し、俺を真っ直ぐ見つめて頷いた。
「しょうがないな……。フラれたからって、逆恨みやケンカは無しだぞ」
念を押す俺に『早くしろ』と言わんばかりに真っ直ぐな視線を向けてくる。

二人が並んで座るベッドに歩を進め、ハルヒの頭に手を置いた。
「ごめんな」
そして、俺は朝倉にキスをした。
二人とも呆然としている。何が起こったのかわかっていないのか?
……………………。
沈黙が部屋に流れる。それを破ったのは……ハルヒが泣きながらあげる声だった。
「うっ、うっ……バカキョン……ぐすっ。もういい……あたし、学校行く」
そう言って俺の部屋を出ていった。……朝倉にゃ悪いが、ここは後を追わせて貰う。
「待てっ!」
以外にもすんなりと止まったな。玄関を出た所でハルヒは振り向いた。
「やっぱりあんたは団長じゃなくて、委員長萌えだったのね……残念だな」
無理して泣き笑った顔を作ったハルヒもかわいかった。……不謹慎だな。
「朝……ごめ…ね」
うつむいて小さく何かを呟いたハルヒは、突然近付いて俺の唇を奪った。
「……まだ、諦めたわけじゃないんだからね。朝倉にそう言っといて……あと、SOS団は辞めさせないんだからね!」
ハルヒは走り去っていった……学校とは逆の方向に。
まったく……困った奴だ。
家の中に戻り、階段を昇って自分の部屋に戻ると、さっきの場所から動いていない朝倉がいた。

朝倉……どうした?
「え?あの、キョンくんにキスされるなんて……夢みたいで……」
口をポカンと開けている、スキだらけの朝倉もかわいいもんで、しばらく見とれてしまった。
そんなスキだらけの朝倉に、もう一度キスをした。……キス魔か、俺は。
「こんなのでよかったらいくらでもしてやるぞ。お前は……ほら、俺の彼女だからな」
テレビドラマも真っ青なキザ台詞を吐いてしまった。すぐさま激しい自己嫌悪に陥った。死ね、俺。
そんな俺に朝倉は優しく微笑みかけてくれた。
「うれしい……ありがとう、あたしを選んでくれて」
……ちくしょう、俺は幸せ者だ。閉鎖空間も、古泉の言葉や朝比奈さんの既定事項も知ったことか。
俺はハルヒじゃなくて朝倉を選んだんだ、ずっとこいつを愛してやる。

「学校、どうしよっか?」
朝倉は首を傾げながら聞いてきた。元々真面目なこいつだし、サボることにはやはり抵抗があるのだろう。
「よし、行くとするか」
さっさと制服に着替えて、鞄を持って外に出た。
今日は朝倉がいるから自転車は無し、いつもの道を少し早足で歩き始めた。
「ま、待って!置いてかないでっ!」
走って追いかけて来たかと思うと、俺の腕に抱き付いて、満面の笑顔を浮かべた。
やれやれ……このペースなら昼までにつけばいいか。
人の目も気にせず、ふり払うこともせずに、俺は少しだけ歩幅を小さくして幸せな時間が長く続くようにして再び歩きだした。


おわり
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